皆さんこんにちは!
昨日と今日、航空企業の統合に関するビッグなニュースが飛び込んできました。
日本貨物航空(NCA)が全日本空輸(ANA)の参加に下ることになりました。
アメリカのLCCジェットブルー航空によるスピリット航空の買収、差し止め!
今日はこの2つの大きなニュースを見ていきましょう。
日本郵船、NCAを手放す
日本貨物航空(NCA)と親会社の日本郵船の歴史
NCAの親会社だった日本郵船は、1885年9月に三菱を創設した岩崎弥太郎が
興した会社です。
日本郵船は、船を使った運輸業を本業としていましたが、1950年後半から
航空事業の参入を画策しました。
1958年、日本郵船と日本航空は、日本航空のジェット化で不用になった
プロペラ機を活用して空輸産業に参入しようとしました。しかし
1970年に全日本空輸との提携を模索するようになりました。翌年の1971年
に正式に日本郵船、全日本空輸、商船三井と合意に至り、1978年に日本航空
に見切りを付けて、日本貨物航空(NCA)を立ち上げました。
2005年には日本郵船の完全子会社(株式の100%保有)になりました。
そして今回の身売りになるのです。
NCAは、現在8機のボーイング747-8を所有しています。就航地は東は
ニューヨーク、西はアムステルダムと世界各地に及びます。
NCA就航地
身売りの背景
実は航空業界では以前からANAと一緒になるのではないかとうわさはありました。
しかし、あくまでもうわさの段階で消えていました。
決定的になったのは、コロナのパンデミックです。
日本郵船は、中国のゼロコロナ政策の影響をもろに受けました。上海や香港
の港では積み荷を満載した船が何日も足止めを食らったのです。そのため
航空輸送にシフトせざるを得ませんでした。2020年から2022年の航空輸送
運賃は高騰しました。これで日本郵船は船便の穴を埋めることになるのですが
輸送量とコストが釣り合わなくなったのです。
実際のNCAの輸送実績は、2019年まで月間の平均的な運航便数は450便あまり
でした。コロナの最盛期の2021年は550便にも上りました。しかし、2022年の
中頃から元通りの430~450便程度になりました。
それに追い打ちをかけるように航空燃料費の高騰がさらにコスト上昇に拍車を
かけました。日本郵船としては身売りを考えざるを得なくなりました。
全日本空輸の憂鬱
一方、ANAは、貨物部門は同じくコロナで潤い、旅客便の穴を十分に埋めるまで
になりましたが、NCAと同じ道をたどります。しかし、ANAはもう一つ懸念材料
がありました。実は、機種移行が上手く行っていなかったのです。
ANAの貨物機に使用されていたのは、ボーイング747-400Fでした。次期機種
はボーイング777Fでしたが、開発が遅れ遅れになりました。そこでボーイングは、
中型機のボーイング767Fの改良型(翼を大きくして航続距離を伸ばした)を代替
機としたのです。しかしこの決断は、裏目に出てしまいます。航続距離は伸びたも
のの所詮は中型機ですので、輸送量が大型機と比べて減ってしまったのです。また
燃費も改善されないままでした。
そして、その767Fもそろそろ引退の時期になりました。
そこへ来て、この合併の話です。両社の思惑が一致した形になり一挙に合併へと進
んで行きました。
今後の課題
ANAとNCAが一緒になるメリットはどこにあるのでしょうか?
ANAは、ボーイング787-8を得ることによって、767Fの退役を早めることが
できます。
しかし問題は、パイロットと整備士の問題です。当分は現役のNCAのパイロット
が運航するでしょうが、いずれはANAのパイロットから機種移行しなければいけ
ません。
パイロットは、一つの機種(B787だったりB767)しか乗ることはできません。
一部エアバスの機種で同時に乗ることができるものもありますが、機種が変わる
たびに半年以上の訓練を行わなければなりません。これは、パイロットにも負担
になりますが、企業としてもその間は生産性がなくなるだけでなく、訓練コスト
がかかってしまうのです。
また整備士も同様です。ANAはかつて同型機種を持っていましたが、それは昔の
ことです。もう一回、最初から始めなければなりません。
それと、NCAは成田空港、ANAは羽田空港(成田もあります)を拠点としています。
もし、NCAの747-8Fが羽田空港に入ったときには、貨物用パレットや搭載用車両が
異なるのです。地上スタッフの訓練にもコストがかかります。
市場はどう見た?
今回のANAとNCAの合併劇を市場はどう見たのでしょうか?
合併が発表されたのは、昨日の7日の夕方です。しかし市場では先行して
情報が流れます。日本郵船の株価は前日の6日の午後には最高値を更新しま
したが、7日の午後から売り注文が入って当日最安値になりました。
一方、ANAの株価も同じ様な値動きでした。市場は、意外と冷静に見ている
ようです。
米LCCジェットブルーの同業買収 司法省が差し止め提訴
そして海の向こうのアメリカでは、大手LCCの買収に政府が待ったをかけました。
アメリカ司法省は7日、米格安航空会社(LCC)のジェットブルー航空による同業
スピリット航空の買収を巡り、差し止めを求めて提訴したと発表しました。競争が
働きにくくなり、航空運賃の引き上げなどで消費者が不利益を被ると判断したのです。
スピリットは2022年10月にジェットブルーによる買収を受け入れると発表していま
した。買収額は38億ドル(約5200億円)で、合併が実現すればジェットブルーは
アメリカ国内市場シェアで業界5位になる予定でした。提訴によって、買収計画は少
なくとも数カ月は保留せざるをえなくなりました。
ガーランド司法長官は「合併によって数千万人の旅行者に運賃上昇と選択肢の減少を
もたらす。最大の影響は超低価格の航空会社に依存している人々が受ける」と説明。
同氏はスピリットの路線がなくなれば平均運賃が30%上昇するとの推定に言及。
ジェットブルーとスピリットの合併計画は、多くの利用者を抱える米LCC大手2社の
経営統合として注目を集めていました。アメリカ運輸省によると、21年12月から
22年11月の米国内における両社の市場シェアはそれぞれ6位と7位で、2社を合わせる
と4位のユナイテッド航空に次ぐシェアになります。
はたしてこの買収は上手くいくのでしょうか?
まとめ
企業の合併には、多くのリスクを伴うことは過去の歴史が証明しています。
2001年のJAL とJASの合併も、結果として上手く行かずJALは破綻しました。
破綻の原因は、いろいろありましたが、重大インシデントが立て続けに起こ
ったことによる客離れです。安全でない飛行機には誰も乗りたくはありませ
んよね。企業文化の違いや主導権争い、悪いところばかりが目立ち、従業員が
不安に陥ったのです。そして誰も信じられなくなって企業は消えていったのです。
どんな大きな企業でも、そこで働いているのは人間です。
『人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり』武田信玄の言葉です。
経営者は、この言葉通り、従業員の不安をなくし、再編への道を歩んでほしい
ものです。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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