仙台の空で出会った、同じ夢 ——日本版EAAと、LSAが拓く「自由な空」

LSA 軽スポーツ航空機

遙かなる大空 Vol.110

仙台の空で出会った、同じ夢
——日本版EAAと、LSAが拓く「自由な空」

この連載で書き続けてきた理想が、現実の一歩を踏み出そうとしています。

この記事の要点(約5分)
  • 仙台で、日本版EAA(航空愛好家の草の根コミュニティ)を進める一人の同志と語り合った。
  • 目的は、パイロット・整備士の育成、LSAを自ら作る「ものづくりの心」、一般航空の環境づくり、空港の活性化。
  • 私はさらに、LSAの「フライトスクール+フライングクラブ」で、誰もが安く自由に飛べる場を構想している。

先日、仙台で、ある方とお会いしました。現在高校の英語の先生。16年前にアメリカへ渡って操縦ライセンスを取得し、いまは仙台空港のフライングクラブで空を飛んでおられる——そんな、飛行機への深い愛情を持った方です。この日は、その方が進めている「日本版EAA」の構想について、たっぷりと語り合いました。そして、ありがたいことに、実際に飛行機にも乗せていただきました。空の上で交わした言葉は、いつまでも心に残ります。

EAA(Experimental Aircraft Association)とは、アメリカ・オシュコシュを本拠に、世界約1,000の拠点、数十万人が集う航空愛好家のコミュニティです。飛ぶ人、作る人、支える人——航空を愛するすべての人が集い、学び合う。その日本版を立ち上げよう、という夢。私がこの連載で書き続けてきた理想と、驚くほど深く重なっていました。

日本版EAAが、めざすもの

その方が掲げる目的は、明確でした。第一に、パイロットと整備士の育成。第二に、LSA(軽スポーツ機)を自分たちの手で作ることを通じて、日本のものづくりの心を守り、育てること。第三に、ジェネラル・アビエーション(一般航空)としての権利や環境を獲得していくこと。そして第四に、地域空港の活性化です。

とりわけ印象的だったのは、「各空港ごとに、独立したEAAの形を取りたい」という発想でした。一つの巨大な組織を作るのではなく、それぞれの空港に根ざした拠点をいくつも立ち上げ、それらが横につながっていく。この分散型のモデルは、実はEAA本家の姿とも重なります。とても現実的で、地に足のついた構想だと感じました。

「一つの大組織ではなく、それぞれの空港が、それぞれの拠点になる。」

語り合って、一致したこと

この日の対話のなかで、私たちの見解は、いくつもの点で自然に一致しました。ジェネアビの人口を増やすこと。訓練環境と空域環境を充実させること。そして、拠点どうしの「横のつながり」を大切にすること。どれも、日本の空を豊かにするために欠かせない要素です。

そして何より、「LSAを採用することで、コストパフォーマンスを良くし、活性化につなげる」という点で、私たちは強く共鳴しました。これは、まさに私がVol.107で書いた主張そのものです。高すぎる壁を、LSAで下げる。安くすることは、質を落とすことではなく、より多くの人に空を開く鍵になる。同じ理想を持つ人と出会えたことが、この日、何より嬉しいことでした。

ここからの構想——スクールと、クラブと、二つの拠点

ここからは、この対話に触発されて膨らんだ、私自身の新しい構想です。LSAのフライトスクールを設立すると同時に、LSAのフライングクラブを立ち上げる——というアイデアです。スクールが「これから学ぶ人の入口」なら、クラブは「学んだあとに、飛び続ける場」。機体を共同で保有し、費用を分け合えば、一人あたりの負担はぐっと下がります。誰もが、自由に、安価に、空を飛べる。そんな場所を作りたいのです。

もう一つ、温めている構想があります。以前から進めているニセコ拠点に加え、冬の間は仙台をベースにする、という二拠点の発想です。世界的なリゾートであるニセコで体験とブランドを発信し、訓練空域の充実した東北・仙台を冬の活動拠点にする。季節に応じて、二つの土地の強みを活かす。そして来月以降、早いうちに、私はニセコを訪ね、現地のパートナーと具体的なビジネスの話を進めてくるつもりです。夢が、少しずつ、地図の上に形を持ち始めています。

結び

一人で見る夢は、ただの夢かもしれません。けれど、同じ夢を見る仲間と出会えたとき、それは動き出す現実になります。仙台の空で交わした約束を、私は大切にしたい。日本版EAA、LSAのスクールとクラブ、そしてニセコと仙台の二拠点。すべては、「飛ぶ・作る・支える」人の裾野を広げ、日本の空をもっと自由にするという、一つの願いにつながっています。この連載で書いてきた理想が、いま、現実の一歩を踏み出そうとしています。その歩みを、これからも正直にお伝えしていきます。

数字は嘘をつかない——UPRTは『あれば良い訓練』ではない。

吉川 哲也(Tetsuya Kikkawa)

エアラインパイロット(A320)
UPRT JAPAN 合同会社 代表
HIEN Aero Technologies シニアアドバイザー・テストパイロット
元航空自衛隊戦闘機操縦士(F-4・C-130)

参考
  • EAA(Experimental Aircraft Association)公式情報:オシュコシュ本拠、世界約1,000チャプター・20か国、会員25万人超。チャプターは地域空港を拠点に、飛行・製作・修復・教育(Young Eagles、Eagle Flights、Flying Start、フライングクラブ設立支援等)を担う草の根ネットワーク.
  • 本連載 Vol.107(パイロット育成とLSA)、Vol.102(MOSAICと空の民主化)、Vol.109(大学発の航空イノベーション).

※ 本稿は2026年8月時点の対話・構想に基づく筆者の記録および見解である。面談者については本人の意向に配慮し、氏名を伏せて紹介している。具体的な事業計画は今後の検討による。図はいずれも概念図。

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