皆さんこんにちは!
化石燃料でもない、全て電気でもないそんな新しいエンジンが羽ばたこうとしています。
それは、水素を使って電気をおこす水素電気です。この技術ははたして実現できるのでしょうか?
アドベント・テクノロジーズとストラリス、水素電気飛行の推進に向けた提携を発表
燃料電池および水素技術分野のリーダーであるアドベント・テクノロジーズ・ホールディ
ングスは、オーストラリアに拠点を置くストラリス・エアクラフト社の水素電気航空機
ビーチクラフト・ボナンザ向けに、同社独自の膜電極アセンブリを供給するとプレスリリースで報じました。
リリースでは、「水素電気推進(HEP)システムは、既存の航空機エンジンに比べて可動
部品が少なく、低温で作動するため、エンジンのメンテナンスコストを40~60%削減
できると予測されています」と説明されています。
さらに、「HEPシステムは、既存の電動航空機やeVTOLのバッテリーを交換したり、
ピストン式またはターボプロップ式の航空機に後付けしたり、白紙設計に組み込んだり、
大型航空機の補助動力装置として利用したりすることもできる」としています。
水素推進システム
アドベントのCTO、エモリー・デ・カストロ氏は、「当社の次世代高温膜電極アセンブリは
燃料電池の不可欠な部分であり、この技術により、小型のラジエーターでエンジンを効率的
に冷却できるようになり、機体の重量と抗力が軽減されます」とコメントしています。
ストラリスのCTO兼共同創設者であるスチュアート・ジョンストン氏は、「この技術の
おかげで、当社のシステムは既存の代替システムよりも大幅に軽量化されており、これは
航空機に求められる要件です。これにより、当社の航空機はバッテリー式電気ソリューショ
ンの10倍以上もの距離を飛行でき、化石燃料を動力源とする航空機よりも低コストで飛行
できるようになります。すでに水素電気推進システムの地上試験を実施しており、今年後半
には6人乗りの技術実証機の初飛行を達成する予定です」と付け加えました。
「水素電気推進(HEP)」システム
アドベント・テクノロジーズ・ホールディングスは、燃料電池や水素技術を開発している
会社です。彼らの「水素電気推進(HEP)」システムは、飛行機や車を動かすためのクリーンなエネルギーを生み出す仕組みです。
まず、乗り物の中にある「燃料電池」という特別な箱に、2つのものが送られます。 1つは
とてもクリーンな燃料である水素ガス。 もう1つは、空気中の酸素です。
この2つが燃料電池の箱の中で出会うと、不思議なことに、電気と水が生まれます。
水はそのまま外に出すことができ、地球にやさしいですね。そして、生まれた電気でモーターを動かし、飛行機や車を走らせます。
つまり、有害な排気ガスを出す代わりに、水だけを出す、環境にとてもやさしいシステムなのです。
アドベント・テクノロジーズ・ホールディングス
企業歴史
アドベント・テクノロジーズ・ホールディングスは、2005年に創業者であるバシリス・
グレゴリウ博士らによって設立されました。当初は主に、燃料電池の核となる部品である
高温プロトン交換膜(HT-PEM)技術の開発に焦点を当てていました。この技術は、高い
温度下でも効率的に機能し、さまざまな燃料を使用できるという特徴を持っています。
同社は、定置型電源やポータブル電源市場で事業を展開してきましたが、近年はモビリティ
分野への進出を加速させています。特に、航空機、自動車、防衛、船舶といった分野での
応用を目指し、大手企業との提携も進めています。
企業業績
近年、同社の業績は変動していますが、いくつかの重要な進展が見られます。
- 収益と損失: 過去の決算報告によると、収益は増減を繰り返していますが、営業損失や純損失が続いています。しかし、コスト削減や戦略の合理化により、損失幅は縮小傾向にあります。
- 財務目標: 同社は2025年末までに損益分岐点(収支がプラスマイナスゼロになること)を達成することを目標としています。
- 技術提携と資金調達: エアバス、ヒュンダイ、米陸軍といった大手企業との連携や、政府からの研究開発助成金を得ることで、技術開発と事業拡大を進めるための資金を確保しています。
- 主な成果:
- オーストラリアの航空機会社Stralis Aircraft(ストラリス・エアクラフト)に、水素電気推進システム向けの膜電極アセンブリ技術を供給しています。
- 複数の政府系プロジェクトから資金を獲得しており、将来の成長に向けた基盤を築いています。
現時点ではまだ黒字化には至っていませんが、同社は技術的な強みと戦略的な提携を通じて
水素燃料電池市場での存在感を高めるべく活動を続けています。
水素電気推進システムは実現可能か?
現実性
アドベント・テクノロジーズの水素電気推進(HEP)システムは、現実的な技術と見なされ
ています。特に、同社の強みである高温プロトン交換膜(HT-PEM)燃料電池は、航空機や
自動車といった用途において、以下の点で優位性を持っています。
- 高温作動: 従来の燃料電池よりも高い温度で動作するため、システムの冷却がしやすくなり、冷却装置を小型化できます。これにより、航空機のように重量が重要になる乗り物にとって大きな利点となります。
- 燃料の多様性: 高温で動作するため、水素だけでなくメタノールなどのさまざまな液体燃料からも水素を取り出して利用できます。これは、水素インフラが未整備な地域でも運用できる可能性を示しています。
- 高効率と安全性: 可動部品が少なく、より低温で動作するため、メンテナンスコストが削減できる可能性があります。また、水素はガス漏れしても大気中に拡散しやすいため、特定の条件下ではガソリンよりも安全性が高いという見解もあります。
コストとリスク
一方で、この技術が普及するまでにはいくつかの課題とリスクも存在します。
- コスト:
- 製造コスト: 燃料電池の製造には高価な材料が必要であり、バッテリーと比較して製造コストが高くなる可能性があります。
- インフラ整備コスト: 水素を供給するためのインフラ(水素ステーションなど)を整備するには、莫大な初期投資が必要です。
- リスク:
- 技術的な課題: 高温での耐久性や、長期間にわたる信頼性の確保など、技術的な課題がまだ残っています。
- 規制と認証: 航空機など特定の分野で商用利用するためには、厳格な安全基準や認証をクリアする必要があります。これには長い時間と多大な費用がかかります。
- 市場競争: バッテリー電気推進や持続可能な航空燃料(SAF)など、他の代替技術との厳しい競争にさらされています。
全体として、アドベント・テクノロジーズの技術は有望なものですが、商業的な成功には
コスト削減とインフラ整備、そして何よりも安全性の証明が鍵となるでしょう。
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