10周年を迎えたeVTOL(前段)

ドローン、空飛ぶ車

皆さんこんにちは!

2023年1月に行われました第 10 回年次 VFS Electric VTOL シンポジウムについて

のレポートを紹介します。VFSとは、Vertical Flight Society(垂直飛行協会)の略で、

垂直飛行技術の進歩に取り組んでいるエンジニア、科学者、その他の人々のための世界

で唯一の国際技術協会です。

今回は毎年開催されている年次総会が10回目を数えました。電動垂直離着陸 (eVTOL)

業界関係者および新規事業者のための世界有数の技術会議になりました。2023年1 月

24 ~ 26 日にアリゾナ州メサで開催されたこの会議の参加者は500 人を超えました。

認証問題

毎年開催される このeVTOL シンポジウムは、eVTOL 業界が現在どこに位置付けら

れ、どこに向かっているのかを評価するための定期的に評価、検証を行っています。

初期のころのシンポジウムでは、さまざまな航空機構成の技術的な実行可能性と効率

性に焦点が当てられ、その後、アーバン エア モビリティ (UAM) エコシステムの開発

に焦点が当てられました。今日、米国、ヨーロッパ、およびその他の国での eVTOL

航空機認証の注目度は高くなっています。

米国連邦航空局 (FAA) は、2022 年 5 月中旬に、翼のある eVTOL 航空機は FAR

(アメリカの航空技術基準)の下で認証されなければならないと認証の方向性を変更

しました。 変更したFAR-21.17(b) は、垂直飛行を考慮する特別な条件を備えた小型

飛行機のFARパート 23 ではなく、「パワーリフト」カテゴリーの「特別クラス航空

機」を新たに設けました。例えば、EHang や Volocopter のマルチコプター デザイン

など、翼のない eVTOL 航空機のみが 21.17(b) を使用する計画でしたが、翼のある

eVTOL(JOBY、Wiskなど)もこの規程を準拠することができるようになりました。

FAAが今回この様な基準を事実上緩和した背景には、アメリカのeVTOL業界がヨーロッ

パや中国などから後れをとっているからです。しかしながら、パイロットの認証につい

てはまだ課題が残ったままです。また、ヨーロッパ、中国など国際的な eVTOL 認証の

調和も、今後の課題です。

航空機オーダーブック

シンポジウムで発表した eVTOL 航空機開発者の多くは、新しい投資、戦略的パートナー

シップ、および航空機の注文を強調しました。これは、コロナのパンデミックにより

2020年から2022年までにeVTOL産業が停滞したからです。そのため、2022年末から

2023年にかけて、大手企業からとの出資比率が上がりました。特にヨーロッパに遅れを

とっているアメリカでは、持続可能な航空の重要性に対する認識が高まっています。

ユナイテッド航空は、地域パートナーの Mesa Airlines とともに、eVTOL 航空機で

Archer、eCTOL 地域航空機で Heart AerospaceZeroAvia と提携して、CRJ550

リージョナル ジェットを水素電気推進に改造しました。アーチャーの最初のユナイテッド

ルートは、ニューアーク リバティー国際空港 (EWR) とダウンタウン マンハッタン ヘリ

ポートを結びます。

デルタ航空は、最初はニューヨークとロサンゼルスで、乗客向けの「自宅から空港へ」の

eVTOL サービスを含む、Joby との商業および運用パートナーシップに 6,000 万ドルを

投資しました。

アメリカン航空は、2021 年に 100 機のバーティカルエアロスペース VX4 を条件付きで

発注し、2022 年に 50 機の航空機を前払いしました。同社はまた、ZeroAvia に投資して

おり、CRJ900 リージョナル ジェットを改造するために最大 ZA2000-RJ パワートレイン

を取得する可能性があります。

eVTOL 航空機を発注している他の航空会社には、アメリカの Global Crossing Airlines

Republic AirwaysSkyWest Airlines などがあります。ヨーロッパではエア グリーン

ランド、イベロジェット、ITA エアウェイズ、ヴァージン アトランティック。アジアの

全日本空輸、アセント、アビエア、日本航空、シドニー水上飛行機。ラテンアメリカの

Azul と GOL。中東のファルコン・アビエーション・サービス。アフリカのファハリ航空。

FedEx Elroy Air と提携し、2023 年に Elroy Air Chaparral ハイブリッド eVTOL を

使用してミドルマイル ロジスティクスをテストしました。UPSBeta Technologies

Alia-250 eVTOL 航空機の 10 件の確定注文を出し、DHL は固定翼の世界の Eviation Alice

eCTOL 航空機を注文しました。

世界最大のヘリコプター オペレーターの 1 つである Bristow Group は、ベータ Alia-250、

Elroy Chaparral,Overair Butterfly,Vertical VX4、および Eve の eVTOL の注文を行ってい

ます。Bristow には、Lilium Jet を購入するオプションと、Electra eSTOL 航空機を注文す

るオプションもあります。

防衛関連

今年のシンポジウムでは、eVTOL と自律型 VTOL のテーマを組み合わせたおかげで、例年

よりも多くの防衛プレゼンテーションが行われました。プレゼンテーションには、国防研究

計画局 (DARPA)、米陸軍および米空軍の AFWERX ユニット、および AFWERX の Agility

Prime プログラムを通じて契約を結んでいるいくつかの企業によるものが参加しました。

もちろん、2022 年 2 月 24 日にロシアが新たにウクライナに侵攻したことで、現代の戦争

における VTOL ドローンの新たな用途が浮き彫りになり、米国とその NATO および世界の

同盟国が軍事力を強化する緊急の必要性が浮き彫りになりました。

最近の研究には、Silent Marauder Quiet VTOL と、2006 年に初めて遠隔飛行した無人

ボーイング A/MH-6 ヘリコプターの電動バージョンである Electric Little Bird が含まれ

ます。

自律性に関して言えば、DARPA は Aircrew Labor In-Cockpit Automation System

(ALIAS) をサポートしており、2 月 15 日にケンタッキー州フォート キャンベルにある

米陸軍施設でシコルスキー UH-60 ブラック ホークの初の無人飛行を実現しました。

2022 年 5 月 5 日。Black Hawk には、ALIAS の中核を成すシコルスキーの MATRIX

自律技術が後付けされました。

自律貨物

Talyn Air は、「VTOL の柔軟性を備えた固定翼性能を提供する」世界初の多段式

eVTOL 航空機を開発しています。会社の創設者は、多段式打ち上げシステムが標準で

あった SpaceX で働いていました。

現在までに、同社は米空軍、米海軍、Agility Prime から 440 万ドルを受け取り、

空軍のさまざまな固定翼資産を持ち上げて展開する VTOL 車両を開発しました。

1 年前、Elroy Air の CEO である Dave Merrill は、協会の第 9 回年次 eVTOL シン

ポジウムの一環として、Hiller Aviation Museum で新しい Chaparral 自律型ハイブ

リッド電気 VTOL 航空機を発表しました。航空機には、モジュール式のカーゴ ポッド

と、カーゴ ポッドをピックアップして預けるロボット システムが装備されており、

ポッドの位置を正確に特定するために超広帯域ビーコンが使用されます。Elroy は、

航空機が中距離の物流に使用され、給油、定期検査、保守、保管施設を備えたハブか

らハブアンドスポーク方式で運用されることを想定しています。

FedEx で計画された試験と Bristow からの注文に加えて、Elroy Air はヘリコプターの

リース業者である LCI から最大 40 の Chaparral を注文しています。同社はセルフスト

レージ機能について Agility Prime と積極的に協力しているため、Chaparral はロッキ

ード C-130 ハーキュリーズに迅速に展開でき、翼の回転とテール フォールドを組み込

むことで無人 eVTOL の輸送も可能になります。

現在 AIRO グループの子会社である Jaunt Air Mobility の CEO である マルティン・

ペレア氏は、同社が Journey eVTOL の旅客バージョンと貨物バージョンの両方をどの

ように開発しているかを説明しました。貨物バージョンにはより大きな容積のキャビン

があり、Jaunt は VerdeGo Aero と協力してハイブリッド電気推進システムの開発に

取り組んでいます。VerdeGo の第 1 世代の推進システムは Continental ディーゼル

エンジンと組み合わせられていましたが、同社は最近、Jet-A 燃料を使用して第 2 世代

のハイブリッド電気システムを駆動できるドイツのディーゼル エンジンを選択しました。

SURVICE Engineering の CTO 兼事業開発担当副社長である クラーク・ダテラー氏は、

米軍との電動 VTOL UAS 開発の取り組みについても話しました。同社は2015年以来、

英国を拠点とするMalloy Aeronauticsと提携しており、将来の戦術補給無人航空機シス

テム(TRUAS)の要件を満たすことを意図して、米国海軍と海兵隊の顧客であるTRV-150

プラットフォームを最適化し、装備し、テストしました。

まとめ

今回の会議は、10周年とうい節目の年でもありました。老舗のJOBYなど蒼々たる

メンバーが開発の終盤にかかっています。昨年のFAAの規程の緩和により、JOBY

やWiskなどの固定翼があるeVTOL企業にとっては追い風になって、商業化へ加速して

行けるでしょう。ただし、全ての問題が解決したわけではありません。パイロットや

オペレーターの訓練問題などの重要な課題が山積みです。FAAだけではなくEASAや

中国航空局など世界で統一した規程を望みます。何よりも安全性が一番大事です!

次回は、会議の後半部分のJOBYやAIRなどの企業の報告と現状分析を掲載します。

どうぞお楽しみに!

今回は、新しい企業名やFARの規則などが出てきましたが、これに関しては回を改め

まして詳しく解説していきます。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

 

 

 

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