FAA 特別連邦航空規則に関する業界のコメント

ドローン、空飛ぶ車

皆さんこんにちは!

2ヶ月前にFAA(アメリカ連邦航空局)が、AAM(アーバンエアモビリティ)業界に新た

な規制案を発表し、今週初めに意見募集を締め切りました。

これまでの意見を元に正式な立法が行われます。はたしてどのような意見が出たのでしょ

うか?

特別連邦航空規則(SFAR)コメント

パイロットの認定と運用に関するコメント期間は今週月曜日に終了し、一般航空製造協

会(GAMA)が新しい先進的な導入を検討している複数の会員企業を代表してコメント

を提出しました。規則案は、2025年に米国でeVTOL航空機を導入するための基盤を形

成することを目的としています。

GAMA の提案では、航空機メーカーが懸念している SFAR の 4 つの側面が強調されてい

ます。航空機の二重制御装置。フライトシミュレーション訓練装置。また、電気航空機が

緊急時に安全に着陸できるようにするために必要なエネルギー(バッテリー、燃料など)

予備の要件も定められています。業界団体は、SFARのすべての要素をカバーする実績ベ

ースの規制枠組みを求めており、このアプローチはAAMの早期導入を支援するために不

可欠であると述べています。

GAMAの提案の中には、eVTOLパイロットの初期段階に、既存の飛行機またはヘリコプ

ターのカテゴリー型式証明書にパワーリフト型式等級を追加して認定を取得し、各航空機

タイプの性能特性に基づいてパワーリフト運用に適切であると協会が主張する運用ルール

を適用するよう求めるものもありました。同グループはまた、FAAに対し、提案されてい

るSFARの「従来の燃料ベースのエネルギー貯蔵量と、各航空機プラットフォームの二重

制御バリアントの設計と認証に対する時代遅れの要件」をカバーする部分に対処するよう

求めました。

「私たちは、eVTOL航空機をパワーリフトとして型式認定する決定により、産業界と政府

の両方に多大な取り組みと課題が生じたことを認識しており、FAAに対し、非常に広範な

グループから提供された安全性に基づくコメントの背後にある専門知識を十分に考慮する

よう要請します。AAM のメーカー、オペレーター、業界団体です」と GAMA の社長兼

CEO のピート・バンスは述べました。「我々は、最終的なSFARが初期パイロット認証へ

の実践的な道筋と、ICAOにおける米国主導のイニシアチブと一致する適切な運営枠組みを

確立することを保証しなければならない。そうすることで、安全性を確保し、米国および

世界中で業界の成長を促進するための明確な規制枠組みが提供されるでしょう。タイムリ

ーかつ実際的な規制上の確実性を提供できなければ、高度なエアモビリティにおける米国

業界の世界的リーダーシップが危うくなるだろう。」

バンス氏は、FAA自身が、今から24か月も経たない2025年初めに米国でeVTOL航空サー

ビスを開始するという目標を支持していると述べました。同氏は、規制当局の「イノベー

ション28 AAM実施計画」が先月公表されたことを指摘し、具体的には、2028年のロサン

ゼルス夏季オリンピックに間に合うよう、主要な早期導入都市でこれらの業務を「大規模

に」統合することを求めています。

GAMA の FAA への提出は、NBAA(全米ビジネス航空協会)、航空宇宙産業協会、航空

機所有者およびパイロット協会、実験航空機協会、国際ヘリコプター協会、全米航空輸送

協会、垂直飛行協会を含む他の複数の利害関係者グループによって支持されました。

提出書類におけるNBAA の意見は、AAM 円卓会議および新興技術委員会の成果に基づい

ています。同協会は火曜日の声明で、FAAの提案は既存のICAO基準と合致していないため

「多くの電動リフト製造業者や運営者にとって不必要な負担をもたらし、シングルセット

(バッテリーのみ)の電動リフトに対して不可能な義務を設ける危険性がある」と主張し

ました。

業界団体は、草案どおり、SFAR が AAM セクターの可能性を発揮できないことを意味す

る可能性があると懸念しています。「航空従事者の資格に関する提案は、ほとんどのAAM

航空機メーカーが米国市場に参入する際の障壁となっており、提案されている運航規則は

パワーリフト航空機にとって不平等な競争条件を生み出し、垂直リフト離着陸によっても

たらされる多くの利点を活用できていない」と共同提出文書で述べました。

懸念事項

各業界が、コメントで懸念している大きな2つの事項について説明します。

予備燃料問題

FAAは、従来の航空機と同様に出発地から目的地までの燃料と予備燃料を搭載する

用に求めています。その予備燃料とは、もし目的地の天候が悪化したときのために

着陸できる他の空港(代替飛行場)までの燃料に予備として30分の燃料を搭載する

ように求めています。

FAAは、これらの基準を全てのAAMに適応させようとしています。

皆さん考えてみてください。全電気式エネルギー(バッテリーのみ)のエアカーは

最大で15分から20分しか飛べません。例えば、ジョビーアビエーション(米)の

S4 eVTOL航空機は、現在15分しか飛べません。今後バッテリーなどの開発が進み

最終的には約240km、150分の飛行を目指しています。この計算で行くと巡航速度

は100km/h程度。性能上300km/h出ると想定して200km/hが最適巡航速度と

仮定します。240kmはおおよそ1時間。そのうち30分は予備燃料。代替え飛行場分

を差し引くと実質20分の飛行時間(66km)程度しか飛行できなくなります。

このようにせっかくの性能を無駄にしてしまいます。そもそも、eVTOL航空機は

適当な場所(平たく整備された場所)があれば安全に降りることができるのが

「売り」なのですが。

パイロットのライセンス問題

AAMの航空機には、完全自動化(パイロット無し)の前段階として、操縦者(オペ

レーター)を搭乗させようとしています。専門家の意見では、実際に運用が始まっ

てから約10年はパイロットが必要であるとの考え方が大半です。理由としては、

インフラストラクチャーの整備や完全自動化のメカニズム、ネットワークの構築、

大衆の自動化に対する意識改革などが挙げられます。

FAAは、初期のパイロットに対して、パワーリフトというライセンスの範囲内での

業務にしようとしています。そもそも、パワーリフトというものは何なのでしょうか?

パワーリフト機はBell Boeing V-22 (オスプレイ)やLockheed Martin F-35 (ライ

トニング II)などのミリタリー用機体であって、ビジネスで広く利用されているパワ

ーリフト機体は存在しません 。そのため、パワーリストライセンスは、はっきり言っ

てこの2機種のためだけにFAAが創ったものです。通常、アメリカの軍のパイロットは

10年すると恩給が受けられます。その時に本人が希望すれば、民間航空会社への就職を

斡旋してもらえます。私が、FAAのATPLを取った学校も同期のほとんど(10人中8人)

は軍出身者でした。彼らは全て固定翼(戦闘機や輸送機)のライセンスと飛行時間を

持っていましたが、V22やF35のパイロットのパワーリフト飛行時間は何の役にも立た

ないのです。飛行経験として「ゼロ」なのです。

v22オスプレイ画像 に対する画像結果

V-22 オスプレイ

皮肉なことに、今回のFAA 特別連邦航空規則(案)では、民間のパイロットは誰一人

として持っていないこのパワーリストライセンスが必要なのです。

詳しくはこちらのブログを参考にしてください。

FAA、eVTOLパイロットの訓練要件を公表
皆さんこんにちは! 先日の6月7日に、FAA(アメリカ連邦航空局)は、eVTOL(電動垂直離着陸機)航空機 のパイロット訓練と運用規則に関する提案を発表しました。 新型パワーリフト航空機のパイロットの訓練要件に関する協議を開始 FAAは、新...

まとめ

案の定、各団体は猛反発しています。

今回のFAAのAAMの規則改定(新設)は、結局のところ迷走しています。2ヶ月前にこの

案が出たときに、あまりにも時代遅れの内容に驚きました。次世代型のエアモビリティを

推進することに逆行しています。FAAは、中国やヨーロッパのAAMに先駆けて規程を整備

し、リーダーシップを取ろうとの思惑でしたが、当たり前に業界の反対に遭って先行きが

不透明です。どこの国の役人も「石頭」なのかもしれません。

また、LSA(軽スポーツ航空機)の改定もどうなるのでしょうか?

新たなるLSA基準、アメリカの提案
皆さんこんにちは! 7月19日に、FAA(アメリカ連邦航空局)がライトスポーツ航空機(LSA)についての大きな 法改正を行うと発表しました。 MOSAIC 特別耐空証明の近代化 (MOSAIC) 改革 FAAは7月24日に規則制定案通知(N...

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

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