皆さんこんにちは!
8月9日に、ブラジルサンパウロで起きたATR72型機墜落事故。事故調査委員会の第一報が
入ってきました。
Voepass ATR 72-500がサンパウロ近郊で墜落
クレジット: ミゲル・スキンカリオル AFP via Getty Images
8月9日、サンパウロ行きのVoepass Linhas Aéreas (ヴォーパス・リーニャス・アエレア
ス)ATR 72-500型機が、乗客57名と乗員4名を乗せて、市中心部北西部の住宅街ヴィニェー
ドに墜落したと航空会社が確認しました。現地報道によると、機内にいた61名全員が死亡し
それ以上の負傷者は出ていないということです。
ヴォーパス・リーニャス・アエレアスは、ブラジルサンパウロに拠点を持つ航空会社です。
同社は、ATR-72航空機(-500 および -600 バージョン) を使用して、47 の目的地へのフライ
トを運航しています。中南米ブラジルとのコードシェアシステムを通じて、さまざまな目的地
への接続を提供しています。創立は1995年で、ブラジルで最も古い航空会社です。
調査で除氷システムと乗務員の手順が明らかに
8月9日に発生したヴォーパス・リーニャス・アエレアスATR-72-500の死亡事故を調査してい
る調査官らは、除氷システムに不具合があったかどうか、またこの問題とますます危険になる
着氷状況に対して乗務員がどう対応したかを精査していると、予備報告書が示唆してます。
ブラジルの航空事故調査機関CENIPAが9月6日遅くに発表した報告書によると、カスカヴェウ
空港からサンパウロのグアルーリョス国際空港へ向かっていたヴォーパス航空2283便の乗組
員は降下の一環として指定された旋回を開始した直後に機体の制御を失ったということです。
報告書によると、制御不能に陥る前には、徐々に緊急度が増す低速警報が3回発せられていま
した。最後の警報から10秒後、現地時間16時21分9秒、機体が169ノットで旋回していたと
き制御不能となったのです。
「機体は左に52度のバンク角までロールし、その後右に94度のバンク角までロールし、時計回
りに180度旋回。その後、旋回は反時計回りに反転し、機体は地面に墜落する前にフラットス
ピンで5回転した」と報告書は述べています。
この事故で搭乗していた乗客58名と乗員4名全員が死亡しました。
調査官らは、PS-VPBの登録番号を持つこの航空機は、制御不能になったとき、厳しい着氷条
件になりやすい天候の中を飛行中だったと断定しました。報告書によると、このような状況下
でのATR規定手順には、事前に決定された「着氷限界」より30ノット高い速度を維持すること
が含まれています。これは、飛行前の手順でパイロットが航空機の重量に基づいて設定したも
のです。
「手順の実行中、乗組員は着氷バグの速度を165ノットに調整すると述べましたが、これは
調査委員会が行った計算と一致する速度だ」と報告書は述べています。
操縦不能に至るまでの 3 分間に、パイロットは 191 ノットで「巡航速度低下」警報、184 ノ
ットで「性能低下」警報、169 ノットで「速度上昇」警報を受け取っていました。いずれも、
厳しい着氷状況で 165 ノットの着氷バグが発生する速度 195 ノットを下回っていました。
この警報は、ATR 72 の航空機性能監視機能によって発せられ、航空機とエンジンのパラメー
タを使用して着氷状況下での空気抵抗を監視し、必要に応じて乗務員に警報を発します。
パイロットは、着氷状態に遭遇することを認識していました。予定されていた 2 時間 10 分の
飛行の離陸後約 14 分後の 15:12:40 にプロペラ防氷システムが作動し、その後すぐに機体の
除氷システムが作動しました。
「その後、乗務員は機体の除氷装置に不具合が発生したとコメントし、除氷装置を停止する
と述べた」と報告書は述べています。
システムは停止され、1時間余りの間停止したままでした。16時17分41秒から16時19分07
秒の間に再び完全に作動。16時20分00秒、副操縦士が「激しい着氷」と表現した時間帯に、
システムは最後に作動した。制御不能になる1分前でした。
報告書には機体除氷システムの警報が1件だけ記載されている。システムが設計通りに機能し
ていたかどうかは不明です。
「これまでのところ、コックピットの録音では、乗組員の一人が除氷装置に不具合があった
と言っているのが聞こえる」とCENIPAの主任調査官パウロ・フロース氏は報告書発表の記者
会見で述べました。「しかし、これはまだフライトデータレコーダーで確認されていない」
ATR の機体除氷システムの故障時の手順では、着氷状態から離脱するか回避し、システムを
オフにすることを求めています。ATR の ATR 72-500 の重度着氷プロトコルのタスクには、
即時降下と最大連続出力の設定が含まれます。
報告書によると、ヴォーパス2283便の乗務員は指定されたルートを飛行し、高度約17,000
フィート(FL170)を巡航していましたが、これは予測されていた激しい着氷条件の高度範囲
FL120~FL210に十分内でした。
16時19分19秒、降下開始の許可が出る直前、サンパウロの進入管制官はヴォーパス2283便
に対し、下方を通過する航空機の間はFL170を維持する必要があると伝えました。
報告書によると、ヴォーパスのパイロットの一人は管制官の指示に応え、機体は「降下に最適
な地点にあり、許可を待っている」と付け加えたということです。
管制官はヴォーパス2283便に許可を待つよう指示しました。1分後の16:20:33に、同機はサ
ンパウロへ直行する許可を得ました。
乗組員はメッセージを確認し、その後すぐに、制御不能になる前の旋回を開始しました。
まとめ
日本の裏側のブラジルは、8月は冬の季節です。8月の平均最高気温は約23度前後、平均最
低気温は約12度~14度です。雨も少なくなり、ときおり風が強く冷え込み10度を切る日も
あるので防寒着が必要になることもあります。
今回の事故当時の気象状況は定かではありませんが、地上15度前後でも上空1,000mでは8.5
度(気温低減率は平均で0.65度/100m)。今回のATRの巡航高度は17,000フィート(約
5,000m)ですのでマイナス17度以下です。この温度は、十分に機体や翼が凍りついてしまう
のです。特にやっかいなのはエンジンが凍ってしまうことです。ATR機はプロペラ機ですので
特に注意が必要です。そのためにエンジンやプロペラが凍りつかないように防氷装置を事前に
働かせる必要があります。目安としてはマイナス10度以下で雲の中を飛行するときは必ず作
動させなければなりません。また、翼が凍ってしまいますと失速して墜落してしまいます。
私の経験としては、自衛隊時代にT-33Aというジェット機で冬の日本海側を飛行していると
きに強烈な着氷が起こり、見る見るうちに速度が減少して失速しそうになりました。翼には
びっしりと氷の塊が付着していたのです。すぐさま高度を下げて、着氷する高度から脱し事な
きを得ました。
着氷の恐ろしさを侮ってはいけません。今回の墜落事故の最終調査結果が出るまではしばらく
時間がかかりますが、2度とこの様な事故が起こらないようにしなければなりません。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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