皆さんこんにちは!
今朝、ニュース速報で「ジェットスター、緊急着陸!」の文字が飛び込んできました。
ジェットスター、成田ー福岡便、GK501便が中部セントレア空港に緊急着陸しました。
理由は、爆破予告です。
それでは、爆破予告があったときに航空会社やパイロットはどうするのでしょうか?
爆破予告、どうしますか?
2023年1月7日、今日から3連休の始まりで、日本の空港は旅行客でごった返して
います。お正月に帰省できなかった人、ふるさとで成人式を迎えようとして飛行機を
予約した人も多かったと思います。そんな人たちの楽しみを奪ってしまったのが
今回の爆破予告という卑劣なテロ行為です。
NHKニュースより
報道によりますと、成田国際空港発福岡国際空港行、ジェットスター501便は、
乗客134名(幼児2名)を乗せて、成田空港を7日の朝6時35分頃に離陸しました。
その後爆破予告を受けて、中部セントレア空港に緊急着陸しました。
爆破予告があったときの対処法
各航空会社には、爆破予告があったときの対処法が定められています。これは、各
航空会社によってマニュアルが異なりますので大まかな流れだけを見てみます。
① 爆破予告があったことを安全管理を統括している部署に伝える
② 情報を分析して、真偽を決定する
③ 便が指定されている場合には、当該パイロットに伝達、協議する
④ 場合によっては航空機の機内捜索を実施する
⑤ 一番近くの空港に着陸する
などの手順が考えられます。ここでは秘密に関わることが多いので一般的なことしか
言えませんが、まずは乗客の命を第一に考えて行動します。
難しい判断、緊急着陸空港
今回の事件では、いつの時点で爆破予告があって、中部セントレア空港に緊急着陸を
すると決定したかはわかりませんが、パイロットは難しい判断を迫られたと思います。
どこが難しいのでしょうか?ポイントを見ていきましょう。
① 高度の処理
今回の成田発福岡行は、成田を離陸して東京の上を通過して山梨、富士山を左に見な
がら、琵琶湖の上を通り大阪、京都、岡山、広島、山口県の下関を経由して福岡空港に
着陸します。
経路は概略です
この便では、出発が6時過ぎと早いために、成田を離陸して巡航高度に上昇する前に
直行ルートが指示されます。ちょうど富士山の手前くらいで巡航高度38000フィート
(約12000メートル)の高度に到達しています。富士山付近から中部セントレア空港までは
直線で約180km(130マイル)しかありません。時間で20分もあれば着いてしまいま
す。緊急事態ですので速度を出していきますので実際には15分もかからないでしょう。
この短時間で、降下することがはたして可能なのか?高度処理などを考えて、もう少し遠い
空港まで行くことが適当なのかを判断しなければ行けません。
また、使われている爆弾が気圧反応型なのかも判断材料になります。
スイス史上最悪の航空機爆破事件
1970年2月21日、スイス・チューリヒ発イスラエル・テルアビブ行きのスイス航空330便が
離陸直後に墜落し、乗客38人と乗員9人全員が犠牲になったスイス史上最悪の飛行機爆破テ
ロ事件。
「330便は墜落します」。アルマン・エティエンヌ副操縦士は管制塔に英語でそう告げた。
「さようなら、みなさん」。午後1時34分に発信されたこのメッセージが、彼の最期の言葉
になった。
その約15分前、気圧反応型の爆弾が、飛行機の後部貨物室で爆発した。機体は米国のジェッ
ト旅客機、コンベア990コロナード。乗員は飛行機を方向転換させ、緊急着陸を試みたが、
コックピット内は煙が充満し計器が読めない。進路は西にずれ、電源を失った機体はドイツ
国境近くのビューレンリンゲンの森林地帯に墜落した。
これは今から53年前に、スイスで起こった気圧反応型の爆弾が爆発して多くの人が犠牲に
なった航空機事故(テロ事件)です。気圧の変化を感知して起爆装置が作動する仕掛けです。
② 空港の選択
緊急着陸できる空港を選択することも重要です。近ければ良いというものではありません。
その空港は着陸できる十分な滑走路の長さがあるか。
その空港は救急車や消防車、警察などすぐに支援してもらえる設備が整っているか。
その空港は爆発物処理能力のできる能力、場所を有しているか。
これに関しては、日本の大きな空港(成田、羽田、中部、関西、伊丹、福岡、那覇など)には
それぞれ爆発物を処理できるような場所(誘導路だったりする)が決められています。
できれば、同社の就航している空港(事後の支援や案内を受けることができる)や、滑走路が
複数あり他社の運行に支障をきたす可能性が少ない、なども考慮することもあります。
そして何と言っても1番には、気象条件です。その空港が、着陸に適している気象条件(天気)
であることが最も重要です。また、風の向きによって、なるべくまっすぐ(最短距離)で着陸
できる滑走路方向であるかも考慮してルートを決めます。
地上と客室とのコミュニケーション(連携)
そして、緊急着陸すると決めたら後は、その準備です。
まずは管制機関に、情報を適切に伝え、新たな飛行ルートや着陸までの許可をもらいます。
緊急事態を宣言していますので、優先的に取り扱いはしてくれますが、自分たちがどのように
したいのかを簡潔に伝え、理解を得ることが大切です。
それが決まれば、到着時間や支援してもらう事項を会社に伝えます。
これらのやり取りは、無線やデーターリンクを通じて行いますので、コミュニケーションが
たいへん重要になってきます。
そして、客室との話し合いです。緊急の時は客室乗務員が直接コックピットに入ってきて
打ち合わせ(ブリーフィング)を行います。今回のように、着陸後に緊急脱出を行う場合には
入念な準備が必要です。そのための時間を作るのもパイロットの役目です。
全て終わったら、後は操縦に専念するだけです。落ち着いて!
過去の爆破予告
昨年の9月28日に西九州新幹線に爆破予告がありました。JR九州が一時、全線で運転を見合
わせるなど利用者に影響が出ました。西九州新幹線は長崎駅と佐賀県の武雄温泉駅を結ぶ66
キロの路線で9月23日に開業したばかりでした。
2008年8月8日、中国国際航空(エアチャイナ)の名古屋発重慶行き便が、電子メールでの
爆破予告を受け取ったのを受け、途中で中部国際空港に引き返しました。警察によると、
途中で引き返したCA406便は日本時間午後4時ごろに無事に着陸。乗員乗客71人全員
が機体から避難した後、警察が機内を点検したが、これまでに不審物は見つかっていません。
この時は、北京オリンピック関連で中国国内でも同様の爆破予告が続きました。
この2つの事例からわかることは、何か(西日本新幹線開業、北京オリンピック)重要な
イベントがあった時などに犯罪が起こっています。今回のジェットスターの事件に関しては
原因はわかりませんが、多くの人に被害や損害を与えてことは間違いありません。
その他の難しい判断を迫られる緊急事態
その他にパイロットを悩ませる緊急事態は多くあります。
機材の故障
飛行機の故障などは、緊急事態の中でも遭遇することは多いです。大小の故障はありますが
1番やっかいなのは油圧関係の故障です。飛行機は、操縦系統やギアやフラップなどの着陸
装置の作動には油圧を使用しています。自動車でもブレーキには油圧が使われています。
その油圧がなくなってしまうと、操縦できなくなるのです。でも、ご安心ください。
油圧系統や電気系統など重要な装備は、二重三重の安全策が施されていますので、全てが
なくなることは滅多にありません。また、我々パイロットは、十分に訓練をしていますので
素早く対処はできるのです。
自然の驚異
予期できないのが、自然です。お天気はある程度予想はできるのですが、やっかいなのは
地震や火山の噴火などの超自然現象です。
地震が起きると、しばらくは着陸できません。滑走路にヒビが入っていないかとか点検に
時間がかかります。だいたいそういうときは天気も良くて、燃料もあまり持っていない
時に起こります。さぁ、燃料が無いぞとなると慌てて別の空港を探さなければいけません。
大きな空港になればなるほど、代替えの飛行場がすぐにいっぱいになってしまうのです。
空港が再会するまで粘るのか、とっとと他の空港に行くのか判断に迷うところです。
急病人発生!
1番やっかいなのが、急病人の発生です。
今まで元気だった人が突然倒れて意識を失ったり、呼吸困難に陥ったりなど、医療の知識が
乏しい者にとっては判断が難しいのです。よくあるのが、お酒の飲み過ぎや体調不良で乗っ
てきたお客さんです。上空に上がると気圧が変化します。それで急変する人が多いようです。
また、気圧の急変で幼い子供は上手く耳抜きができないために痛みを訴えます。
よくドラマなどで、ドクターコールをする場面がありますが、実際にも行います。
お医者さんでなくても、看護師の方もいらっしゃるときは助かります。
このように急病人が発生したときは、時間との闘いなのでたいへん忙しいのです。
また、大きな空港といっても夜間は空港にお医者さんが居ない場合もあります。そんな時は
空港の外から救急車を呼ばなければなりません。地上との連携がたいへん重要になってきます。
まとめ
今回の爆破予告事件は、乗務員の適切な判断で事なきを得ましたが、この様な卑劣な行為
は無くなりません。早期の犯人逮捕と共に再発防止の対策を考えなければいけません。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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