2025年、空飛ぶクルマでお伊勢参り

ドローン、空飛ぶ車

皆さんこんにちは!

日本の大手商社の丸紅が、大阪ヘリポート(大阪市此花区)―和歌山県那智勝浦町の

「碧き島の宿 熊野別邸 中の島」までのルートを空飛ぶクルマで飛行するツアーを計画

しています。使われる機体は、イギリス・バーティカルエアロ社製「VX4」です。

丸紅の戦略

グリーン戦略

丸紅 中期経営戦略GC2024より

丸紅は、グリーン事業に力を入れています。農業、林業、資源リサイクルの他に、脱炭素

にむけた新事業を立ち上げました。それが、いわゆる空飛ぶクルマ事業です。

元々、航空機・エンジンの部品トレード事業や整備の代理店事業、アセットマネジメント

事業、エンジン開発投資、空港グランドハンドリング事業、空港車両自動化事業を通じ、

航空機の各ライフサイクルに応じた事業展開による航空機資産のバリューアップ機能の拡充

を図っていました。ビジネスジェット分野では米ガルフストリームとホンダジェットの代理

店業に続き、日本航空と共同でビジネスジェットサービス事業を推進する等、同分野のリー

ディングカンパニーとして業界を牽引しています。また、ヘリ事業や宇宙分野への本格参入

将来の移動手段として期待される空飛ぶクルマの事業化に向けた取り組みも開始しました。

そして、丸紅が業務提携関係にある英バーティカル・エアロスペース・グループの「VX4」

を使用して今回のツアーを計画しています。その「VX4」は、条件付き予約注文で合意して

いた最大200機の内、25機について一部機体代の支払いを実行し、購入予約権取得してい

順次導入する計画です。

未来旅行体験ツアー

大阪ヘリポート(大阪市此花区)―和歌山県那智勝浦町の「碧き島の宿 熊野別邸 中の島」

までのルートを空飛ぶクルマで飛行するツアーの疑似体験として、昨年12月から今年の

1月にかけて、同じルートをヘリコプターを使って体験するというモニター型のツアーが

試験的に実施されました。体験ツアーは、2日間でホテル代を含め89000/大人1人。

その中には、熊野那智大社、那智の滝などのバスによる観光旅行も含まれていました。

青岸渡寺と那智の滝

既存の交通機関で同じルートを運行しようと思うと
ヘリコプター約17万円/人/片道約50分
  鉄道(大阪駅発)約7,000円/人/片道約4時間
  タクシー(3人乗車時)約3万円/人/片道約4時間
  飛ぶクルマ(丸紅想定)約2万円/人/片道30
となります。ヘリコプターより空飛ぶクルマの方がコストが安いのです。
ツアー終了後のアンケートでは、いくらで空飛ぶクルマに乗りたいか?との質問に
妥当とした片道の料金は2万9730円だったそうです。丸紅が考えていた2万円を
大きく上回った結果となりました。
バーティカル・エアロスペース「VX4」

丸紅が採用した、イギリスのバーティカル・エアロスペース「VX4」をおさらいして

みましょう。

バーティカル・エアロスペース社は、イギリスのブリストルに本社を置く航空宇宙メ

ーカーです。2016年、会社はF1チームの元オーナーであり、OVO Energyの創業者兼

CEOであるステファン・フィッツパトリックによって設立されました。

2021年6月、アメリカン航空、アボロン、ロールス・ロイス、ハネウェル、マイクロソ

フトM12などと提携先や出資者として関係を結びました。そして提携先であるアメリカン

航空、アボロン、ヴァージンアトランティック航空との提携により、最大1000機の予約

注文を受注しています。

VX4は、2024年にEASA(ヨーロッパ連合航空安全機関)の承認を取得予定の量産型機

です。最高速度は約325km/hで航続距離は約161km以上、4人の乗客とパイロットの計

5人乗りです。

丸紅が25年に「空飛ぶクルマ」商用運航、運賃はどうなる?

バーティカル・エアロスペース「VX4」(Vertical Aeroより)
問題点

さて、実際にVX4を2025年以降に飛ばすことができるのでしょうか?

乗り越えなければいけない課題は、山積です。

一番は、VX4の機体の認証です。現在、VX4は、飛行試験段階です。これが製品化される

ことと、安全が承認されて初めて商品化されます。まずはEASAの安全承認、そして日本の

国土交通省の承認へとつながります。

次に、パイロットの問題です。将来的にはパイロットが要らない自律型に移行しますが、

当初(約10年くらい)はパイロットが必要です。特別なライセンスが必要です。これは

FAA(アメリカ連邦航空局)でも問題になっていますが、新しく法律(航空法)を改定

しなければなりません。つまり固定翼やヘリコプターのライセンスではなく、VX4もしくは

V22オスプレイ、F35Bなどのティルトローター専用のライセンスの新設になるかも。

いずれにしても今から法整備をしていかないと間に合いません。

そして、インフラストラクチャーの整備です。まずは、離着陸場(通常Vポートと呼ばれて

いる専用の離着陸場)の設置です。この施設には、機体のバッテリーを充電できる充電施設

が必要です。一つは出発地の大阪ヘリポートに作れば良いのでしょうが、目的地の那智勝浦

のホテル(周辺の着陸場)にも必要です。現在の技術では飛行時間は30分くらいに制限され

ます。しかも、実運航はバッテリーの80%以内での運用が推奨されています。完全電動型の

eVTOLは、電気が命ですので全部使い切ってしまったら墜落してしまいます。この時間も

気象状態に大きく影響を受けます。向かい風の時はバッテリーを多く使ってしまって目的地に

たどり着けない恐れもあります。また、ルートの途中にいつでも着陸できる場所を確保して

おくことも必要になります。

これらの問題を加味しますと、たかが30分のフライトですが、パイロットや整備にかかる人

件費、インフラストラクチャーの設備、維持管理などを考えるとはたして2万円という値段

が妥当なのかと言えば疑問が残ります。あるシンクタンクの調査ですと空飛ぶクルマの採算

が合うのは1日におおよそ100機飛ばさないと元が取れないと言うことです。

LIFT AIRCRAFT 社製HEXAを飛ばす

丸紅は、2025年の大阪万博でアメリカのLIFT AIRCRAFT 社製の一人乗り電動垂直離着陸機

(eVTOL) “HEXA”を使用して実証実験を行います。実証実験は、「未来社会の実験場」

をコンセプトとする2025 年大阪・関西万博の開催に向けた機運醸成の一環として、未来社

会を見据えたイノベーション創出の促進を図ることを目的とし、体験飛行での最適な高度

やスピード、騒音・振動など環境への影響や操縦者の乗り心地等の確認を行います。

観覧飛行用1人乗りドローン「HEXA」、来年にもサービス開始!? | Techable(テッカブル)

LIFT AIRCRAFT 社製HEXA(LIFT AIRCRAFT 社)

LIFT AIRCRAFT 社製のHEXAは、1人乗り用のeVTOLです。今年1月にGMOインターネ

ットグループ代表の熊谷正寿氏が、アメリカのLIFT Aircraft 社による空飛ぶクルマの操

縦訓練を受け、2023年1月23日に「初級・操縦士証(BEGINNER PILOT CERTIFICATE)

」を取得したことで有名になりました。

まとめ

今回の丸紅のチャレンジは、とても素晴らしいものです。ただし、商社(株式会社)です

ので、何らかの利益がある、または見込めなければなりません。当分は観光用に運用

する計画ですが、将来的には災害や緊急搬送など公共の利用にも活用していく予定です。

パイロット、インフラストラクチャーの問題解決には、官民一体となって取り組まなけ

ればなりません。特に承認に関しては、関連行政機関(国土交通省、経済産業省など)の

縦割り行政の解消が、日本の産業に影響することを肝に銘じなければなりません。

待ったなしの時間との勝負です!

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

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