eVTOによる消化は有効なのか?

ドローン、空飛ぶ車

皆さんこんにちは!

地球温暖化の影響で日本でも山火事が頻発しています。山火事における消火活動はヘリコプターが友好的だとされています。

そんな中、限定的ではありますがeVTOLを使った消火活動を模索する動きがあります。

はたしてeVTOLの消火は有効なのでしょうか?検証してみます。

サウジアラビア、eVTOLによる消火活動の選択肢を検討

上空から都市火災と戦うために装備された改造された中国のEhang eVTOL航空機

サウジアラビア内務省は、上空から都市火災と戦えるよう装備された中国のEhang eVTOLを改造した機体を検討している。 クレジット:ビリーピックス

サウジアラビアのビジョン2030の一環として、政府はテクノロジーを活用して人々の安全

と安心を高めたいと考えており、国の消防能力の近代化が重要な優先事項として浮上しています

サウジアラビア内務省は、火災発生時の初動対応を担う電動無人航空機システムや、新興の

先進航空モビリティ(AAM)技術を活用した複数の概念実証プロジェクトを検討していま

す。これらのプロジェクトのいくつかは、2026年世界防衛展示会で展示されています。

その中には、上空から都市火災と戦うために装備された、改造された中国のEhang電動垂直離着陸機(eVTOL)があります。

リヤドやジェッダなどの都市のスカイラインはますます高層ビルの建ち並ぶ姿に変化して

おり、提案されている運用コンセプトに基づいて遠隔飛行する改造されたeVTOLには、

ガラスを破壊してより多くの難燃剤を建物内に放出できるほどの強力な屋根搭載型難燃剤発射装置が装備される予定。

16個のモーターで駆動するこの航空機は、100リットル(22ガロン)の水と消火剤の混合液

を搭載し、高圧で火災に散布します。任務を終えると、消防署に戻って充電し、次の緊急

事態に対応できるよう準備を整えます。充電には約2時間かかります。

内務省当局者によると、高度600メートル(1,968フィート)まで飛行可能なこのeVTOL

機は、国内で最も高いビルを除くすべてのビルの全階に到達できるという。消防署には1機

または2機のeVTOL機が配備され、半径15~17キロメートル(9~10マイル)以内の火災に対応できるようになると想定されています。

サウジアラビアは旅客向けのAAMサービスの利用を検討しており、サウジアラビアの航空

規制当局と並行して、低高度での運用を可能にするための作業が進められています。都市部

以外では、内務省はオーストリアで開発された無人同軸回転翼航空機「Flynow eCopter」を農村部の火災対応に活用したいと考えています。

最大150リットルの水または消火剤を搭載できるこのeコプターは、小さな町や村から飛行

し、車両火災などの事故に対応します。消防用Ehangと同様に、このeコプターも概念実証

段階にあり、Flynowは今後数年以内にサウジアラビアでeコプターの製造を開始する予定です。

同省はまた、同国南部の森林を脅かす山火事と闘うため、最大8機の専用消防航空機の購入も検討しています。

サウジアラビアを訪れるほとんどの人は、この国といえば砂漠を思い浮かべることが多い

が、同国の南部および南西部の山岳地帯には緑豊かな森林があり、生物多様性、保水、砂漠化防止に役立っています。

現在、サウジアラビア内務省は、改造されたエアトラクターAT-802農業用航空機を用いた

消防活動をリースしていますが、これらのリースを、火災時に2,500リットル以上の水また

は消火剤を投下できるターボプロップエンジン搭載のスラッシュ710Pファイアーバード

航空機による自前の専用機群に切り替えたいと考えています。内務省は、この航空機を2028年頃までに導入したいと考えています。

農業航空との戦い

エアトラクターAT-802農業用航空機

「火消しドローン」は実用化できるか? サウジアラビアが挑むeVTOL消防隊のリアルと、立ちはだかる「重さと風」の壁

サウジアラビアが「ビジョン2030」の一環として、空飛ぶクルマ(eVTOL)を消防活動に

本格導入しようとしています。 2026年の世界防衛展示会で披露されたコンセプトは、

単なる監視ドローンではありません。中国Ehang(イーハング)製の機体に「窓ガラス

破壊装置」と「消火剤発射機能」を搭載し、高層ビルの火災に直接立ち向かうというものです。

都市部ではイーハング、地方ではフライナウ(オーストリア製)、そして森林火災には

大型のスラッシュ 710Pと、適材適所の「空の消防隊」を編成するサウジアラビア。しかし、ここで一つの大きな疑問が浮かびます。

「たった100〜150リットルの水で、本当に火が消せるのか?」 「燃え盛る炎が生む猛烈な熱風に、軽量なeVTOLが耐えられるのか?」

今回は、サウジアラビアの事例を参考に、消防用eVTOLが直面する「物理的な壁」と、それを克服するための生存戦略について考察します。


消防用eVTOLが直面する「2つの物理的限界」

サウジアラビア内務省が導入を検討しているイーハング機のスペックを見ると、積載できる

水・消火剤の量は約100リットル(22ガロン)です。一方、森林火災用に導入予定の

固定翼機「スラッシュ 710P」は2,500リットル以上を投下できます。 この圧倒的な差こそが、eVTOLの課題です。

① 「ペイロード(積載量)」の壁

水は重い物質です(1リットル=1kg)。バッテリー自体が重いeVTOLにおいて、大量の水

を積むことは航続距離と飛行性能を劇的に低下させます。 100リットルの水は、大規模火災

においては「焼け石に水」になりかねず、メインの消火手段にはなり得ません。また、記事

にある「充電に2時間」というタイムラグも、分刻みで状況が変わる火災現場では致命的です。

② 「熱上昇気流(サーマル)」と乱気流の壁

火災現場は、炎による猛烈な上昇気流(サーマル)が発生し、その周囲には複雑な乱気流が

生まれます。 ヘリコプターのような重量とローターの慣性力がある機体ならまだしも、軽量

化を突き詰めたeVTOLは風の影響を受けやすく、炎の真上でホバリング(静止)制御するの

は至難の業です。制御を失えば、二次災害(墜落)のリスクもあります。


リスクをどう克服するか? eVTOL消防隊の「勝ち筋」

では、eVTOLは消防に向いていないのでしょうか? そうではありません。「戦い方」を変えれば、最強のツールになります。

戦略①: 「消火」ではなく「初動(First Response)」に特化する

サウジアラビアの構想で重要なのは、eVTOLを「半径15〜17km圏内の即応部隊」と位置づ

けている点です。 火災は、発生直後の数分間(初期消火段階)であれば、コップ一杯の水

でも消せることがあります。消防車が渋滞を抜けて到着するまでの「空白の10分間」に、

空から100リットルの消火剤をピンポイントで撃ち込む。これだけで、全焼をボヤで食い

止めることができます。 eVTOLに求められるのは、大量散水ではなく「誰よりも早く現場に到達するスピード」です。

戦略②: 「スウォーム(群制御)」で量の壁を突破する

1機で100リットルしか運べないなら、10機で飛べば1,000リットルです。 eVTOLの強みは

無人(または遠隔)制御による連携飛行にあります。10機のeVTOLが隊列を組み、次々と

消火剤を発射しては基地に戻ってカートリッジを交換する(充電ではなく薬剤タンクごと

交換する)「ピストン輸送」を行えば、持続的な消火活動が可能になります。

戦略③: 「水」を使わない技術

重い水を運ぶのは非効率です。そのため、イーハングの事例にあるように「高圧噴射」や、

少量の水で泡を生成する「CAFS(圧縮空気泡消火システム)」、あるいは「消火弾

(ボール)」の投下など、少ない質量で最大の窒息効果を生む薬剤・技術との組み合わせが必須となります。


今後、消防用eVTOLに求められる性能スペック

サウジアラビアの事例から見えてくる、将来の機体に求められる要件は以下の通りです。

  1. 耐熱・耐乱流制御AI: 熱源をセンサーで感知し、急激な上昇気流が発生しても自動で姿勢を維持する、人間以上の反射神経を持つフライトコントローラー。

  2. スタンドオフ能力(長距離放射): 火炎の直上は危険すぎるため、少し離れた位置から正確に消火剤を飛ばせる強力なランチャー機能(Ehangの窓ガラス破壊機能もその一種)。

  3. バッテリー・カートリッジ交換システム: 「充電2時間」は待てません。F1のピットインのように、数分でバッテリーと薬剤タンクを丸ごと交換できる地上支援システム(自動ドック)がセットで必要です。

  4. ハイブリッド動力: 純電動ではパワー不足な場合、発電用タービンを積んだハイブリッド機にすることで、ペイロードを200〜300kgまで引き上げ、突風に耐えるパワーを確保する。


結論:eVTOLは「空飛ぶ消防車」ではなく「空飛ぶスナイパー」になる

サウジアラビアが目指すビジョンは、既存の消防車や大型消防飛行機をeVTOLに置き換える

ものではありません。 既存の部隊が「ハンマー」だとしたら、eVTOLは「メス」です。

高層ビルの特定の部屋の窓を割り、初期の炎を狙い撃つ。 この「精密消火」こそがeVTOL

の生きる道であり、日本の過密都市において最も求められる能力でもあります。

サウジアラビアの砂漠と摩天楼で鍛えられたデータは、将来、日本の木造密集地やタワー

マンション火災を守るための重要なヒントになるでしょう。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました