航空機の概念を変える混合翼体 (BWB)

飛行機

皆さんこんにちは!

今、航空機の翼型が大きく変ろうとしています。しかしこれは、30年も前から考えられて

いた事でした。その名は、「混合翼体 (BWB)」!

混合翼体 (BWB)

30 年以上にわたるサブスケール飛行試験と最適化研究を経て、本格的な米空軍の多目的

軍事・商業実証機プログラムの開始により、混合翼体 (BWB) が現実に近づきつつありま

す。高揚力翼と幅広の翼型胴体を組み合わせた BWB は、抗力を最小限に抑えながらスパ

ン全体にわたって揚力を生み出します。しかし、この一見単純なコンセプトを実用的なデ

ザインに変えるのは困難であり、未知の部分が多く、デモンストレーターはその多くに答

えようとします。

1990年代以降、ボーイング、NASAやアメリカ空軍によって、胴体と翼が一体となった

全翼機状の大型機の設計概念がブレンデッドウィングボディもしくはBWBとして盛んに

提唱されています。2007年に無線誘導式の無人実験機X-48Bによる飛行が行われた段階に

すぎないものの、次世代の亜音速-遷音速大型機の設計概念として各学会に影響を与えて

います。また、マサチューセッツ工科大学ではボーイングと共同で2030年までにBWB型

旅客機を開発する計画が進行中です。

このBWBでは、空気抵抗の低減と揚力の発生面積が広いことにより揚抗比が増大し、従

来型の輸送機・旅客機に比べて燃費や搭載量といった点で大幅な改善を期待できるとさ

れています。また、機体表面積や突起物が少ないために騒音の発生を最小限に抑えられる

と考えられています。謳われている特徴をまとめると以下の通り。

利点と欠点
利点
  • 空気力学的効率の向上
抗力の低減に加え、翼のような胴体が有効な揚力を発生させるため、高い揚抗比を
得ることができる。
  • 騒音低減
突起物や表面積を減らしたことによって騒音を低減している。
  • 積載物配置の自由度向上
胴体が幅広いため、従来では困難な形状の積載物を積むことが可能。また同クラス
の航空機と比較して内部空間そのものが大きい。
  • 構造重量低減
機体表面の広い領域で揚力を発生しており、翼のみに揚力が集中せず強度に余裕が
あるため、従来よりも構造を簡略化でき、重量を低減できる(スパン・ローディン
グの発想)。
欠点
  • 積載物への負担増
機体がロール(横転)したとき、機体の左右端に置かれた人や積載物が大きな力
を受けてしまう。
  • 窓側席の減少(旅客機の場合)
窓側の座席数が減り、客席レイアウトに影響する。
  • 胴体構造の耐圧性減少
胴体断面が楕円形であり、機内を与圧した場合に円形に比べて機体内外の圧力差
による力に弱い。
エアバス

エアバスが開発している次世代型航空機、混合翼体 (BWB)(画像:エアバス)

BWBコンセプトに対する国際的な関心は米国外でも高まっています。ヨーロッパに本社を

置くエアバス社は、2017年から混合翼体を真剣に研究しており、2019年にはサブスケー

ルモデルの実験機で飛行試験を開始したことを明らかにしています。

エアバスはこの実験機(全長2m、翼幅3m)のテストにより、実物大では現在の単通路

航空機(エアバス320など)に比較して、燃料消費量を最大20%削減できる可能性がある

としています。

2022年、エアバスはゼロミッション航空機の一環として、BWB設計により水素動力も

視野に入れています。

ボンバルディア

EcoJet設計のBWB(画像:ボンバルディア)

ボンバルディは、EcoJetビジネス航空機の研究に基づいて、一連のサブスケールハイブリッ

ドモデルの飛行試験を行っています。カナダの長期に渡る研究プロジェクトであるグリーン

アビエーション研究開発ネットワーク(GARDN)を通じて最適化されたハイブリッドBWB

には、細身の胴体、U字型の尾翼、特徴的な高アスペクト比の翼で構成されています。

2009年から2021年までに実施されたGARDNプロジェクトは、100人乗りのリージョナル

旅客機を目標にしていましたが、EcoJet設計により、後方に取り付けられたターボファン

エンジンのあるビジネスジェットサイズに縮小されました。

ボンバルディアは、胴体を非円形花瓶の設計オプションを検討中ですが、長距離ビジネス

ジェットのグローバル6500と同等の使用可能容積に制限しています。追加のオプションで

尾翼のないバージョンも用意しています。

NATILUS

最初のモデルであるコナ(画像:Natilus)

カリフォルニア州サンディエゴに拠点を置くNatilus社が設計した遠距離地域用貨物機

は、BWBコンセプトを元に製造、開発されています。

同社の最初のモデルであるコナは、800mの短い滑走路から離陸でき、最大航続距離

900マイル(1500km)、最大速度220ノット(400km/h)、ペイロード9000ポンド

(4080kg)を超える貨物を輸送できるように設計されています。動力は、プッシャー

プロペラでZeroAviaのZA600水素電機エンジンを使用するターボファンエンジンを搭

載予定です。

ジェットゼロ

米空軍はジェットゼロと契約

飛行中のZ-5

ジェットゼロはノースロップ・グラマンと提携し、米空軍の大規模先進タンカー輸送実証機製造プログラムにZ-5を提案(画像:ジェットゼロ)

米空軍はジェットゼロに、軍用および民間航空用途向けの混合翼胴体(BWB)航空機の

本格的な技術実証機の製造と飛行を依頼しました。カリフォルニアの新興企業は8月16日

国防総省の国防イノベーションユニットから2億3,500万ドルの契約を獲得し、ノースロ

ップ・グラマンおよびその子会社であるスケールド・コンポジットと提携して航空機を

開発します。

4年契約の条件に基づいて、ジェットゼロは2027年の第1四半期に技術実証機を飛行させ

る準備が整うと予想されています。国防総省は、新しい軍用空輸機と航空輸送機の要件を

満たす候補としてBWBコンセプトに注目しています。空中給油プラットフォームなど。

同社はすでに、空軍研究所のロケット貨物プログラム、DARPAのリバティリフター、ボー

イングのNASAが資金提供した遷音速トラスブレース翼実証機など、その用途のための他

の選択肢を検討しています。

ジェットゼロによりますと、燃料タンカーとして配備された場合、同社の BWB 航空機は

現在の主力機 KC-46 と同量の燃料を 2 倍の距離にわたって運ぶことになります。あるい

は、KC-46の現在の運用半径に対して2倍の燃料積載を担うこともできると述べています。

航空会社に燃料消費量と排出ガスの50パーセント削減を約束

ジェットゼロはまた、法的拘束力のあるネットゼロ目標を達成するために航空輸送業界が

脱炭素化する必要があることにも目を向けている。この設計は、ボーイングの 757 およ

び 767 輸送機、さらにはエアバス A330 の 200 人以上の乗客を乗せる代替機として提

供する予定です。

同社は今のところ、より環境に優しい新しい推進システムに注力するのではなく、空気力

学における飛躍的な進歩を通じて燃料消費量と二酸化炭素排出量の 50% 削減を達成する

ことを目指して、プラット・アンド・ホイットニーのギア付きターボファン (GTF) エン

ジンを使用する予定です。 同社は、BWB設計の今後のバージョンは新しい水素推進技術

と統合される可能性があると述べています。

プラット&ホイットニーは技術デモンストレーターに GTF エンジンを提供することに同

意し、同社の Gatorworks チームは ジェットゼロのパワートレインの設計と統合を支援

しています。ジェットゼロは、いくつかの航空宇宙企業から支援を受けており、今後数か

月以内にさらなるシステムの選択を発表する予定であると述べています。

ジェットゼロ CEO のトム・オレアリー氏によると、同社はすでに「世界の大手航空会社

の大半と話し合いを行っており、彼らは持続可能性について口先だけの態度をとっている

わけではないため、全般的に熱意を持っている」といいます。同氏は、ジェットA燃料の

消費量を50パーセント削減できる可能性があるということは、ジェットゼロのBWBが新

しい推進技術を待つよりも脱炭素化へのより直接的なルートを提供できることを意味し、

同航空機が「炭素ゼロへの道への最良の第一歩」になると主張しました。同社はまた、

胴体と翼の上に搭載された 2 つのエンジンにより、航空機は現在の旅客機よりも静かに

なると主張しています。

JetZero's blended wing body aircraft

ジェットゼロは、軍用と民間航空の両方BWB コンセプトを提供。(画像:ジェットゼロ)

まとめ

このBWBコンセプトは、30年も前から考えられていたというのは驚きです。

それではなぜ今まで注目されていなかったのでしょうか?それは、世界が脱炭素に向け

て真剣に取り組んでいるからに他なりません。それまでは、いかに多くの人を遠くまで

運べる航空機が求められてきました。今は、いかに二酸化炭素の排出量を抑えて効率的

に飛べるかが求められています。

今後の開発に期待しましょう!

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

 

 

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