皆さんこんにちは!
以前もこのブログで紹介したチェコのZURIが、新たな資金調達を行い、ハイブリッド型
eVTOLの実用に向けて加速しています。
そして、日本にもこのハイブリッドを使用したeVTOLの開発企業、HIENを紹介します。
チェコの新興企業 ZURI
ZURI
ZURIは、5 人乗りのハイブリッド電気 VTOL 航空機を開発しているチェコ共和国の
新興企業です。
ZURIの歴史は、約6年前の2017年9月に会社の創設者である マイケル・イリッチ
氏 が、機体のデザインを子供たちから借りたクレヨンを使って最初に描きました。
その後、プロの航空宇宙デザイナーによって、ここに表示されている形に再描画されま
した。
イリッチ氏が最初に描いたデザイン画(画像:ZURI)
2018年5月、基本的なアイデアを証明するために、翼幅 2 メートルの小型モデルを作成しま
した。これは、飛行特性をテストするために使用されました。一般的な趣味のコンポーネント
を使用してモデルを構築することで、安価な実験と急速な進歩が可能になりました。
これがZURIの最初のモデルとなるものでした。
同年8月には、コンセプトのスケーラビリティをテストしたいと考え、飛行機の設計者を雇って
5 メートルのプロトタイプを作成しました。最初に、飛行機として水平モードでテストしまし
た。次に、垂直離着陸システムを追加し、ホバー モードで航空機をテストを実施。このモデル
は、地方の CAA 当局に登録された最初の無人航空機です。
最初のホバーテストを行った機体(画像:ZURI)
その後、2019年にかけて大幅な資金調達や、エンジニアなどの専門スタッフを雇い入れ
開発のペースを加速していきます。中でも2019年の3月には戦略的パートナーシップとして
航空券を販売するチェコの新興企業である Kiwi.com と提携しました。Kiwi.com は 20 万
ユーロ(2800億円)を投資し、航空旅行業界に関する完全な知識を提供ししました。
そして同年5月には、1人乗り用の試作機の開発を始めました。空気力学のコンピュータ シミ
ュレーションである数値流体力学 (CFD) を使用し、モデルを 3D プリントで作成。チェコ航
空宇宙研究センターの風洞で空気力学を検証しました。
3Dプリンターで制作したモデルの風洞実験(画像:ZURI)
2020年には、デモンスタレ-ター(試作機)を構築。ホバー モードですべてのコンポーネ
ントをテストするための無人航空機である「フライング ウィング」として命名しました。
第 2 段階では、完全な単座機にアップグレードされます。
2020年12月から11m の翼幅を持つ大規模な技術デモンストレーターを構築しました。この
技術の地上試験は 2021 年 6 月に終了し、続いて 2021 年 9 月にホバー試験が行われました。
最初のデモンストレーターによるホバーテストの様子(画像:ZURI)
2022年に入りZURI は、ZURI 2.0 と呼ばれる次世代のハイブリッド VTOL 航空機を正式
に発表しました。大規模な飛行デモンストレーターとサブスケール モデルの開発とテスト
に何百時間も費やした後、ZURI チームは現在のバージョンの航空機を準備しました。
その後、Zuri 2.0 コンセプトのアップデートを2022年10月に発表しました。座席構成は
1+2+2に変更され、パイロット1名と2列の乗客が2列ずつ配置されました。航空機には、
従来の尾翼の代わりに V 尾翼も装備されています。
その最新のZuri 2.0 がこちらです。
Zuri 2.0
Zuri 2.0 実用コンセプトモデル(画像:ZURI)
ローターはティルトローターを採用しています。前方に 4 個、後方に 4 個の推進ユニット
が縦位置と横位置の間で傾斜します。これらの電気モーターは、完全に冗長な分散型電気推
進システムを形成します。いずれかのコンポーネントに障害が発生した場合でも、安全な飛
行が保証されています。
合計8つのティルトローターを採用(画像:ZURI)
推進力としてガスタービンエンジンを使用しています。Zuri には、発電機と結合したタービン
が搭載されています。このシステムは、飛行全体を通して電気エネルギーを供給し、Zuri が
どの eVTOL よりも数倍広い範囲を達成できるようにします。
ガスタービンを使用して必要な電力を供給(画像:ZURI)
バッテリーパックは最新の軽量リチウム電池で構成されています。いくつかの独立した
バッテリーボックスがあり、インテリジェントなバッテリー管理システムによって個別
に監視および保護されています。ボックスには、最大の安全性のために耐火断熱材が装備
されています。
飛行制御システムは、航空機の操縦翼面の機械的バックアップを備えた冗長フライバイワ
イヤ システムで構成されています。オートパイロットは、複数の入力、交通、または地形
情報に基づいて飛行制御を提供し、最高レベルの安全性を確保します。
コンピュータ化されたビジョンやその他のセンサーは、最大限の安全性を確保するために
パイロットの状況認識を強化するための補助的な安全機能を提供します。このシステムは、
オブジェクト認識、オプティカル フロー、および 3D モデリングのための高度な AI アル
ゴリズムに基づいています。
このハイブリッドは、700km以上の航続距離を可能としました。東京から700kmといえ
ば、北は函館、西は広島まで飛行できることになります。
巡航速度は300~350km/h(160~190ノット)。旅客機の倍の時間はかかってしまいま
すが、東京~大阪間(400km)は1時間15分で飛行できるのです。
また、騒音は通常のヘリコプターよりも静かで70db以下に抑えられています。
機体もコンパクトなため、26m四方の着陸できる場所があればOK!ビルの屋上のヘリポー
トも活用できます。
新たな資金調達
ZURIは、今週末にハイブリッド電気 VTOL 航空機の開発を支援するために、約 1500 万
ユーロ (21億円) の資金を調達するために、プレシリーズ A 投資ラウンドを開始しました。
シリーズAとは、スタートアップ企業に対する投資ラウンドの1つの段階のことです。ここ
でいう投資ラウンドとは、企業の成長フェーズをさします。多くの場合、シリーズAにおけ
るスタートアップではプロトタイプが完成し、製品の提供を開始している段階にあります。
また、資金調達額は数千万円〜十数億円程度、調達期間は半年程度、調達先はベンチャーキ
ャピタルであるケースが多いです。
一般的に、シリーズA以降の資金調達は、種類株式を発行することで実施します。種類株式
とは、通常の株式とは異なる権利や条件を付与して発行する株式のことです。種類株式に付
与できる権利や条件については、会社法で規定されています。
日本唯一のハイブリッドeVTOL、HIEN
2025年の大阪万博に向けて、日本のSkydriveが着々と準備を進めています。5人乗りの機体
SD-05に個人の注文やTaiho Engineering Company(大鵬)が注文するなど、注目を集めて
います。しかしながら、このSD-05は、時速が100km、飛行距離も最大で10kmと極めて
狭い範囲での飛行に制限されています。
ZURIと同じく、日本でもハイブリッド型のeVTOLを開発しているのがHIENです。
HIEN Aero Technologies株式会社は、ガスタービンエンジンによるハイブリッド・システム
により、実用的な航続距離を持つスケーラブルなeVTOLの開発に取り組んでいる企業です。
2025年の大阪・関西万博を目標に機体をスケールアップし、エア・タクシー・サービスの提供
も可能な2人乗りプライベート用eVTOL “HIEN 2″を開発、さらに2030年には6人乗りエアタ
クシー用eVTOL “HIEN 6″を市場に投入することを目指します。
代表取締役CEO、御法川 学(みのりかわ がく)氏は、2008年に大学でパイロット養成コー
スを立ち上げて以来、新しいカテゴリーの小型航空機の普及と安全設計に関する研究を行ってき
ました。UAM分野においても、「空の移動革命に向けた官民協議会」メンバーや、JUIDA(ドロ
ーンの業界団体)顧問を務めるなど、先導的立場にあります。また、創設メンバー(取締役3名)
は、ヘリコプター電動化プロジェクト(2020年)に取り組み、その際に得たeVTOLパワエレ技
術に関する豊富な知見により、効率的に開発を進めることができます。また、バッテリー製造、
デジタルエンジニアリング、流体計測の第一人者を技術顧問に迎えています。さらに、HIENは
ロボット・ドローン製造に関する優れた技術力を有する企業の強力なバックアップのほか、産官
学の連携体制を構築しています。
HIEN Dr-One1/4モックアップ(左)とガスタービンハイブリッドユニット(右)
(画像:HIEN Aero Technologies)
現在は、ローターのテストを終了して、先週からHIENの心臓部であるガスタービンハイブリッド
発電の実験を行っています。
まとめ
最近では、高性能のバッテリー技術の開発も行われています。しかし、まだ近距離での
運用に限られてしまいます。500km以上の巡航距離を稼ごうとするとやはりハイブリッド
型になると思います。航空機の運航もそうですが、気象状況に大きく影響を受けます。
目的地が悪天候に見舞われたりすると着陸できなくなります。その際には、あらかじめ
別の場所に代替えの着陸地を設定しておかなければいけません。その燃料(時間)分の
余裕が必要になります。そのため、カタログ上は500km飛行できても余分に代替え地
までの燃料(電力)を考慮するために、実際には400kmくらいしか飛行できないかもし
れません。また。緊急事態が起こったときに必要な電力を生成できるハイブリッドが必要
になってきます。日本の自動車メーカーは、世界で一番のハイブリッド技術を持っています。
いろいろと学べるところや協力できることがあると思います。
純国産のハイブリッド型eVTOLが空を飛ぶ日がそこまで来ています。さあ期待しましょう!
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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