シンガポールエアショーの成果

飛行機

皆さんこんにちは!

昨日、22日から開催されていたアジア最大のシンガポールエアショーが閉幕しました。

エアバスやボーイングが事実上不在のこの4日間でどのような成果があったのでしょう

か?グローバル・サウスと呼ばれる国々の中で一番の存在感を見せた国は?

ブラジル エンブラエル

エンブラエルCEO:次の開発計画は「数年以内」に決定

エンブラエルは次の航空機開発プログラムのリソースをどこに投入するかについて

「数年以内に」決定する予定だと、フランシスコ・ゴメス・ネト最高経営責任者

(CEO)は2月21日にシンガポールエアショーで開催されたアビエーション・ウィ

ークで語りました。ゴメス・ネト氏は、同社の次のステップとして考えられる分野

としてエグゼクティブ航空と民間航空を挙げました。

ゴメス・ネト氏は、狭胴機セグメントの大型民間航空機に乗り込むというアイデア

を持って多くの人が彼にアプローチしてきたと語りました。「エンブラエルにはもっ

と大きなことを成し遂げる能力がある」と彼は付け加えました。「しかし、現時点

ではこれを行う計画はありません。私たちはチャンスがあることは理解していますが

会社を危険にさらしたくありません。」

ゴメス・ネト氏は当面、エンブラエルが既存製品の販売と生産拡大に注力すること

を望んでいます。民間航空機の納入は2025年か2026年までに年間100機に達する予

定です。同社は2023年に64機を納入しましたが、65機から70機を製造するという

目標にはあと1機及びませんでした。今年は二桁の成長を目指しており、そうなれば

航空機数は70機を超えることになります。しかしゴメス・ネト氏は、エンブラエルは

依然としてエンジン不足などサプライチェーンの深刻な問題に直面していることを

懸念しています。

ゴメス・ネト氏は、民間航空機の生産枠は2026年から利用可能となり、いくつかの

キャンペーンが進行中であると述べました。同氏は、現在の適用範囲条項により地域

航空会社によるE2の使用が禁止されているにもかかわらず、エンブラエルには米国で

もE2を販売する機会があると主張しました。ゴメス・ネト氏は、幹線航空会社がより

大型の狭胴機に焦点を当ててゲージを増強しているため、これらとリージョナルジェ

ット機との間にギャップが生じており、それをE2で埋めることができると付け加えま

した。同氏は、パイロットの問題には対処する必要があり、航空会社との交渉は初期

段階にあると述べました。

ゴメス・ネト氏は、エンブラエルが民間航空機の価格設定に十分積極的ではなかった

という考えを一蹴。12月、ルフトハンザグループは、新たな子会社であるシティ航空

向けに、E2ではなくエアバスA220を40機選択しました。「当社は価格に関しては積

極的に取り組んできたが、原価以下で販売するつもりはない」と同氏は語りました。

エンブラエルは中国、インド、中東でも売上見通しの改善につながる産業提携提案に

取り組んでいますが、具体的な合意には至っていません。「私は不安をコントロール

する方法を学びました」とゴメス・ネト氏。「私たちは忍耐強くなければなりません。」

同氏は、エンブラエルのポートフォリオ全体にわたって協力の機会があると考えている

ようです。

 

製造中止のE-2シリーズ

初飛行に成功したE175-E2(クレジット:エンブラエル)

エンブラエルは、次世代リージョナルジェット機「E2シリーズ」を開発しました。

従来のエンブラエル170(E170)とE175、E190、E195で構成する「Eジェット」

(E1)の後継機で、E175-E2とE190-E2、E195-E2の3機種で構成されています。

新型エンジンや新設計の主翼、主脚の格納した際のドアなどで、燃費を向上させ

ました。1クラス構成の標準座席数は、E175-E2が88-90席、E190-E2が106-114席、

E195-E2が132-146席となります。

エンブラエルE195-E2 TechLionのビジネスクラス

エンブラエルにとって、座席数のみで比較するとライバルはエアバスのA220のみです。

カナダのボンバルディアが開発した小型旅客機「Cシリーズ」の事業会社をエアバスが

2018年7月に買収し、名称を変更したもの。すべてが新設計で、部品を9割以上共通化

したA220-100(旧CS100)とA220-300(CS300)の2機種で構成され、標準座席数

はA220-100が100-130席、中胴が3.7メートル長いA220-300は130-160席。従来の

リージョナルジェット機と比べると、航続距離が長く1列当たりの席数が5席と1席多い

分、大型化しています。

羽田空港で公開されたエア・バルティックのA220-300

羽田空港で公開されたエア・バルティックのA220-300の客室。1列が左2席+右3席

E175-E2の就航時期は、2027年から2028年の間を予定。「スコープ・クローズ」と

呼ばれるリージョナル機に関する米国の労使協定に関する協議の進捗や、新型コロナ

ウイルス感染症(COVID-19)の民間航空機市場への影響などによるものです。

エンブラエルは 2022年2月18日に開いた取締役会で、E175-E2の開発を3年間中断す

る決定を下しました。E175-E2は2019年12月12日に初飛行しており、スペースジェッ

トのように国が安全性を証明する型式証明の取得が課題ではありません。

スコープ・クローズ(航空会社とパイロット組合の契約の一部であり、リージョナル航

空路線において航空機機材の席数、大きさ、重量の制限値を定めている)は、76席ま

での航空機の最大離陸重量(MTOW)制限に関する米国のパイロット組合との労使協定

です。現状ではMTOWが9万8120ポンド(4万4600キログラム)のE175-E2はリージ

ョナル機のパイロットが運航できず、機体を再設計するか協定の緩和が必要になります。

仮に緩和に時間がかかっても、エンブラエルには既存のE175を販売する手が残されてい

るのです。

エンブラエル、MRTT、KC-390の相互運用性に自信

駐機場にあるKC-390航空機

KC-390はエンブラエルが開発した双発の空中給油機です。

エンブラエルはシミュレーション結果から、同社のKC-390輸送機がエアバスA330

多目的タンカー輸送機(MRTT)と互換性があると述べました。

エンブラエル防衛・宇宙部門最高商業責任者のフレデリコ・レモス氏は、KC-390の

ターボファンエンジンは航空機の胴体に近い位置に配置されており、そのためター

ボプロップエンジンと比較して乱流の発生が少ないと述べました。

「現時点では、そのような要件はありませんが、お客様が希望する場合は、いつでも

サポートさせていただきます。」レモス氏は語りました。

KC-390 の現在および将来の顧客の中で、MRTT を運用しているのは大韓民国空軍

だけです。

KC-390はブラジル空軍のF-5Mと実機給油を行ったほか、別のKC-390で給油機間の

給油も行いました。エンブラエルによれば、所要時間は約4時間だということです。

標準的な KC-390 をポッドと 4,000 kg (8,800 ポンド) の補助タンクを備えたタン

カーに改造します。

MRTT は A400M 航空機への給油は認定されていません。空力と空気の流れにより、

コブハム 905E の翼下ポッドのバスケットは A400M に近づくと揺れる傾向があり、

受信機に当たる危険があります。2 機間の給油は、中心線の胴体給油ユニットを使

用する英国空軍の MRTT でのみ可能です。

エンブラエルとブラジル空軍は現在、H225MとKC-390の間での空対空給油に向け

て取り組んでおり、これは従来の回転翼プラットフォームとターボファン動力の航

空機との間での初の給油となる可能性があります。

エアバスとエンブラエルが防衛MRO提携を締結

C295

エアバスC295(クレジット: エアバス・ディフェンス・アンド・スペース)

シンガポールの国防大手STエンジニアリングは、C295のサポートを提供するエア

バスと、C-390をサポートするエンブラエルとの契約を締結しました。 

これにより、シンガポール軍はどちらの輸送機関も運営していないにもかかわらず

シンガポールが防衛MROのハブとなることになるのです。

C295の発表は、エアバス・ディフェンス・アンド・スペース最高経営責任者(CEO)

マイケル・シェルホーン氏がアジア太平洋地域に防衛MROハブを設立するという野

望を語った翌日に行われました。シェルホーン氏は、スタッフのトレーニング、品質

部品管理などの分野で高い基準を満たすパートナーを探していると述べました。

エアバスは短い発表の中で、STエンジニアリングが「シンガポールの既存施設での

デポレベルのメンテナンスとターンキーソリューションで地域のC295フリートをサ

ポートする」と述べたのです。

シンガポール センターは、バングラデシュ、ブルネイ、インドネシア、フィリピン、

ベトナム、タイの C295 オペレーターをサポートします。

Fleet Discovery Military データベースによりますと、この地域には 25 機の C295

航空機が就航しており、さらに 5 機が待機中です。

これとは別に、エンブラエルはアジア太平洋地域での基礎作りを開始しており、

C-390ミレニアムに向けたエンジニアリング、メンテナンス、サポートサービス活動

などの特定分野での協力を模索するため、STエンジニアリングと覚書を締結してい

ます。

エンブラエルは最近、韓国がC-390を3機供給するために選定したことにより、アジ

アに橋頭堡を確立したと伝えられています。この航空機は、由緒あるC-130を置き換

える長期計画を持っているタイを含む、アジアで一連のデモツアーを行う予定です。

中国 Comac が C919 ファミリ構成の詳細を公表

コミック C919 航空機

ショーで展示されているベースライン C919 

中国のComacは、昨年末の上海国際商業航空・航空宇宙産業展示会で初公開された

C919単通路型ファミリーの伸長型と短縮型の詳細を明らかにしました。

新しい派生モデルは、シンガポールエアショーで明らかになりました。

Comacはチベット航空と、中国と国境を接する高地のチベット高原地域にちなんで

「プラトー」派生モデルと呼ばれる、より短いC919モデル40機の発注契約を結び

ました。

短いバージョンは、平均定員がエアバス A319neo やボーイング737-7 よりわずか

に小さく、2 クラスのレイアウトで 140 名の乗客を収容できるサイズです。この航

空機はラサから成都などの典型的な高原ルートに最適化され、離着陸性能が向上し

ます。ラサゴンガ国際空港は、標高約 12,000 フィートで、世界で最も高い空港の

1 つです。

ComacのA321neoや737-10に相当するストレッチ型は、2クラスレイアウトで

「少なくとも」200機、高密度配置で最大240機を搭載できるように設計されてい

ると航空機メーカーは述べました。より大量のアジア太平洋路線に対応するこの

航空機には、キャビン中央に追加の非常口ドアと、翼上に上向きにヒンジ式の 2 つ

の非常口が追加されるように構成されます。

新しい改良型の正確な寸法はまだ明らかにされていませんが、より短い派生型の

前部胴体セクションと後部胴体セクションは、それぞれ 2 フレーム長と 4 フレーム

長だけ短縮されています。プラトー型の中央胴体には、長さ 128 フィートの標準胴

体型には 2 つのオーバーウィング出口があるのに対し、オーバーウィング出口は 1

つしかありません。

引き伸ばされた派生モデルの大部分は、標準的な C919 の前部胴体セクションよりも

約 12 フレーム長い、より長い前部胴体で構成されています。ストレッチ部分の胴体

後部は、キャビン中央に非常口ドアが追加されたことを除いて、ほとんど変わってい

ないように見えます。

どちらの新しいバージョンもベースラインのC919超臨界翼を維持しており、Comac

によれば、逆キャンバーのない従来の翼に比べて空力効率が20%向上し、抗力が8%

低減されているということです。Comac は当初、翼のセンター ボックスにカーボン

複合材料を使用する予定でしたが、後に設計はより従来型のアルミニウム設計を中心

に簡素化されました。

コミックC919接写

C919 のノーズ周囲には複数のエア データ センサーが取り付けられています。

機首に取り付けられた大気データおよびナビゲーション センサーの外部詳細からも、

C919 が複数の迎え角センサー、ピトーおよびピトー静的プローブ、フラッシュ静的

大気データ ポート、氷探知機、垂直分離を最小限に抑えるためのアンテナで構成さ

れていることもわかります。

セブパシフィックCEO、5月か6月に100機の発注を目指す

セブパシフィック航空 Airbus A330-300 RP-C3346 成田国際空港 航空フォト | by SGR RT 改さん 撮影2020 ...

セブパシフィック航空の最高経営責任者(CEO)マイク・ズークス氏によると、

セブパシフィック航空は狭胴機の大型発注の最終決定に近づいているという。

マイク・ズーク氏はシンガポールエアショーで、航空会社が航空会社を選択して

契約を締結するまでには、航空機およびエンジンのメーカーとまだ数か月の交渉

が必要であると語りました。同氏によると、この契約は5月か6月に発表される

可能性が高いということです。

ズーク氏によると、今回の注文には追加オプションを含む100件の確定注文が含

まれるということで、ボーイングとエアバスの両方が検討されていると強調しま

した。

セブ島は現在、すべてエアバス製狭胴機機を保有していますが、ボーイングの発注

を排除するものではないとシュクス氏は言いました。同氏は、ブラカン州にマニラ

にとって 2 番目の主要空港が開発されるということは、セブがハブ空港を分割して

運用する可能性があり、新しい場所に別の空港が配備される可能性があることを意

味すると指摘しています。現在のエアバス機はすでに規模の経済を達成するのに十

分な規模を誇っています。

「つまり、エアバスであっても大丈夫ですが、ボーイングであっても大丈夫です」

とズーク氏は言います。「答えを導くものは、私に正しい経済学を与えるものです。」

ズーク氏によると、航空会社の注文にはさまざまなサイズのモデルが含まれる可能性

が高いということです。これは、A320neoとA321neo、または737-8200と737-10

を意味します。

セブ パシフィックには現在 56 機のエアバス狭胴機を保有しています。さらに27機

が発注されており、そのうち7機は今年納入される予定です。また同社はA330neoを

7機、A330-300を1機運航しています。ズーク氏によると、新たな納入後は今年末ま

でに10機のA330neoを運航する予定だという計画です。

同社は現在、プラット・アンド・ホイットニーのエンジン問題により、狭胴艦10機

が運航停止になっています。セブ島は、今年のある時点で地上の航空機数が15~16

機に増加すると予測しています。

セブは昨年、エンジン関連の座礁を補うために、さらに多くのエアバス狭胴機を短期

リースで取得しました。そのため、今年は年間10~12%の生産能力の伸びを維持で

きると見込んでいます。

まとめ

2024シンガポールエアショーは、昨年のパリやドバイのように大型の商談はありま

せんでした。なぜなら、ボーイングは737MAXのドア脱落問題で生産を中止、エア

バスは大型機のA350-1000を展示、飛行しましたが、エンジン問題や生産量が追い

ついていないことが要因に上げられます。

そこで、リージョナルジェット分野のブラジルのエンブラエルが目立った形となり

ました。国産旅客機C919シリーズを公開した中国は、ほぼ身内のチベット航空機に

受注があったと発表しました。ただ、この航空機の信頼性が未知数なだけに「安か

ろう、不味かろう」では話になりません。一度事故を起こしてしまってしまったら

取り返しの付かないことになるのです。

今回は、軍用機や民間航空機について見てきましたが、アーバンエアモビリティ分野

では大きな進展がありました。その話はまた次回に。

グローバル・サウスの定義は定まっていませんが、インド、ブラジル、南アフリカ、

インドネシア、サウジアラビアなど、アフリカやアジア、中南米など広い地域の新興

国や途上国などを指すものです。これに中国が入るかは見方が分かれていますが、経

済が急速に成長し、先進国と対等な関係を望んでいる国が多く、国際社会での発言力

を強めています。

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

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