皆さんこんにちは!
燃料電池開発企業のH2FLY が牽引している欧州プロジェクト HEAVEN(天国)。
着々とプロジェクトは進行していきます。天国への階段を一歩一歩昇っています。
欧州プロジェクト HEAVEN
欧州プロジェクト HEAVEN
欧州委員会(EU)は、旅客機向けの水素推進技術を開発するプロジェクト
HEAVENの担当者としてH2FLYを任命しました。プロジェクトHEAVENは、
航空輸送からの炭素排出を排除するための EU の Horizon 2020 研究開発事業の
一部です。プロジェクトHEAVEN委員会とスペイン、フランス、ドイツ、スロベ
ニアの政府が共同で資金を提供しています。
HEAVEN の主な目標は、高出力密度燃料電池システムと高エネルギー密度液体
水素燃料システムに基づいた世界初の航空機パワートレインを設計、開発し、
既存の 2 ~ 4 席の航空機に統合して飛行試験を行うことです。
それを可能にするのが、極低温液体水素貯蔵技術と加圧型燃料電池システムです。
極低温液体水素貯蔵技術
極低温液体水素貯蔵技術は、トヨタ自動車 が燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicle
: FCV)のMIRAI(ミライ)に2014年に導入された技術です。
トヨタ自動車FCV:MIRAI(ミライ)(画像:トヨタ自動車)
FCVは,搭載タンクから供給された水素と空気中から取り込んだ酸素を用いて燃料電池
で発電し,得られた電気を使ってモーターを駆動して走行するクルマです。水素はこの
世で最も軽い分子であり,密度が小さいため,長い距離を走行するために多量の水素を
取り扱うには大きな容積が必要となります。一度の燃料補給で500 km以上の走行距離
を実現するために,FCVには最大70 MPa(約700気圧)の水素を充填可能なタンクが
搭載されており,将来的にはさらに100 MPa(約1000気圧)まで高くする予定です。
このような水素を液体の状態の方が容積は小さくなり,取り扱いやすくなります。実際に
岩谷産業(株) の試算 によると,圧縮水素トレーラー約12台分に搭載可能な水素量を液体
水素トレーラー 1台で運搬可能であり,輸送コストが大幅に低減します。つまり,今まさ
に始まった水素社会の効率的運用には,液体水素の活用が不可欠です。
水素は-253°Cという極低温で液化します。この状態を液体水素と呼んでいます。
これを可能にしたのが、極低温液体水素貯蔵技術なのです。
今後の水素需要の計画では2050年には年間2000万トンもの水素の需要が予想されてい
ます。このためには、大量の液体水素貯蔵する必要があります。ただ、液体水素貯蔵で
実用化しているタンク(球形)は1250m3/基程度度なので、需要を満足するためには
大型化が必要になります。
大型化するにしても、-253°Cの液体水素を貯蔵するタンクの素材が今正に研究の真っ
最中です。FCVの水素タンクにはカーボン繊維を樹脂で固めて強化したプラスチック
(Carbon Fiber Reinforced Plastics: CFRP)が使用されており,軽量性と高強度を
同時に実現しています。しかし,燃料補給のために水素ステーションで高圧ガスを急速
充填すると,断熱圧縮によりガスの温度が上昇して樹脂が溶け,水素タンクが破損して
しまう恐れがあります。候補材としてステンレス鋼とアルミニウム合金などが上げられ
ています。
加圧型燃料電池システム
加圧型燃料電池システムは、システムの電力密度を 2 倍から 3 倍増加させることが
実証されており、より高い温度で動作できるため、必要な冷却作業が減り、重量、
電力消費、および熱管理の体積が削減されます。
H2FLY、新しく開発された液体水素タンクの地上充填試験に合格
航空機用水素燃料電池システムの開発者であるドイツに本拠を置く H2FLY は、同社
の HY4 航空機に搭載する、新しく開発された液体水素タンクの地上充填試験に合格
したことを発表しました。
H2Fly と Air Liquide は、HY4 試験機の極低温タンクに液体水素を充填。(画像:H2Fly)
HY4 航空機に搭載された最新の液体水素貯蔵タンク(画像:H2FLY)
H2FLY のプロジェクト パートナーである Air Liquide によって設計および提供さ
れた充填手順は、液体水素貯蔵システムを燃料電池システムと結合して完全な水素
電気パワートレインを形成する次の結合テストの準備として行われました。
HY4 航空機:左右に2人ずつ計4人乗りの試験機(画像:H2FLY)
H2FLY
H2FLY は、シュトゥットガルトのドイツ航空宇宙センターとウルム大学の 5 人の
エンジニアによって設立されました。同社は、産業と科学の両方でドイツとヨーロ
ッパのパートナーシップの強力なネットワークを持っており、現在、技術開発と商
業化を加速するために取り組んでいます。
今後数年で、水素電気航空機は最大 1,240 マイルの距離で 40 人の乗客を輸送で
きるようになると予想されています。
air taxi :4-6 passengers with ranges well over 500km
business aircraft :19 seat aircraft with ranges up to 1500km
regional aircraft :40 seat aircraft with ranges up to 2000km
H2FLYが開発予定の3機種(画像:H2FLY)
H2FLY は 10 年以上にわたって研究とテストを行ってきました。その結果、2016 年
に初飛行した水素電気推進の 4 人乗り航空機 HY4 が開発されました。
HY4 航空機(画像:H2FLY)
2020 年に、H2FLY は、完全に冗長なパワートレイン アーキテクチャを備えた最新
世代の HY4 航空機を飛行させる許可を与えられました。同社は 100 回以上の離着陸
を行い、水素電気推進ソリューションの適用可能性を実証することに成功しました。
2021 年に、同社は航空機メーカーの Deutsche Aircraft と戦略的パートナーシッ
プを締結しました。これにより、H2FLY の水素燃料電池技術を搭載した CS25 クラス
の航空機(大型飛行機の欧州航空安全機関認証仕様)を共同で飛行させることができ
ます。2025 年に飛行する予定です。 Deutsche Aircraft、ドイツの航空機開発企業
で、ドルニエD328航空機があります。
2021 年 7 月、ドルニエ 328 リージョナル旅客機を水素動力に変換する計画で協力す
ることに合意しました。
2022年初め、同社はドイツのシュトゥットガルトからフリードリヒスハーフェンまで
77 マイルをカバーするクロスカントリー飛行を完了し、初めて水素動力の旅客機が
2 つの民間空港間を飛行を成功させました。
また昨年、同社は水素航空機の世界高度記録である高度7,230 フィートで飛行し、
水素燃料航空機カテゴリーのリーダーとしての同社の地位を確認しました。
H2FLYは、2021年4月にアメリカカリフォルニアに拠点を持つJoby Aviationと業務
提携を行いました。Joby Aviation は米国のベンチャー支援航空会社で、エア タクシー
サービスとして運用する予定の電動垂直離着陸機を開発しています。
Joby Aviationのエアタクシー(画像:Joby Aviation)
日本でもANAHD(全日空)やトヨタが出資しています。
まとめ
水素燃料電池の燃料の水素は、自然界にある資源を科学的に融合させできたもので
無尽蔵に存在します。また、燃焼させた後も水(H2O)だけを排出するという環境
に優しいエネルギーです。
しかし、その貯蔵や運搬、充填ステーションなどのインフラストラクチャーの整備
と技術開発が課題となっています。岸田内閣は、先日、水素基本戦略の強化を打ち
出しました。その基本戦略は、水素のコストダウンの実現として、2030年には水素
を燃料とする発電所を計算化して、原発1基分相当の100万kW程度の発電を実現幅広
い分野では燃料電池自動車( FCV)を同年には80万台、燃料電池バス(FCバス)
1,200台程度の導入を目標に掲げています。EV(電気自動車)で後れをとった分、
水素燃料で世界のトップを目指してほしいと思います。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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