ADS技術が空飛ぶクルマを支える

飛行機

皆さんこんにちは!

航空機は、飛行中は常に地上からのレーダーによってその位置や高度などが監視(把握)

されています。しかしながら、太平洋上空の海の上や内陸部の高い山の上やその陰になっ

ている飛行経路では正確に情報を把握できていませんでした。

そこで開発されたのが、ADSという先進的な技術です。

ADS(Automatic Dependent Surveillance)

ADSとは?

ADSとは、Automatic Dependent Surveillance:自動位置情報伝送・監視機能

のことです。その内容は、航空機識別、4 次元位置、および必要に応じて追加データを

含む、搭載ナビゲーションおよび位置固定システムから得られたデータを、航空機がデ

ータ リンクを介して自動的に提供する監視技術です。(ICAO Doc 4444:PANS-ATM)

現在、ADS の 2 つの主なバージョンが使用されています。

  • Automatic Dependent Surveillance-Broadcast (ADS-B) は、他の航空機、

車両、および地上施設が使用する位置、高度、ベクトル、およびその他の情報を

ブロードキャストする航空機または水上車両の機能です。これは、ADS 原則の主な

アプリケーションとなっています。

  • Automatic Dependent Surveillance-Contract (ADS-C) は ADS-B と同様に

機能しますが、データは ANSP と航空機の間の明示的な契約に基づいて送信されます。

この契約は、需要契約、定期契約、イベント契約、および/または緊急契約です。

ADS-C は、トラフィック レベルが比較的低い大陸横断または大洋横断地域での ATS

の提供に最もよく使用されます。

これは、ICAO(国際民間航空機関)の技術書と呼ばれるものに載っている言葉の意味です。

少し難しいので分りやすく解説していきます。

地上からの監視と航空機

一般的にレーダーとは、高い周波数の電磁波(電波)を発射し、反射してくる電磁波の

時間と方向から、位置や、高さ、大きさを測定するものですね。ただ、レーダーの画面に

は、点で見えてくるので、対象物の識別が難しいという面があります。昔のレーダーは、

数秒ごと回転する線(レーダーが向いた方向)で、光る点を識別しなくてはならないため、

かなり高度な熟練者が求められたはずです。

スライド1

二次レーダー(Secondary Surveillance Radar=SSR)とは?

二次レーダーとは、質問信号をレーダー側から発信し、航空機側に搭載されたトランス

ポンダーが自動応答することで、情報を収集します。応答された情報は、レーダー画面上

に点の情報に加え、文字情報として画面表示されるため、管制官が航空機を識別しやすく

なります。SSRには、A、C、Sモードがあってそれぞれ機能に違いがあります。

SSR mode Aにより航空機の二次レーダー識別コード(DBC= Discrete Beacon Code :

個別ビーコン番号)が取得できます。

SSR mode Cにより気圧高度情報を取得できます。

地上からの質問周波数は1030MHz、航空機の応答周波数は1090MHzで共通です。

SSR mode S とは、他のモードのように、一斉に質問するのではなく、航空機個別に質問

をおこないます。(データリンクによる通信をおこないますので、込み合った空域でも電

波の衝突が無いという利点があります。)このデータリンクによる通信で、ADS-Bの持つ

情報(つまり位置、速度、方向等)をやり取りします。これは、旅客機にほ必ず搭載しな

ければなりません。

ADS-Bとは?

航空機は絶えずSSRの装置を介して、現在の位置と高度を放送しています。航空機の

カテゴリ情報、対気速度、識別、航空機の旋回、上昇、降下などを、知らせる機能があり

ます。システムの最大範囲は、通常370km未満です。

ADS-Bを使用することにより、航空管制と監視、パイロット状況認識を高めることができ

ます。 従来のレーダーより低い費用で、高い品質のトラッキングを可能にします。遠隔地

か、レーダー探知範囲が限られている山岳地帯で有効です。

スライド2

ADS-Bが発信している情報

①飛行機のID番号(MODE-Sコード、飛行機がセットした値)

②飛行機の位置情報(経度、緯度)

③飛行機の速度(水平速度、上昇・下降速度)

④飛行機の高度(GPSからの情報と気圧高度計情報)

⑤飛行機の進行方向

⑥システムの状態

があります。要するに、個々の航空機の情報を自ら発信して、地上や他の航空機に知らせる

というシステムです。

これを利用して、地上でも航空機の情報を見ることが出来るサービスがあります。

それがフライトレーダー24です。皆さんの中にもパソコンや携帯で観ている方もいると

思います。仕組みはざっとこんな感じです。

スライド3

実はこの情報を集めてデータ化しているのは、ボランティア(有志)の方で、無料で閲覧

できているのです。

そのため、一部情報が無かったり、軍関係の航空機(作戦行動など重要なミッション)など

の情報は観ることができない場合もあります。

ADS-Cとは?

名前は似ていますが、ADS-CとADS-Bは意味が異なります。

ADS-Cは、仕組みとしてはADS-Bを利用しますが、航空機の位置、高度、速度、航行

意図の要素、気象データを1つ以上の特定の航空交通サービス機関と連携する「契約」

です。

具体的には、今までは洋上(太平洋等)では無線(HFと呼ばれている短波通信装置)を

使った音声による通報・報告を行っていましたが、その置き換えとなるものです。通常

パイロットは通過するエリアを管理している国や組織の管制官へ位置を報告したり進入

許可を得たり、緊急事態を通報したりしています。ADS-Cがあれば音声による位置や速度

方向などの通報が不要となり管制機関の担当者に自動的に行われることになります。

無線(HFと呼ばれている短波通信装置)は、洋上の他に中国内部や山岳地帯で使用して

いました。具体的には、ドバイを離陸して東の方向(インド、中国、香港)に向かうとき

インド洋でも使用していました。理由は電波を受信するアンテナ設備が乏しいことです。

HF受信機もその管轄している国によって様々です。特にインドはこちらが言っても答えて

くれないことが多くありました。それほど電波の状態(アンテナの性能や地形)が悪いと

いうことです。その煩わしさから解放されることはパイロットにとってとても助かります。

ADS-Bに対応している航空機

ほとんどの民間航空機には搭載されています。ただし、小型機やライトプレーンなどには

搭載されていません。これには、飛行機にトランスポンダーという小型の送受信装置を搭載

しなければなりません。この装置を介してADS-Bの信号が発せられ、地上(管制官)や

他の航空機に情報が伝達されるのです。それが、義務化されていません。

また、このADS-Bの情報を元に衝突回避装置(TCAS)が作動するようになっており、たい

へん重要な装置なのです。

残念ながら日本では全ての航空機に搭載の義務はありません

世界の国では?

それでは、世界の国々では搭載する義務があるのでしょうか?

航空先進国のアメリカでは、アメリカが提唱する次世代航空輸送システム(NextGen)

国際民間航空機関が主導するAviation System Block Upgradeに沿ったインド空港局

のアップグレード計画、ヨーロッパで計画されている空域と航空交通管理(Air Traffic

Management, ATM)に関する共同再構築プロジェクトとなるシングル・ヨーロピアン

スカイATMリサーチ(SESAR)など世界各地の次世代航空交通管制プロジェクトに

ADS–Bの採用が見込まれています。また、オーストラリア空域での計器飛行(IFR)に

はADS–Bの搭載が義務化されており、アメリカでも2021年1月時点で全ての旅客機と

トランスポンダが必要な空域を飛行する航空機に対しADS–Bの装備を要求しているほか

ヨーロッパでも2017年以降、一部の航空機に対して搭載が義務化されています。

アメリカではメキシコ湾とアラスカの一部地域、カナダでは従来のレーダーでカバーでき

ない遠隔地となるハドソン湾、ラブラドル海、デービス海峡での監視にADS–B情報を用い

ています。米国や欧州規格と相互運用可能な製品の搭載を推奨しており、カナダの管制空域

では監視対象がADS–Bで追跡可能である場合のみ、より燃料効率の良い飛行ルートの指示

を可能としています。(ウキペディアより)

これからの日本では

それでは日本では、ADS-Bの義務化はされるのでしょうか?

国土交通省では、将来の航空交通システムの構築に当たっては、航空交通量の増大や運航

者、利用者の多様化するニーズに的確に対応し、効率的な航空サービスの実現を通じ我が

国の経済の成長戦略に寄与していくとともに、地球温暖化対策といった世界共通の課題に

も積極的に対応していくことが求められている。そのためには、現行の航空交通システム

の大胆な変革が必要であり、「将来の航空交通システムに関する長期ビジョン(CARATS

」通称カラットと呼ばれる計画を立てています。

※CARATS・・・Collaborative Actions for Renovation of Air Traffic Systems

ロードマップによりますと、ADS-Bの本格的な導入については2021年から2026年までに

行うとしており、主要な空港にも義務づけるとしています。

ここで問題となるのは、ADSに関しては、電波を発信するので国土交通省だけではなく

経済産業省も絡んできます。これは、どろーんや空飛ぶクルマも同様です。

ここら辺の縦割り行政がどこまで緩和されるかが焦点となるでしょう。

空飛ぶクルマやドローン

それでは、今後益々発展する、ドローンや空飛ぶクルマの交通整理はどのようにするの

でしょうか?

それには、飛行空域を完全に分ける方法があります。まずは飛行できる高度を制限する。

それと飛行できる空域を制限することが考えられます。しかしながら、ドローンも

空飛ぶクルマも地上(ビルの屋上など)から、上空に上がるわけですから、そのことは

航空機と変わりありません。

やはりそこで必要になるのは、個々の機体の情報です。ADSのようにあらゆる飛行情報が

有れば、パイロットが回避操作を行うことができます。特に、小さくて肉眼では見つけに

くいドローンなどには有効です。昨年の6月20日より、ドローンには機体認証の装置の

義務化が始まりました。新しい機体には製造段階で取り付けがされていますが、それ以前

の機体には何もありませんでした。但しこの情報は、機体の種類と所有者の情報だけです。

事故を起こしたときに、犯人を特定するためだけのものです。

空飛ぶクルマは、当初(10年以上)パイロットが操縦?(監視)するでしょう。

そのためにADS機能は必要になってきます。

将来のADS

ADSは、航空機の情報を発信するだけではなくなります。それは、ADS機能を介して

飛行情報はもとより、気象情報(経路上の雲など)の伝達や空港情報なども管理できる

ようになります。要するにADSを介して、あらゆる情報が一元化されて、空の交通整理に

役に立つということです。

まとめ

今日は、航空機の交通管制に一役買っているADSという仕組みについて見てきました。

これからの航空機には、このADSという機能は必ず必要になってきます。

空飛ぶクルマや小型の航空機にも搭載できるように、性能の向上と地上でのモニター

の仕組みが整備されなければ行けません。今後も、官民の力を合わせた積極的な活動

が不可欠になります。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

 

 

 

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