進化する航空機エンジンと課題

飛行機

皆さんこんにちは!

航空機の性能を決めるのはエンジンです。同じ航空機でもエンジンの違いによって性能だけ

でなく、操縦や運航に関して大きく影響を及ぼす大事な要素です。

最新の航空機のエンジン事情を見ていきましょう。

2つの新しいエンジン、2つの新しい航空機

ビジネス航空エンジンメーカーは最近、2機の新型ビジネスジェットの組み立てが始まる中、

新エンジンプログラムが大きく前進したことを発表しました。

GEはボンバルディア社にパスポートエンジンを出荷しており、同社の新型グローバル8000

の組み立てが進行中です。また、ロールスロイス社はダッソー社初のファルコン10Xに搭載さ

れるパール10Xエンジンの試験を終えており、同じく組み立てが開始されています。

ボンバルディアは2025年後半にグローバル8000の就航を計画しており、ダッソーは2027

年にファルコン10Xの納入を開始する予定です。

GE、グローバル 8000向けパスポート生産準備

グローバル8000量産モデルのパスポートエンジン(クレジット: GEエアロスペース)

GEエアロスペースは、カナダのメーカーであるボンバルディア社が初の超長距離型グローバル

8000量産モデルの組み立てを開始するのに伴い、同社へのパスポートエンジンの追加納入の

準備を進めています。

「エンジンは準備完了です」と、GE エアロスペース コマーシャル エンジン アンド サービス

のビジネス航空部門ゼネラル マネージャー、メルヴィン ハード氏は語ります。グローバル

7500 に搭載されているパスポート バージョンと機械的に同一で、一部は 8000 テスト プロ

グラム用に改造されていますが、このエンジンには最新のアプリケーション用に更新された

フル オーソリティのデジタル エンジン制御ソフトウェアが組み込まれています。

「ボンバルディアが機体の航続距離をさらに 300 nm 延長したことで、グローバル8000 の

航続距離を伸ばす能力が実現しました」とハード氏は言います。「これは、機体のスロットル

を実際にマッハ 0.94 まで押し上げることができることに加えて、すべて同じエンジンを使用

しています。私たちが行っているのは、機体に必要な能力を得るためにエンジンのソフトウェ

アを調整することだけです。」

2025年後半に就航予定のグローバル8000は、マッハ0.85の長距離巡航速度で8,000海里の航

続距離を誇り、ロンドンとパース、シンガポールとロサンゼルスなどの都市間を結ぶことがで

きる予定です。

2018年後半からグローバル7500で運用されているパスポートは、「非常に好調です」とハー

ド氏は言います。「現在、7500で運航している航空機は190機近くあります。エンジンを開

発する際には、航空機に実際に必要な能力の向上が何であれ、常にそうであるように、エンジ

ンがその能力を備えていることを確実にしたいと考え、十分な事前検討を行いました。」

ハード氏によると、2013年に初走行したこのエンジンは、競争力も維持しているということ

です。「現在、このクラスのどのエンジンよりも、燃費が約2~3%優れています。」

GE のビジネス ジェット ポートフォリオの他の分野では、エンジン メーカーである同社は、

HA-420ホンダジェット向けのホンダとの HF120 合弁事業の 20 周年を迎えます。「こ

れは当社にとって素晴らしいプログラムでした」とハード氏は語ります。「当社は現在、こ

の超軽量ジェット機分野で 250 機以上の航空機を運用しています」と同氏は付け加えます。

ハード氏は、長年にわたる CF34 プログラムも GE にとって引き続き頼りになる存在であると

語ります。「信じられないかもしれませんが、40 年経った今でも、このエンジンは生産され

ています」とハード氏は言います。1971 年に A-10 攻撃機用の TF34 軍用エンジンとして初

めて製造された商用 CF34 は、1982 年に試験デビューを果たし、さまざまな地域向けおよび

ビジネス ジェット機に使用されてきました。そのほとんどはボンバルディアとエンブラエルの

関連製品です。

「現在もチャレンジャー650でこれを使用しており、ビジネス航空分野だけで1,500万時間以

上の飛行時間を記録しています。私たちにとって素晴らしいプラットフォームとなっていま

す」とハード氏は指摘しています。

グローバル8000 2機の航空機が1機になったような

グローバル8000(クレジット:ボンバルディア)

ロールスロイス、ファルコン10Xのパール10X飛行試験を終了

ロールス・ロイス社のパール10Xエンジン(右側)(クレジット: ロールスロイス)

ダッソー・ファルコン10Xの初号機の組み立てが始まる中、ロールス・ロイス社は超長距離ビ

ジネス航空機のパール10Xエンジンの広範囲な飛行試験キャンペーンを完了しました。

ロールスロイス社のボーイング747-200飛行試験機の内側右翼から前方に突き出した特別設計

の試験パイロンに搭載されたこのエンジンは、3月下旬から6か月間にわたり25回以上の飛行

試験に使用されました。試験は、テキサス州ウェーコのL3ハリス社から改造された航空機に搭

載されたエンジンをアリゾナ州ツーソンのロールスロイス社の飛行試験基地に搬送することか

ら始まり、9月26日にアリゾナ州、ニューメキシコ州、カリフォルニア州、太平洋上空で行わ

れた4時間半の最終試験飛行で終了しました。

ロールス社によると、このエンジンは高度 45,000 フィートまで、速度マッハ 0.90 まで

テストされ、キャンペーン中は良好なパフォーマンスを発揮しました。「テストの目的はすべ

て達成されました。パール 10X エンジンの性能と操作性には非常に満足しています」と製造

元は付け加えました。飛行テスト プログラムには、さまざまな速度と高度でのエンジン性能と

操作性のチェック、飛行中の再点火、ナセルの防氷システムのテスト、さまざまな高度での

ファンの振動テストが含まれていました。

推力定格 18,000 ポンドの ファルコン エンジンは、ロールス社のアドバンス 2 実証高圧

(HP) コアをベースにしています。チタン製のブリスク ファンと 4 段低圧タービンを特徴とす

るこのエンジンの 10 段 HP コンプレッサーには 6 段のチタン製ブリスクが組み込まれており

2 段 HP タービンはシュラウドレスです。また、このエンジンの低排出ガス燃焼器には、積

層製造タイルも組み込まれています。

ダッソーが2021年に選定したパール10Xは、翌年初めに初飛行を行った。ロールスロイス

は、このプログラムに地上試験および認証用のエンジン3基と飛行試験ユニット2基を保有して

おりどちらも747の最近の評価に続いて、ファルコン10Xの飛行試験で使用するためにダッソ

ーに出荷される予定です。

ダッソーが開発するファルコン10Xのイメージイラスト(クレジット:ダッソー社)

グローバル8000 VS ファルコン10X

まだ開発段階ではありますが両者のカタログ姓のを比較してみます。

グローバル8000   

最高速度 マッハ 0.94、8,000 海里の航続距離、最大 4,200 海里の超高速巡航距離

最高巡航高度は41,000 フィート(12,500m)、最大12人乗り(パイロット2人含む)

ファルコン10X

最高速度マッハ0.925、7500海里の航続距離

最高巡航高度は51,000フィート(15,500m)、最大19人乗り(パイロット2人含む)

なお、最大巡航高度や速度についてはエンジン性能だけではなく、機体の空力的な形状や

与圧機能などにより性能が異なります。

新しい Leap-1A タービンブレードが認証間近

リープ1Aエンジン

Leap-1Aエンジン(クレジット: エアバス)

サフラン社のオリビエ・アンドリース最高経営責任者(CEO)は、CFM Leap-1Aエンジン用

の新型高圧タービンブレードは規制当局の承認が近づいており、年末までにオーバーホール工

場への出荷が開始される予定だと述べました。

同社の最近の収益報告の電話会議で、アンドリースは、新しいブレードが「今後数週間以内

に」認証を受ける予定であることを確認しました。承認が得られれば「特にMRO市場向けに

一部を出荷する準備が整う」ということです。

新しい HPT ステージ 1 ブレードは、特にほこりや汚染された空気のある過酷な環境で、予想

よりも飛行時間が短くなる原因となっていたホット セクションの耐久性の問題に対処するのに

役立ちます。GE エアロスペースは、耐久性の問題が特に顕著であるインドなどの場所で観察

されたブレードの摩耗を再現するために、オハイオ州エベンデールの本社で特注の粉塵吸入装

置を開発しました。

新しいブレードは、2015 年 11 月に FAA と欧州連合航空安全機関によって共同で認定され

たLeap-1A の生産ラインに組み込まれます。予定外のエンジン取り外しや予期せぬ航空機のダ

ウンタイムに対処する運航者にとって重要なことですが、改良されたブレードはオーバーホー

ル中に改造用に利用できるようになります。

エアバスA320neoファミリー向けの改良型Leap-1Aブレードの開発は、ボーイング737

MAX全機種に搭載されているLeap-1Bブレードの同様の取り組みより約1年先行していると

アンドリース氏は述べ、9月中旬にMAXの生産を停止させた国際機械工協会のストライキは、

新しいブレードの承認スケジュールに影響しないと予想されると付け加えました。

「来年末にはボーイング社によるLeap-1Bの認証が得られると期待している」と同氏は述べ

ました。「そのためにはボーイング社の支援が必要だが、これは2025年末の予定だ」

Leap 1 粉塵摂取テスト

Leap 1 粉塵摂取テスト(クレジット: GEエアロスペース)

Leap、GTFエンジンの課題

2024年初頭のCFM Leapとプラット・アンド・ホイットニーPW1000G(GTF)搭載航空

機の活用に関する同様の分析を再検討します。

2023 年の初めには、Leap と GTF の両方で、月間の非飛行日数の割合がほぼ同じでした。

非飛行日数はさまざまな理由による可能性があり、必ずしもメンテナンスの理由に関連してい

るわけではないことに注意してください。

CFM Leap は、2023 年初頭の非飛行日数が 20% から 2024 年 5 月には 1 桁に減少しま

した。1 月5 日のアラスカ航空 1282 便でドアプラグが破裂し、ドアプラグが取り付けられて

いたボーイング737-9 が飛行停止となったため、2024 年 1 月には非飛行日数が一時的に増

加しました。今後数か月間に導入される予定の高圧タービンとノズルの改良に加えてLeapエン

ジンには耐久性の改善がまだ行われています。

一方、プラットGTFはより波乱に富んだ時期を過ごしています。2023年7月に高圧タービン

1番および2番ブレードの問題が発表されて以来、運航者が検査と技術更新のために航空機か

らGTFを取り外すため、飛行不可日数が増加しています。利用できる予備エンジンの数が限ら

れているため、GTFのターンアラウンドタイムはまだかなり長いため、一部の航空機はより長

い期間地上にとどまっていることになります。しかし、データには小さなプラス面もあるよう

です。飛行不可日の割合は、発表から2024年3月まで一貫して増加しています。2024年4月

以降、その割合はわずかながら減少していますが、それでも減少している。サプライチェーン

労働力、エンジンショップの可用性の問題によりこれらのエンジンの更新が長引いているため

プラットは飛行不可日のピークは2024年第2四半期になると予測しています。このロングテー

ルは今後も続くと予想されます。

究極の疑問は、私たちは実際に飛行しない日のピークに達したのか、ということです。今後

数か月間、私たちはこの数字が横ばいになるか、あるいは(願わくば)減少するかを監視し

ていきます。

サラムエアのCEO、リープの飛行時間を嘆く

サラムエア A321neo

サラムエアは、Leap 1A を搭載した A321neo 機の耐久性に特に問題を抱えています。(クレジット: エアバス)

サラムエアの最高経営責任者(CEO)エイドリアン・ハミルトン・マンズ氏は、オマーンに拠

点を置くLCCがCFMインターナショナルのLeap 1Aエンジンを搭載した新世代航空機を過

酷な環境で運航する際に直面する課題について概説しました。

「この地域の航空会社のCEO全員と話をしましたが、彼らは皆同じ​​問題に悩まされています。

それは、エンジンのメンテナンスに必要な離着陸時間です」とハミルトン・マンズしは語りました。

同氏によると、LCCの中東およびインド地域では、1年間の飛行で10キログラム(22ポンド)

の塵がエンジンを通過することになるという。

サラムエアの旅客機は、6 機のエアバス A320neo と 7 機の A321neo で構成されてお

り、すべて Leap 1A を搭載しています。Leap を翼から取り外す頻度について尋ねられた

CEO は「頻度はさまざまです。A321neo の場合は 1,800 サイクル後、またはわずか 13 か

月後に翼から取り外します」と答えました。

サラムエアは2018年に運航を開始しました。「3、4年前、サラムエアは全エアバス

A320neoファミリーの機体で成長することを約束しました。機内にはA320ceoはいません。

当社は[飛躍]に対して100%のリスクにさらされています」と彼は言います。「長期的には

A320neoファミリーの機体を運航することで、この戦略は報われるでしょうが、今後18か

月間は大きな痛みに直面することになります。」

CFM からはいくつかの修正案が提案されており、ハミルトン・マンズ氏は、これらの修正案

が状況を改善すると確信しています。たとえばエンジンが停止すると冷たい空気をエンジン

に吹き込むリバース ブリード システム (RBS) の改造キットなどです。「エンジンが熱で焼け

付くのを防ぐためです」と同氏。「2 つ目は、ほこりや砂で磨耗したコンプレッサー ブレード

の交換です。」

サラムエアの現在の定時運航率は 79% です。最も暑い季節にはエンジンの問題が悪化し、

この数字は 65% に落ち込みました。この不足分を補うために、より成熟した CFM56 エンジ

ンを搭載した A320ceo を機体に追加することが合理的かどうか尋ねられた CEO は、この航

空機を調達して機体に追加するのに 1 年かかるだろうと答えました。「どんなに善意を持って

も、うまくいかないのです」と同氏は言います。「これは当社にとって価値ある戦略ではあ

りません。」

LCC が Leap で問題を抱えている一方で、ハミルトン・マンズ氏は、相対的に見れば、

A320neo ファミリーのもう 1 つのエンジン オプションであるプラット・アンド・ホイット

ニーのギアード ターボファンではなく、CFM エンジンを運用できることは「幸運」だと語り

ます。「プラットに比べれば、確かに優れています」と同氏は言いました。

サフラン、リープ部品の修理需要の急増に対応

CFM Leapエンジン艦隊が拡大し、その製造元であるGEエアロスペースとサフラン・エアクラ

フト・エンジンがメンテナンス、修理、オーバーホール(MRO)拠点のネットワークを形成

するにつれて、サフランは部品修理の能力を構築しています。

サフランによると、Leapを搭載した航空機は現在4,000機近くが運航中で、その数は2030年

までに倍増する見通しです。同社は2025年から28年の間にエンジンショップ訪問用の設備の

大半を整備する予定ですが、部品修理の需要はもう少し後に伸びると予想しています。部品修

理ネットワークの拡大は2030年以降も続くと、顧客サポート、サービス、MRO担当のサ

フラン・エアクラフト・エンジンズEVPのニコラス・ポティエ氏は10月29日、サフラン・

エアクラフト・エンジンズ・サービスのブリュッセル施設を訪れた際に語りました。エンジン

が成熟するにつれて修理の範囲が広がり、エンジニアがメンテナンス作業を行わなければなら

ないエンジンの部分がますます増えると彼は語ったのです。

「新しい部品と交換するのではなく、部品を修理することができればできるほど、メンテナン

ス業務における競争力が高まります」と彼は言います。「したがって、エンジンのメンテナン

ス ネットワークと並行して、部品の修理ネットワークを構築する必要があります。私たちの

戦略は、各コンポーネント ファミリの修理元を 3 つの地域、つまり南北アメリカ、アジア

太平洋、そして 3 番目にヨーロッパ、中東、アフリカに置くことです。」

ポティエ氏は、10月25日のアナリスト向け電話会議でサフランのCEOオリビエ・アンドリー

ス氏が述べた「当社は修理能力で強力なプレーヤーになることを決意した」という言葉に同調

しました。サフランは年間250以上の修理プロセスを開発しています。

まず、サフランは既存の CFM 56 修理能力を基盤に構築しています。フランスのシャテルロ

ーとメキシコのケレタロにあるサフランの拠点は、Leap エンジンの修理技術を拡張しています。

シャテルローにある MTU Aero Engines との Ceramic Coating Center と、フロリダ州ミラ

マーにある GE との PTI という 2 つの合弁会社もLeap 修理のノウハウを追加しています。

Leap の生産拠点では、修理の専門知識が追加されます。これは、フランスのコメルシーとケ

レタロの複合ファンブレードの場合に当てはまります。さらに、2027 年にフランスのレンヌ

にタービンブレードの製造拠点を開設するというサフランの計画には、部品の修理の側面が含

まれています。同社は、年間 36,000 個の部品を修理できる能力を見込んでいます。

オハイオ州メンターでは、サフランがコンポーネント・リペア・テクノロジーズの買収手続き

を進めています。同社はケーシング修理を専門としており、サフランは買収が年末までに完了

すると予想しているのです。

まとめ

航空機のエンジンは過酷な環境でもその性能を最大限に発揮しなければなりません。

灼熱の砂漠でも極寒の大地でも。過酷な条件であればあるほどメンテナンスが重要になります。

私も以前の航空会社で何度かエンジンの不具合に遭遇しました。大事には至りませんでしたが

一歩間違えば大きな事故に繋がる可能性があります。2つのエンジンが同時に壊れることは

滅多にありませんが、2009年のアメリカ、ハドソン川でのUSエアの不時着水事故は記憶

に新しいと思います。その時は離陸直後に鳥の群れに突っ込みエンジンが両方とも壊れてし

まったのです。エンジンを構成している部品の中でブレードと呼ばれる羽根のような金属板

があります。強度的に強化していますが、外部圧力には弱く、また繰り返し疲労にも弱い

性質があります。そのため日々の金属疲労点検や、表面の傷などに気を配るなど細心の注意

が必要です。

ハドソン川の軌跡

パイロットも、細心の注意を配りながら快適性の面も考慮して、急なパワーを使ったりせず

エンジンになるべく負担をかけないようなオペレーションも必要です。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

 

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