皆さんこんにちは!
13日、全日空の航空機の操縦席の窓にヒビが入り、出発地の新千歳空港に引き返しました。
この様な事故は、以外のもよく起きることです。
操縦席の窓ガラスは、パイロットの視界を護り、鳥や雨や雪などの障害物にも負けない強度
とクリーンさが求められています。
今日は、そんなパイロットの命をも守る操縦席の窓ガラスを見ていきましょう。
意外と多い操縦席の破損(ひび)
全日空機、操縦席の窓にひび 新千歳空港に引き返し けが人はなし
13日午前11時25分ごろ、飛行中だった全日空の新千歳発富山行き1182便の操縦席の窓
に亀裂が入っているのが見つかり、引き返した同機は午後0時10分ごろ、新千歳空港に
に着陸しました。乗客59人、乗員6人にけがはありませんでした。
全日空によると、亀裂が入っていたのは6枚並んだ操縦席の窓のうち、右から2枚目の窓。
窓は4層構造で一番外側に異常が見つかりました。同社は乗客に振り替えや返金で対応し、
原因を調べています。
成田行きのベトナム航空機 コックピットの窓にひび
12月26日午後、ベトナムから成田空港に向かっていたベトナム航空の旅客機で、飛行中に
コックピットの窓にひびが入るトラブルがありました。乗員や乗客にけがはなく航空会社
が原因を調べています。
国土交通省成田空港事務所によりますと、26日午後0時半ごろ、ベトナムのホーチミンか
ら成田空港に向かっていたベトナム航空302便、ボーイング787型機が高度1万2000メー
トル余りの上空を飛行中に、コックピットの窓にひびが入ったと航空会社から管制に連絡
がありました。
機体は午後1時半すぎ、成田空港に通常着陸しましたが、コックピットに4枚ある窓のうち、
左から2枚目に全体的にひびが入っているのが確認されたということです。
乗客と乗員合わせて94人にけがなどはなかったということです。
航空会社が窓にひびが入った原因を調べています。
ベトナム航空のB787型機のコックピットの窓ガラスにひび。(画像:NHKニュース)
窓ガラスの構造
旅客機の窓ガラスの構造
航空機の客室の窓は、機体内外の圧力差や温度差に対応できれば良い構造になっています。
ところが、機体の前面に付いているコックピットの窓は話が違います。正面から雨や氷や
鳥などがぶつかってくる可能性がありますので、それに耐えられるだけの強度が必要です。
ボーイング747の場合、最前部(最も機体中心線に近い位置)の2枚は、強化ガラスを3枚重
ねにして、さらにその間に亀裂が広がるのを防ぐための中間層を入れています。要するに
クルマでいうところの合わせガラスです。前から数えて2番目と3番目の窓はそれほど厳重
ではなく、2枚重ねのアクリル樹脂の間に中間層を挟んでいる構造です。
側窓は内側から取り付けてクリップで固定しているが、コックピットの窓は外側から取り付
けてネジで固定していることが多く、そのネジのサイズを間違えて、規定より細いものを使
ってしまったせいで、離陸上昇中に窓ガラスが吹っ飛ぶ事故が起きた事例がありました。
機体の内側から外側に向けて圧力がかかっているのだから、ちゃんと固定しないとそういう
ことになるのです。
また、コックピットの窓は曇り止めのために電熱皮膜を挟んでいます。電気を流すと発熱す
る皮膜で、透明なので外を見るのに不便はない構造になっています。また、コックピットの
窓にはワイパーやウィンドウォッシャーが付いています。
ただし、これは民航機や軍用輸送機の話で、戦闘機になると話が違います。戦闘機だとワイ
パーもウィンドシールドも付いていません。ただし機種によっては、圧縮空気を噴出させて
雨粒を吹き飛ばせるようにしたものもあるようです。
戦闘機のキャノピー
戦闘機の場合、一般的に「キャノピー」と呼ばれているが、正確にいうと2つの部分に分か
れています。つまり、前面にある固定式の「風防」(ウィンドシールド)と、その後部にある
開閉式の「キャノピー」の組み合わせになっていることが多いのです。
F-2戦闘機の場合、固定式の「風防」(写真では左側)と、開閉する「キャノピー」(写真では右側)に分かれている。ベースになったF-16のほうはワンピース型
F-16やF-22やF-35みたいに一体式(ワンピース型)になっているものもある。枠があると
視界を妨げるが、枠がないワンピース型なら視界を妨げません。
F-16のワンピース型キャノピーを例にとると、当初は3/8in(9.53mm)の厚みを持つポリカ
ーボネート樹脂で造られました。ところが量産型では、バードストライク時の安全性を考
慮して、キャノピーの厚みを倍増して3/4in(19.05mm)としました。鳥がキャノピーにぶ
つかった時に内側に膨らむ形で変形してしまい、それがパイロットの頭を直撃して脳震盪を
起こすという指摘があったたです。
そのF-16や、EA-6Bプラウラー電子戦機など、キャノピーが色付きになっている機体があ
ります。日よけのために色をつけている……のではなく、レーダー電波の反射を抑制するた
めだったり、自機が発する強力な電波から搭乗員や電子機器を守るためだったりする目的
があります。F-16やF-35の場合は前者、EA-6Bの場合は後者。
ただ、電磁波をシールドするために金属板を張り巡らせてしまったのでは外が見えなくなっ
てしまいますので、金属素材を蒸着させる方法をとっています。EA-6Bのキャノピーが金
色に見えるのは、金を蒸着させているためです。
フロントガラスの歪みは致命傷
歪みはパイロットの知覚に影響を与える可能性
航空機のフロントガラスの歪みは、滑走路からの高さと距離、空港と滑走路の環境、地形
の分離、意図された垂直または水平飛行経路からの航空機の逸脱に対するパイロットの認
識に悪影響を与える可能性があります。一部の歪みは気が散ることがあり、一部は頭痛や
吐き気を引き起こし、またその他はコックピットの外の物体の認識を変えることによって
誤った動きの合図を引き起こす場合があります。
これらの状況は、計器接近中の IMC での集中計器スキャンから「離脱して視覚に移行す
る」際の視覚参照に移行するとき、または歪みのない画像に完全に依存している地上近く
での操縦中のヘリコプターのパイロットにとって特に重要です。外部環境の。これらの強
力な錯覚により、パイロットは無意識のうちに航空機の軌道を修正する可能性があります。
フロントガラスの光学品質は、製造、材料の選択、メンテナンス、環境変数の影響を受け
ます。光学パラメータは定量化が難しく、これらのパラメータの許容値と許容できない値
の区別には主観が存在します。製造、乱用、誤った取り扱い、航空機のサービス、環境、
不適切な洗浄溶剤への曝露、不適切なメンテナンス、劣悪な素材や不適切な修理技術、ま
たはフロントガラスの除氷システムの故障による欠陥により、フロントガラスの光学的品質
が歪む可能性があります。
フロントガラスの素材
航空機のフロントガラスに主に使用される素材は、ガラス、アクリル、ポリカーボネート
の 3 つです。それぞれに独自の特性があり、メンテナンス者やパイロットが従わなければ
ならない特別な清掃上の注意事項があります。そうしないと、構造的完全性が損なわれた
り、光学的歪みが発生したりする可能性があり、どちらもこの重要なコンポーネントにと
っては許容できません。
ガラス製フロントガラスは主に大型ビジネス航空機や旅客機で使用されており、防氷のた
めの複雑なシステムと、雨をはじくために外面に特殊な疎水性表面コーティングが施され
ています。FAA 勧告回覧 25.771-1「窓とフロントガラス」によると、ガラスは傷や、ワ
イパー動作、溶剤、凍結防止液などの化学的攻撃に対して優れた耐性を持っています。
ガラスのもう 1 つの特性は、加熱または冷却しても急激な変化を示さないことです。急速
に上昇および下降するジェット機は短期間に幅広い温度を経験するため、これは重要な特
性です。
ガラスの欠点には、強度のばらつき、厚さの公差、ノッチ感度の高さが挙げられます。
一般に、ガラスなどの脆性材料は、小さなノッチやガウジによって引き起こされる応力集中
に敏感になる傾向があり、亀裂がさらに進行する可能性があります。パイロットが飛行前に
留意すべき重要な点は、ガラス パネルの強度は、傷、欠け、えぐりなどの表面損傷によって
大幅に低下するということです。
雨による歪み
雨で覆われたフロントガラスは、光の波がフロントガラスを通過する際に歪みます。水深
は航空機の速度、ピッチ、ワイパーなどの雨除去装置の使用状況によって決まり、パイロ
ットの航空機の前方の視認性がさらに低下する可能性があります。フロントガラスが雨で
覆われていると、滑走路の像が歪み、滑走路の位置や航空機の照準点を正確に認識するこ
とが困難になる可能性があります。
日中の状況では、フロントガラスに水がかかると、物体が実際よりも遠くに見える傾向が
あります。パイロットは、自分が計画されている接地点から実際よりも高く、遠いところ
にあると信じてしまうでしょう。その結果、運航乗務員は浅い飛行経路を飛行する傾向が
あります。
夜間の照明条件では、雨によって進入灯システムの見かけの明るさが増し、パイロットの
目が滑走路が実際よりも近くにあるように錯覚します。これにより、ピッチダウン入力が
誘発される傾向があり、滑走路の敷居の手前に着陸する危険性があります。
雨を除去する一般的な方法は、フロントガラス ワイパー、化学雨よけ剤、空気圧雨除去
(エア抜き)、疎水性表面シール コーティングまたは空気力学的成形によるフロントガラス
処理の 1 つまたは組み合わせを利用します。
フロントガラスのワイパーが動くと、ちらつきめまいなどの望ましくない影響が生じる
可能性があります。一部のパイロットはこの影響を受けやすくなります。KLMオランダ航空
の元機長フランク・ホーキンスは、『飛行におけるヒューマンファクター』の中で、「ワイ
パーを必要以上に早く操作すべきではなく、パイロットは必要以上にワイパーを覗き続け
るべきではない」と述べています。
化学忌避剤は少し複雑で、フロントガラスに化学薬品を塗布するのは水をビーズの中に引
き込むことです。ただし、これはフロントガラスの一部のみをカバーします。これにより、
化学忌避剤で覆われた部分と表面の残りの部分との間で画像が歪む可能性があります。この
システムのもう 1 つの欠点は、希釈されていない忌避剤がフロントガラスの視認性を制限す
る可能性があるため、気象条件が非常に湿っている必要があることです。
航空機のフロントガラスへの雨の影響を軽減するもう 1 つの方法は、外部の疎水性コーティ
ングです。コーティングにより雨が玉状になり、その玉が吹き飛ばされるため、ワイパーの
必要性が軽減されます。最終的にはコーティングが薄くなるため、耐久性の低いコーティン
グをフロントガラスに定期的に塗布する必要があります。
空気圧による雨の除去では、加熱されたブリードエアがフロントガラスに吹き付けられます。
ブリードエアがフロントガラスに吹き付けられると、水が小さな水滴に砕かれ、表面から吹
き飛ばされます。屈折率 (歪みと考えてください) は温度によって変化するため、フロント
ガラスの加熱部分と非加熱部分の間の温度勾配が大きいと、局所的な歪みが発生する可能性
があります。
サーモスタットは、ウィンドウの過熱を防ぐためにフロントガラスの加熱システム内に設計
されていますが、他の要素と同様に、これも故障する可能性があります。地上作業中にフロ
ントガラス上に冷却空気が流れずに誤って暖房がオンのままになったり、フロントガラスの
加熱システムが故障したりすると、フロントガラスが過熱する可能性があります。これによ
り、フロントガラス越しに見える独特の波状の歪みが発生します。
進入時にヨーイングやカニ動作(横滑り)が発生すると、滑走路のイメージがさらに歪みま
す。パイロットは、フロントガラスの損傷を防ぐために、フロントガラス加熱システムの制
限を遵守する必要があります。
まとめ
今回のレポートで明らかになったことは、操縦席のフロントガラスは人命を守るだけでは無く
パイロットに大切な特に着陸時の視界をいかに確保できるかということです。
以前、ひびの入った航空機を操縦し無事に着陸させたパイロットからその時の写真を見せて
もらいました。フロントガラス1枚に無数のひびが入っていて到底視界が確保できるものでは
ありませんでした。また構造上、何重にもなっているとはいえ、いつ全損してしまうのかと
いう恐怖があります。
特に、夜間の雨の中の着陸はとても緊張します。ワイパーの激しい音(作動音)も緊張を
高めます。今回のレポートのように、人間の目の錯覚や特性を十分理解しることが必要だと
改めて思いました。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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