皆さんこんにちは!
飛行機の推進力は、ピストンエンジンやジェットエンジンなどです。
戦闘機などの高出力を生み出すには、多くのエネルギーが必要です。その際に出るのが
騒音(音)です。一部の航空機マニアにとってはその音は、心地良いものかもしれませ
んが、多くの住民にとっては公害そのものです。
実際に騒音問題で、訴訟が起こったり、夜間の離着陸が制限されたりしています。
そんな問題を解決できる新たな推進力、超静音電動ダクトファンが開発されました。
未来の航空機を変える新しい技術となるのでしょうか?
Whisper Aero
Whisper Aero(ウイスパーエアロ)
ウイスパーエアロは、同社の次世代の超静音推進システムを利用した Whisper Jet とい
う新しい航空機コンセプトのを発表しました。テネシー州に本拠を置くこの新興企業は、
2 年以上にわたり、市場で最も静かで最も効率的な推進システムになると主張するものの
開発を続けてきました。
数週間前、ウィスパー社は、その推進システムが特殊なタイプの電動ダクトファンを使用
していることを明らかにしましたが、同社はダクトファンが他のどのファンよりも静かで
効率的であるかを正確に明らかにする準備がまだできていませんでした。今回、ウィスパー
社はついに秘伝のソースのレシピをさらに公開しました。
電動ダクトファン思想
ダクトファンは航空機推進システムにとって新しい概念ではありません。実際、これらは
すでに多くの大型飛行機のターボファン エンジンで使用されており、Lilium や Volocopter
などの一部の eVTOL 航空機開発者は、電動ダクト ファンを設計に組み込んでいます。
ウィスパー社は騒音と効率の点でほぼ絶対最適を達成するためにダクトファンのコンセプト
を再設計しました。
これを実現するために、ウィスパー社はブレード数が非常に多く、先端速度が低いダクトファ
ンを設計しました。十分に高い速度で回転すると、ブレードの通過周波数が超音波範囲になり
ます。ファンブレードの数とローターの回転周波数を乗算して計算されるブレード通過周波数
は、ファンとプロペラによって発生する騒音のほとんどの原因となります。それらの音を超音
波領域に押し込むことにより、ブレードの回転によって生成される音は人間の耳にはほとんど
聞こえず、その多くは大気によって減衰されます。
一般に、より高い回転速度 (1 分あたりの回転数または rpm で測定) で回転するファンは、
ブレード先端速度が高くなる傾向があり、先端速度が高くなると、より広い周波数範囲でより
多くの空気力学的ノイズが発生します。ウィスパーはブレードの長さを短くすることで、高い
回転数と低いチップを実現することに成功しました。対照的に、プロペラから発生する騒音を
低減しようとするeVTOL航空機の開発者は、一般的に先端速度を下げることによってそれを行
っており、それが電気モーターの性能を妨げる結果となっているのです。
電動ダクトファンの側面断面図。(画像:ウィスパーエアロ)
ダクトファンのブレードの数を増やすために、ウィスパーはブレードを薄くする必要があり、
必然的に剛性が低くなります。ウィスパー社によると、薄いブレードを強化するために、ウ
ィスパー社のダクトファンブレードは、自転車の車輪のスポークと同様に、外側のシュラウ
ドに張られています。このシュラウドを追加すると、ブレード先端とダクトの間の隙間もな
くなります。従来のダクトファンでは、その小さな隙間が騒音の原因となり、全体の効率が
低下します。
ウィスパー社のダクトファン設計は航空機に動力を供給することができますが、この技術の
潜在的な用途は航空分野を超えています。ウィスパー社によると、この設計は配送用ドローン
リーフブロワー、バスルームの扇風機、送風乾燥機など、他のさまざまな用途に拡張できると
のことです。ウィスパー社の基本的なエンジニアリング原理を使用すると、空気を動かすほぼ
すべての種類のデバイスをより静かで効率的にすることができます。
ウィスパージェット
ウィスパージェット(画像:ウィスパーエアロ)
ウィスパージェットコンセプトは、同社独自の電動ダクトファンを利用した航空機設計の最初
の例です。外側水平尾翼構成が特徴で、50 フィート (15 メートル) の固定翼の前縁に 22 個
のダクトファンが組み込まれています。この設計は、Lilium Jet eVTOL 航空機のダクトファ
ン アレイに似ていますが、Liliumのダクトファンは、翼の前縁ではなく後縁に配置されてい
ます。
同じダクトファンを持つLilium Jet(画像:Lilium)
ウィスパー社によると、ウィスパージェットはハイブリッド電気パワートレインを使用し、
最大500マイル(800キロメートル)の地方便で9人の乗客と1人のパイロットを乗せるこ
とができるといいます。または、完全電気パワートレインを使用して、約 200 マイル
(320 キロメートル) の短い航続距離を実現することもできます。
推進システムの設計を検証するために、ウィスパー社は、同社の電動ダクトファンのさまざ
まなプロトタイプを搭載した 5 台の異なるドローンを使用して、大規模な飛行テストキャン
ペーンを実施しました。そのテストのほとんどは、重さ55ポンド(25キログラム)の実証用
ドローンで行われたが、ウィスパー氏によると、高度約200フィートで上空を飛んでいるとき
には音は聞こえない事が実証されました。
デモ用ドローンを使用して、飛行中の低騒音推進システムを検証。(写真:ウィスパーエアロ)
パートナーが名乗りを上げる
ウィスパー社は複数の技術実証機を開発し、ウィスパージェットの白紙の設計を作り上げ
ましたが、実際に自社航空機を製造する計画はないと同社は述べています。むしろ、同社
は、ウィスパージェットのコンセプトが、同社の推進システムを新しい航空機設計、特に
地域航空モビリティを目的とした航空機設計に統合したいと考えている航空機設計者の注
目を集めるようになることを期待しているのです。
研究開発に集中して 2 年間を費やした後、同社は最初の推進器の製造と販売を開始し、収
益源を生み出す準備が整いました。同社は今のところ防衛用途に注力しており、すでに米国
国防総省と6件の契約を結んでおり、同社の超静音推進システムを諜報、監視、偵察の目的
で使用することを検討しています。
カリフォルニアに拠点を置くアリアは、約 15 年間、航空宇宙および防衛分野に携わって
きましたが、その専門知識を自動車分野の複合製品にも応用してきました。
アリアは、ウーバーエレベート プロジェクトへの関与を通じて、AAM という用語が生まれ
る前から AAM(アーバンエアモビリティ) に関心を示しており、この 10 年間の初めには、
このプロジェクトが eVTOL 航空機の商業展開の要となるように見えました。ライドシェア
グループが財務上の実態調査を余儀なくされた後、ウーバーエレベートは買収され、ジョビ
ーに吸収されてしまいました。
最近では、アリアとそのパートナーは、スパーナルが後に SA-1 eVTOL 航空機となる初期の
地上技術実証機の製作を支援しました。今年初め、ウイスパーエアロの電動ダクトファン技術
コンセプト航空機の構築を支援しました。アリアは、パンクル(自動車部品メーカー)とKTM
E-technologiesが合同で Co-Lektivという会社を2021年11月に設立しました。これは、 AAM
のスタートアップ企業にその経験のメリットを提供するための提携です。
アリアはまた、複合材の専門家であるソルベイおよび東レと複合材の製造および樹脂注入プロ
セスに関する共同パイロットプログラムにも取り組んでいます。このプログラムはミシシッピ
州立大学を拠点としています。
今のところ、Co-Lektivは、厳格な機密保持契約に基づいて多くの企業と協力し、AAM 介入
をほとんど秘密にしなければなりません。アリア、パンクル、KTM の 3 社は約 10,000 人の
従業員を抱え、約 30 億ドルの収益を上げています。彼らは複数の分野で生産サポートを提供
することを目指していますが、最終組み立て段階に直接関与する可能性は低いです。
アリアは、eVTOL航空機だけでなく、貨物便や旅客便を目的とした長距離のeSTOLモデルや、
リージェントの地上翼型効果船など沿岸輸送ネットワークを再発明する取り組みにも大きな
可能性があると考えています。
まとめ
この電動ダクトファンエンジンが、実際に稼働するとなると、航空機エンジンの新たな
主流となるでしょう。1基の推進力(パワー)には限界があるものの、複数基で運用する
ことによって、より大型の航空機にも使用することができるようになります。また、従来
型のeVTOLと併用して使用することも可能で、電動プロペラ(垂直離着陸用)と推進力用
とのハイブリッド型も考えられます。
この開発により、ますますAAM業界の幅が広がってきます。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
コメント