ジェット輸送機の単独操縦の問題に新たな概念

飛行機

皆さんこんにちは!

世界的にパイロット不足が問題になる中、現在のように機長、副操縦士という

2人体制ではなくシングルパイロット(1人)の構想が波紋を呼んでいます。

シングルパイロット/セカンドパイロットオプション

航空業界で新たに注目を集めている話題は、旅客機やビジネスジェット機の

操縦室にいるパイロットの数を減らすという構想です。このテーマをめぐっ

ては大手航空機メーカーと航空パイロット組合の間で激しい意見対立が起こ

り、規制当局は安全性と効率性の両方の観点からこの構想の実現可能性を検

討し始めています。

メーカーの観点から見ると、エアバスとダッソー・アビエーションは「全力

で取り組んで」おり、技術を活用してパイロットの数を減らすか、コックピ

ットからパイロットを完全に排除していますが、ボーイングはそのアイデア

にそれほど熱心ではないようです。 ダッソーは、ファルコン 10X の単独

操縦を水平直線巡航のみで検討しています。また、運用中のセスナ、エンブ

ラエル、シーラスの小型ジェット機数千機は、すでに単独操縦の認定を受け

ています。

欧州連合航空安全機関(EASA)はこの案に前向きで、2027年までに長距離

飛行での乗務員削減、2030年以降にはパイロット1人による運航を認める可

能性があるといいます。これまでのところ、FAAはこの件に関して中立的な

立場を保っています。

世界中のパイロット組合が協力して「安全は2人から」キャンペーンを立ち

上げ、乗務員の削減は残ったパイロットの作業負荷を増加させると同時に

「操縦室の2人目のパイロットが提供する重要な監視、相互確認、運用の冗

長性を排除する」と主張しています。パイロット労働組合グループは、パイ

ロット1人による運航に関する共同声明で「これは利益を追求する計画であり

重大な安全上のリスクをもたらす」と述べています。

デルタ航空とユナイテッド航空のパイロットは、最新の契約書で、商業運航中

は操縦室に少なくとも 2 人のパイロットを配置することを明確にしています。

両パイロット グループは、航空パイロット協会 (ALPA) によって代表されて

います。

2023年のEASA報告書によりますと、延長最小乗員運航(eMCO)とシングル

パイロット運航(SiPO)という2つの新しい運航概念が導入されました。

SiPO はエンドツーエンドのシングルパイロット運航として定義されますが、

eMCO の場合、最小限の飛行乗務員による飛行中の休憩によって飛行時間が

延長されます。後者は、巡航飛行フェーズ中に 1 人のパイロットが操縦する

運航を許可することで実現されます。離陸と着陸の際には、両方のパイロット

がコックピットにいます。

したがって、これらの運用中は、「地上支援、作業負荷軽減手段を備えた高度

なコックピット設計、およびパイロット無能力検出」を使用して、パイロット

1 名とパイロット 2 名で同等の安全性が実現されます。

EASA は報告書の中で、パイロットの現在の役割 (パイロット フライト (PF)

またはパイロット モニタリング (PM)) に基づいて、いくつかの危険を特定しま

した。操縦室からパイロットを 1 人排除すると、PM の重要な役割がなくなり

ます。操縦室にパイロットが 1 人しかいないと、エラー管理 (PM がエラーに気

付く) の欠如、脅威管理の低下、状況認識の欠如、疲労と退屈、自己満足、意思

決定の低下、作業負荷管理の問題、生理的欲求 (トイレの使用など) などのその

他の課題が発生する可能性があります。

クリスチャン・シェーラー氏は、2023年にエアバス・コマーシャル・エアクラ

フト社のCEOに任命される前に、AP通信に対し、同社はすでにパイロットなし

で飛行する技術を開発しているとコメントしました。同氏は「いつ大型商用機

に導入できるのか?これは規制当局や顧客と話し合っている問題だが、技術的

には障害はないと考えている」と疑問を呈しました。

2022年初頭、エアバスはフェデックスに2機の新型貨物機、A321FとA350Fを

提案。どちらも乗務員数が少ない。メーカーはA321FにSiPO、A350FにeMCO

を提案しました。A321Fは当初2人のパイロットで運航され、時間をかけてSiPO

の承認に移行する予定でした。OEMはこれを「シングルパイロット/セカンドパ

イロットオプション」と名付けました。

エアバスはA350Fを開発しており、2026年に就航する予定です。同社はまだ新

造のA321Fを発売していません。A321Fの開発に関するエアバスの声明によると

「多くの研究が行われていますが、すべてが日の目を見るわけではありません。」

このアイデアの支持者は、パイロット1人による運航によりコストが下がり、

パイロット不足が緩和されると考えています。一方、これは航法士と航空機関士

の職を廃止した技術と航空機開発の自然な流れだと考える人もいます。

パイロット1人による運航は、一般の旅行者にとって受け入れがたいものとなる

でしょう。コベントリー大学が発表した調査報告書によると、調査回答者のうち

パイロット1人の航空機での飛行に抵抗がないのはわずか12%だった。ALPAの

調査では、回答者の80%が航空機の操縦に2人のパイロットが協力することを好

むことが示されました。

パイロットの無能力化は、乗客にとって当然の懸念事項です。ALPA によると、

FAA は最近 6 年間で 39 件のパイロット無能力化事件(インキャパシテーション

:何らかの状況で操縦が不能となる状況)を報告しました。パイロットの死亡

につながる最も深刻な無能力化事件は心臓発作 (心血管疾患) によるものですが

最も一般的なのは食中毒やアレルギーによる重度の胃腸炎などの胃腸障害です。

エアバスとダッソーは、既知の健康上の問題を抱えるパイロットが操縦席に一人

で座ることを禁止するでしょう。しかし、まずいブリトーやピーナッツアレルギ

ーから身を守るのははるかに難しいのです。どちらも衰弱させる影響を及ぼす

可能性があるからです。

他にも、パイロットの不正行為や自殺などの懸念があります。パイロットも精神

衛生上の問題から逃れられるわけではありません。2015年、ジャーマンウィン

グスのエアバスA320の副操縦士が、機長がトイレに行くためにコックピットか

ら出た後に、故意に機体をフランスアルプスに墜落させ、150人が死亡しました。

パイロット組合は、これらのシングルパイロットコンセプトの開発を、いわゆる

「テントの下のラクダの鼻」と見なしています。欧州での規制承認を提案すれば、

FAA の承認が間近に迫ります。eMCO は SiPO への道を開き、これらのコンセプ

トを最初に貨物機または貨物航空機に導入することで、乗客便への乗務員の削減

導入が緩和されます。

パイロット組合の予測が正しく、これらすべての条件が整えば、輸送機カテゴリ

ーのジェット機での単独操縦が実現するかもしれません。これは根強い話題であ

り、こうした開発のペースは加速しているのも現実です。

まとめ

戦後の民間航空機は、パイロット2名、通信士、航法士、整備士(フライトエンジ

ニア)が搭乗していました。その後、技術の進歩によってパイロットだけになり

ました。私は戦闘機乗りであったので1人乗りには慣れていましたが、民間航空機

は2人の利用に作られています。それぞれ役割があり、特に緊急事態になったとき

は操縦と緊急対処とそれぞれが単独で行わなければなりません。その理由は、

航空機の性能が向上し、システム(機構)が複雑になったからです。何もない状況

では暇ですが、一度故障が起こるとその対処に大わらわです。

『AI副操縦士』という構想もありますが、今後技術が進歩してシングルパイロット

が現実化する可能性は十分あると思います。いろいろな課題はありますが、

パイロット自身も進化(1人乗りの意識改革)を行わなければいけません。

より高い能力が必要なパイロットが必要になるために、必ずしもメーカー側が求め

ているパイロット不足の解消には至らないでしょう。シングルパイロット(機長)

になるには、多くの経験を積まなければならないのです。

また、インキャパシテーション(病気等に用突然の操縦不能)のリスクは人間が

操縦している限りは無くなりませんが。それは、これまでの意識喪失による交通

事故が無くならないことからもおわかりだと思います。それなら、パイロットの

身体検査を厳しくすれば良いという考えもありますが、ますます適合するパイロ

ットがいなくなります。

この様な議論は、まだまだ続きそうです。永遠の課題なのかもしれません。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

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