定年後の就職先はビジネスジェットが適当なのか?

飛行機

皆さんこんにちは!

世界中でパイロット不足が叫ばれる中、民間航空機のパイロットの定年(65歳)が世界のスタンダード(標準)です。

しかし、パイロットは元気な内は飛びたいというのが本音です。そこで定年が無いビジネスジェットに移ることは問題ないのでしょうか?

航空会社のフライトからビジネス航空への移行

コックピット内

航空会社での飛行から Part 91 または Part 135 の運用に移行するには、新しい型式認定以上のものが必要です。クレジット: ピクターマン

米国のパート121航空会社のパイロットはFAAで65歳に定年退職することが定められている

ことを考えると、職業として飛行を続けたい人にとって、年齢制限がないビジネス航空は魅力的かもしれません。

パイロットのキース・ウォルジンガー氏はこれを成功させ、11月11日のボンバルディア社

の安全スタンドダウンのプレゼンテーションでその方法についてヒントを提供しました。

ウォルジンガー氏はアメリカン航空に38年間勤務し、そのうち最後の10年間はボーイング

777の国際線の機長を務めました。彼は2年前に退職し、カリフォルニア州サンタアナの

ジョン・ウェイン空港に本社を置くパート135チャーター会社のパラゴン航空でセスナ・

サイテーションのパイロットとして働き始めました。

彼は移行をスムーズにするために次のヒントを提供しています。

ネットワーキング: ウォルジンガー氏は航空会社を辞める2年前からネットワーキングを

始め、人々と出会い機会を探りました。業界のイベントには「航空会社のパイロットとして

ではなく、将来のビジネス航空の専門家として」出席するようにアドバイスしています。

彼は「友人の友人」を通じてパラゴン航空のことを知りました。

「なぜ」を明確にする:なぜ飛行機に乗り続けたいのか?ウォルジンガー氏は、次の人生に

何を求めているのかを示唆しています。どれくらいの期間働きたいのか?企業によっては、最低2年の契約を求める場合もあります。

「あなたは適性があるか?」:多くのビジネス航空の運航において、パイロットはフライト

のディスパッチ、機内食の確保、ホテルや交通手段の予約なども行います。これらすべてを

担う航空会社からビジネス航空業界に転身するパイロットは、実践的な環境を理解し、その

環境で活躍し、成長していく決意を持つ必要があります。

経験:他の転職と同様に、関連する経験を活かすことが重要です。飛​​行時間は数万時間ある

かもしれませんが、ビジネスジェット機の操縦経験は数千時間あるわけではありません。

ですから、これまでの訓練と経験を活かしましょう。履歴書を航空会社中心からビジネス

航空中心に書き直しましょう。ウォルジンガー氏は、運航経験(該当する場合は海外を

含む)、顧客サービス、意思決定に焦点を当てることを推奨しています。航空会社の

パイロットは、安全管理システム、クルーリソースマネジメント、フライトオペレーション

品質保証、そして強力な安全文化に関する訓練を受けていることが多いため、その経験の

価値を示すことが重要です。「経験はあなたの最大の強みですが、正しく伝える必要があります」と彼は言います。

マインドセット:引退した航空パイロットは「頑固で、適応力がなく、ただ趣味を探して

いるだけ」と捉える人もいますが、ウォルジンガー氏は、パイロットの使命は「柔軟性、

学ぶ意欲、謙虚な姿勢を示すことで、彼らの考えが間違っていることを証明すること」

であり、「全力を尽くすこと」だと述べています。

メンタリング:この業務には、ジェット機の操縦を始めたばかりのパイロットや、教官から

転向したばかりのパイロットも含まれる可能性があります。ウォルジンガー氏は「知識」と

経験を共有しましょうとアドバイスしています。彼はまた、NBAAのメンタリングネット

ワークを通じてパイロットのメンタリングを2年目も行っています。

世界のパイロットの定年とセカンドキャリア:経験豊富な空のプロのその後

世界的なパイロット不足が叫ばれる中、経験豊富なパイロットの定年年齢や、その後のキャリアに注目が集まっています。

民間航空パイロットの定年年齢(基本ルール)

世界の民間航空会社において、機長・副操縦士が旅客機を操縦できる年齢の基本は、国連の

専門機関である国際民間航空機関(ICAO)のガイドラインに大きく依存しています。

地域/規則 定年年齢(乗務停止) 補足事項
ICAO(国際標準) 65歳 2人乗務の場合。65歳以上のパイロットは国際線(ICAO加盟国間のフライト)の機長としては乗務できません。
アメリカ(FAA) 65歳 2007年に60歳から65歳に引き上げられました。現在、パイロット不足を背景に67歳への引き上げが議論されています。
日本 65歳 ICAOの基準に準拠しています。
ヨーロッパ (EASA) 65歳 多くの国がこの基準を採用しています。
中国 60歳 ICAOに加盟していないため、独自の規定を適用しています。(ただし、これは変動する可能性があります。)

【重要なポイント】

  • 65歳が世界的な民間航空機(定期便)のパイロットとしての事実上の上限です。
  • ICAOのルールにより、65歳を超えると国際線を飛行することが難しくなるため、国内線運航が主体の国や航空会社でなければ、65歳が最終的な定年となります。
定年後の主なセカンドキャリア・就職先

定年退職したパイロットは、長年の運航経験と高度な専門知識を活かし、航空業界内や全く異なる分野で活躍します。

航空業界内でのキャリア(65歳以降も続く「空の仕事」)

最も一般的なのは、飛行経験を直接活かせる教育・指導系の職種です。

  1. フライト・シミュレーター教官
    • 航空会社の訓練部門に残り、シミュレーターを使って若手パイロットの養成や現役パイロットの資格維持訓練を担当します。年齢制限の対象外となるため、最も多く選ばれる道です。
  2. 地上教官(グランド・インストラクター)
    • 座学で航空力学、気象、航法、法規などを教えます。
  3. フライト・インストラクター(Part 91/135)
    • 定期航空運送事業(Part 121)の定年を迎え、年齢制限のないチャーター便や**遊覧飛行、小型機の運航(Part 135)**などに転職し、引き続きパイロットとして活躍するケースもあります。
  4. 航空コンサルタント・安全専門家
    • 航空会社の安全管理部門、規制当局、あるいは航空機メーカーなどに対し、豊富な経験に基づいた運用効率化や安全プロトコルのアドバイスを提供します。

全く異なる分野への転身

高い自己管理能力、危機管理能力、チームワーク、そして緻密な計画立案能力を持つパイロットは、異業種でも重宝されます。

  • 教育・研修: 長年の指導経験を活かし、企業研修の講師やメンターとしてリーダーシップやチームビルディングを教える。
  • ビジネスオーナー/起業: 畑違いの飲食店や不動産業などを始める人もいます。
  • 趣味・ボランティア: 家族との時間を大切にしたり、執筆活動、旅行、ボランティア活動などに専念したりする人も多くいます。

経験豊富なパイロットは、定年後もその専門性と人間力を活かし、多様な形で社会に貢献し続けています。

パイロット不足の核心:2030年問題と定年延長の波

世界の航空業界は、パンデミックからの急回復と需要増に加え、構造的な「パイロット2030年問題」に直面しています。

不足の深刻化と「魅力低下」の真因

「2030年問題」の核心は、景気後退期や採用氷河期に大量入社したベテランパイロット

が、国際基準である65歳定年一斉に到達し、大量に退職することです。

このパイロット不足を加速させる主な原因は、職業の魅力低下というよりも、新規参入の難しさにあります。

  1. 高額な訓練費用: 自費での訓練費用が高騰し、志望者の経済的負担が非常に大きい。
  2. 厳しい身体基準: 常に職を失うリスクを伴う厳格な健康維持が求められる。
  3. ワークライフバランスの課題: スケジュール管理の厳格化による負担が若手から敬遠されがちです。
世界的な定年延長の動きと国際的な壁

Airplane cockpitの画像

深刻なパイロット不足を補うため、経験豊富な人材の維持が最優先事項となっています。

  • IATA(国際航空運送協会)は、国際的な年齢制限を現在の65歳から67歳に引き上げるようICAO(国際民間航空機関)に公式に要請しました。
  • 米国(FAA)でも、国内線パイロットの定年を67歳に延長する法案が議会で議論されており、世界的な高齢化の流れは加速しています。
定年延長が抱えるリスク

定年延長は即効性のある対策ですが、以下の重大なリスクを伴います。

  1. 国際線運航の制約: ICAOの現行規定が65歳であるため、仮に米国などで定年が67歳になっても、65歳を超えたパイロットは国際線(ICAO加盟国間)の機長としては乗務できません。これにより、国際線のベテラン不足解消には繋がらず、国内線に人員が集中する可能性があります。
  2. 安全性の懸念: 厳格な健康診断が行われるとはいえ、高齢化に伴う健康状態や認知機能の変化に関する懸念は完全に払拭できず、安全性への議論が続きます。
  3. 若手育成の停滞: ベテランが長くコックピットに留まることで、副操縦士から機長への昇格機会が減り、若手パイロットのキャリアパスが停滞し、モチベーション低下や人材流出を招く恐れがあります。

定年延長は一時しのぎの対策であり、パイロット不足を根本的に解消するには、訓練コストの低減とキャリア環境の改善という構造改革が不可欠です。

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