FAA、オシュコシュのイベントでモザイクの最終規則を発表

LSA 軽スポーツ航空機

皆さんこんにちは!

前回の記事『新ルール「MOSAIC」は本当に救世主なのか?』で取り上げましたモザイクについてFAAの関係者が正式に発表しました。

『最終報告書』の全文の要点を訳してみました。

モザイクは重量制限を撤廃し、スポーツパイロットがより複雑な航空機を操縦できるようにする

ショーン・ダフィー運輸長官

ショーン・ダフィー米国運輸長官は7月22日の記者会見で、EAAエアベンチャー・オシュコシュショーで新しいモザイク規制を紹介した。©運輸省

ウィスコンシン州オシュコシュで開催されたEAAエアベンチャーショーの記者会見で、

ショーン・ダフィー運輸長官とFAA副長官クリス・ロシュローは24日、FAAが特殊耐空証明

の近代化(モザイク)規則の最終版を公表したと発表しました。モザイク規則は、2004年に

施行された軽スポーツ機規則を改正するものです。この規則には、機体重量の上限が

1,320ポンド(600kg)に制限されていたことや、電動機の明確な認可がなかったことなど、大きな制限がありました。

「アメリカの創意工夫を解き放つことを発表するのに、米国最大の一般航空ショー以上にふさ

わしい場所は考えられません」とダフィー氏は述べました。「この新しい規則は、レクリエー

ション航空分野におけるより優れた設計、より安全な素材、そして最新技術の推進につながる

でしょう。レクリエーションパイロットや航空機メーカーは、時代遅れの規制がイノベーショ

ンと安全性を阻害していることを正しく認識していました。もう終わりにしましょう。この業界を新たな時代へと導いていきましょう。」

モザイクは、新しいパイロット権限、制限付きカテゴリの航空機の特別目的の運用、修正され

た実験用航空機の運用制限など、軽スポーツ航空機の製造、認証、運用、保守、改造を扱っています。

FAA によると、「2004 年の最終規則以来の軽スポーツ カテゴリーの航空機の良好な安全

記録は、その規則で確立された認証要件を実証し、軽スポーツ カテゴリーの航空機と運用の

認証範囲の拡大を支持するものです…FAA は、実験用航空機か軽スポーツ カテゴリーの航空

機のどちらかを選択しようとしている航空機所有者に、安全性の連続体でより高く、したがっ

てより厳しい航空機認証要件を満たす軽スポーツ カテゴリーの航空機を選択するよう奨励す

ることで、レクリエーション航空の安全性を高めるためにこれらの拡大を意図しています。」

「FAAはまた、この規則により、安全性向上設計の妨げとなっている軽スポーツカテゴリーの

航空機に対する規定の重量制限を撤廃し、新たな設計、製造、耐空性要件を採用することで、

軽スポーツカテゴリーの航空機の安全性を高めることも意図しています。」

モザイク規則の下、スポーツパイロットは最大4座席の航空機を操縦できますが、搭乗者数は

2名までに制限されます。この規則により、いわゆる「簡易飛行制御」の採用が可能になり

例えば、従来とは異なるフライ・バイ・ワイヤ方式のシングル・コントロール・スティック

操作などが含まれる可能性があります。この規則に基づく新たな権限には、ヘリコプターの

操縦、夜間飛行、格納式着陸装置を備えた航空機、定速プロペラを備えた航空機が含まれま

す。重量と動力装置に制限はなく、これは先進的な航空移動航空機に影響を与える可能性が

あります。この規則は、巡航速度と最大失速速度の制限も改正します。失速速度は、動力飛行機の場合は61ノット、グライダーの場合は45ノットです。

軽スポーツ機修理士資格保有者は、アマチュア製作の実験機の状態検査を実施できるように

なります。FAAによると、「この規則は、製造業者が発行する安全指令の要件と、軽スポーツ

カテゴリーの航空機の修理および改造の実施要件も改訂します」とのことです。整備等級認定

訓練コースは、規定の時間ベースの要件から、FAAの整備士航空士認定基準に基づく実技基準に変更されます。

モザイクにおける大きな変更点は、軽スポーツ機がメーカーの安全指令に準拠することを義務

付ける規則が廃止されたことです。既存のFAA規制に基づく整備要件は引き続き満たす必要が

ありますが、メーカーの安全指令は義務ではなくなります。また、軽微な修理や改造にはメーカーの承認は不要となります。

モザイクの対象となる軽スポーツ機は、「インフラや森林の点検、写真撮影/撮影、農業監

視」を含む、有償または有償の航空作業業務に従事する資格を有します。航空作業には、空中ツアーは含まれません。

スポーツパイロットおよび軽スポーツ修理工に対するモザイク規則は最終規則の公布後 90 日

で発効し、軽スポーツ航空機の認証規則は最終規則の公布後 365 日で発効します。

「公示では1,300件を超えるご意見を拝見しました。この規則策定にご協力いただいた業界の

皆様に感謝申し上げます」とロシュロー氏は述べています。「これは、政府と業界が協力して

理にかなった規則、官僚主義を解消し安全性を高める規則を策定したことの素晴らしい証で

す。なぜなら、それが私たちの日々の使命だからです。モザイクは、最高の安全基準を維持

しながら、レクリエーション、訓練、そして航空業務において、安全で最新かつ手頃な価格の航空機へのアクセスを拡大します。」

最終報告書(本文)要約

新時代のライトスポーツ航空機へ!FAA「MOSAIC最終規則」で空の遊び方が激変!

2025年7月18日、米国連邦航空局(FAA)は、ライトスポーツ航空機(LSA)に関する規

を大きく変える「特別耐空証明の近代化(Modernization of Special Airworthiness

Certification, 略してMOSAIC)最終規則」に署名しました 。これは、レクリエーション航空

飛行訓練、さらには一部の航空業務において、より安全で現代的、そして手頃な価格の航空機

を普及させることを目的とした、まさに「空の未来を変える」画期的な変更です。

これまでのLSAの課題とMOSAICがもたらす変化

従来のLSAは、その特性から運用や設計に多くの制限がありました。例えば、機体の重量制限

や座席数、速度などの規定が厳しく、技術革新や安全性の向上を阻害する側面もありました。

しかし、2004年にLSAに関する最初の規則が制定されて以来、LSAの安全実績は非常に良好であり、この実績が今回の規則改正の大きな後押しとなりました

MOSAIC規則の導入により、LSAは以下のような大きな進化を遂げます。

性能向上:

  • 速度アップ: より高速での飛行が可能になり、個人旅行での利便性が向上します
  • 失速速度の緩和: 航空機の失速速度に関する制限が緩和され、より多様な設計の航空機がLSAカテゴリーに認定されるようになります
  • 搭載能力の拡大: より多くの乗客、燃料、貨物を搭載できるようになります 。将来的には4人乗りLSAも登場する可能性が出てきますが、現時点ではスポーツパイロットの同乗者は1名までに制限されます
  • 設計の自由度向上: 従来の重さ制限が撤廃され、設計者はより安全性を高めるための構造強化や装備の追加が可能になります 。これにより、より頑丈で多機能なLSAの製造が可能となります。
  • 多様な航空機タイプ: ロータークラフト(ヘリコプターなど)やパワード・リフト(垂直離着陸機など)もLSAカテゴリーに含めることが可能になります 。電動などの代替推進システムも認められ、環境に優しい航空機の開発が進むでしょう
  • 新技術の導入: 引き込み式着陸装置や定速プロペラ、簡易型フライトコントロールなどを備えたLSAも登場し、より高性能で使いやすい機体が普及します
スポーツパイロットの特権も拡大!

航空機だけでなく、LSAを操縦するスポーツパイロットの特権も大幅に拡大されます

・夜間飛行の許可: 特定の訓練と認証を受ければ、夜間飛行が可能になります

・ヘリコプターの操縦: スポーツパイロットがヘリコプターを操縦できるようになります

・高性能機の操縦: 引き込み式着陸装置や定速プロペラを備えた航空機、さらには高性能な飛行機も操縦できるようになります

これらの新しい特権は、適切な訓練と承認を得ることで利用可能となります
整備士の役割拡大とその他変更点

LSAの拡大に伴い、ライトスポーツ整備士の認定範囲も広がります。これにより、新しく拡大

されたLSAカテゴリーの航空機全般を整備できるようになります 。また、実験用航空機や制限

カテゴリーの航空機に関する運用規則も改訂され、宇宙支援機の飛行を許可するなどの変更も含まれます

安全性の重視と今後の展望

今回のMOSAIC規則は、単に規制を緩和するだけでなく、安全性の向上を最優先にしていま

。FAAは、より厳しい認証要件を満たすLSAの選択を促すことで、レクリエーション航空全体の安全性を高めることを目指しています

この規則により、航空愛好家はこれまで以上に多様で高性能な航空機を手に入れることができ

飛行訓練の機会も拡大し、空の楽しみ方が大きく広がるでしょう。新しいLSAが空を飛び交う日が待ち遠しいですね!

まとめと解説

FAAが発表したMOSAIC最終規則は、航空機の性能向上と市場拡大を目指すものですが、実際

に航空機を運用するパイロットやオーナー側から見ると、いくつかのデメリットや移行に伴う問題点が指摘されています。

使用者(パイロット・オーナー)側から見たデメリット
  1. コストの増加:
    • 機体価格の上昇: MOSAICルールによって、より大型で高性能なLSA(引き込み式着陸装置、可変ピッチプロペラ、より強力なエンジン、多座席など)が市場に登場します。これらの先進的な機能や複雑なシステムは、製造コストを高めるため、必然的に機体の販売価格も高くなります。従来のLSAの「手頃な価格」という魅力が薄れる可能性があります。
    • 訓練費用の増加: 高性能化・複雑化したLSAを安全に操縦するためには、より高度で専門的な訓練が必要となります。これにより、スポーツパイロット資格取得にかかる訓練時間や費用が増加する可能性があります。
    • 維持・運用コストの上昇: 複雑なシステムやより強力なエンジンは、メンテナンスや部品交換の頻度が増えたり、専門的な技術が必要になったりするため、整備費用が上がります。また、保険料も、機体価格の上昇や性能の向上に伴って高くなる傾向があります。
  2. 操縦と整備の複雑化:
    • 操縦の難易度上昇: 従来のLSAはシンプルな操縦が魅力でしたが、MOSAIC対応機は速度が速くなり、引き込み脚などのシステムが増えるため、操縦の難易度が上がります。これは、初心者パイロットにとっては新たな壁となる可能性があります。
    • 整備の手間と専門性: 以前はオーナー自身が簡易な整備を行える範囲が広かったLSAですが、新しい高性能機では、より専門的な知識やツール、資格を持つ整備士に頼る必要が増えるでしょう。
  3. 「シンプルなLSA」の選択肢の希薄化:
    • 市場がより高性能な機体にシフトすることで、従来のようなシンプルで安価、そして維持費用が抑えられるLSAのモデルが、メーカーの生産ラインから減っていく可能性があります。これにより、手軽に航空を楽しみたい層にとっては、選択肢が限定されるかもしれません。
移行への問題点
  1. 既存パイロットの再訓練と資格のギャップ:
    • MOSAICルールが導入されても、既存のスポーツパイロットが自動的に高性能なLSAを操縦できるようになるわけではありません。夜間飛行や計器飛行、引き込み式着陸装置などの新しい特権を利用するためには、追加の訓練と認証が必要になります。この移行期間において、必要な訓練体制や教官の確保がスムーズに進むかどうかが課題です。
    • 訓練施設側も、新しい基準に対応した機材やカリキュラム、認定の取得に時間とコストがかかります。
  2. インフラ(飛行場・整備工場)の対応不足:
    • より大きく、速いLSAが増えると、現在の小規模なLSA用飛行場や私有飛行場の設備では対応しきれない場面が出てくるかもしれません。滑走路の長さや舗装、格納庫のサイズなどが問題となる可能性があります。
    • 高性能化したLSAに対応できる整備工場や、専門的なトレーニングを受けた整備士の数が、需要に追いつかない可能性があります。
  3. 市場の混乱と価格変動:
    • 移行期間中は、旧基準のLSAと新基準のMOSAIC対応LSAが混在し、購入者にとってはどちらを選ぶべきか混乱が生じる可能性があります。
    • 市場全体の価格帯も、新たな高性能機の登場によって変動し、中古市場にも影響を与えることが考えられます。

これらの問題点は、MOSAICルールが航空業界にもたらす「痛みを伴う成長」の一側面と言え

るでしょう。FAAは安全性を重視しつつこの移行を進めようとしていますが、最終的にユーザ

ーが享受するメリットと、これらのデメリットや課題のバランスがどのように取られるかが注目されます。

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