航空会社の持続可能性戦略

飛行機

皆さんこんにちは!

先日の台風7号は、東関東に猛威を振るい航空機をはじめとする公共交通機関に

大きな影響を与えるとともに、お盆の帰省に大打撃を与えました。

また、この夏各地で起こるゲリラ豪雨と呼ばれる雷雨のエネルギーの脅威は

パイロットだけではなく皆さんも感じられているでしょう。

その原因は、地球温暖化。その対策はどうなっているのでしょうか?

航空会社の持続可能性戦略

国連の定義によると、持続可能性とは「将来の世代が自らのニーズを満たす

能力を損なうことなく、現在のニーズを満たすこと」を意味します。国連の

17 の持続可能な開発目標は、環境、経済、社会の 3 つのカテゴリに分かれ

ています。この記事で重点的に取り上げる環境カテゴリでは、航空会社は

「効率的で便利な航空旅行を提供しながら、業界の環境への影響を最小限

に抑える方法を見つける」ことを目指すべきだとしています。

航空会社は、持続可能性を戦略に組み込むことの重要性を認識しています。

たとえば、ルフトハンザ グループは、「持続可能な方法で人々、文化、経済

を結びつける」という使命を掲げています。エールフランス-KLM グループ

の使命は、「持続可能な航空の先駆者としての役割を果たしながら、ヨーロ

ッパの航空輸送のチャンピオンになることを目指す」ことです。カンタス グ

ループは、持続可能性を「[その]重要な基盤の 1 つ」と認識しています。

これらの企業やその他の企業は、気候変動やフライト・シェイミング運動に

対する懸念が高まる中、持続可能な慣行を採用することが環境に利益をもた

らし、ブランドの評判を高めることを理解しています。

多くの航空会社は、より効率的で排出量の少ない航空機への更新や持続可能

な航空燃料(SAF)の使用を通じて、持続可能性を業務に取り入れています。

スカンジナビア航空(SAS)は、航空機の更新とSAFの使用増加を通じて、

2030年までにCO 2排出量を25%削減するという目標を設定しました。

カンタス航空は、燃料効率の高い航空機の追加やカーボンオフセット補償

プログラムなどの組み合わせを通じて、業界全体で合意された目標である

2050年までにCO2排出量を実質ゼロにすることを目指しています。

しかし、これらの対策は将来的に十分なのでしょうか? また、顧客体験にどの

ような影響を与えるのでしょうか?

顧客全体の視点が極めて重要です。一部の航空会社はすでに、業務の変更を

超えて、持続可能な方法で乗客の体験を向上させることに注力し始めていま

す。コスト、時間、快適さ、利便性に関しては、顧客がある程度犠牲を払う

用意があることを認識しており、各タッチポイントをより持続可能なものに

しようと努力している航空会社もあります。

持続可能なアプローチをカスタマージャーニーに組み込む方法の例をいくつ

か示します。

予約プロセス:ブリティッシュ・エアウェイズなどの航空会社はカーボンオフ

セットプログラムを提供しており、乗客は航空券を予約する際にフライトの

排出量を計算し、環境プロジェクトに投資することで排出量を相殺すること

ができます。航空会社は排出量の少ないフライトを選択するためのインセン

ティブを提供したり、予約プロセス中に環境に優しいアメニティキット、生

分解性の食事容器、持続可能な方法で調達された毛布を選択するなど、乗客

に持続可能な選択を促したりすることもできます。

空港へのアクセス:持続可能な交通手段の選択肢を促進する努力をすることが

できます。航空会社は公共交通機関と提携したり、電気自動車やハイブリッド

車を使ったシャトルサービスを提供したりできます。KLM オランダ航空はオ

ランダ鉄道と提携して、乗客が出発地から空港まで電車でシームレスに移動

できるようにしています。ルフトハンザ航空は、スター アライアンスの最初

のインターモーダル パートナーとして、ドイツ鉄道と同じようなアプローチ

を採用しています。

出発:空港は、エネルギー効率の高いインフラ、廃棄物管理システム、再生

可能エネルギー源などの持続可能な慣行を通じて、持続可能な顧客の旅を創

造する上で重要な役割を果たします。サンフランシスコ国際空港(SFO)は

ソーラーパネルを設置し、節水対策を実施しました。一方、アムステルダム

スキポール空港(AMS)は、使い捨てプラスチックを削減するために、ウォ

ーターボトルの給水ステーションを導入し、乗客に再利用可能なボトルを持参

するよう奨励しています。これらの取り組みを積極的に支援し、乗客に伝える

ことは、航空会社の共通の責任です。

チェックインとセキュリティ:モバイル チェックインや電子搭乗券などのデジ

タル ソリューションにより、印刷された文書の必要性が減り、紙の無駄が最小

限に抑えられるほか、航空会社はデジタル プロセスによって削減された CO2

排出量など、フライトの環境への影響に関する最新情報を乗客にリアルタイム

で提供できるようになります。

機内:可能であれば、持続可能性や廃棄物の負担が増えない限り、持続可能な

方法で包装された地域産の環境に優しいベジタリアン食や、持続可能な素材

で作られたプラスチックフリーのアメニティキットを提供することができま

す。KLM はさらに、使い捨てプラスチック製品を回収してリサイクルし、

3D プリンターで製造した小さな顧客ギフトを作成しています。

到着:出発空港での体験と同様に、目的地の空港でも、電気シャトルや公共交

通機関の接続など、持続可能な交通手段のオプションを導入できます。

ブランド管理の科学によれば、企業の戦略は、その長期的な発展の方向性と

して、その行動を通じて体験され、さまざまなタッチポイントでの顧客体験

を通じて実際に体験できる方法で実装されなければなりません。この「約束

を守る」という前提条件が矛盾なく一貫して満たされた場合にのみ、ブラン

ドは本物とみなされます。ブランドの信頼性は顧客の信頼につながり、将来

の忠誠心を育みます。

乗客や企業は、旅行の選択が環境に与える影響をますます意識するようになり

航空会社が持続可能性の主張に沿った行動をとることを期待しています。顧

客は、CO2排出量の削減と持続可能な慣行に関する透明性と誠実さを期待し

顧客はCO2排出量の削減と旅行中の持続可能な慣行の促進に向けた具体的な取

り組みを見たいと考えています。航空会社は、持続可能性への取り組みを単に

述べるだけでは不十分です。旅行中を通じて目に見える具体的な行動を示さな

ければなりません。航空会社が顧客の旅を持続可能な戦略に沿わせないと、グ

リーンウォッシング(誤解を招くマーケティング戦術を使用して、実質的な行

動を伴わない環境責任に関する誤った印象を与える)の罠に陥るリスクがあり

ます。これにより、信頼が損なわれ、信頼性が低下し、空約束に騙されたと感

じた顧客を失う可能性があります。

成熟度評価

航空会社が持続可能な顧客体験の機会をすでに活用して自社のブランドを差別

化し、改善すべき領域を特定しているかどうかを確認するには、持続可能性成

熟度評価 (SMA) が、持続可能性に関する強みと弱みを理解し、業界標準やベ

ストプラクティスに対するベンチマークを提供する貴重なツールとして機能し

ます。これにより、航空会社は現実的な目標を設定し、継続的な改善のための

戦略を立てることができます。

SMA を実施することで、航空会社は持続可能性への取り組みが顧客にどのよう

に受け止められているかを把握できます。この知識により、リソースをどこに

割り当て、環境と顧客満足度の両方に最大の影響を与える変更を実施するかに

ついて、十分な情報に基づいた決定を下すことができます。最終的に、顧客体

験のあらゆる側面に持続可能性を組み込むことは、倫理的な責任であるだけで

なく、戦略的な利点でもあります。

航空業界全体が、持続可能性を業務に取り入れることで、より環境に優しい未

来に向けて取り組んでいる中、一貫性のある持続可能な顧客体験を提供する航

空会社は、市場で差別化を図り、環境意識の高い乗客を引きつけ、長期的なブ

ランドロイヤルティを築くことができます。

まだ道のりは長いですが、一部の航空会社が環境を戦略的決定の中心に据えて

いることは心強いことです。SMA に基づくこの優先順位付けにより、ブランド

の信頼性、信頼、忠誠心が強化され、航空会社は環境に対する責任をさらに果

たすための道を歩むことになります。

日本はカーボンネットゼロの課題にどのように取り組んでいるか

ANAボーイング787-8型機

この ANA ボーイング787-8は 、SAFと新しい客室素材を使用して重量とプラスチックの使用を削減する同航空会社のFuture Promiseプロジェクトの一環です。クレジット: ロブ・フィンレイソン

航空会社や政府が二酸化炭素排出量の削減と持続可能な航空燃料(SAF)の入手

しやすさ向上に向けた取り組みを強化する中、日本は特に地域のリーダーとなる

ことに熱心です。

持続可能性への取り組みは日本人に広く支持されています。国連の17の持続可

能な開発目標(SDG)は、全国で広く教えられ、採用されています。2023年、

日本のSDGスコアは79.8%で、アジア諸国の中で最高、国連加盟国193か国の

中で18位でした。

日本は2030年から航空会社に10%のSAF導入を義務付け、燃料供給業者にも同

様の規則が提案されています。また、日本の航空規制機関である航空局(JCAB)

は2030年までに19億2千万リットルのSAF生産を目指しており、同年までに日本

を出入りする全航空会社のSAF需要を十分に満たせると考えています。しかし、

そこに到達するには協力が必要です。

「これを実現するための条件をどう整えるかが、初期活動の支援を通じて我々の

課題だが、最初から最後までそうしなければならないというわけではない」と

海上保安庁の小沼俊之次長は語りました。

防波堤

コンクリート製のテトラポッドを前面に備えた防波堤が、大阪関西国際空港の滑走路を 高潮から守っている。提供:関西空港

この目的のため、航空局は航空会社、石油会社、日本の経済、エネルギー、環境、

農業、運輸省からなる官民協議会を結成しました。協議会は3,368億円(21億ドル)

の初期投資と原料の支援を受けており、原料と輸入SAFに対する関税と免税を検討

しています。生産されるSAF1リットルあたり30円の税額控除も検討中です。

しかし、JCABは、SAFが何であるかを知っているのは国民の約15%に過ぎない

こと、そのため顧客にSAF課税を課すことは日本ではうまくいかないかもしれな

いことを認めていました。ただし、大沼氏はそれが「興味深いアイデア」だと認

めました。同氏によると、もう1つの問題は、日本には利害関係者が多すぎること

そしてJCABにはそのような資金を管理する専門知識がないことです。

「これはむしろ運営上の問題だが、業界がどう感じているかは分からない。日本

の航空会社は一般的に、そのお金が持続可能性のために政府に渡ることを顧客に

説明できない限り、値上げに消極的だ」と大沼氏は語りました。

JCAB は資金援助以外にも、従来の廃食用油に代わる SAF 原料の開発と認証に

向け、石油生産者を支援しています。4 月、石油生産者の要請により、JCAB は

「非標準」ココナッツを原料の承認リストに追加するための ICAO の承認を求

めました。

規格外のココナッツとは、ひび割れやカビが生えているために食べられないもの

または食べるには小さすぎるものを指します。

オンボーディングの持続可能性

日本航空(JAL)にとって、「正しいことをする」という考え方は、2010年に

同社を倒産の危機から救うために就任した前CEOの稲盛和夫氏にまで遡ること

ができます。稲盛氏は、すべての従業員に「善行」と「物質的・知的成長」を

促進する文化を植え付けました。これは、持続可能性に関して今日でも真実で

あり続けている側面です。

空港

JALは、食品廃棄を減らすため、乗客に機内食をスキップしたり事前注文したりするオプションを提供している。写真提供:ロブ・フィンレイソン

JAL がロイヤルティ プログラム会員を対象に行った調査によると、5% が持続

可能性を考慮しており、32% が行動を開始しており、44% が持続可能性を認

識しているものの行動に移していないことが分かりました。これは、顧客を引

き付け、航空による環境への影響を軽減する機会がまだ数多くあることを示し

ています。

JALのESG部門の企画担当ディレクターである亀山和也氏は、JALは人材の多様

性や持続可能な観光を促進するための地元観光地との連携など、SDGsの全範囲

にわたる持続可能性を検討していると述べました。

2022年、JALはすべての乗客が機内食をスキップできるオプションを導入し、

ビジネスクラスでの事前注文食の選択肢を拡大して食品廃棄を削減しました。

この方法で節約された食事の価値は、発展途上国の学生に食事を提供する組織

であるTable For Twoに寄付されます。データに基づく研究は、すべてのフライ

トに適切な割合の食事オプションを割り当てるのにも役立ちます。

ライバルのJALと同様に、全日本空輸(ANA)も、食品メーカーから商社まで

あらゆる分野の27社で構成され、日本国内のSAF生産増加を目指すグループ

「Act For Sky」の創設メンバーである。

ANAは、世界最大の環境情報開示システム「CDP」から「A」評価を受けてい

る唯一の航空会社グループ。2023年5月には中期環境目標を「2030年度まで

に2019年度比でCO2排出量を削減」から「2019年度比10%削減」に改定

また、2025年稼動予定の直接空気回収プラントを建設中の1ポイントファオブ

からCO2除去購入クレジットを購入するなど、他の炭素削減の取り組みにも

積極的に取り組んでおり、2025年から3年間で年間1万トンのクレジットを購入

する予定。

「ステークホルダーの注目は我々に向けられており、こうした革新と投資を進

めるのは我々の義務だ」とANAの最高サステナビリティ責任者である宮田千賀

子氏は語りました。

ANAは、プラスチックの使用と重量を削減できる新しい客室素材の実験を行っ

ている進行中のフーチャープロミスプロジェクトに参加するために、ボーイング

787-8とデ・ハビランド・カナダ・ダッシュ8の2機の航空機を選定しました。

「お客さまはこれを面白いと思ってくれています。しかし、高品質と廃棄物の

削減のバランスを取らなければならないことを心に留めておかなければなりま

せん。やりすぎると、みすぼらしく見えてしまいます」と宮田氏は語りました。

ANAは2023年度、機内食サービスにおける廃棄物を前年度比54.2%削減した

と報告しました。同社は2030年までに70%削減を目標としています。

日本国内の旅行オプションのもうひとつの要素は、全国に広範囲にネットワー

クを持ち、優れたサービスを提供する有名な新幹線です。非常に人気のある

東京-大阪ルートは、航空旅行のセキュリティやその他の要素を考慮すると、

飛行機でも電車でも約 2 時間かかります。

しかし、ANAとJALは、自然災害の際には鉄道が運休する可能性があるため、

大阪-東京間の路線は依然として重要な社会インフラであり、廃止や縮小の

予定はない、としています。JALは、まだ何も決まっていませんが、長期的に

はJRとの複合輸送サービスを検討する可能性があると付け加えました。地方

政治家もまた重要な役割を果たすでしょう。なぜなら、彼らは各都市で運行

する新幹線の駅の数を決定し、通常は自分の地区に空港を要求しているから。

厳しい気象の影響

運航面では、ANAは悪天候の影響を受けるフライトの増加を経験しています。

2023年の台風の数は17個で、2022年よ​​り8個少ないですが、フライトの欠

航率は2022年の1%から2023年の1.7%に増加しており、台風が強力になり、

混乱が増していることを示唆しています。

大阪・関西国際空港(KIX)の共同CEOブノワ・ルロー氏は、最近見た中で

最も重要な変化は、事業継続計画が台風や地震などのシナリオベースから、

電力、水、滑走路の喪失などの機能喪失に対応するものへと改訂されたこと

だと。現在、JCABはいくつかのポリシーでKIXの基準を採用しています。

大阪伊丹空港(ITM)、関西国際空港(KIX)、神戸空港(UKB)を監督する

ルロー氏は、過去10年間で気象関連の混乱の件数が2倍以上に増加した一方、

運航関連の混乱は、便数が増加しているにもかかわらず、安定していると述べ

ました。

関西国際空港は毎年5センチから20センチの割合で海に沈んでおり、嵐がより

強く早く発生すると高潮が発生し、さらなる浸水の恐れがあります。しかし、

ルロー氏は、海面上昇や高潮の影響を緩和するための防波堤やコンクリート製

のテトラポッドの設置などの投資と保護策は、この問題に対処するのに十分で

あると述べました。

雪深い北海道では、北海道空港株式会社が気候変動が空港運営に与える影響を

調査しています。同グループの航空事業開発部長の唐橋健次郎氏は、地球温暖

化がニセコスキー場の降雪量に影響を及ぼし、観光客がさらに北へスキー場を

移動せざるを得なくなり、これらの空港の需要が増加する可能性があると述べ

ました。

まとめ

日本人は、島国のためか地球温暖化に興味は無く、長く続いたインフレの影響

でしょうか、少しでも安い運賃を望みます。また、環境税をはじめ、税金に

対しても消極的です。身内(自分)には優しく、他人に無償で施すことに

何かしら抵抗があるのが現代人です。自分に余裕(金銭的)が無ければ

他人に施すことはできません。

また政府も、税金の使い方や詳細を明らかにすることで、国民の理解を

得ること行っていません。

日本国民の意識改革を積極的に行っていく必要があります。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

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