日本は中国のスパイ気球を撃墜できるのか?

飛行機

皆さんこんにちは!

アメリカ上空を飛行していた中国のスパイ気球は、アメリカ空軍のF-22ラプターの

ミサイルで撃墜されました。その際使われたのが、空対空ミサイルです。

それではなぜ、アメリカ空軍は機銃ではなくミサイルを使ったのか?

そして、日本の自衛隊は気球を撃墜できるのか?を分りやすく解説していきます。

空対空ミサイル

空対空ミサイルの種類

空対空ミサイルとは、空中から発射され空中の目標を攻撃するためのミサイルです。

ミサイルの種類には、運用上、視程内射程のものと視程外射程のものに分類できます。

視程内射程とは、いわばパイロットが目視で目標物(戦闘機など)を識別して、短距

離で発射するミサイルのことをいいます。機関銃と併用して近距離での戦闘(ドッグ

ファイト)で使用します。ミサイルは、小型で機動性に優れています。

射程距離は、20マイル(37km)以内のものをいいます。短距離空対空ミサイル

(SR-AAM)とほぼ同義で使われます。

具体的には、今回気球を撃墜したときに使用されたAIM-9X(サイドワインダー)や

航空自衛隊が使用しているAAM-5(04式空対空誘導弾)があります。

射程は、AIM-9Xは40km、AAM-5は35kmくらいです。

航空自衛隊 AAM-5 & AAM-5改 岐阜基地 2015年10月25日.JPG

AAM-5(04式空対空誘導弾)(上)とAAM-5B(下)

視程外射程は、射程距離が20マイル(37km)以遠で使えるミサイルで、中・長距離

空対空ミサイル(MR-AAM, LR-AAM)がこれに該当します。

遠距離で使用するために、通常は母機(戦闘機)のレーダーにターゲットを映し出して

補足(ロックオン)して、レーダー誘導によってターゲットに命中させる方式です。

中距離対空対ミサイルは、アメリカ空軍が使用しているAIM-120C(アムラーム)や

同じく航空自衛隊のAAM-4(99式空対空誘導弾)、長距離ミサイルはアメリカ空軍の

AIM-54(フェニックス)があります。自衛隊には長距離ミサイルはありません。

AIM-120C(アムラーム)の射程距離は100km、AAM-4も同等くらいです。

AIM-54(フェニックス)は200kmくらいです。

誘導方法

赤外線ホーミングセミアクティブ・レーダー・ホーミングアクティブ・レーダー・

ホーミングの3種類があります。

赤外線ホーミングは、目標物(戦闘機)のエンジンの排気口から出る熱を感知して

その熱源に向かって誘導、着弾する方式です。短距離の空対空ミサイルに使用されて

います。

セミアクティブ・レーダー・ホーミングアクティブ・レーダー・ホーミングは、

レーダー誘導によりターゲットに命中させる方式です。中長距離空対空ミサイルが

この方式を採用しています。赤外線誘導のミサイルよりも射程が長いからです。

これは、電波のほうが赤外線よりも大気圏内での透過性が高いため遠くまで誘導が

できるのです。

中国の気球を撃墜したミサイル

なぜミサイルを使ったのか?

なぜ今回、アメリカ空軍はミサイルを使って気球を撃墜したのでしょうか?

気球なのでわざわざミサイルを使わなくても、機銃で撃ち落とせたのではないかと

考えてしまいますが、それには理由がありました。

理由の一つとして、飛来した中国の気球の高度が高かったことです。

アメリカ国防省の発表によりますと、中国の気球の高度は18000m~20000mとの

ことです。今回使用された戦闘機はF-22・ラプターでした。

Lockheed Martin F-22 Raptor - Wikipedia

F-22は、アメリカ空軍が保有する最新鋭のステルス戦闘機です。

F-22の上昇限界高度ですが、カタログ上では20000m(65000フィート)です。

今回のF-22がミサイルを発射した高度は約17000mと言われています。

それではなぜ、機銃で攻撃しなかったのでしょうか?それは気球への機銃攻撃は簡単では

ありません。実際に行って失敗した例もあります。1998年にカナダ空軍のF/A-18「ホー

ネット」(同国ではCF-188と呼称)が制御不能となった気象観測用気球の撃墜を試みまし

たが、2機で1000発以上の射撃を行ったにも関わらず、その場で完全撃墜することができ

ませんでした。撃墜失敗の理由のひとつは、気球と戦闘機の速度差がありすぎたためです。

戦闘機は高速で飛びますが、気球は風に流されるだけで速度は低く、戦闘機から見れば止

まっているのと、ほぼ同じ状態です。速度差がありすぎるため逆に照準が難しく、気球が

大きすぎるため、接近しすぎると空中衝突する危険性までありました。また、機銃弾自体

が気球に対して効果が薄く、命中しても表面に穴が開いてガスが抜けるだけで気球自体を

直接破壊することができなかったのです。今回の気球撃墜の場合も、気球が約1万8000m

以上という高高度を飛んでいたことを考えると、それに接近すること自体が難しく、そこか

ら機銃を命中させるのは困難だったと予想できます。私も実際に、空中のターゲットに向か

って射撃を行いましたが、なかなか当たりません。機関銃の弾は、火薬の力で発射された

後は、弾道は放物線を描いてターゲットに命中します。

銃の画像

弾は空気抵抗と重力の影響を受けながら飛びます。

ましてや速度差があればなおのこと、当たる確率は低くなります。

なぜ、F-22だったのか?

F-22・ラプターは、最新鋭の戦闘機です。先ほど言ったように、高高度まで上がれる

機体だったからです。

F15・イーグルは、上昇限界高度は18300m、F35A・ライトニングⅡは19300mです。

性能的に見てもF-22の方が優れています。また、F35Aは、エンジンが1基ですが、

F-22は2基あります。戦闘機が高高度に上がるにはかなりリスクがあります。その点

も考慮しての起用ではないかと思います。

なぜ、サイドワインダーなのか?

使われたミサイルは、赤外線センサーのAIM-9X(サイドワインダー)でした。

命中率からすると、レーダー誘導ミサイルの方が確率は高いのです。しかし今回

赤外線センサーのミサイルが使われた理由は何だったのでしょうか?

それは、気球がレーダーに映らない、ロックオンできないからです。

通常、戦闘機のレーダーに映るのは金属など誘導電波を反射するものです。

気球は全体が布状でできていますので、電波を吸収してしまいます。いわばステルス

機能を持っています。そのため、近距離でパイロットが視認できて確実に落とせる

赤外線センサーのミサイルを使用したと思われます。

しかし、高高度で短距離用のミサイルを発射させて命中させることはなかなか困難な

ことです。

自衛隊は気球を落とすことができるのか?

戦闘機、ミサイルの性能

それでは、自衛隊はアメリカ軍のように気球を撃墜できるのでしょうか?

航空自衛隊が現在保有している戦闘機は、F15・イーグルとF2、そしてF35A・ライト

ニングⅡです。性能的にはF-22には劣りますが、20000m以下ですと問題はないかと

思います。

ミサイルは、AAM-5(04式空対空誘導弾)です。三菱重工業が自衛隊向けに開発しました。

性能は、サイドワインダーと大差はありません。レーダーの目と呼ばれるシーカーも日本の

NECが制作しており、赤外線探知、識別能力は向上しています。

性能的には何ら問題はありません

立ちはだかる法律の壁

自衛隊法では、航空機や船舶その他のモノが許可なく我が国の領土、領海に侵入すること

は違法とされています。その際に、当該者に対して警告を発し、それでも従わない場合に

は警告射撃を行っても構いません。そして、相手が発砲など攻撃した場合に限り武器の使用

が認められています。(緊急避難

この解釈からすると、相手側が攻撃を仕掛けない限りは今回のように気球を破壊できません。

気球は無人ですから攻撃はしてきません。

もし、気球に放射能物質や爆弾などが搭載されていた場合、国民の生命や財産を守ることを

理由に破壊はできる可能性はありますが、確実に爆弾などの所在を証明できなければいけま

せん。(正当防衛

今のままの法律では、気球を破壊することはできません。

まとめ

浜田靖一防衛相は14日の記者会見で、日本に他国の気球が飛来した場合に「空対空ミサイル

を発射することも含め、武器を使用できる」と述べました。

外国の航空機による領空侵犯に自衛隊が対処できると定める自衛隊法84条に基づき、自衛隊

機が撃てると説明した形になりました。正当防衛や緊急避難に該当する場合は武器を使えま

す。気球も国際法上の航空機として捉えることができるのです。

松野博一官房長官も10日に「具体的な状況に即し、適切な装備品を用いる。今般の事例で

米軍は戦闘機から空対空ミサイルを用いて対応した」と語っています。

本来ならば許可なく領域に侵入してきた物体に対しては「適切な対応」が取られるべきで、

この「適切」の解釈がこれまで制約的だった、ということです。その解釈の幅を広げ、

偵察などの敵意があると見られる場合は撃墜も可能、というまっとうな判断になったという

ことなのでしょう。

しかしこれは、あくまで今回のような事例に対しての判断であって、昨今の中国の軍事拡大

にみられるように今後も不測の事態は起こる可能性が高くなっています。

昨日も、フィリピン海軍に対して中国軍がレーダー照射をする事件が起こっています。

法改正を含めた議論が必要な時ではないかと思います。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

 

 

 

 

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