人工知能(AI)と航空機整備のお話

飛行機

皆さんこんにちは!

人工知能(AI)の航空業界との関連性は無くてはならないものになっています。

今日はその中でも、航空機整備(MROMaintenance Repair Overhaul)との関わり方です。

AIの話は多すぎるが、MROには役立つかもしれない

企業航空整備の専門家がソフトウェア問題について意見を述べる

今週初め、アリゾナ州スコッツデールで開催された企業航空機リーダーシップサミット

– メンテナンス(CALS MX)の円卓討論会で、整備責任者の方々に、使用しているソフト

ウェアと、効率向上に役立つ不足している機能について質問しました。企業航空機の整備

責任者の方々との議論は多岐にわたり、予知保全からトラブルシューティング、追跡、

人工知能(AI)まで、あらゆる分野に及びました。

参加者の中には、AI関連のソリューションが山積みだと感じる人もいましたが、AI技術が

役立つ可能性があるという点では意見が一致しました。一部の企業は、Camp社の

コリドーソフトウェアを整備部門の管理に活用しており、ラウンドテーブルの参加者は、

整備士が同僚の知識として蓄積された整備手順やトラブルシューティングの解決策を学習

できるよう、エアロスターアビエーション社がコリドーベースのAIツールを独自に開発していることに興味を示しました。

「新人の整備士にとって、(質問をするための)糸口がいつも見つかるとは限りません」と、ある参加者は語りました。

整備記録・追跡サービスを提供するヴェリオンの担当者は、「どの格納庫でも同じような

状況だと思います」と述べました。ヴェリオンのユーザーは同社製品のあらゆる情報を

検索でき、出典も表示されるため、ユーザーは検索結果の品質を確認できると担当者は

指摘しました。「生成AIの賢さは、入力した情報によって決まります」と彼は結論付けたのです。 

注)ヴェリオンは、航空業界に特化したソフトウェアと情報サービスのリーディングプロ

バイダーです。同社は50年以上の歴史と専門知識を持ち、世界の約150カ国、5,500以上

の顧客、75,000人以上の整備専門家に信頼されています。

ある参加者は、AIウェビナーで、ある企業が整備マニュアルや情報をAIツールにただ投入

しているのを知り、愕然としたと述べました。マニュアルは航空機OEMの所有物であり、

その所有権も考慮されていませんでした。OEMが望む以上にこのような事例が見られるかも

しれませんが、情報の使用方法を決定するのはOEMです。例えば、エアロスターのAIツール

は、整備士の作業に基づいた自社の情報のみを使用し、OEM独自の製品は一切入力しません。

いずれにせよ、整備士はAIツールの導入に抵抗を示すものの、整備分野にAIを活用する機会

は豊富にあると認めています。ある企業は、飛行運用品質保証プログラムがパイロット

だけでなく、整備関連の問題を洗い出すためのリソースとしても役立っていると実感しています。

メンテナンス・ラウンドテーブル参加者の多くが抱える最大の不満の一つは、必要な機能を

すべて備えた汎用的なソフトウェアパッケージが未だ存在しないことです。その結果、

メンテナンス業務は複数のソフトウェア・プラットフォームに依存しており、多くの約束に

もかかわらず、これらのプラットフォーム間の連携が十分に図られていないケースが多々あります。

ソフトウェア開発者は、自社のシステムがこれらの問題をすべて解決すると約束することが

よくありますが、必ずしもそうとは限りません。特定のソフトウェアプラットフォームの

導入を検討している企業は、パッケージを購入して導入する前に、自社のプロセスや期待

に照らしてソフトウェアをテストし、そのソフトウェアで何ができるのかを憶測しないことが重要です。

AIはこれらの課題の解決に役立つかもしれないが、まだ道のりは長く、整備士が技術を学ぶ

必要性を軽減するものではないと多くの参加者が同意しました。ある参加者は、整備士は

航空機からデータをダウンロードするだけでは問題の原因を特定できないと述べました。

「自分で調べろ」と彼は言ったのです。ノートパソコンやiPadで、漏れている支柱を修理

することはできないと彼は付け加えました。身体能力は依然として重要だとも。

別の整備責任者は、システムの仕組みを理解することは依然として重要であり、実際に問題

に対処することも重要だと指摘。軍のヘリコプター整備に携わっていた際、燃料計の表示が

途切れるという問題に直面したが、近くの金属製の飛行制御管によって誘導を受けていた

電線束が原因であることがわかったのです。「電線束を引き離して初めて、原因が分かったのです」と彼は語りました。

実際に手を動かしてやらなければなりません」と別の参加者は言いました。

AIが切り開く航空整備(MRO)の未来:現場の効率と安全性が劇的に進化

航空業界において、AI(人工知能)はもはや単なる未来の技術ではありません。特に、

航空機の整備・修理・オーバーホールを担うMROの分野では、効率性と安全性を劇的に

向上させるための具体的なツールとして、その導入が加速しています。

先日行われたMRO専門家によるポッドキャストでは、この分野におけるAI導入の現状と

具体的なユースケース、そして今後の課題について議論されました。

導入ペースの加速と専門チームの編成

現在、AIへの投資と導入のペースは目覚ましいものがあります。航空会社、航空機

メーカー(OEM)、そして大手MROは、既に具体的な複数のユースケースを開発・導入

しています。例えば、エールフランス-KLMのような大企業では、80以上のユースケース

に取り組む大規模なAI専任チームを編成し、イノベーションを推進しています。

オリバー・ワイマンのMRO調査からも、AI導入が増加傾向にあり、投資に対する期待が満た

されている、あるいは上回っていると考える関係者の割合が大幅に増えていることが確認

されています。AIは「試行」の段階から「実践」の段階へと移行しているのです。

オリバー・ワイマンは、クライアントのビジネス最適化、オペレーションおよびリスクプロ

ファイルの改善、組織的パフォーマンスの向上を支援する、米国の国際的な戦略コンサルティングファームです。

航空整備における4つの主要なAI活用カテゴリ

MRO業界でAIが特に力を発揮しているのは、以下の4つのカテゴリです。

1. 予知保全(Predictive Maintenance)と計画の最適化 航空会社がいつ、どの機体を修理工場に入れるべきかを判断する際、AIが膨大なフライトデータやセンサーデータを分析します。これにより、部品の故障を事前に予測し、メンテナンスのスケジュールを最適化することで、航空機の運行停止時間(ダウンタイム)を最小限に抑えます。これは、単なる安全確保だけでなく、運行効率とコスト削減に直結します。

2. 文書・画像認識によるデータ処理 航空整備の現場では、技術者による手書きのメンテナンスログや、リースエンジンの膨大な記録など、大量の書類とデータが発生します。AIのテキスト・画像認識能力を活用することで、これらのデータを迅速かつ正確にデジタル処理し、必要な記録を即座に検索できるようになりました。

3. 複合技術による検査の高度化 AIは、単独で機能するだけでなく、ロボットやドローンといった他の技術と組み合わされています。例えば、ドローンが撮影した機体の高解像度画像をAIが解析し、肉眼では見逃しやすい微細な亀裂や損傷を自動で特定。これにより、目視検査の精度とスピードが大幅に改善されています。

4. 知識共有と現場支援 ベテラン技術者が持つ「部族の知識」をデジタル化し、一元的に集約する取り組みも進んでいます。これにより、経験の浅い技術者でも、AIツールを通じて格納庫内で迅速に疑問の答えを見つけられるようになり、人材育成と作業の均質化に貢献しています。

成功の鍵は「データの質」と「適性の理解」

AI導入を成功させる上で、業界の専門家が共通して強調するのは、「質の高いデータ」の

重要性です。AIはデータに基づいて学習するため、バックエンドシステムの近代化や一貫

したデータ収集・報告体制の構築が、MROにとって避けて通れない課題となっています。

また、AIツールの開発方法については、ボーイングやサフランのように社内で「サンド

ボックス(実験環境)」を構築して従業員に自由にアイデアを出させる手法と、

GoogleやMicrosoftなどの大手AIプロバイダーと提携して、大規模言語モデル(LLM)の

技術を整備分野に応用する手法が両立しています。新しい大規模モデルを一から構築する

労力を考えると、外部提携がより現実的だとされています。

しかし、AIの出力は常に確認が必要であり、AIが最適なツールでない場合もあるという冷静

な視点も重要です。「電卓を使うべき計算にAIを使うな」という専門家の言葉は、AIの役割

を適切に理解することの重要性を示しています。

まとめ

エチオピア航空がロボット技術や予知保全に大規模な投資を行うなど、世界中でAIは航空

整備の風景を変えています。AIは、単調なデータ処理や故障予測を担い、技術者はより高度

な判断とスキルを要する作業に集中できるようになります。

質の高いデータとAIの適切な活用が、未来の空の安全と効率を支える鍵となるでしょう。

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