偽のGPS電波が航空機を危険にさらす

飛行機

皆さんこんにちは!

自動車のカーナビゲーションは、今や無くてはならないものになっています。

日常でもお店の検索、位置情報などスマホを通じて行うことで、知らない土地に行っても

迷うことなくたどり着けます。

その情報の元となっているのが、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)

です。

それは、航空機も同じ様にGPSからの信号を元に運行(飛行)を行っています。

しかし、もしその情報が偽物だったとしたら・・・

GPS スプーフィング

偽 GPS 発生の作戦グループ (画像: 作戦グループ)

GPSなりすましはイラン国境の広い範囲で発生した。(画像: 作戦グループ)

イラン国境付近で起こっていること

スプーフィングとは、相手に対して真実でないことを信じ込ませて騙してしまうという行為

を指しています。

イラン国境沿いでの最近のGPSスプーフィング事件は、特に夜間、特に航空機のナビゲーシ

ョンシステムが干渉を受けやすい場合に、「推測航法」能力を訓練する重要性を浮き彫りに

している、とセキュリティ会社の航空責任者ヤン・ピーター・ヴァン・ヴィーゲン氏は警告

しています。

この事件はまた、GPS に依存したナビゲーション システムが脆弱になる可能性があること

を強調している、と同社 幹部は付け加えました。

UM688航空路のイラク/イラン航空管制に沿って飛行していた少なくとも12機の航空機が偽

のGPS信号に遭遇しました。ほとんどの場合、信号はナビゲーション システムの完全な故障

を引き起こすほどの完全性と強度を持っていました。これは警告なしに発生し、一部のオペ

レーターはコースから 60 海里から 80 海里離れていることに気づきました。この事故には

エンブラエル・プラエトル600からボーイング777までの航空機が影響を受けたのです。

ヴァン・ヴィーゲン氏は、これらはGPSなりすましや妨害の最初の例ではないと述べました。

同氏は、ギリシャとトルコの間やウクライナとロシア周辺など、軍事演習や地政学的な緊張

が原因で、GPS妨害(GPSが短期間断続的に停止する原因)が発生し、おそらく頻度は低い

がなりすましが発生したさまざまな地域があると指摘しています。推奨されているルート上

でも妨害行為やなりすましの事例はありましたが、それは 5 か月で 16 件だったのに対し、

短期間では 12 件でした。

しかし、興味深いのは、最新の事例が一か所だけではなく、イラン国境に沿ってどのように

広がったかであると同氏は指摘。「これまでに発見された場所よりもはるかに広い範囲にあ

る」と彼は付け加えました。

「地図を見ると、そこには3つのルートがあり、UM688はイラン国境のすぐ隣の十字架を通

過する最も近いルートです」とヴァン・ヴィーゲン氏は語っています。アルメニア/アゼルバ

イジャン地域で紛争が勃発し始めて以来、このルートはより頻繁に使用されるようになりま

した。「そのときから多くのルート変更が始まった」と。

ヴァン・ヴィーゲン氏は、偽の GPS インスタンスの蔓延を興味深いと述べましたが、大型

旅客機からビジネス ジェットに至るまで、航空機の種類も興味深いものであり、その中には

「偵察に使用される飛行機に非常によく似ているものもある…それはすべて偶然の可能性が

あります」と述べています。

同氏はさらに、他の多くの人がなりすましに遭遇した可能性があるが、パイロットは気付か

なかった、および/または航空機のバックアップシステムがなりすましから保護されていた

と示唆しました。

ヴァン・ヴィーゲン氏は、そのような場合には安全性に重大な影響があると表明しました。

これらの航空機には、地形または空中への制御飛行の可能性を回避するための交通衝突や

回避システムなどのシステムが依然として搭載されていますが、コースを外れて敵対地域に

侵入すると、これらの航空機は関係国(この場合はイラン)からの保護措置に対して脆弱

になります。

同氏はまた、特に各国がVORや無指向性ビーコンなどの従来のナビゲーションシステムが

不要になったため廃止し始めている場合、測位ナビゲーションをGPSに100%依存している

航空機について懸念を表明した。「これらの新しいシステムは 100% GPS です」とヴァン・

ヴィーゲン氏は言います。

同氏はさらに、軍用とは異なり、一般に民生用のGPSは暗号化されていないため、「非常に

簡単に乗っ取られてしまう」と懸念を表明しました。

なりすましの一件で注目されたOps Groupによると、同チームは、飛行中の777型機が「

基本的に管制官に『今何時、ここはどこ?』と尋ねていた」という報告を検討したといいま

す。このシナリオは考えられないように思えますが、これらの新しい GPS スプーフィング

信号がもたらす潜在的な問題を浮き彫りにしています。」

問題の検出に関しては、長時間のフライトでは「[フライト管理システム]を継続的に見ている

わけではない」ため、ナビゲーション上の短時間の変更が気付かれない可能性があると同氏は

述べました。飛行機が回復して元の位置を維持した場合、なりすましは発見されず、報告され

ない可能性があります。

ノータムは発行されており、EASA などの規制当局も認識していますが、ヴァン・ヴィーゲン

氏は、これらの問題に対する認識をさらに高める必要があると懸念しています。

なりすましの報告がないか FIR NOTAM(航空情報)をチェックすること、リスクが高い地域

に入る場合は IRS と完全に連携すること、個人のデバイスで正確な時刻を確認することなど、

考えられる予防策のリストを提供しましたが、これは長期的なものであると ヴァン・ヴィーゲ

ン氏は述べています。同氏は、軍と同様の民間航空用の暗号化されたGPSについての議論が行

われることを望んでいると述べた。テクノロジーは存在します。

ドローンとは異なり、有人航空機には航空機を乗っ取ろうとする悪者に対する自然な保護機能

があると同氏は指摘しました。「我々にはまだ人間的な要素が残っている。[飛行機のナビゲー

ションから]切断して手動で飛行することもできます。」

しかし、領空侵犯が起こる前に乗組員が管制を掌握するという認識が必要です。「さもなけ

れば、最悪の場合、例えばイランに侵入すると、彼らはあなたを妨害して着陸させ、飛行機

を没収して乗組員を連行することになる」可能性があります。

それがトレーニングが非常に重要である理由だと彼は付け加えました。「彼らは推測航法を

ほとんどやらず、飛行学校ですぐに [Garmin] G1000 を使い始めるか、運が良ければ

G3000 から始めることもあります。しかし、彼らは基本的なナビゲーションを学ぶこと

をやめています。」

同氏はさらに、GPSなりすましは海運業にとって新しいことではなく、その場合は緩和策と

して天体航法が使用されると指摘しています。飛行機ではこれはより困難であり、船では針

路を変えるまでにより多くの時間がかかる、と同氏は認めています。「航空の世界では、よ

り迅速に行動する必要があり、紛争地域上空を飛んで飛行機が行方不明になっているために、

MH17(イラン上空で撃墜されたマレーシア航空17便)のような事故がまた起こってほしく

ないのです。」

同氏はさらに、昼間はパイロットが川や道路、その他の航行上の目印を探すことができるの

に対し、夜間は推測航法が難しいことを指摘。「しかし、夜は下が雲に覆われているので、

それは非常に困難です。」

パイロットの訓練に加えて、企業は適切なリスク評価を行う必要があります。「彼らは何が

起こっているのか、つまり目的地までのルートで何が起こっているのかを知る必要がある」

と同氏は述べ、一部の通信事業者がこの分野でコストを節約しようとしてグーグルなどの検

索エンジンに頼っていると指摘しました。

「実際に何が起こっているかに気づいていない、それが恐ろしいところだ」と彼は言います。

「私たちはそれをいつも見ています。運航部門内では現状に満足しているのです。」

FAAが警告を発令

FAAは9月26日の夜、イラン国境沿いのイラクを通過する飛行経路でのGPSスプーフィング

事件の増加を踏まえ、「民間航空業務に対する飛行の安全上のリスク」について運航者に

警告を発しました。

今週初め、OPSグループは、  UM688航空路を走行する約12機のビジネスジェットや旅客

機に偽のGPS信号が送信され、その多くが航行能力を失った事件を追跡していると警告しま

した。

それ以来、Ops グループはそのような報告を受け続けており、その数はほぼ同じ状況の

20 件にまで増加していると述べています。「ナビの故障の影響は明らかになりつつあり、

ある操縦士は許可なくイラン領空に進入するところであり、また別の操縦士はドーハの目的

地までずっとATCベクトルを要求して出発した」と作戦専門家は述べました。

そのような報告の 1 つは、ヨーロッパからドバイに向かうエンブラエル レガシー 650 から

のもので、OPSグループに対し、航空機と両方の iPad の GPS が失われたと伝えました。

さらに、内部基準システム (IRS) ナビゲーションも失敗しました。「自動操縦装置が左右に

向きを変え始めたので、何かが間違っているのは明らかだった」と乗組員は報告しています。

その直後、乗組員はエラーメッセージを受け取りました。彼らがレーダーベクトルを要求し

たとき、航空機は軌道から80海里(130km)離れていることが示されました。

ボンバルディア チャレンジャー 604 の乗組員も、イラクからドーハまでの移動手段を必要と

していました。OPSグループによると、乗組員は次のように詳述しています。「バグダッドの

北近くで、私たちがなりすましを受けたに違いない何かが起こりました。私たちはナビ関連の

ものをすべて紛失し、IRSは私たちが70〜90マイル漂流していたと示唆しました。」

OPSグループは、イランが国境のすぐ上に2つの大きなミサイル基地を持っていることを考慮

して、これらの失敗による安全保障上のリスクを強調しました。また、インシデントは ATC

の支援によって解決できますが、その他のあらゆる種類の障害が発生すると、作業負荷が極大

になる可能性があります。

OPSグループとは、パイロット、フライトディスパッチャー、スケジューラー、管制官など、

国際線運航の最前線に立つ人々のための会員組織です。

航空機の航法

航空機は、前述のGPSと機体のIRS(inertial reference system:慣性航法システム)が

あります。

IRS は、コンピューターシステムであり、飛行機の位置、姿勢、ヘディング、加速度を

レーザージャイロを使用して表示します。

GPSとは、Global Positioning System(全地球測位システム)を略した言葉で、GNSS

(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)のひとつです。

衛星を使った位置の測位システムをすべてGPSと呼んでしまうことが多いのですが、GPS

は正確には米国が開発したものを指します。GNSSにはほかにも、日本の準天頂衛星

(QZSS)やロシアのGLONASS、欧州連合のGalileoなどがあります。

GPSは、1970年代に米国が軍事目的で開発に着手しました。1990年代初めには運用が開始

され、現在では30機以上の衛星が地球の衛星軌道を周回しています。当初民間では精度を

落としたものを利用していましたが、2000年にアメリカのクリントン政権がGPSの精度を

劣化させる措置を解除しています。

GPS衛星は、地上から約2万キロメートル上空の衛星軌道を周回しています。GPS衛星は

地球の周りに30個以上あり、それぞれ6つの軌道を12時間で1周します。GPSはこれらの

衛星のうち、4つの衛星から電波を受信して位置を計測しています。GPSの受信機は4つの

衛星からの電波を受け取り、3次元測位という方法(計算)で位置を割り出します。

このとき、受信機の位置は3つの衛星で、時間的なズレを4つ目の衛星で補正(誤差を少な

くする)し、正確な位置を特定しています。

航空機の場合は、最低6つの衛星の情報を利用しています。その内精度の良い(近くにある)

衛星の信号を受信しています。

GPSとIRSは、独立した慣性航法システムですので、どちらかが正しくなければ警報が出る

ようになっています。また、GPSの信号が不正確(信頼がない)場合にはタの衛星の信号を

受信しますが、一定の数の受信ができない場合も警告メッセージが出ます。

最近は、昔のように紙の航空路誌(航空路が載っている地図)、離着陸に必要な出発進入

方式が記載されたチャートは、全てiPadに入っています。このiPadもGPSからの情報を参考

にしているのです。

まとめ

GPSは、今や我々の生活には欠かせないものになっています。

特に、航空機はGPS無しでは運航すらできなくなっているのです。

GPSは、元々、軍事用に開発されたものです。実際にその衛星の個々の精度は、軍事秘密で

す。ひとたび有事が起これば、宇宙では軍事衛星への攻撃が始まります。妨害電波、疑似信

号、偽情報(信号)など様々な妨害が起こります。もちろん衛星そのものを攻撃します。

小型のドローンさえGPSを利用しているのですから。

パイロットは、昔に戻って、目視で位置を確認したり、地形や天体(太陽、月、星の位置)

を使って飛行しなければなりません。

今は、ウクライナやロシア上空は民間航空機は飛行することはできません。また、アゼルバ

イジャンやイランなど、紛争が起こっている地域も要注意です。間違って領空侵犯した場合

には、問答無用で撃墜されるかもしれません。パイロットは、常に自分の位置を把握しなけ

ればいけません。便利なシステムに慣れすぎる(頼りすぎる)ことがないように。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

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