皆さんこんにちは!
2025年10月の加賀市長選挙は、現職が落選し、元教育長の山田利明氏が新市長に選ばれる
という大きな変化をもたらしました。前市長の宮元陸氏が進めてきた「スマートシティ」
「ドローン特区」「ウイスクエアロとのeVTOL実証実験」といった未来志向のプロジェクトは、今後どうなるのでしょうか?
新市長の政策方針と、ウイスク計画が直面する現実的なリスクを分析します。
【加賀市、新時代へ】市長交代で「空飛ぶクルマ」ウイスク計画は頓挫するのか?未来志向と市民生活のバランス
前市長の「未来都市」構想とウイスク計画
宮元前市長の市政は、「デジタル田園健康特区」を旗印に、全国に先駆けてテクノロジー
を導入することに注力していました。その象徴が、自律飛行型のeVTOL開発企業である
ウイスクエアロ(ボーイング傘下)との連携です。
- ウイスク計画の核心: パイロットが搭乗しない無操縦者航空機の国内初の社会実装を目指すもので、JALエンジニアリングも加わり、国家戦略特区である加賀市を実証フィールドとして活用する非常に先進的な取り組みでした。
- 目的: 地方におけるパイロット不足の解消、新たな空の産業エコシステムの構築、そして「消滅可能性都市」からの脱却に向けた注目度向上です。
この計画は、法整備の課題解決にも貢献する全国的なプロジェクトとして期待されていました。
山田新市長の政策方針と方向転換
新市長に就任した山田利明氏の当選の背景には、「トップダウン」で進められてきた政策
に対する市民の懸念と、「ボトムアップ」で市民生活に根ざした政治を求める声がありました。
新市長の主要政策
山田新市長が掲げる主要な政策は、市民生活と地域課題の解決に重点が置かれています。
- 「消滅可能性都市」からの脱却: 最重要課題として掲げられています。市内での高等教育の場を整備し、市内で就職できる仕組みを作り、若者の流出を防ぐことに焦点を当てています。
- ボトムアップの政治への転換: 毎月のタウンミーティングなどを通じ、市民の意見を市政に反映させる方針です。
- 高齢者への安心: 高齢者にも安心で、若い世代にも夢のある生活環境の整備。
ウイスク計画への影響分析
新市長の政策には、前市政のような具体的な「eVTOL推進」という項目は含まれていませんが、直ちに計画が中止される可能性は低いと考えられます。
- 継続の理由(ポジティブ要因):
- 国家戦略特区としての継続性: ウイスクとの連携は、すでに市、JALグループ、ウイスクの間で基本合意が締結されており、国(特区)レベルのプロジェクトになっています。これを一方的に破棄するのは、行政として困難が伴います。
- 予算の確保と進捗: すでに実証に向けたコンソーシアムや「エアモビリティ・ベースin加賀」の立ち上げが進んでおり、投じられたリソースを無駄にすることは非効率です。
- 頓挫のリスク(ネガティブ要因):
- 優先順位の低下: 新市長の主眼は教育や福祉、ボトムアップの地域振興に移るため、ウイスクプロジェクトのような「未来投資」型のプロジェクトへの熱意や予算の優先順位が低下する可能性があります。
- 市民理解の再構築: 「市民のための政治」への転換を掲げているため、高額な未来技術プロジェクトについて、市民に対してその意義と費用対効果を改めて説明し、理解を得るプロセスが求められるでしょう。このプロセスが難航すれば、計画の速度は大幅に落ちます。
まとめ:未来投資は「生活支援」に組み込まれるか
加賀市のウイスク計画は、技術的な課題よりも「政治的な優先順位」という新たな壁に直面しています。
計画が頓挫する(完全中止になる)可能性は低いものの、今後は「市民生活に具体的にどう
役立つのか」「高齢者の移動支援や地域資源の活用にどう貢献するのか」といった、より
現実的で地域に根ざした「費用対効果」が求められるでしょう。前市長の「未来志向」が、
新市長の「生活志向」の中で、実用的な「市民サービス」として再定義されれば、計画は継続・発展する道を見つけられるはずです。
アメリカeVTOL開発企業ウイスクエアロ。2人乗りの自動運転型eVTOL。
【政策分析】高市新総理が「空飛ぶクルマ」にもたらす影響:AAM構想は「経済安保」で加速するか?
自民党総裁選の結果、高市早苗氏が新総裁に選出され、今後の日本の政策運営に大きな注目
が集まっています。特に前職で「経済安全保障担当大臣」「科学技術政策担当大臣」を歴任
した高市氏が、最先端技術であるeVTOL(空飛ぶクルマ)やAAM(次世代航空モビリティ)にどのような影響を与えるのでしょうか。
そして、大阪・関西万博の成功は、この日本の「空の移動革命」に火をつける起爆剤となるのでしょうか?深掘りして解説します。
高市新総理の政策スタンスとAAMへの影響
高市新総理の政策の根幹にあるのは、「経済安全保障の強化」と「科学技術への積極投資」
です。この二つの柱は、AAM構想にとって追い風となる要素を多く含んでいます。
追い風要因①:経済安全保障と基幹技術の確保
高市氏は一貫して、人工知能(AI)、量子技術、そして宇宙・航空といった「特定重要技
術」における国際競争力を強化し、サプライチェーンの強靭化を訴えています。
- AAMの位置づけ: eVTOLは、バッテリー、モーター、機体構造材(複合材料)、自律飛行システムなど、多くの「特定重要技術」の塊です。
- 期待される変化: 「経済安保」の観点から、海外の技術に依存するのではなく、国内でのAAM関連技術の研究開発や製造拠点設立に対する、政府からの大規模な財政支援や税制優遇が強化される可能性があります。これは、加賀市のWisk(米国系)のような海外連携だけでなく、SkyDriveやJoby(日本進出)のような国内・国際プレーヤーに対する強力な後押しとなるでしょう。
追い風要因②:規制改革と戦略的イノベーション推進
高市氏がこれまで科学技術政策に深く関わってきた経験から、イノベーション推進のための規制改革に積極的であると見られます。
- AAMの課題: eVTOLの商用運航には、航空法、電波法、都市計画法など、多くの既存法規制の壁が存在します。
- 期待される変化: 国家戦略特区(加賀市も含む)を活用した実証実験のスピードアップや、法整備のためのロードマップの加速が期待できます。特に、無人機の自律飛行を可能にするための法制度の確立は、セキュリティ・安全保障の専門家でもある高市氏のリーダーシップによって迅速化される可能性があります。
注意点:政策の「選択と集中」
一方で、高市氏の政策は「メリハリのついた予算」(選択と集中)を重視する傾向があります。
- リスク: すでに進んでいる多数のeVTOL関連プロジェクトの中で、「本当に日本の競争力に貢献できる分野」にのみ予算が集中し、成果が出にくいプロジェクトは打ち切られる可能性も秘めています。
大阪・関西万博:空の移動革命の「起爆剤」となるか
日本のAAM構想の成否を占う最大のイベントが、大阪・関西万博(2025年開催)での「空飛ぶクルマ」のデモフライトです。
万博成功がもたらす「気運」
万博でのAAM運航が「成功」すれば、それは単なる技術の披露を超えた、社会的な変化をもたらします。
- 世論と認知度の向上:
- インパクト: 一般市民が「空飛ぶクルマ」を初めて”現実の乗り物”として体験することで、恐怖心や懐疑論が払拭され、社会受容性が一気に高まります。
- 効果: これまで「SF」や「夢物語」と見られていたものが、身近な「モビリティの選択肢」として認識され、利用ニーズが高まる土壌ができます。
- インフラ投資の加速:
- 万博後、バーティポート(離着陸場)や運航管理システムといったインフラ整備への投資が、大阪だけでなく、地方自治体や民間企業によって本格的に進められるでしょう。これはインフラ開発を両輪で進めるAAMの実現には不可欠です。
- 世界へのアピール:
- 万博は国際的なイベントであり、そこで安全かつ確実にAAMを運航できれば、日本が「空飛ぶクルマの先進国」として国際社会に認知されます。海外からの投資や技術提携が加速し、開発の気運はさらに盛り上がると考えられます。
まとめ:「安保」の推進力と「万博」の社会的受容
高市新総理の誕生は、AAM構想にとって「政府主導による強力な推進力」を提供します。
特に経済安全保障や技術競争力の観点から、予算と規制改革のスピードが期待できます。
そして、大阪万博での成功こそが、「空飛ぶクルマ」を未来の実験ではなく、現実の社会
サービスへと変える決定的な契機となるでしょう。政治的支援と市民の期待が一致したと
き、日本でのAAM開発の気運はピークを迎えると考えられます。
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