水素燃料推進エンジンの課題と展望

飛行機

皆さんこんにちは!

先日、エアバスが水素燃料旅客機の開発を中断しました。このことによって脱炭素への進捗状況が停滞することは明らかです。

今日は水素燃料の課題と今後の展望についてお伝えします。

水素燃料電池推進システム

水素燃料電池 (図 1) は、水素を空気中の酸素と反応させて水を生成します。このプロセスで

電子が解放され、燃料電池の外部に電流として移動して、「プラントのバランス」コンポー

ネント (図 2、高度で気圧を維持するコンプレッサー、燃料電池の PEM 膜を湿らせる加湿器

冷却ラジエーターなど) を稼働させ、プロペラやファンを駆動する電気推進モーターに電力を供給します。

図 1. PEM 燃料電池の動作。出典: NASA。

図 2. 燃料電池システムとそのコンポーネント。出典: Parker Inc.

水素燃料電池の課題
  • 航空機内での水素の貯蔵。水素は、同じエネルギー含有量のジェット燃料の 36% の重量ですが、-253°C で液体として貯蔵すると 4 倍のスペースが必要です。熱損失の少ないデュワー フラスコ型タンクが必要なため、水素の貯蔵は困難です (壁の間が真空になっている半円筒形の二重壁タンクである必要があります)。問題となる水素貯蔵は燃焼代替法と共通ですが、いくつかの新しいアイデアにより、問題はミッション中に消費される水素に限定されます。燃料電池システムの場合、デュワー タンクにミッション水素と予備水素の両方が必要です。
  • 燃料電池プロセスでは大量の熱が発生します。燃料電池システムに必要なすべてのコンポーネントのうち、熱管理部品 (図 2 ではラジエーターと呼ばれています) が最も重いです。ラジエーターの熱交換器を通して冷却空気が流れ込むため、これらの部品は最も大きな抵抗を生み出します。低温燃料電池の場合、プロセスが 80°C で行われるため、周囲の冷却空気に低温デルタが与えられ、問題がさらに悪化します。これにより、熱交換器の面積が大きくなり、機体の抵抗が発生します。
  • 燃料電池とそのプラント部品の残りは重く、これらが置き換えるガスタービンターボプロップエンジンやターボファンエンジンよりもかなり重いです。
  • 燃料電池航空機は、空港で入手できる液体水素 (LH2) に依存しています。これは大きな問題であり、解決には時間がかかります。
燃料電池の好ましい発展
  • 高温燃料電池は、通常の燃料電池温度の 2 倍である 160°C で作動します。これにより、周囲の空気との熱交換がより効率的になります。ZeroAvia は、空冷式の高温燃料電池の開発に取り組んでいます。従来のシステムに比べて質量を増やせる可能性があります。ただし、このシステムの容積によってスペースの問題が生じます。これらの高温モジュールを市場に提供するための進歩は遅いままです。
  • 適切に設計されたコンプレッサー/タービン部分 (図 2 の右側) を備えた燃料電池システムは、高度でも効率を維持できます。実用的な限界は現在 25,000 フィートで、これは ATR72 などのターボプロップ機の一般的な高度限界です。適切な冷却が行われていれば、燃料電池と電気モーターは、高度が上昇してもガスタービンのような出力低下を経験することはありません。
燃料電池航空機のサイズ制限

燃料電池推進システムを使用する機体プロジェクトでは、燃料電池システムの実際的な限界

として、フライトレベル 250 まで運航できる 100 席のターボプロップ機が挙げられていま

す。このサイズを超えると、熱管理、つまり質量と容積の管理が難しくなります。このような

航空機に必要な電力レベルは、機体側面あたり約 3 メガワットの推進ユニットになります。

現在開発中のシステムは 0.6 MW で、2 MW ユニットは後日導入される予定です。航空機の

燃料電池システムの将来を判断するには、認証され、運用されている実装を確認する必要が

あります。水素ベースのすべてのプロジェクトに共通する問題があります。それは、水素を空港に運び、航空機に燃料を供給する方法です。

エアバス、水素航空機の導入を 2035 年まで延期

エアバスの労働組合 Force Ovrier はエアバスの社内会議の情報を公開しました。この会議

では、航空機メーカーが水素航空機の導入を 2035 年まで延期することを約 10 年後としています。その結果、水素推進技術の開発に対する研究開発費が削減されます。

社内会議で示された理由は、グリーン水素の供給エコシステムが、水素の製造、配送、関連空港での供給を含め、予想よりも遅れて発展していることでした。

水素に重点を置いた代替推進プロジェクト「エアバス ZEROe」の開始以来 (図 1)、航空輸送

市場が水素への移行を主導できないことは明らかです。航空機バッテリー技術の開発と同様に、水素の量が少なすぎるのです。

輸送用途のバッテリーと水素の主要要素の開発は、巨大な陸上輸送市場によって主導される必要がありますが、航空輸送市場は小さすぎます。

図 1. エアバス ZEROe コンセプト。出典: エアバス。

社内会議で示された理由は、グリーン水素の供給エコシステムが、水素の製造、配送、関連空港での供給を含め、予想よりも遅れて発展していることでした。

水素に重点を置いた代替推進プロジェクト「エアバス ZEROe」の開始以来 (図 1)、航空

輸送市場が水素への移行を主導できないことは明らかです。航空機バッテリー技術の開発と同様に、水素の量が少なすぎるのです。

輸送用途のバッテリーと水素の主要要素の開発は、巨大な陸上輸送市場によって主導される必要がありますが、航空輸送市場は小さすぎます。

図 2. メルセデスの液体水素燃料電池トラックは、1 回の燃料補給で 1,000 km 走行します。出典: メルセデス トラック。

輸送用途の液体水素への移行を先導するプロジェクトは、長距離トラック業界です (図 2)。

トラック業界は、夜間に充電して日中に商品を配達できる、地域配送用のバッテリー式電気トラックに集中しています。

また、都市部間のトラック輸送など、一部の長距離トラック輸送は、急速充電インフラが利用

可能であれば、バッテリー電気で走行できます。しかし、実際の長距離トラック輸送は、毎日数回、30 分以上充電する必要があると機能しません。

ここは、最大のトラック供給業者であるメルセデスが液体水素燃料電池電気トラックを開発し

過去数年にわたって長距離路線でテストしてきた場所です。図 2 は 18 か月前のテスト走行

を示しています。このテスト走行では、ドイツのヴェルトで 40 トンのメルセデス トラック

に 80 kg の液体水素が充填され、その後、1,000 キロメートル (620 マイル) 離れたベルリンまでの 12 時間のアウトバーン走行を燃料補給なしで走行しました。

ディーゼル トラックからバッテリーまたは水素トラックへの移行は始まったばかりです

(バッテリー電気自動車への移行に遅れています)。航空輸送用の水素の生産と配布への投資が行われる前に、この変化が起こる必要があります。

そうして初めて航空輸送が定着できるのです。ですから、航空輸送が変化を望まないという

問題ではなく、地上輸送においてより大規模で重要な変化が起こらない限り、航空輸送は変化できないのです。

航空機のバッテリーシステムについても、同じ厳しい現実が当てはまります。バッテリー電気

コンセプトに賭けた航空機の新興企業は、その容量では、空港から市街地まで10分間のミッシ

ョンを飛行する超短距離eVTOL以外の短距離航空機の合理的な設計は不可能であることに一様に気付いたのです。

過大な約束をした企業は、特殊なバッテリー化学に賭けざるを得ませんでした (リリウムもそ

の1 つです)。そのため、エネルギー貯蔵のための研究開発費が莫大な額を費やしました。予想

どおり、これらのプロジェクトは、現在資金が枯渇しつつあります (リリウムは破産から抜け出せず、シティエアバス はバッテリーのせいで凍結され、eViation は休止状態にあります…)。

約 8 ~ 10 年前に炭化水素推進代替手段の流行が始まったとき、私たちは新しい技術の進歩に

関する典型的なサイクルを説明するこの ガートナーハイプ サイクル曲線を発表しました。

図 2.年スケール付きの Gartner ハイプ サイクル曲線。出典: Gartner Inc.

これは、2020 年 4 月 10 日の Gartner のコーナーの誇大宣伝曲線です。私はあえて、この

曲線の下に何年も置いています。5 年前にこれが起こると予測していたいくつかの代替推進プロジェクトの終焉に関する最近の発表は、かなり正確です。

つまり、私たちは今、「過大な期待のピーク」を過ぎて、「幻滅の谷」へと下がっているの

です。底を打ったのでしょうか?おそらくそうではないでしょう。2026年か2027年に最初の

実用的eVTOLが飛行を開始し、素朴なビジネスケースが消え去る頃には、底を打つことになるでしょう。それがネガティブな部分です。

これを乗り越えれば、2030年頃には、バッテリー電気航空機やeVTOLの有効航続距離を備え

た真の進歩と実行可能な代替推進ソリューション、そしてより長距離の水素ソリューションの

ための機能的な水素供給の出現が見られるようになることを理解することが重要です。

まとめ

自動車にも水素を使ったものが開発されています。それは燃料電池車と水素自動車です。

燃料電池車と水素自動車(水素エンジン車)は、水素を使って走行する車で、いずれも走行中にCO2を排出しないというメリットがあります。

燃料電池車は、水素と酸素の化学反応によって電気を発電し、モーターを駆動させて走行し

ます。電気を利用する点については電気自動車と同じですが、電気自動車は充電が必要であるのに対し、燃料電池車は水素の充填が必要になります。

一方、水素自動車はガソリンの代わりに水素をエンジンで燃焼させ、水素の爆発力で動力を得て走行する車です。現在市販化はされていません。

燃料電池車も水素自動車も水素の補給が必要になるため、両者の普及には水素ステーションの整備が課題になるといえます。

この様に地上を走る自動車(水素)にさえ、インファラ整備という課題があります。

特に航空機の場合は、使用料が莫大になるため水素の生成、貯蔵等の課題やエネルギー変換時に起こる熱の冷却問題があります。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

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