舞いあがれ、HIEN(飛燕)

ドローン、空飛ぶ車

皆さんこんにちは!

今日3月31日で、私がこのブログを始めてちょうど1年経ちました。

これまで多くの皆さんに読んでいただき、まことにありがとうございます。

これからも飛行機に関する興味深いニュースや情報を発信していきます。

今後ともよろしくお願いします。

今日は、ちょうどNHKの連続テレビ小説『舞いあがれ!』が半年間のドラマに

幕を閉じました。私も飛行機の話でしたのでたいへん楽しませていただきました。

最終回で飛行した空飛ぶクルマ『かささぎ』。ドラマでの機体の監修はSkydrive

代表取締役CEO 福澤知浩氏とテトラ・アビエーション・コーポレーションの

代表取締役社長 中井 佑氏が担当されました。しかし『かささぎ』はSkydriveや

テトラの機体とは違っています。そのモデルはHIENでは?

HIEN Aero Technologies 株式会社

HIEN Aero Technologies 株式会社

飛燕は、2021年12月に設立したばかりの新しい会社です。

創設者は、法政大学教授、御法川 学(みのりかわ がく)氏です。

御法川氏は、理工学部機械工学科 教授で、飛行機の設計、製造、航空工学

を専門としており、通常も大学で授業や講義をこなしています。

飛燕の本社は、同じ法政大学の1室にあります。そこで日夜研究が行われています。

他に取締役CTO 谷津田 千一郎氏、取締役CFO 三浦 義広氏が名を連ねています。

ハイブリッドで長距離飛行を可能に

飛燕が、開発しているのは日本では初めてのハイブリッド型eVTOL航空機です。

前述のSkydriveやテトラの開発しているようなeVTOL航空機は、ドローンを大型化

したようなマルチコプター型や垂直離着陸型の構造が多く、動力源にバッテリーを

使った電動機が一般的で、海外ではヘリコプターを電動化したものなども公表され

ています。しかし、ドローンと同じようにバッテリーだけで飛行するとなると、

中長距離を飛行するための飛行時間の確保が大きな課題となってしまい、機体の

軽量化や空力の最適化、バッテリー性能の向上などが欠かせません。そのため、

使い勝手や用途に応じて、常にプロペラを高回転させて飛行し、小回りを利かせて

短距離を移動するマルチコプターと、翼の揚力によって長距離を巡航する垂直離着

陸機の2種類が注目されています。

同社が開発している「Dr-One」は後者の垂直離着陸機であり、長距離の物資運搬

等を目的としています。大きな特徴はバッテリーにガスタービンを組み合わせた

ハイブリッド型の設計にしたことです。最も電力を消費する離着陸時はバッテリー

で駆動し、ほとんどバッテリー電力を使わない巡航時はガスタービンによってバッテ

リーを充電する仕組みとなっています。

Dr-Oneは人が乗れる設計ではなく、物資輸送を目的とした大型ドローンのようなも。

しかし、このガスタービンによる発電システムと機体設計が完成すれば、スケーラブ

ルに大型化していくことが可能です。将来は、設計ユニットはそのままに大型化した

機体の開発を予定しており、2025年の大阪万博に向けて2人乗りの「HIEN2」の開発

を開始、さらにその先の2030年には6人乗りの「HIEN6」の開発を予定しています。

6人乗りの「HIEN6」

HIEN Aero Technologies、eVTOL「HIEN Dr-One」模型を展示。長距離飛行を実現、発電機としても活用[Japan Drone 2022]

2022年JAPAN DRONEで展示されたDr-Oneモックアップ

日本の航空業界の問題

御法川氏は、空飛ぶクルマの開発に取り組むHIENを設立した理由についてこう話しま

す。「私はこれまで、大学に所属する教育者としてパイロットや航空産業のエンジニア

を育成してきました。しかし、日本国内で航空産業のエンジニアが活躍する場が年々減

ってきています。このまま何も対策を取らないと、将来的に日本で航空産業を発展させ

ていく人がいなくなってしまうため、教育・研究の場の1つとしてHIENを活用できれば

と考えています」

御法川氏は、単に空飛ぶクルマであるeVTOLを開発するだけではなく、日本の航空業界

を支えていく人材を育てるための取り組みとして、HIENを設立しました。

御法川氏が危機感を覚える日本の航空産業会は、欧米主導の開発環境が大きな影響を与

えています。

日本は終戦直後に、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により発令された「航空禁止令

がきっかけで(その後1952年に、サンフランシスコ講和条約により撤廃)、中島飛行機

(今のスバル)や三菱重工業といった軍用機を開発していたメーカーが航空機開発から

撤退せざるを得なかった歴史がありました。その後、国産旅客機YS11の研究が行われる

までの失われた7年間の影響は大きいものでした。先日も三菱スペースジェットの生産

中止が正式に発表され、日本の航空機製造はまた1歩後退しました。

画像

2023年3月9日 モーゼスレイクにて解体される三菱スペースジェット初号機

ホンダのHONDA JETがあるのでは?とお考えの方もいるとは思いますが、HONDA

JETはアメリカで作られており、型式もアメリカ製(産)です。

現在、航空機の完成機に関する規格制定は、欧米の主力の企業が押さえています。国内

の航空産業にかかわる製造業も、欧米主体の規格に基づいて動き、部品を納入できるサ

プライヤーも限定されてきました。そのため、長いこと「欧米企業の下請け」状態でし

た。

こうした事情から、国内の航空機産業に勢いがあるとは決していえない状況です。「や

がて、国内の航空機産業や、『空飛ぶ乗り物』の技術は衰退していってしまうかもしれ

ない」と御法川氏も危惧しているということです。

パイロットの事情も同じです。マニュアルはすべてアメリカ、フランスなどで完成した

もの。日本ではその英語(フランス英語)で書かれた文章を和訳。航空機の制作者が

意図する意味を考えずに文章化、それを何も考えずにオペレーションしているのが

日本の航空業界の実態です。御法川氏の危機感は、今や日本航空界に蔓延しているの

です。

希望の光 飛燕

御法川氏は、そんな危機的状況を変えるのは、HIENの開発だと言います。

eVTOLについては、まだ市場を作るに至っていない黎明期であることから、今も

規格制定すら行われていない状態です。これが、国内企業にとってはチャンスな

のです。

御法川氏は、「大手メーカーからの指示を受けて、ただ作るだけという状況を改

善するために、新しいサプライチェーンの形を構築したい」と話し、さらにこう

続けます。「これまでのように完成品メーカーから部品メーカーへの一方通行の

開発ではなく、日本に航空産業の技術を残せるようなオープンで双方向の取り組

みにできればと考えています。具体的には、eVTOLの実現や性能向上に貢献できる

と技術を持つサプライヤーが技術を提案し、それをHIENが完成品となる機体にま

とめ上げるような、新しいサプライチェーンを実現したいと考えています。これま

で航空業界の仕事をしたことがない、例えば自動車業界や電機業界の部品サプライ

ヤーなどにもぜひ参加してほしいです」と。

次の1手は、LSA

御法川氏は、昨年末、東ヨーロッパのチェコ共和国(旧チェコスロバキア)にLSA

(Light Sports Aircraft:軽量スポーツ航空機)を視察に行っています。チェコは

LSAをはじめ軽飛行機の開発製造が盛んで、多くの名機を生んでいます。

LSAは、世界で広く親しまれており、人々は気軽にフライトを楽しむことができて

います。一番の利点は、パイロットのライセンス(LSA用)が少ない時間で習得

できること。また、機体の価格が一般の小型機に比べて安いことが上げられます。

ただ、乗員は2人、昼間で有視界飛行のみなど制限はありますが、初期の飛行や

レジャーなどには申し分ありません。

2022年にベルギーのザラ・ラザフォード、マック・ラザフォードの姉弟がそれ

ぞれ世界一週最年少世界記録(姉のザラは女性最年少)を樹立したときに乗って

いた飛行機がLSAだったのです。性能は折り紙付きです。

そんな優れたLSAですが、残念ながら日本では正式には認められていません。

実際に姉のザラはこの挑戦の時に規程がなかったため、日本に着陸できなかったの

です。弟のマックの時は特別に小松(金沢)と千歳に降りることが許可されました。

また、LSAは自分で組み立てられることもできるのです。このことはパイロット

だけではなく整備士や製造技術者の育成にも貢献できます。御法川氏は、空飛ぶ

クルマHIENの技術をLSAに応用し、日本独自のLSAを製造、運用することが日本

の航空産業の活性化(再生)につながると考えています。

現在、御法川氏を中心に有志がLSAの輸入、法整備に向けて活動しています。

そして、誰もが気軽に空を飛べる日が来ることを願っています。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

 

 

 

 

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