皆さんこんにちは!
皆さんは飛行機(旅客機)が、空港の駐機場(スポット)からどのように出発するか
知っていますか?駐機場とは、飛行機に乗客が乗り降りしたり、荷物の積み卸しをし
たりする場所です。
今日は、その仕組みと画期的な機械(車両)のお話です。
プッシュバック(Push Back)
トーイングトラクター
トーイングトラクター(トーイングカー)と呼ばれる飛行機を押す車があります。
飛行機の前輪とトーイングトラックをトーバーという棒でつなぎ、押し出すように
して飛行機を動かす方法です。これは従来型と呼ばれる方法です。
トーイングトラックは押すだけではなく、牽引(引っ張る)こともできます。
押すときには車の前に、牽引するときは車の後ろにトーバーを付けます。
オレンジ色の棒がトーバーです。
運転席は、前進用と後退用の2種が用意されています。後退用の運転席が存在しない
車種もあります。
大型のトーイングカーは300馬力もあります。排気量は7000cc以上もあります。
馬力とは仕事率のことで、仕事率の大きさは一定時間に、どれくらいの力で、どれく
らいの距離を移動させたかによって決まります。一般的には、1秒間に75kg重の力で、
物体を1m移動させた仕事率のことを馬力といいます。
自重が最も重い旅客機は、ジャンボ機(ボーイング747-400)で183t弱。
これに次いで、ボーイング「777-300」型機が約157t、さらにボーイング
「777-200」型機が約138tとつづきます。
実際のフライトでは、これに燃料と乗客・貨物・乗員などを加え、ジャンボ機の場合な
ら、最大で390tくらいの重量になります。こんな重いものを動かすのですから相当
な力持ちです。
トーバーレストーイングトラクター
トーバーレストーイングトラクターとは、従来型のトーイングトラックからトーバーを無く
して、前輪ごと抱きかかえて移動させる車両です。
旅客機の前輪とドッキングして移動するトーバーレストーイングトラクター。
旅客機の前輪とドッキングするための車体後部の装置。黄色い部分で旅客機の前輪
を固定します。
座席は回転するようにできていて、旅客機を押して後退させる(プッシュバック)時に、
運転席が座席とハンドルごと反転する仕組みになっています。
操作は難しく、全長に対してホイールベースが非常に短く、しかも運転席が異常なまでに
前方にあります。クイックに曲がり、独特の運転感覚となるそうです。旅客機の移動は、
10センチ単位で精密に動かさなければなりません。そのため、乗客の乗った旅客機を上手
に動かせるようになるには、最低でも5年以上の経験が必要になるといいます。
パワープッシュバックユニット
ジェットスタージャパンが独自に採用しているのが、パワープッシュバックユニットです。
通常、プッシュバックを行うときには、トーイングトラックを運転するドライバーと
飛行機が後ろに移動しますので、監視役のスタッフが左右の翼の外側に1人ずつ、大型機
になれば真後ろに1人と合計4人のが必要です。
そこで、LCC(格安航空会社)のジェットスタージャパンは、スタッフが半分の2人で済む
パワープッシュバックユニットを採用しています。
原理は、小型の無人車両を左側の主脚に取り付けて、機体を引っ張るのです。曲がるとき
にはコックピットでパイロットがステアリングという飛行機が地上で曲がるときに使う
ハンドルを使用します。このハンドルは、自動車のハンドルと同じく右に曲がりたいとき
はハンドルを右に、左に曲がりたいときは左に操作します。
エアバス320のステアリング。
ステリングハンドルを操作すると飛行機の前輪が動く仕組みになっています。
ドライバーが乗って飛行機のそばまで移動します。
左の主脚のタイヤをはさみ込むかたちで固定します。
リモコンでスタッフが操作して、プッシュバックさせます。地上スタッフとパイロットは
常に無線でコンタクトを取りながら行います。
私も最初は難しかったですが、慣れてくると曲がるタイミングとか角度とかある程度調整で
きるようにはなりました。コミュニケーションが大切ですね。
(写真はジェットスタージャパンfacebookより引用)
次世代の移動・Moonware(ムーンウエアー)
Moonware(ムーンウエアー)
アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスに本社を置く、Moonware(ムーンウエアー)
は航空機のグランドハンドリングを自動化し最適化することを目的としている企業です。
ムーンウエアーは、はじめは UAM(アーバンエアーモビリティ) 業界であり、Uberー
Elevate(ウーバーエレベート)(Joby Aviation が買収) との協力により、垂直ポートで
eVTOL 航空機を牽引するための自律的で電気的なプッシュバック車両を開発しました。
当時、UAM 市場はまだ初期段階にあり、eVTOL航空機メーカーは、機体認証のために
注力していて、インフラストラクチャ(インフラ、社会資本)の要件を確立し、運用を
サポートするために必要な取り組を行っていませんでした。そこで、モーンウエアーは
業界に先駆けて、世界中の主要な eVTOL 企業、Vertiport (バーチポート)開発者、
および業界関係者との強力な協力関係を維持してきました。
グランドハンドリングの未来を変えるHALO
HALO は、航空機のターンアラウンド管理を合理化するために設計された統合ソフトウ
ェア + IoT プラットフォームです。
COVID-19 パンデミックのが終息し、航空業界も元に戻りつつありますが、その影響と
してより顕著になったのが、パイロット、客室乗務員、地上乗務員のスタッフ不足です。
このことは航空会社に重大な苦痛をもたらし、遅延やフライトのキャンセルにつながり、
乗客はいらだたしく感じています。今、世界中の空港で起こっていることです。
調整されていないグランドハンドリング運用コストは、遅延、事故、燃料費で毎年 300 億
ドル(約4兆円)以上の損失を被っています。
そこでモーンウエアーは、HALOを使って
- 所要時間の短縮:自動化されたタスク スケジューリングと地上要員の派遣により、
定刻のパフォーマンス目標を 3 ~ 7 分で達成させます。
- 遅延の最小化:土壇場でのスケジュール変更とゲートの割り当てにより、地上要員の
タスクをリアルタイムで更新し、地上車両を最適に割り当てて潜在的な
遅延を 20% 軽減します。
- 資産活用の改善:地上車両ユーティリティを定量化し、フリートの割り当てをリアルタ
イムでプロアクティブに最適化して、フライトの定時性を高めます。
その他、各航空会社の運航乗務員とのスケジュールとも連動して、スムーズな配置を行うこと
を目的としています。
電動プッシュバック タグボート
飛行場周辺で航空機を移動させるための自動運転車と電気自動車を設計、開発、
運用しています。
これらは、航空機のフロントノーズギアの重量を活用して、牽引操作に必要な
トルクを生成する、特許取得済みの新しいメカニズムを備えています。これに
より、他のクランプ(つなぎ金具)またはピンラッチ機構と比較して、さまざま
な着陸装置構成に対応し、着陸装置の構造的疲労を最小限に抑えることもできます。
まとめ
今日は、皆さんが普段何気なく乗っている飛行機。
前方のドアが閉まってから離陸まで、長く感じられることも多いと思います。
我々、航空機の運航に携わっている全てのスタッフは、一つ一つ安全を確認しながら
行動しています。人の目で安全を確認して、適切なコミニュケーションを取りながら
飛行機や車両を操作していきます。残念ながら、地上で航空機同士がぶつかる事故は
なくなりません。焦りや勘違いなど、人間はミスを犯してしまいます。そうならない
ために最新のテクノロジーを駆使して安全を保つことが必要だと思います。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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