皆さんこんにちは!
3回目の今日は、LSAが当たり前のヨーロッパからです。その名はエアロスフライトトレーニング。イギリスのスクールです。
エアロスフライトトレーニングは30年の歴史ある老舗ですが、LSAを取り入れることによって現状に合った訓練を行っています。
エアロスフライトトレーニング
エアロスフライトトレーニングは、英国全土に様々な訓練拠点を設けており、それぞれ独自の環境を提供しています。
同スクールは、イギリスで30年以上の歴史を持つ老舗のフライトスクールであり、UK CAA
(英国民間航空局)およびEASA(欧州航空安全機関)承認の、Private Pilot Licence
(PPL) からModular Commercial Pilot Training (モジュラー方式の事業用操縦士訓練)
までを提供するパイロット養成機関です。イギリス国内に複数の拠点を持ち、その現代的なアプローチと最新機材の導入で知られています。
「モジュラー方式(Modular Training)」とは、パイロットの訓練を複数の独立した「モジ
ュール(段階、単位)」に分割し、それぞれのモジュールを個別に受講してライセンスや資格を取得していく訓練形態のことです。
特に働きながらパイロットのライセンスを取得する人などは、自分のペースで訓練ができる
メリットがあります。経済的な負担を分散したい、または総費用を抑えたい人向けです。
1. エアロスフライトトレーニング の概要と特徴
- 豊富な実績と歴史: 1986年設立以来、30年以上にわたりイギリスのパイロット訓練を支え、数多くの卒業生を世界中の航空会社(ブリティッシュ・エアウェイズ、エミレーツ航空、ライアンエアーなど)に送り出しています。
- 「モジュラー方式」訓練の提供:
- モジュラー方式とは、パイロットライセンスの各段階(PPL、計器飛行証明、事業用操縦士など)を独立したモジュールとして受講できる柔軟な訓練形態です。これにより、学生は自分のペースや予算に合わせて段階的に訓練を進めることができます。
- エアロスは、このモジュラー訓練の分野でヨーロッパをリードするプロバイダーの一つとされています。
- 複数の拠点:
- カーディフ(Cardiff)、グロスター(Gloucester)、ウェルズボーン(Wellesbourne)、リーズ・イースト(Leeds East)など、イギリス国内に複数の訓練拠点を展開しています。これにより、学生は自身の住居や都合に合わせて訓練場所を選ぶことができます。
- 最新の機材と設備:
- 現代のパイロット養成に不可欠な最新の航空機材(グラスコックピット搭載機を含む)と、高度なフライトシミュレーター(例: ALSIM DA42 Simulatorなど)を導入しています。
- 「State-of-the-art facilities and modern training fleet:最先端の施設と最新の訓練機」と謳っており、常に最新の技術を取り入れる姿勢が見られます。
- 高い合格率: 個別指導を重視し、コースを学生一人ひとりに合わせて調整することで、高い初回試験合格率(100% first series pass rate)を達成していると公言しています。
- 幅広いコース提供: PPL、LAPL、夜間飛行、計器飛行証明(IR)、多発限定、事業用操縦士免許(CPL)、フライトインストラクター(FI)など、様々な飛行訓練とATPL(航空会社運送用操縦士)の学科訓練を提供しています。
2. LSA / LAPL対応機材の導入と活用
エアロスフライトトレーニングが重要なのは、LAPL(Light Aircraft Pilot Licence)コースを提供し、LSAに準ずる機材を練習機として活用している点です。
- LAPLコースの提供:
- エアロスは、EASA(欧州航空安全機関)が定めるLAPL(A)(Light Aircraft Pilot Licence for Aeroplanes)の取得コースを提供しています。
- LAPLは、PPL(自家用操縦士免許)よりも短い訓練時間(最低30時間)と、緩い身体検査要件(EU Class 2 Medical Certificate or LAPL Medical Certificate、かかりつけ医による審査が可能)で取得できる免許です。これにより、より多くの人が手軽に飛行を楽しめるようになっています。これは日本のLSAパイロット制度を考える上で非常に参考になります。
- テクナム P2002JF Single Trainerの導入:
- エアロスは、練習機材としてテクナムP2002JFなどの機体を使用しています。Tecnam P2002JFは、イタリアのTecnam社が製造する2人乗りの軽飛行機で、LSA規格にも合致するモデルがあり、低コストで運用できるため、PPLやLAPLの初期訓練に広く使われています。
- (注釈:以前LSAの例で挙げたテクナムP-Mentorは、P2002JFの後継機であり、エアロスが最新機材として導入を進めているものです。エアロスの機材リストにはP2002JFが明記されており、P-Mentorへの移行も進めていると考えられます。)
- エアロスは、練習機材としてテクナムP2002JFなどの機体を使用しています。Tecnam P2002JFは、イタリアのTecnam社が製造する2人乗りの軽飛行機で、LSA規格にも合致するモデルがあり、低コストで運用できるため、PPLやLAPLの初期訓練に広く使われています。
- LSA(LAPL対応機)導入のメリット:
- 訓練コストの削減: LSAに準ずる機材は、運用コスト(燃料費、整備費など)が従来の小型機よりも低いため、訓練費用を抑えることができます。
- アクセシビリティの向上: LAPLコースとLSA対応機材の組み合わせは、「空を飛ぶこと」への心理的・経済的ハードルを下げ、より多様な層の訓練生を呼び込むことを可能にしています。
- 現代的な訓練環境: 最新のLSAはグラスコックピットを搭載していることが多く、訓練生は最初から現代航空機のシステムに慣れることができます。
テクナム P2002JF
テクナム P2002JF Sierraは、イタリアの航空機メーカーであるTecnam(テクナム)社が
製造する、2人乗りの軽飛行機です。LSAカテゴリーにも適合する設計がなされており、その
優れた操縦性、経済性、そして堅牢な構造から、世界中のフライトスクールで練習機として、
また個人パイロットのレクリエーション用機体として広く採用されています。
「JF」は「J-fixed」を意味し、固定式のランディングギア(着陸装置)を持つモデルであるこ
とを示しています(「RG」は引き込み式ランディングギア)。固定式は訓練機としてよりシンプルで丈夫、運用コストも低いというメリットがあります。
1. テクナム P2002JF Sierra の概要と特徴
- 信頼のTecnam製: Tecnam社は、1948年創業の歴史ある航空機メーカーで、小型機からリージョナル機まで幅広い航空機を製造しており、その高い品質と信頼性は世界中で評価されています。
- 堅牢なオールメタル構造: 主にアルミニウム合金(軽合金)製のモノコック構造を採用しており、耐久性が高く、メンテナンスや修理も比較的容易です。これは、訓練機として日常的に使用される環境下で非常に重要な特性です。
- 優れた操縦性: 多くのパイロットが、P2002JFの素直で応答性の良い操縦性を高く評価しています。安定性と俊敏性のバランスが取れており、初心者パイロットの訓練に最適です。
- 広いコックピットと視界: 2人乗りとしては比較的広いコックピット空間が確保されており、長時間のフライトでも快適性が保たれます。また、バブルキャノピー(泡状の風防)が優れた全周視界を提供し、特に訓練飛行における状況認識能力を高めます。
- 経済的な運用: 自動車用ガソリン(MOGAS)の使用が可能なRotaxエンジンを搭載しており、燃費効率も良いため、運用コストが低く抑えられます。これはフライトスクールや個人オーナーにとって大きなメリットです。
- 最新のアビオニクス対応: 従来の計器(アナログ計器)と、Garmin G3X TouchやDynon SkyViewなどの最新のグラスコックピット(多機能ディスプレイ計器)の両方に対応しており、訓練スクールのニーズに合わせて選択できます。
2.テクナム P2002JF Sierra の主要性能諸元(代表的なRotax 912S/ULSエンジン搭載モデルの場合)
P2002JFは主にRotax 912Sまたは912ULS(いずれも100馬力)エンジンを搭載しています。以下は、これらのエンジンを搭載したモデルの概算性能です。
項目| 性能値(概算) | 解説
| 最大離陸重量 (LSA) | 600 kg (1,320 lbs) | LSAの規制に準拠した最大離質量。軽量な設計が特徴。
| 座席数 | 2席 | パイロットと乗客(訓練生)1名。 |
| エンジン | Rotax 912S / 912ULS (100 hp) | 世界中で信頼性の高いオーストリア製エンジン。自動車用ガソリン(MOGAS)が使用可能。 |
| 巡航速度 | 約115ノット(時速約213 km) | LSAとしては非常に優れた速度性能。長距離移動も比較的快適。 |
| 最高速度 (Vne) | 143ノット(時速約265 km) | 超過禁止速度。 |
| 失速速度 | 約40ノット(フラップ全開時) | 低速での安定性が高く、安全な離着陸が可能。 |
| 上昇率 | 約900-1,000フィート/分(海面高度、最大離陸重量) | 十分な上昇性能を持ち、短い滑走路からの離陸にも対応。 |
| 航続距離 | 約590ノーティカルマイル(約1,090 km) | 約100リットルの燃料を搭載可能で、十分な航続距離。 |
| 燃料消費量 | 約18-20リットル/時(巡航時) | Rotaxエンジンの高い燃費効率により、経済的な運用が可能。 |
| 離陸距離 | 約200m(650フィート)(海面高度、最大離陸重量) | 短い滑走路でも運用可能。 |
| 着陸距離 | 約180m(590フィート)(海面高度、最大離陸重量) | 短い滑走路での着陸も容易。
| | 翼幅 | 8.70m | | | 全長 | 6.62m | | | 全高 | 2.43m | |
| アビオニクス | アナログ計器またはグラスコックピット(Garmin G3X Touchなど) | 訓練ニーズに合わせて選択可能。 |
| 操縦系統 | コントロールスティック(サイドスティック) | 操縦性に優れ、自然な操作感。 |
3. テクナム P2002JF Sierra がフライトスクールで選ばれる理由
- 訓練の最適性: 素直な操縦特性と高い安定性、そして良好な視界は、初心者パイロットが飛行原理や操縦技術を習得する上で理想的です。
- 経済性: 低い機体価格、自動車用ガソリンの使用、優れた燃費、そして堅牢な構造による低いメンテナンスコストは、フライトスクールの運用費用を大幅に削減し、結果として訓練費用を抑えることにも繋がります。
- 安全性: 高い信頼性を持つRotaxエンジン、低い失速速度、そして堅牢な構造は、訓練機として重要な安全性を確保しています。一部のモデルには、機体全体を回収するパラシュートシステム(BRS)も搭載可能です。
- 近代的なコクピット: グラスコックピットの選択肢があることで、学生は最初から現代の航空機(エアライン機など)で主流となっている計器システムに慣れることができます。
まとめと解説
エアロスフライトトレーニングは、イギリスにおいて長年の実績と信頼を誇りながらも、時代
に合わせてLSA(LAPL対応機)や最新技術を積極的に取り入れることで、よりアクセスしやす
く、効率的で、現代的なパイロット養成を提供している模範的なフライトスクールと言えます。
イギリスのエアロスフライトトレーニングのように、歴史あるスクールでも、より手軽な
『LAPL』という免許に対応し、テクナムのようなLSAに準ずる機体を積極的に導入すること
で、多くの人がパイロットになる夢を追いかけています。LSAが国際的なパイロット養成の主流の一つとなっているのです。
また将来の商業パイロットとしての訓練、座学なども行っています。ATPL(航空運送事業
操縦士免許)理論コースは、パイロットを目指す人々に商業航空業界でのキャリアを追求する
ために必要な包括的な知識を提供することを目的とした13の必須科目で構成されています。
これらの科目はEASA(欧州連合航空安全局)およびCAA(民間航空局)の基準に準拠しており、航空会社の運航に不可欠な理論的要素を網羅しています。
しかし、全てのパイロットがエアラインのような商業パイロットを目指しているわけではあ
りません。あくまでも個人を尊重し、個人に合ったトレーニングができることがこのスクールの魅力でもあります。
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