エアアウェアはウェアラブルHUDを統合した最初のEFVS

飛行機

皆さんこんにちは!

軍用ヘリコプターなどで採用されているゴーグル型のヘッドウェアラブルディスプレイ。

その進化系が『エアアウェア』です。今回、カナダで承認され世界の標準となって行くでしょう。

カナダ運輸省がエアアウェア EFVSを検証

AerAware HUDを装着したパイロット

エアセール社のエアアウェア強化飛行ビジョンシステム(EFVS)は、カナダ運輸省民間

航空局の認証を取得しました。これにより、システムのグローバル展開が拡大し、カナダの

運航事業者による導入が可能になりました。エアセール社によると、今回の認証は国際的な取り組みにおける規制上のマイルストーンとなります。

エアアウェアは、赤外線画像と合成視覚を備えたウェアラブル・ヘッドアップ・ディスプレイ

を統合した初のEFVS(地上支援航空機)とされています。このシステムは、パイロットが

暗闇、煙、もや、その他の視界不良状況でも視界を確保できるように設計されています。

エアセール社によると、この機能により状況認識と運用の柔軟性が向上し、計器飛行条件下においてもより安全な着陸と離陸が可能になります。

「エアアウェアの今回の認定は、単なる規制当局の承認にとどまりません。飛行の安全性と

パイロットの視界を刷新するという当社の使命が認められた証です」と、エアセールのCEO

であるニコラス・フィナッツォ氏は述べています。「エアアウェアは、先進的な視覚システム

が世界中の運航事業者の標準装備となる、航空技術の新たな時代を象徴しています。私たち

は、この変革を主導し、画期的な技術をカナダの空にもたらすことを誇りに思います。」

エアアウェアEFVS

エアアウェア EFVSの概要と特徴

エアアウェアは、単なる視覚補助システムではなく、航空機の運航における安全性、効率性

運用能力を根本から変革することを目指しています。その中心にあるのは、スカイレンズと呼ばれるヘッドウェアラブルディスプレイ(HWD)です。

  1. シンセティックビジョンとエンハンストビジョンの融合: エアアウェアは、合成視覚(Synthetic Vision System: SVS)と強化視覚(Enhanced Vision System: EVS)の画像を完璧に融合させ、高解像度の映像をSkyLens HWDに投影します。
    • SVS: 地形データベースなどから生成された仮想の外界映像。
    • EVS: 赤外線カメラなどで捉えたリアルタイムの外界映像(煙や霧を透過して見ることができる)。 これらを組み合わせることで、パイロットは実際の視界が悪い状況でも、あたかも晴天時であるかのようにクリアな外界映像を得ることができます。
  2. スカイレンズ HWD(ヘッドウェアラブルディスプレイ): 従来のヘッドアップディスプレイ(HUD)は固定式で視野が限られていましたが、SkyLens HWDはパイロットの頭の動きに追従し、より広い視野を提供します。これにより、パイロットは常に重要な飛行データやナビゲーション情報を確認しながら、同時に外界に集中し続けることが可能です。
  3. デュアルパイロット(操縦士・副操縦士)対応: 多くの既存HUDが操縦士側のみに装備されるのに対し、エアアウェア EFVSは操縦士と副操縦士の両方にスカイレンズ HWDを提供します。これにより、両方のパイロットが同じ情報を共有し、状況認識を一致させることで、クルーリソースマネジメント(CRM)が強化され、協力体制が大幅に向上します。
主な利点
  • 視界の向上と最低運航高度の引き下げ: 肉眼での視認性を50%上回る「50%ビジュアルアドバンテージ」を実現しており、これは商業用EFVSとしては最高の性能です。これにより、視界が極めて悪い状況でも離着陸が可能となり、他の航空機が運航できない条件下でも飛行できる場合があります。事実上、「ゼロ視界」での着陸も可能になるとされています。
  • 状況認識能力の強化: リアルタイムの飛行データ、航法情報、外界の映像が一体となって表示されるため、パイロットは航空機の姿勢、風向きによるドリフト、エネルギー管理を効率的に行えます。これにより、ハードランディング、テールストライク(着陸時に尾部を滑走路に接触させること)、滑走路逸脱/進入のリスクを低減します。
  • 安全性の大幅な向上: 低視程や夜間運航時において、他の航空機、空港車両、地形、障害物などを明確に視認できるため、滑走路逸脱や侵入のリスクを軽減し、あらゆる飛行フェーズでの安全性を向上させます。
認証と適用機材

エアセール社のエアアウェア EFVSは、特にボーイングB737NG(次世代型)シリーズ向けに

開発され、FAA(米国連邦航空局)の認証を取得しています。これは、ヘッドウェアラブル

ディスプレイを特徴とする完全なデュアルパイロットEFVSソリューションとして、大型輸送機に初めて認証された事例となります。

エアアウェアEFVSは、軍事技術を商用航空機に応用したものであり、その広範な飛行試験

プログラムを経て、FAAの厳格な認証要件をクリアしました。これにより、B737NGを運航

する航空会社は、悪天候下での運航能力を飛躍的に高めることが可能となります。

パイロットの利点

エアセール社のエアアウェア EFVSを導入することで、パイロットにとって以下のような点が大きく変わります。

1. 視界と状況認識の劇的な向上
  • 「見えない」が「見える」に変わる: 霧、雨、雪、夜間などの低視程条件下でも、EFVSが赤外線カメラなどのセンサーからの映像をパイロットのヘッドウェアラブルディスプレイ(HWD)に映し出すことで、肉眼では見えなかった滑走路、誘導路、他の航空機、障害物などがクリアに見えるようになります。これにより、パイロットは「ゼロ視界」に近い状況でも、まるで晴天時のような視認性を得られます。
  • 情報の融合による集中力向上: 飛行経路、速度、高度などの重要な飛行データや航法情報が、外界の映像に重ねて表示されます。パイロットは計器盤と外界の間で視線を頻繁に移動させる必要がなくなり、常に前方に集中しながら必要な情報を得られるため、状況認識能力が大幅に向上します。
2. 運航能力と安全性の向上
  • 悪天候下での運航能力拡大: これまで視程不足で運航できなかった条件下でも、離陸や着陸が可能になります。これにより、フライトの遅延や欠航が減り、航空会社の定時運航率が向上し、結果的に乗客の利便性も高まります。
  • クルー間の情報共有と連携強化: 操縦士と副操縦士の両方がSkyLens HWDを装着できるため、二人のパイロットが外界の視覚情報と飛行データをリアルタイムで共有できます。これにより、クルーリソースマネジメント(CRM)が強化され、意思疎通がスムーズになり、緊急時や複雑な状況での連携ミスが減り、安全性が飛躍的に向上します。
  • リスクの低減: 滑走路逸脱や進入、ハードランディング、テールストライクなどのリスクが大幅に軽減されます。特に、夜間や悪天候下での地上移動時にも、他の航空機や車両、障害物をはっきりと視認できるため、滑走路上のインシデント(誤進入など)防止にも貢献します。
3. ストレスと疲労の軽減
  • 心理的負担の軽減: 低視程での飛行はパイロットにとって非常に大きなストレスとなりますが、EFVSによってクリアな視界が得られることで、心理的な負担が軽減され、よりリラックスして操縦に集中できるようになります。
  • 疲労軽減: 情報の確認のために視線を頻繁に動かす必要がなくなるため、目の疲労が軽減され、長時間のフライトでもパイロットのパフォーマンスを維持しやすくなります。

このように、エアアウェア EFVSは、パイロットの「見える」能力を拡張するだけでなく、

安全性、効率性、快適性、そして運航能力といった多岐にわたる側面で、パイロットの仕事と体験を大きく変える画期的なシステムと言えます。

他の開発企業

エアセール社のエアアウェア  EFVSの他にも、エンハンスト・フライト・ビジョン・

システム(EFVS)を開発している企業は多数あります。主な企業には以下のようなところがあります。

  • ハネウェル・インターナショナル(Honeywell International Inc.):航空宇宙産業の大手で、EFVS技術も提供しています。
  • エルビット・システムズ(Elbit Systems Ltd.):イスラエルの企業で、「ClearVision」などのEVSシステムを開発しています。
  • タレス・グループ(Thales Group):フランスの多国籍企業で、航空宇宙、防衛、セキュリティ市場に幅広いソリューションを提供しており、EFVSもその一つです。
  • L3ハリス・テクノロジーズ(L3Harris Technologies, Inc.):航空宇宙および防衛産業の大手で、各種航空電子システムやビジョンシステムを手掛けています。
  • ユニバーサル・アビオニクス・システムズ・コーポレーション(Universal Avionics Systems Corporation):商用航空機向けの航空電子システムを専門としており、EFVSもその製品ラインナップに含まれます。
  • ロックウェル・コリンズ(Rockwell Collins):現在はコリンズ・エアロスペースの一部門で、アビオニクス分野の主要なサプライヤーです。
  • ガーミン(Garmin Ltd.):一般航空(GA)向けのアビオニクスで知られており、EFVS機能も提供しています。

これらの企業は、それぞれ異なる技術やアプローチでEFVSを開発し、民間機からビジネスジェット、軍用機まで幅広い航空機に搭載されています。

各企業はそれぞれ異なる強みや特徴を持つEFVS製品を提供しており、それぞれの分野で「進んでいる」と言える側面があります。

以下に、主要なEFVS開発企業とその製品の一般的な特徴を挙げ、どのような点が評価されているかをご紹介します。

  1. エルビット・システムズ(Elbit Systems)- ClearVision™ / Skylens:
    • 特徴: エアセール社のエアアウェア にも採用されているスカイレンズ HWD(ヘッドウェアラブルディスプレイ)を提供しているのがエルビット・システムズです。同社はもともと軍事用ヘルメットマウントディスプレイの技術に強みがあり、その技術を民生用EFVSに転用しています。スカイレンズはパイロットの頭の動きに追従する自由度と広い視野が特徴で、両パイロットが使用することで連携を強化できる点が評価されています。
    • 優れている点: HWDという点で、従来の固定式HUDにはない柔軟性と没入感を提供し、特にデュアルパイロット運用での連携強化を重視しています。軍事由来の高い視覚融合技術も強みです。
  2. ハネウェル(Honeywell):
    • 特徴: 航空電子機器の包括的なソリューションプロバイダーとして、EFVSも提供しています。彼らのシステムは、既存の航空機のコックピットシステムとの統合性が高く、安全性と運用効率の向上に貢献します。
    • 優れている点: 既存のアビオニクスシステムとの高い互換性と、信頼性、そして長年の航空宇宙産業での実績に裏打ちされた安定性が強みです。
  3. タレス(Thales):
    • 特徴: 軍用機から民間機まで幅広い分野で航空電子システムを手掛ける欧州の大手企業です。統合コックピットシステムの一部としてEFVSを提供しており、特に飛行制御システムとの連携に強みを持っています。
    • 優れている点: 堅牢性と、大規模な航空システムへの統合能力、そして欧州市場での強いプレゼンスが特徴です。
  4. L3ハリス・テクノロジーズ(L3Harris Technologies):
    • 特徴: 統合型航空電子システムやセンサー技術に強みを持つ企業です。EFVS技術もその専門分野の一つであり、特に視覚システムの性能向上に注力しています。
    • 優れている点: センサー技術、特に赤外線センサー(EVSの中核)の性能と、そのデータを視覚化する能力に定評があります。
  5. ユニバーサル・アビオニクス・システムズ・コーポレーション(Universal Avionics Systems Corporation):
    • 特徴: ビジネスジェットや改造機市場向けに特化したアビオニクスソリューションを提供しており、EFVSもその一環です。
    • 優れている点: 特定のニッチ市場やレトロフィット(既存機への後付け)市場において、柔軟でコスト効率の高いソリューションを提供できる点が強みです。
  6. ガーミン(Garmin):
    • 特徴: 主に小型の一般航空機(GA機)向けのアビオニクスで圧倒的なシェアを誇ります。EFVS機能は、同社のアビオニクスシステム「G3000」や「G5000」などの統合システムの一部として提供されています。
    • 優れている点: GA機市場におけるユーザーインターフェースの使いやすさ、統合性、そして高い信頼性で評価されています。

まとめと解説

  • 革新性・没入感: エルビット・システムズのスカイレンズ(エアアウェア にも採用)は、HWDという点で最も革新的で没入感のある体験を提供していると言えます。
  • 統合性と信頼性: ハネウェルタレスは、既存の航空機システムへの高度な統合性と、長年の実績に裏打ちされた信頼性で評価されています。
  • 特定の市場での強み: ユニバーサル・アビオニクスは改造機市場、ガーミンは小型GA機市場で、それぞれのニーズに特化したEFVSソリューションを提供しています。

どのシステムが「最も優れている」かは、航空会社やパイロットが何を最も重視するかによっ

て変わるでしょう。しかし、各社がしのぎを削り、常に新しい技術を取り入れることで、EFVS技術全体が急速に進化していることは間違いありません。

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