皆さんこんにちは!
SAF(持続可能な航空機燃料)の活用が提唱され20年あまりが経ちました。
しかし実際には、目に見えないものですからその実態はわかりません。地球温暖化の大きな一手には間違いないのですが・・・
SAFの現状と今後の取り組みについて見てみましょう。
持続可能な航空燃料(SAF)
SAFの始まり
SAFは、2000年代後半に航空業界で地球温暖化対策への関心が高まったことを背景に、
本格的な開発が始まりました。特に、2008年に米国国防総省が化石燃料への依存度を減
らすためにSAFの使用を検討し始めたことが、その実用化を大きく加速させる契機となりました。
その後、2011年にASTMインターナショナル(米国材料試験協会)がSAFの国際規格を
初めて承認したことで、商業運航での使用が可能になりました。これにより、SAFは研究
開発段階から実際のフライトで利用される段階へと進み、SAFの普及に向けた最初の大きな一歩となりました。
世界での生産量と利用割合
世界中でSAFの生産は増えているものの、その供給量はまだごくわずかです。
国際航空運送協会(IATA)によると、2024年のSAF生産量は約190万キロリットルで、
これは世界の航空燃料需要全体のわずか0.53%にしかすぎません。
この数値は、航空業界が掲げる2050年カーボンニュートラル目標達成に向けて、今後
SAFの生産と利用を劇的に増やす必要があることを示しています。例えば、EUでは
2025年までにSAFの混合率を2%、2030年までに6%、2050年までに70%へと段階的に
引き上げる義務化案を定めており、世界各国がSAFの普及に積極的に取り組んでいます。
日本のSAF普及目標
日本政府は、2030年までに国内航空会社が使用する航空燃料の10%をSAFに置き換える
という目標を設定しています。この目標達成のため、経済産業省や国土交通省が中心とな
り、国産SAFの製造・供給に向けた支援や制度づくりを進めています。
具体的な取り組みと実績
- 国産SAFの製造・供給:
- コスモエネルギーグループ: 2025年度より、大阪の堺製油所にあるプラントで、国内で回収された廃食用油を原料としたSAFの製造を開始。年間約3万キロリットルの生産能力を持ち、ANAやJALといった国内航空会社への供給が始まります。これは、国内初の本格的な国産SAFサプライチェーンの構築として注目されています。
- 出光興産やENEOS: 各社がバイオエタノールや廃プラスチックなどを原料とするSAF製造技術の開発を進めており、2026年以降の商用化を目指しています。
- 航空会社の取り組み:
- ANAとJAL: 定期便でのSAF使用を積極的に行っており、企業や自治体と連携したSAFの利用促進プログラムを展開しています。例えば、JALは「JAL Corporate SAF Program」を通じて、企業の出張や貨物輸送におけるCO2排出量削減を支援しています。
世界のジェット燃料市場は2032年までに倍増する見込み
スカイクエスト・テクノロジー・コンサルティングの最新レポートによると、世界のジェッ
ト燃料市場は今後7年間で2倍以上に拡大すると予測されています。2024年末時点で
3,510億ドルと評価されているこの市場は、新たな合弁事業や大規模生産活動の拡大に
より、2033年までに年間7,500億ドルを超えると同社は予測しています。
スカイクエストのアナリストによると、航空機の設計とエンジニアリングの革新によって
もたらされる燃料効率の向上は、コストを下げることで最終的には航空燃料市場に利益を
もたらし、「炭素排出量の少ない燃料の需要の高まりを考えると有益」だということです。
航空会社をはじめとする運航会社は、世界的な持続可能性目標の一環として、持続可能な
航空燃料(SAF)を使用して総排出量を削減しています。これにより、SAFの需要が大幅に
増加するだけでなく、インフラ整備や投資機会も拡大しています。報告書によると、SAF
生産における再生可能原料の使用は、これらの資源が広く市場に流通していることから、
混合前のSAFの競争優位性を高める新たな機会を生み出しています。
市場拡大における最大の障害は、需給のミスマッチにより上昇している原油価格の高騰に
よる燃料費の高騰だと報告書は指摘しています。世界経済の減速と一部の西側諸国の金利
上昇を受け、サウジアラビアは最近、世界供給量の2%に相当する原油生産を削減しました。
世界のSAFの動向、2025年SAF義務化レポートより
SAFは、航空機からのCO2排出量を大幅に削減する有効な手段として、世界的に導入が進められています。各国や地域によって、そのアプローチは大きく異なります。
EU(ヨーロッパ連合)の現状と目標
EUは、世界で最も積極的にSAFの普及を進めている地域です。その取り組みは法規制とインセンティブ(補助金)の両面で進められています。
- 目標: ReFuelEU Aviationという規制により、航空燃料供給業者にSAFの供給義務を課しています。
- 2025年: 燃料の2%をSAFに
- 2030年: 燃料の6%をSAFに
- 2050年: 燃料の70%をSAFに
- 積極的な理由: EUは、排出量取引制度(ETS)を導入しており、SAFの利用を促進するために、従来のジェット燃料との価格差を埋める補助金を提供しています。また、欧州の主要航空会社も積極的にSAFの購入を進めており、市場全体で脱炭素化を強力に推進しています。
米国(アメリカ合衆国)の現状と目標
米国は、法規制よりもインセンティブ(税制優遇措置)を中心にSAFの普及を図っています。
- 目標: 「SAFグランドチャレンジ」という目標を掲げ、2030年までに国内市場で年間30億ガロン(約1,135万kL)のSAFを供給することを目指しています。
- 積極的な理由: インフレ削減法(IRA)によって、SAF生産者に対する税額控除(最大1ガロンあたり1.75ドル)が提供されており、これがSAF市場を牽引しています。州レベルでも独自の税制優遇措置を設けており、企業がSAFを製造・購入しやすい環境を整えています。
中国の現状と目標
資料によると、中国はSAFの普及に関して「政策を公表済み」の段階にあります。
- 目標: 2022年から2025年の間に5万トンのSAFを供給するという目標を設定しています。
- スタンス: EUや米国に比べると、まだ初期段階の目標であり、法的義務ではなく推奨にとどまっているため、相対的に消極的と言えます。しかし、大規模な生産能力を持つプラントも稼働しており、今後の動向が注目されます。
その他の国々
- 日本: 2030年までに国内航空燃料の10%をSAFに置き換えることを目指しています。
- シンガポール: 2026年までに1%、2030年までに3〜5%のSAF導入を義務付ける計画です。
- インド、韓国、タイ: 各国も同様に、今後の導入目標を設定・検討しています。
さて、皆さんはこのレポートを見てどう思われましたか?
SAFは必要なものと解っていますが、原料となる穀物(トウモロコシなど)が投機の対象となっており、その価格は跳ね上がっています。
SAFに『夢』を託して良いのか?皆さんはどう考えますか?
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