アフターコロナとウクライナ戦争

飛行機

皆さんこんにちは!

世界でコロナが終息してもうすぐ半年が経ちます。日本を除く世界の航空需要はコロナ

前の2019年の水準まで回復しています。

一方、ロシアのウクライナ侵略が始まって同じく1年が経ちました。終わりの見えない

戦争。

今日は、アメリカとヨーロッパの航空業界の現状と今後の予想について考察してみます。

アメリカ

コロナからの需要回復

バイデン米政権は今年の1月30日、新型コロナウイルス感染拡大に対処するための国家

非常事態宣言を5月11日に終了すると発表しました。国内の感染状況が落ち着いてきた

ためで、2020年から3年間続く非常事態を解除して社会の正常化を進めます。一方で

医療現場の混乱が懸念されるとして、数カ月の移行期間を設けた形です。

実質、昨年末には1週間の感染者数は約29万人にとどまっています。その前の2022年

の9月には、バイデン大統領はアメリカのテレビ番組のインタビューの中で新型コロナの

パンデミックの終息宣言をしています。それと同じくして、アメリカの航空需要が急速

い回復してきました。

アメリカの航空大手3社の2022年12月までの3か月間の決算で、最終的な損益はいずれ

も前の年の同じ時期の赤字から黒字に転じ、コロナ禍で落ち込んでいた旅行需要の回復

が一段と進んでいることを示す形となりました。ユナイテッド航空ホールディングス、

デルタ航空、アメリカン航空グループの航空大手3社は2022年12月までの3か月間の決

算を発表しました。

それによりますと、各社の売り上げは国内線、国際線ともに需要が回復していることか

ら、ユナイテッド航空ホールディングスが前の年の同じ時期と比べて51%増えたほか、

デルタ航空が42%の増加、アメリカン航空グループが40%の増加となり、いずれもコロ

ナ禍の前の2019年の同じ時期を上回りました。

各社の最終的な損益は、ユナイテッド航空ホールディングスが8億4300万ドル、デルタ航

空が8億2800万ドル、アメリカン航空グループが8億300万ドルと、いずれも前の年の同じ

時期の赤字から黒字に転換しました。

インフレによる影響

コロナからの経済の回復を受けて、航空需要も急速に回復しました。それに伴いコロナ期

に解雇したパイロットや客室乗務員、地上スタッフなどを再雇用しなければならなくなり

ました。しかしすぐには人は集まらず、人員不足で航空便が止まってしまうという事態

に陥ったのです。それは、航空業界だけではなく、アメリカのあらゆる業界にも波及した

のです。そのため人件費がかつてないほど上昇し、ウクライナ戦争に伴うエネルギー費の

高騰、原材料不足による価格高騰などが相まって過去まれに見るインフレになったのです。

そして、インフレの影響を受けてパイロットやその他の組合加入労働者との契約更新、

組合加入していない従業員のインフレによる賃金の上昇、2021 年半ばに旅行が持続的な

回復を開始して以来、人員配置の再構築の遅れがすべて、米国の航空会社の人件費の上昇

につながっています。信用格付けおよび調査機関は、格付けしている米国の航空会社 8 社

の総人件費が 2023 年に 19% 増加し、2024 年にはさらに 8% 増加すると見ています。

米国の航空会社 8 社の総営業利益率が 2022 年の 4.1% から今年は 7.1% に増加すると

予測していますが、人件費の上昇が営業利益率の伸びを制約します。パイロットの給与が

大幅に引き上げられなければ、2023 年の航空会社全体の営業利益率は約 10% になりま

すが、格付け会社は営業利益率を平均 5.6% と予測しており、ムーディーズの予測では、

パイロットの 19% 増、その他の全従業員の 5% 増を含む、すべての航空会社の作業グ

ループで今年の昇給が想定されています。

航空会社は、人件費の高騰だけではなく、燃料費の価格にも勢いを奪われていました。

ウクライナ戦争が長引いた影響で燃料価格が昨年は高騰したのです。しかし、この流れは

一時的なもので航空会社の燃料費は、原油価格への下落圧力と、原油の購入価格と精製石油

の販売価格との差である製油所のクラック スプレッドが 2023 年に世界的に減少する可能

性があるため、減少すると考えています。これは、いいニュースです。

そして今年3月にアメリカの2つの銀行が事実上の破綻をしました。

2020年3月から新型コロナウイルスの感染拡大による経済のダメージを抑えるため、FRB

=連邦準備制度理事会による大規模な金融緩和策が実施されました。

それによって資金を調達しやすくなり、余った資金がシリコンバレーバンクの預金として

増加する形になりました。

しかし、2022年3月からFRBが急ピッチで利上げを進めると、状況は一変。借り入れの

金利が引き上げられたことで資金が調達しにくくなり、株価も下落傾向となる中でIPO

=株式の新規公開もしにくくなりました。

しかしこれについては、FRBが素早く対処したために一時的な株価の下落はあったものの

その後は株価も上昇基調で安定しています。

ヨーロッパ

ストライキの影響

フランス、ポルトガル、英国、ドイツなど欧州各国では、航空会社のストライキが相次い

でいて、イースター休暇に大きな影響が出る恐れが指摘されています。ロイター通信によ

りますと、航空管制を担当するユーロコントロール社のスティーブン・ムーア氏が「遅延

が発生することは間違いない」と予測しています。

昨年、旅行者は長い行列と欠航に悩まされた。パンデミック前の需要回復に備えて、人手

不足の解消に何ヶ月も努めてきた航空会社は、活発化するストライキに不満を強めていま

す。EUの厳格な消費者補償規則が緩められる可能性は低いため、遅延や欠航が発生すれば、

航空会社は、何の補償を受けることなく、利用者に補償金を支払う必要が出てきます。

消費者団体は、「航空のストライキは新しいものではない。航空会社は迅速に対応し、補

償を支払うべきだ」と話しています。また、欧州の消費者ロビー団体は、混乱が予想され

るときは、航空券の前払いを段階的に廃止すべきと主張しています。

フランスでは、年金改革法を発端とするストライキによって、これまで数千時間の遅延が

発生。ユーロコントロール社のデータによると、1日で計7万分の遅延が発生する日もある

といいます。フランス民間航空局DGACは、3月13日以降ほぼ毎日のように、航空会社に

対して、パリ・オルリー空港などで20~30%のフライトを削減するように求めています。

ウクライナ戦争による空域閉鎖

ウクライナ戦争により、ウクライナやロシアの上空の空域の一部が飛行禁止になっていま

す。

ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁措置として、欧米の各国がロシアの航空会社および

ロシア人により運航される全てのフライトを対象に空域使用を制限しています。

一方ロシアは、対抗措置として、ロシア連邦航空輸送庁(Rosaviation)はEUおよび北米

の36ヶ国に対し、Rosaviationまたはロシア外務省から許可を得た場合を除き、民間航空機

によるロシア上空空域の飛行を制限する声明を発表しました。アメリカについては、現時点

ではこの対象とはなっていません。

通常、日本からのヨーロッパ直行便はほぼ全てロシア上空のいわゆるシベリアルートを通過

していますが、北回りまたは南回りで迂回する飛行経路を取ることになります。その影響は、

飛行距離の増加に応じて所要時間が数時間増加するということだけではありません。既存の

航空路を一切使わずに東西を行き来する航空機を誘導することになります。そのため、一層

交信やルートの確認などに時間がかかり更に多くの時間と燃料を必要とします。

これは、ロシアだけではなくウクライナを含む東ヨーロッパにまたがり、ヨーロッパの空域

の20%が閉鎖される事態になっています。また6月には、ヨーロッパの空域の一部で大規模

なNATO作戦が行われるとみられているために混乱はしばらく納まりそうにはありません。

ヨーロッパの航空会社は夏の混乱について慎重に楽観的

EasyJet ポルトガル支社の客室乗務員組合は 4 月 1 日から 3 日までストライキを計画

しており、TAP ポルトガル航空のパイロット組合は 4 月 7 日から 10 日まで争議行為を

行うと脅し、ヒースロー空港ターミナル 5 の乗客と貨物を検査する従業員はストライキ

を呼びかけました。また、フランスの航空管制官は、フランスの年金改革に抗議して、

さらなる業務停止を発表しました。

しかし、欧州の航空会社のCEOは、社会不安がここ数週間で大陸全体でフライトの遅延や

キャンセルを引き起こし、労働団体がより多くのストライキを発表したにもかかわらず、

2022年の夏に経験したよりも今年の夏に運航上の混乱が少ないと予想しています。

それは、各航空会社のCEOは、2022年の混乱を教訓に準備を整えているからと自信を

のぞかせています。

EasyJet の CEO である ヨハン・ラングレン氏は、業界は 1 年前よりも乗客数の回復に

対応する準備が整っていると考えています。「私たちは混乱をどのように緩和できるか

を常に考えています」と彼は語っています。「適切な数の航空機と乗組員で、適切なスケ

ジュールを確保しました。当社のネットワーク プランナーは、いくつかのホットスポット

と、ネットワークの残りの部分と運用への波及効果に留意しています。」

彼は、ストライキと混乱は航空会社の運営にとって固有の課題であることを認めましたが、

航空会社は常に主要なコストと、キャンセルと遅延の責任の重荷を負っていることを嘆き

ました. 「航空会社は航空チェーンの一部にすぎません」と彼は主張しました。つまり、

キャンセルとそれにかかるコストは織り込み済みであるとしているのです。

ユーロコントロールはまた、予想されるロシアとウクライナの空域の再開に関する予測を

更新し、2029 年末まで両国の空域が閉鎖されたままになると想定していると述べました。

これは、以前の予測よりも 1 年長くなります。

2025年以降にフライトの動きが停滞する可能性

ユーロコントロールは、2025 年にヨーロッパでのフライトの動きがパンデミック前の

ベルに回復するという見通しを維持していますが、その後、成長が鈍化するか停滞する

可能性があるという厳しい警告を発しています。「予測のユーザーは、予測範囲を使用す

ることを強くお勧めします。さらに、経済のさらなる悪化、地政学的緊張のエスカレー

ションの可能性、またはその他の予測不可能な出来事を取り巻く不確実性が、 2029年まで

この予測にマイナスの影響を与える可能性がある」と述べています。

この予測では、2025 年以降のフライト数は、2026 年に前年比で 1.7%、2027 年に 1.4%

、1.5% の増加を指定するいわゆる「ベース」予測の下で、平均して年間わずか 1.5% しか

増加しないと予測されています。昨年 10 月に発表された以前の 7 年間の予測では、2026 年

には前年比 2.2%、2027 年と 2028 年には 2% の成長率が予測されていました。 

予測によると、ヨーロッパでのフライト数の年間成長率は 2025 年以降停滞し、2026 年に

0.1% 減少、2027 年に 0.2% 減少、2029 年に 0.3% 減少します。2028 年だけが 0.2%

で成長します。ユーロコントロールの 10 月の予測における低いシナリオでは、2026 年、

2027 年、2028 年の年間成長率は 1.2 ~ 1.3% と予測されています。

ユーロコントロールは、インフレ率の上昇、原油価格への圧力、利用可能な精製能力の不足

ロシアのウクライナ侵攻の経済への影響、環境問題の高まりなど、7年間の「より大きな不

確実性」が下方修正の原因であると考えています。

ユーロコントロールのデータによると、環境保護団体や社会からの圧力により、ヨーロッパ

のいくつかの国ではすでに国内の流れが減少されていますが、EU のグリーンディールの下で

設定されたほとんどの法的目標は発効していません。この目標は、2050 年までに EU で気候

中立性を実現すること、および 2030 年までに温室効果ガス排出量を少なくとも 55% 純削減

するという中間目標を求めています。いくつかの政府は、航空から鉄道への移行を積極的に促

進、または強制さえしています。航空機による騒音公害により、オランダ政府はアムステルダ

ム空港での飛行回数を制限するようになりました。

SEO アムステルダム エコノミクスが先月発表した調査によると、2050 年までにヨーロッパ

の航空会社が航空機の排出ガスを正味ゼロにするためのコストは、8,200 億ユーロ (8,940 億

ドル) に達することが明らかになりました。オランダの研究機関による以前の分析では、Fit for

55 ポリシーによる追加費用とその結果としての航空券価格の上昇により、2030 年までにポリ

シーのないシナリオと比較して、全体の乗客数 (約 7,500 万人) が 8.4% 減少する可能性が

あることが示されました。

まとめ

アメリカとヨーロッパ。世界的なインフレの影響を受けて、ストライキや人員不足などが

起こるという悪循環に入っています。特にヨーロッパは、戦争の影響を直接受けてていま

すので、経済的な影響はかなり大きいものとなっています。

チケットの値段が高騰する中で、昨年のフライト数は 920 万回で、活動は 2019 年レベル

の 83% まで回復しました。ユーロコントロールの分析によると、ローコスト キャリア

メインラインおよびリージョナル セクターを上回り、2022 年の終わりには 32.3% の市

場シェアを獲得し、メインライン キャリア (32.4%) にわずかに遅れをとっています。

ヨーロッパ最大の格安航空会社であるライアンエアーは月曜日、2020 年 3 月までの会計

年度の過去最高の 1 億 4,860 万人から、3 月 31 日に終了する会計年度に記録的な 1 億

6,860 万人の乗客を運んだと発表しました。ローコストキャリア(LCC)が再び脚光を

浴びる日が来ています。

そして、日本も同じ道を辿って行くことは明白です。5月には、新型ウイルス・コロナは

感染症法上の位置づけが5類に移行されます。そこからがやっと日本の経済の回復です。

世界経済を知ることは、日本の未来を予測することです。その準備は整っていますか?

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

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