カーデザイナーが創るeVTOLのキャビン

ドローン、空飛ぶ車
Supernal cabin concept

皆さんこんにちは!

昨日の記事で、大阪のSkyTaxiと業務提携した韓国のPLANAのeVTOLがIFデザインアワード

で賞を獲ったお話をしました。そのデザインを担当したのがSupernalという企業です。

ヒュンダイの子会社、Supernal

Supernalは、韓国の自動車メーカー・ヒュンダイから生まれた企業です。

2021 年 11 月、ヒュンダイはアーバン エア モビリティ部門の名前を Supernal に変更し、

2028 年に eVTOL 最初のモデルSA-1 を市場に投入する計画を発表しました。

Hyundai's S-A1 eVTOL personal air vehicle.

PLANAのeVTOL SA-1(画像:PLANA)

Supernal によると、5 席のキャビン (パイロット用の 1 席を含む) は、厳しい航空安全基準

を満たし、大量生産を可能にするヒュンダイの自動車設計プロセスと材料を利用しています。

IF デザイン アワードの発表では、このコンセプトは、自然界から教訓を得たバイオミミクリ

ーの原則に基づいていると同時に、安全性、乗客の快適性、環境への責任を最前線に置いてい

ると評価されました。

IFデザインアワードで受賞したSA-1 eVTOLのキャビン(画像:PLANA)

キャビンのフィッティングには、高度なリサイクル可能な軽量炭素繊維強化熱可塑性樹脂、

耐久性のある植物由来の革、再生プラスチック生地、責任を持って調達された木材が使用さ

れています。シートフレームも、機体製造工程で余った原材料を使用しています。

キャビンには人間工学に基づいた形状の座席があり、Supernal は繭のような感触を与える

と述べています。また、乗客にデバイスの充電ステーションと身の回り品の収納コンパート

メントを提供する展開可能な座席コンソールも備えています。キャビンのドアやシートの背

もたれには、乗降を補助する「グラブハンドル」を装備。車のサンルーフに着想を得たオー

バーヘッド照明は、飛行のさまざまな段階に合わせて調整され、メーカーが言う光療法効果

を提供します。

5月15日にベルリンで開催されたコンテストには 56 か国から 11,000 のエントリーがあり

ました。審査員は、アイデア、形状、機能、差別化、および影響力を含む基準に基づいて候

補者を審査しました。

フランク・スティーブンソンがeVTOLのデザインを担当

eVTOL 市場への参入者は、航空機の内装と外装の両方に関してのレベルを上げようとしてい

るのは Supernal だけではありません。中国に本拠を置くAutoFlight、高級自動車デザイナ

ーであるフランク・スティーブンソン氏を機体のデザイン ディレクターに任命しました。

モロッコのカサブランカ出身の高級車デザイナーのフランク・スティーブンソン氏(1959年

生まれ)は、過去30年に渡りMINI、フェラーリ、マセラティ、フィアット、ランチア、アル

ファ ロメオのデザイン ディレクターを務めてきました。近年 Lilium Aviation に移り、eVTOL

航空機として知られる空飛ぶタクシーの設計チームを率いるとともに、中国の大手テクノロジ

ー企業である Suning Intelligent Technology のデザイン マスターを務めています。

AutoFlight の Prosperity I eVTOL 航空機。

フランク・スティーブンソン氏は、AutoFlight の Prosperity I eVTOL 航空機の設計を

支援しています。(画像:AutoFlight )

AutoFlight Europeのマネージング ディレクターであるマーク・フェミング氏は、次のよう

に述べています。「彼のユニークなスタイルは、フローとダイナミクスの自然な感覚に触発

された、滑らかで彫刻された整頓されたダイナミックな感触を備えたProsperity I eVTOL

航空機のデザインですでに明らかです。」

キャビンを超えて、フランク・スティーブンソンのチームは顧客のエンジニアと協力して、

機体を含む製品のあらゆる側面の設計の優先順位と要件に対処し、グランドハンドリングな

どの航空機の運用要件を考慮します。「これは共同作業です」と彼は語りました。

「エンジニアと協力して実現可能なものを作りたいと思っていますが、同時に見栄えもよく

なければなりません。それは、デザインとエンジニアリングのバランスを取ることです。」

AutoFlight、Lilium、Archerなどの企業では、フランク・スティーブンソンのデザインが社

内またはサテライト デザイン スタジオとして機能しています。「eVTOL 業界で働くには、

主にテクノロジーが非常に新しいため、大きな柔軟性が必要です。安全性と比較可能性に関

するすべての規制は、私たち自身の設計作業と同時に開発されています」とフランク・スティ

ーブンソン氏は述べています。

Lilium Jet eVTOL 機。

Lilium Jetのキャビン(画像:Lilium)

高度なエア モビリティ セクターのハイテク感とは対照的に、デザインはペンと紙から始ま

ります。これは、同社が人間味を維持するための重要な前提条件であると感じています。

初期段階では、チームは「可能性の全帯域幅」を理解するために複数のコンセプトを検討

してから、重量や安全性などの要因を考慮してアイデアを凝縮および改良します。

「この段階で、2D 画像を 3D 仮想および物理モデルに変換し始めます」とスティーブンソ

ン氏は説明します。「ここでは、航空機の設計時に発生する人間工学的およびパッケージン

グ上の課題の多くを解決できます。」

外部機体の設計の多くの側面は、翼やプロペラのアーキテクチャなどのコア要因によって決

まります。設計者が一般的に自由度が高いのは航空機の内部です。

「インテリア [eVTOL] のコンセプトは非常にユニークです」とスティーブンソン氏は振り

返ります。「これは新しいタイプのスペースであり、非常に興味深いパッケージです。抗力

を減らすために断面積を最小限に抑える必要があると同時に、キャビンは乗客にとって十分

に快適で広々としたものでなければなりません。」

NASA 衝突試験 EVTOL コンセプト キャビンで乗客の安全性を研究

eVTOLのキャビンはデザインだけではありません。第一に安全であることが必要です。

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、緊急着陸時に何が起きるのかという衝突実験を

行いました。

新しい高度なエア モビリティ技術の安全性を研究するための継続的な取り組みの一環と

してNASA は最近、緊急着陸の場合に乗員に何が起こるかを調べるために、衝突試験ダ

ミー人形を乗せたモックアップ eVTOL 航空機キャビンの衝突実験を行いました。

衝突試験のために、NASA は 6 つの擬人化試験装置 (通称「衝突試験ダミー」と呼ばれ

る) を、翼やプロペラが取り付けられていない eVTOL キャビンに搭載しました。ただし、

翼の構造、ローター、およびバッテリーを表すために頭上の質量が追加されました。研究

者は、さまざまなサイズのダミーを使用して、衝突がさまざまな年齢の乗員にどのように

影響するかを研究しました。実験中、NASA は、エネルギーを吸収する新しいストローク

シートと、NASA が開発したエネルギーを吸収する複合床材もテストしました。 

衝突試験後の航空機キャビン コンセプト内の衝突試験ダミーの拡大図。

さまざまなサイズの衝突試験用ダミー 6 個が試験品に搭載されました。(写真: Dave Bowman/NASA)

NASA ラングレーの構造ダイナミクス部門のリサーチ アシスタントであるジャスティン

リテル氏は、次のように述べています。

研究者は、完全に占有されたキャビンを数メートル空中に持ち上げ、火薬カッターでサポ

ートケーブルを解放し、ある角度で地面に向けてスイングさせ、eVTOL 航空機が推進力の

喪失やその他の緊急事態が発生した場合に墜落する可能性がある方法をエミュレートしま

した。 キャビンは墜落でひどく損傷しているように見えますが、NASA は実験が成功した

と見なしています。

An eVTOL cabin concept lies crumpled on the ground after a crash test

試験品は衝突試験中にひどく損傷したようです。(写真: Dave Bowman/NASA)

「このテストは、ラングレーの衝突耐性チームにとって大きな成功でした」とリテル氏は

述べています。「6 人乗り、高翼、オーバーヘッド マス、マルチ ローター車両を表す

eVTOL航空機コンセプトのテストに成功し、200 チャンネル以上のデータを取得し、20 以

上のオンボードおよびオフボード カメラ ビューを収集しました。」

「私たちはまだデータとビデオを調べていますが、これらの結果は暫定的なものですが、こ

のテスト中に 2 つの主要なイベントが発生したことがわかります」とリテル氏は付け加え

ました。NASA が説明した最初のイベントは、床の押しつぶしとシートのストロークでした。

NASA によると、エネルギーを吸収する座席と床は期待どおりに機能しているようで、衝突

試験用ダミー人形への衝撃が軽減されました。 

リテル氏 が言及した 2 番目のイベントは、衝突直後の頭上の構造物の崩壊でした。機体前

部のダミー乗客は機体に押しつぶされたようには見えませんが、後部座席の状況は有望では

ないようです。NASAは声明の中で、「衝突試験用ダミー人形に対するオーバーヘッド構造

の崩壊の影響はまだ決定されていません。」

「私たちの計算プレテスト モデルは、頭上の構造物が破損するまでの複合材の変形をうまく

予測できました」と リテル 氏は述べています。「しかし、計算モデルは、テストで見られた

ような全体的な崩壊を予測しませんでした。」

NASA は、この衝突試験のデータがこれらのシミュレーションを改善し、より正確で現実的

なものにするのに役立つと述べています。研究者はまた、2023 年後半に実施される予定の

次の eVTOL 落下試験を考案するために、このデータを使用する予定です。

まとめ

一般に自動車や航空機のデザインは、見た目の美しさだけではなく、機能性も重視

しています。特に機体が軽ければ軽いほど、飛行性能が良くなります。また、形状も

空力特性を考えた丸みを帯びた「たまご型」が採用されています。

構造面でいいますと、落下衝撃に強いことはもとより、騒音軽減などの観点から気密性

も考慮に入れなければなりません。

「安全性」、「快適性」、「経済性(空力特性)」が常に求められます。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

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