ドローン・次世代エアモビリティ・独自視点
Japan Drone 2026
「平和利用の祭典」は、
もう終わりにしていい
6月3日から幕張メッセで「第11回 Japan Drone 2026」が開幕する。出展300社・団体、来場者2万4,000名見込み——数字だけ見れば活況だ。しかし正直に言う。このままのアプローチでは、この展示会は「内輪の運動会」で終わりかねない。世界のドローンを取り巻く現実は、昨年からはっきり変わった。
社・団体
出展予定
国内ドローン市場
国産シェア(2025年)
円 2026年度
防衛関係予算
「デュアルユース」という言葉の空虚さ
今年のJapan Droneは、国際コンファレンスで「無人航空機のデュアルユース——国際安全保障を支える民間技術の役割」というセッションを設けた。登壇者には元陸上自衛隊東部方面総監(陸将)の磯部晃一氏も名を連ねている。この判断自体は評価する。
しかし率直に問いたい。「デュアルユース」という言葉を展示会に入れることと、ドローン産業が本当に安全保障と向き合うことは別の話ではないか。
国内ドローン市場において、中国DJIは9割超のシェアを誇る。国産メーカーのシェアはわずか3%にとどまる。政府は2030年までに国内需要の6割を国産で賄う目標を掲げたが、2025年9月末時点で、自衛隊が保有するドローンの国産化率は約3割だったことが国会で明かされている。
今年の幕張に出展する国産ドローンメーカーの機体の多くが、部品レベルでは中国製に依存しているという事実がある。「デュアルユース」というラベルを貼れば、その矛盾が解消されるわけではない。
ウクライナが教えたこと——日本は受け取ったか
2025年6月、ウクライナ軍は「蜘蛛の巣作戦」を実行し、1機数万円の自爆型FPVドローンを木箱に隠してロシア国内に潜入させ、戦略爆撃機を含む40機以上の航空機を破壊した。英チャタムハウスはこれを「現代のドローン戦争の常識を塗り替えた」と評した。
以前は半年ごとに技術革新が起こる感覚だったが、今は3カ月たったら状況が変わっている
— ウクライナ前線 ドローン工房の技師(2026年JBpressレポートより)
ウクライナ軍の司令官によれば、ロシア軍の戦闘による死傷者の約80%はドローンによるものだという。戦車や装甲車が隊列を組む花形戦術は過去のものとなり、「2両のレオパルト2(主力戦車)の価格で、200チームのドローン打撃隊が編成できる」という試算も出ている。
西側諸国から供与されたドローンの多くが届いた時点ですでに時代遅れになっており、使用前に設定を一から変更し直す必要がある。手間をかけて再設定しても使い物にならず、部品だけ取り出して廃棄されるケースも多い。展示会のサイクルは年1回。しかし戦場では3カ月で技術が変わる。
防衛予算9兆円のリアル——「SHIELD」構想と業界の乖離
2026年度の防衛関係予算は9兆353億円と、12年連続で過去最大を更新した。その柱の一つが、沿岸侵攻を試みる敵を大量のドローンで食い止める「SHIELD(多層的沿岸防衛体制)」構想で、10種類・計数千機に及ぶ無人機の取得費として1,001億円が計上された。
約1,000億円だ。ドローン産業にとって、これは千載一遇のビジネス機会である。しかしここで冷静になる必要がある。この予算が、今のJapan Drone出展企業に流れてくるとは限らない。
防衛調達には、民間の商用ドローン展示会とは全く異なる要件——機密保持、サプライチェーン管理、暗号仕様、耐妨害性——が求められる。「インフラ点検用ドローン」がそのまま「防衛用ドローン」になれるわけではない。業界がデュアルユースを本気で目指すなら、この「溝」を埋める技術開発と認証の取り組みが必要だ。
Joby・Archer・Betaの実証——「大阪万博の夢」の後に
2025年の大阪万博では、JobyのeVTOLが計41回のデモフライトを行い、観客を魅了した。富士スピードウェイでも14回のフライトが実施された。華やかだった。しかし、それから何が変わったか。
2026年中のドバイ商業運航開始を目指す。米国でのサービス開始はFAA型式認証取得後。2026年末までに米国10州での飛行試験を計画中。
2026年1月にFAAから「適合性確認手段(MOC)」受理。認証取得に向けた詳細テスト実施中。アブダビでの2026年商業運航も計画。
物流特化のCX300の認証を2026年後半〜2027年初頭に見込む。UPS、Air New Zealandなどが顧客。2025年11月にIPOで約10億ドル調達。
これらはすべて「米国・中東の話」だ。万博から1年、日本でJobyが飛んでから何が変わったのか。「日本でいつ商業運航が始まるのか」という問いに、明確に答えられる人間は業界の中にも存在しない。幕張に来るAAM企業のほとんどは、まだ「実証実験」フェーズにいる。
「社会実装」を謳いながら、具体的な路線・運賃・認証取得目標を示せる企業が何社あるのか。今年の展示会で、それを正面から問いたい。
— 本誌独自視点
「人材循環」という名の問題先送り
今年、Japan Droneは業界初の「就職・転職フェア」を同時開催する。「人材循環の創出」が目的とされている。これ自体は前向きな取り組みだ。しかし、なぜ今なのかを考えると、複雑な気持ちになる。
ドローン業界は慢性的な技術人材不足に悩んでいる。しかし問題は「人が来ない」のではなく、「来た人が定着しない環境」にある。多くのドローンスタートアップは、まだビジネスモデルを確立できていない。補助金と実証実験で食いつないでいる企業が少なくない。
ドローン業界の「本当の人材問題」は、処遇や採用チャンネルではなく、「この業界で10年食えるキャリアパスが描けるか」という問いに答えられていないことだ。就職フェアの開催より先に、その問いに向き合うべきではないか。
台湾有事とドローン——幕張でできる「覚悟」の議論
最も重要で、最も避けられてきた話をしよう。
中国の軍事的脅威は現実だ。政府は2026年度防衛予算において、無人アセット能力全体として2,773億円を計上した。日本の防衛研究者からは「日本もウクライナとの軍事ドローン共同生産を推進すべきだ」という声も上がっている。
億円
無人アセット防衛予算
中国製ドローンの
国内市場シェア
自衛隊保有ドローンの
国産化率(2025年)
もし台湾有事が起きたとき、日本のドローン産業はどこに立つのか。中国製部品への依存を今すぐ断ち切れない現状で、有事のサプライチェーンはどう維持されるのか。FPVドローンを国産で大量供給できる基盤が、いつ整うのか。
これらは「防衛省の問題」ではない。今年の幕張に出展する300社の問題だ。Japan Droneが「産業育成」と「インフラ活用」だけを語る展示会であり続けるなら、それは現実から目を背けることになる。
期待とともに送る、幕張への問い
批判ばかり書いてきたが、誤解しないでほしい。私はJapan Droneに期待しているから書いている。テラ・ラボのTerra Dolphin MALEが開発中であること、AI×ロボティクスゾーンが新設されること、元自衛隊幹部が登壇するセッションが実現したこと——これらは確かな前進だ。
しかし前進の速度が問われている。ウクライナの前線が「3カ月で技術が変わる」世界にいるとき、年1回の展示会でゆっくりと「社会実装を見据えた議論」をしている暇があるのかどうか。6月3日、幕張で何が語られるか。そして、語られなかった何かが、業界の本気度を測る。



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