皆さんこんにちは!
先日、パリエアショーが閉幕しました。開催期間中は多くの航空関係者の来場があり
民間旅客機の大量発注や企業間のパートナーシップの発表がありました。
いわば今後の航空業界市場の未来予想図です。
そんな中でも、コロナからの急速な回復を観せているのがビジネスジェット市場です。
しかしながらその回復が急すぎるために、数々の問題も起きています。
ビジネスジェット市場予測
2030年には380億ドルに
ビジネスジェットの市場規模は、2020年の188億ドルから2030年には380億ドルに達し
CAGR(年平均成長率)7.3%で成長すると予測されています。富裕層の増加と新しい航
空機プログラムの導入が市場の成長を牽引すると予想されます。
2021年は北米地域が大勢を占めていましたが、今後はアジア地域に政庁の中心が移動する
と予想されています。中でも成長著しいのが、インドです。
また富裕層が多いといわれている中東地域も今後の成長が見込まれます。
企業動向
新機種導入
ビジネスジェット業界のメーカーは、乗客体験の向上と運航効率の向上に力を入れていま
す。メーカーは、二酸化炭素排出量の削減、運航コストの削減、アビオニクス(飛行のた
めに使用される電子機器)、キャビン内部、航空機システムのアップグレードなどの分野
を重視しており、これに合わせた新しい航空機プログラムを導入しています。エンブラエ
ルは2018年にPraetor 500とPraetor 600を、2016年にLegacy 650Eを、ボンバルディア
は2018年にGlobal 5500とGlobal 6500を、セスナは2016年にCitation Longitudeを、
ホンダは2018年にHonda Jet Eliteを、ダッソーは2017年にTBM 910を、2019年にTBM
940を発表しています。
ホンダ、認定中古航空機プログラムを開始
ビジネスジェットは、コロナからの回復と退役航空機の増加によって新しい機体の製造が
追いついていません。また、人手不足が追い打ちをかけています。
そこで、注目が集まっているのは中古機販売です。
ホンダエアクラフトは、ビジネスジェットを所有するための代替手段を構築するボンバルデ
ィアの先導を受けて、初の認定中古品プログラム(CPO)を開始したと発表しました。
ボンバルディアは2021 年にCPOプログラムを開始し、先月 2012 チャレンジャー 605 を
展示しました。ホンダの CPO プログラムは、同社の正規販売ネットワークを通じて南北ア
メリカ、ヨーロッパ、アジアの顧客をカバーしています。
CPOプログラムとは、航空機製造メーカーが認定中古機として認め、点検や様々なサービス
を受けられるようにしたものです。
ホンダは、超軽量ジェットクラスにおける唯一のCPO選択と称し、CPOの指定を受ける前に
航空機を選択するための目利きの選択プロセス、厳格な検査、および専門家によるメンテナ
ンスプロセスと呼ばれるものを実践しています。このプログラムは、サービスの開始から販
売後のサポートまでの「エンドツーエンドのサービス」も提供します。
各 CPO ホンダジェットは、認定サービス ネットワーク全体で ホンダの訓練を受けた技術者
によって実施される 208 項目の標準検査に合格する必要があります。同社は、該当するサー
ビス公報に基づいて、CPOプログラムの対象となるすべての航空機を各モデルで利用可能な
最高の性能レベルにアップグレードすると付け加えました。プログラムの一環として、CPO
の購入者は、FlightSafetyの初期パイロットトレーニングセッションと、ホンダの機体飛行準
備完了パフォーマンスプログラムに関連する費用に適用される6か月または100時間のクレジ
ット(どちらか早い方)も受け取ります。
ホンダジェットも中古機販売に力を入れています(画像:Honda)
問題点
航空業界は 2032 年までに 130 万人の新しい専門家を必要としている
急速な成長は、あらゆる方面で問題を起こしています。最も大きな問題は人材不足です。
中でも専門性の強いパイロットや整備士の人材不足は、深刻な問題です。
飛行訓練大手CAE(旧Canadian Aviation Electronicsは、航空会社、航空機メーカー、
医療専門家、防衛顧客向けのシミュレーションテクノロジー、モデリングテクノロジー、
トレーニングサービスを提供するカナダのメーカーです。)によると、世界の民間航空業
界は、成長する商業航空市場とビジネス航空市場をサポートするために、2032年までに
合わせて130万人の新たな専門家を必要とするだろうと予想しています。
最近発表された 2023年の航空人材予測では、CAE は、ビジネス航空業界だけでも、この
分野に参入するには 106,000 人のパイロット (パイロット 32,000 人、整備士 74,000
人) が必要になると予測しています。予測によれば、航空会社はパイロット25万2,000人、
整備士32万8,000人、客室乗務員59万9,000人を採用する必要があるといいます。
「2032年までに130万人の人材が必要となるCAEの航空人材予測は、航空業界でのキャリ
アを次世代に促進し、過小評価されているコミュニティに手を差し伸べ、人材プールを拡
大するための革新的な支援プログラムを開発するという業界への行動喚起です。私たちの
業界の継続的な成長と安全のために必要です」とCAE民間航空グループ社長のニック・レオ
ンティディス氏は語りました。「民間航空が完全回復に近づき、ビジネス航空がパンデミッ
ク前の水準を超える中、CAEの航空人材予測は需要が今後も成長し続けることを示しており、
業界は団結して高度な訓練を受けた人材の安定したパイプラインを確保するための創造的な
方法を見つける必要がある。それは今後10年、そしてそれ以降もです。」
この予測では、ビジネス航空機材は今後10年間で18%増加し、2032年には22,000機から
26,000機になると予測されています。同期間で、航空機材は31,000機から43,000機に拡
大し、39%の成長に相当するとCAEはさらに予測しています。
労働力の観点から見ると、人口の高齢化がこの成長をさらに悪化させています。米国の従
業員の 30 パーセントは 2030 年までに退職年齢を迎え、パイロットの 38 パーセントは
現在50 歳以上です。航空機整備技術者の半数以上が 40 歳以上で、客室乗務員の離職率は
高くなっています。
「今後10年間で大量の退職者が予測されるため、50歳以上の航空職員の割合は民間航空業
界全体と比較して増加し続けるだろう」と予測は述べています。「経験豊富なパイロットの
退職には、さらに大きな新規採用の波で対抗する必要があるだろう。」
さらに、この予測によれば、需要はすでに供給を上回っており、地域航空協会の報告書によ
ると、414機のリージョナルジェット機(会員が運航する航空機の22%)が乗務員不足のた
めに駐機しているといいます。
アジア太平洋地域では、2032 年までに 427,000 人の新たな専門家が必要となり、予測期
間中のすべての地域でトップとなります。次に北米が必須の専門家数 335,000 人、ヨーロ
ッパが 259,000 人で続きます。
ただし、これらの数値は主に航空会社の軌道によって決まります。ビジネス航空だけを見る
と、北米が最大の需要を抱えており、48,000 人の整備技術者を含む 66,000 人の新しい専
門家が必要です。ヨーロッパもそれに続き、10,000 人の整備技術者と 8,000 人のパイロッ
トの合計 18,000 人の専門家が必要です。
交通渋滞と騒音問題
急速な回復は、空港やその周辺にも影響を及ぼしています。
空港では、地上から離陸する航空機や着陸待ちの航空機でコロナ前と同じか、それ以上の
渋滞が起こっています。それは、中心となる大きな空港が主体となっています。
一方、回復の恩恵を受けていない地方空港は赤字続きです。
コロナ時は、そんな大きな空港でも交通量が激減したため騒音問題はなりを潜めていました。
インドやアフリカなどの新興国では、都市部を中心に自動車の交通渋滞が激しくなっていま
す。特にインドは、今年世界人口が1位になるなど、爆発的な人口増加と、中国の衰退により
経済の中心がインドへとシフトしています。また、地方路線も発達してきて地方の空港の交通
量も増加しています。こうして新興国は、先進国が味わってきた渋滞と騒音に悩まされる日々
が続いています。
エネルギー価格の高騰
ウクライナ戦争の長期化によって、燃料の高騰が問題になっています。大きな影響を受けて
いるのが、ロシアからの天然ガスに依存しているドイツです。
ドイツの1~3月期の国内総生産(GDP)は前期比0.3%減と、昨年10~12月期の
0.5%減に次ぐマイナス成長を記録。連邦統計局が当初のゼロ成長から下方修正しました。
欧州のエネルギー価格はロシアがウクライナに侵攻した昨年2月からすでに上昇し、記録的
な水準に達しました。ロシア政府がその後も欧州諸国への天然ガス供給を制限し続けた結果、
ドイツの経済状況は深刻化しました。
天然ガス価格はその後低下し、現在は2021年後半の水準に落ち着きました。これは消費
者支出に対するインフレ圧力の緩和を示唆します。4月のドイツのインフレ率は年率換算で
7.2%に低下しましたが、それでもまだ高い水準です。
問題解決
eVTOL航空機
ビジネスジェット機は、都市間移動の時間短縮のためにビジネスマンや企業に利用されてい
ます。しかし、都市間移動は混雑しており、都市内の移動時間が長くなっています。このよ
うな場合、従来のビジネスジェット機は空港で離着陸できるため垂直離着陸機用の施設を
使用できず、その可用性はほとんどの場合、各都市1機に制限されています。大都市内の旅
行では、VTOL機(垂直離着陸機)は複数の空港に離着陸できるため、メリットがあります。
eVTOL機は、安価で騒音が少ないため、都市内での移動が容易になります。このコンセプト
が商業化されるためには、バッテリー容量の面での技術的な進歩、バーティポート(垂直離
着陸機用の離発着ターミナル)や充電ポッドなどのインフラの構築、そして強固な規制の枠
組みが必要となります。eVTOL技術の出現により、ビジネス航空機市場は成長すると予想さ
れています。
まとめ
我々は、コロナのパンデミックという経済的にも大きな打撃を受けました。
真っ先に影響を受けたのが、サービス業や航空業界です。人の移動がなくなると航空機など
の乗り物はその意味を無くしてします。多くの関連企業がなくなり、そこで働く従業員の職
を奪っていったのです。そして、技術の伝承も途切れてしまいました。
一方で新たなeVTOLというAAM産業も芽生えました。eVTOL航空機が、新たなビジネスジェ
ットとしてのカテゴリーになる日はそう遠くない未来です。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
コメント