テキストロン、電気飛行機部門からの撤退?

ドローン、空飛ぶ車

皆さんこんにちは!

電気航空機ピピストレル・ヴェリス・エレクトロを開発した、テキストロン・イーアビエー

ションは、同事業部門を閉鎖し、同部門の電気航空機および従来型航空機事業を他の子会社

に再配分することを、10月17日に発表しました。

これにより世界の電気航空機の開発は、大きく遅れることに・・・

テキストロン、eAviation部門の事業撤退を発表

テキストロン社は、テキストロン・イーアビエーション事業部門を閉鎖し、同部門の電気

航空機および従来型航空機事業を他の子会社に再配分することを、10月17日に証券取

引委員会(SEC)に提出しました。テキストロン・イーアビエーションを独立した

報告セグメントから除外する計画は、テキストロン社経営陣によって10月16日に承認され、2026年1月4日の会計年度開始時に発効します。 

提出書類によると、ピピストレルブランドを含むテキストロン・イーアビエーションの事業

の大部分は、テキストロン・アビエーションに吸収されます。テキストロンが2022年に

イーアビエーション部門を立ち上げた際に買収したピピストレルは、世界初の型式認証を

取得した完全電動飛行機「ヴェリス・エレクトロ」、モーターグライダー、そしてEASA

CS-23認証取得中の高性能ピストン単発機「パンテーラ」などの複合材製軽飛行機を

製造しています。また、ハイブリッド電動VTOL多用途ドローン「ヌーヴァ」シリーズや、

特殊任務用プラットフォーム「サーベイヤー」の開発も手掛けています。

テキストロン・イーアビエーション傘下の防衛関連事業は、コングロマリットの防衛事業

部門であるテキストロン・システムズに移管されます。「同部門は、これらの製品のター

ゲット顧客基盤へのより直接的なアクセスを提供するのに最適である」と申請書には記

されています。これは、ヌーヴァとサーベイヤーの開発プログラムが、既に軍用ドローン

を製造しているテキストロン・システムズの下で継続される可能性を示唆しているのです。 

テキストロン・イーアビエーションのデジタル飛行制御および航空機管理システムに関する

研究開発活動の一部は、「当社の複数の事業部門に利益をもたらすと期待しており、コーポ

レート費用として計上される」と、同社は報告書で述べています。これらの活動は、同社が

2024年5月にドイツのエンジニアリング会社甘地リア・エアロスペースを買収したことに端を発しています。

注目すべきは、SECの報告書がテキストロン・イーアビエーションのNexus eVTOLプロ

グラムについて言及していないことです。同社は今年初めにこのプログラムの進捗を減速

させたと発表していました。4人乗りでパイロット1名が操縦するこの航空機は、今年中に初の有線飛行を達成する予定でした。 

同社は、Nexusプログラムの今後や事業再編に伴う人員削減の可能性に関する質問に直ちに

回答しませんでした。再編後、テキストロンはテキストロン・アビエーション、ベル、

インダストリアル、テキストロン・システムズ、ファイナンスの5つの報告セグメントに分かれることになります。

テキストロン eAviation Nexus eVTOL航空機

計画中の4人乗りのNexus eVTOL航空機のフルスケール技術デモンストレーター

 

オシュコシュのピピストレル ヴェリス エレクトロ

ピピストレル社のヴェリス・エレクトロは、認定電気航空機として初めて市場に投入されました。© AIN/マット・サーバー

eVTOLの熱狂から現実へ:なぜ航空大手テキストロンは専門子会社を廃止したのか?

2020年代初頭、「空飛ぶクルマ」(eVTOL)は、航空宇宙業界における最大の夢でし

た。しかし、最近、この夢の実現を目指していた巨大な航空コングロマリット、テキストロンが大きな組織再編を発表しました。

電動航空機部門の専門子会社であった「テキストロン・イーアビエーション」を解体し、既存の部門(ベルやセスナ)に統合するというのです。

これは、単なる組織変更ではありません。eVTOL開発が直面している「現実の壁」を物語る、業界全体への強いメッセージです。

壁その1:甘くなかった「認証」と「開発」の現実

eVTOL業界は当初、2025年頃の商業運行開始という非常に楽観的な目標を掲げていまし

た。しかし、イーアビエーションの廃止は、その計画が現実的でなかったことを示しています。

  • 終わらない認証の戦い: eVTOLは、ヘリコプターでも固定翼機でもない「新しい乗り物」です。そのため、FAA(米連邦航空局)やEASA(欧州航空安全機関)は、安全性を確保するための新しいルール作りから始めなければなりません。この安全基準の確立と認証期間の長期化が、開発スケジュールを大幅に狂わせています。
  • 技術の成熟待ち: 航続距離を左右するバッテリーエネルギー密度や、複雑な機体を制御するフライト制御ソフトウェアなど、鍵となる技術の成熟が予想よりも遅れており、実用化のハードルが高止まりしています。
壁その2:独立部門の「非効率」というコスト

イーアビエーションは「未来の部門」として華々しく独立しましたが、これがかえって足かせとなりました。

  • シナジーの欠如: 本来、eVTOL開発で最も必要なのは、ヘリコプターのBellが持つVTOL(垂直離着陸)の技術と、CessnaなどのTextron Aviationが持つ航空機の大量生産・認証のノウハウです。独立した子会社という形が、この強力な親会社リソースとの連携を鈍らせていた可能性があります。
  • 株主からの圧力: 資金調達環境が悪化する中、大規模な研究開発費を使い続ける独立した「コストセンター」は、株主から見れば負担でしかありません。統合は、開発コストを既存部門の堅実な予算管理下に置き、投資の**「確実性」**を高めるための合理的な判断と言えます。
廃止は「後退」ではない。「成功」への戦略的転換だ

短期的に見れば、組織再編や人員の再配置で開発スケジュールに遅れが生じることは避けられません。

しかし、長期的にはこの統合こそが、テキストロンをeVTOL市場で成功に導くための「戦略的な一歩」となる可能性が高いです。

転換後の強み 内容
Bellの経験を直結 Bellが持つ半世紀以上にわたるヘリコプターの安全性、メンテナンス、認証の経験が、eVTOLプロジェクトに直接投入されます。これは、多くのスタートアップが持ち得ない「信頼性」という強力な武器です。
Cessnaの製造力を活用 認証取得後、大量の機体を製造・納入するフェーズに入った際、Cessnaの世界的な量産体制とサプライチェーンが活用できます。これにより、量産への移行がスムーズかつ大規模になることが期待されます。
堅実なメッセージ Textronは今回の統合を通じ、eVTOLが「一時的なトレンド」ではなく、BellやCessnaの**「コアビジネス」の未来**であるという強いメッセージを市場に発信しました。
まとめ:eVTOL業界は次のフェーズへ

イーアビエーションの廃止は、電動航空機業界が「技術的な熱狂」の時代から「認証と量産の現実」の時代へと移行したことを象徴しています。

今後は、資金力と既存の航空機製造ノウハウを持つ企業が、堅実に認証と量産の課題を

クリアしていく時代になります。テキストロンのこの戦略的転換は、他の大手航空企業にとっても一つのモデルケースとなるでしょう。

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