皆さんこんにちは!
6月に起きたエアインディアB787の離陸直後の墜落事故。原因は調査中ですが、インド当局は『パイロットの故意』と発表しました。
しかし、B787の初めての死亡事故は航空業界に与えた影響は計り知れません。
MRO(整備、修理、分解点検)の観点ではどのような意見があるのでしょうか?
エア・インディア171便事故と航空業界の安全
2025年6月12日に発生したエア・インディア171便の墜落事故に焦点を当て、この悲劇が
航空業界、特にMRO(整備・修理・オーバーホール)の世界にどのような影響を与えているかを探ります。
事故の背景とインド当局の対応
インドのアーメダバード空港を飛び立ち、ロンドン・ガトウィック空港へ向かっていた
エア・インディア171便(ボーイング787型機)は、離陸直後に墜落しました。乗客乗員
242名と地上の人々を含む多くの命が失われたこの事故は、航空業界に大きな衝撃を与えました。
事故原因はまだ特定されていませんが、インド民間航空総局(DGCA)は事故の翌日、
予防措置としてエア・インディアが保有するすべての787型機に詳細な検査を命じました。
この命令は、燃料システム、エンジンの電子制御、油圧システムなど、多岐にわたる項目を対象としていました。
しかし、2週間後に実施された検査では、どの機体にも異常は見つかりませんでした。この
素早い対応は、2019年の737 MAXの事故後に中国が直ちに運航停止を命じた例と同様に、
原因不明の事故に対する規制当局の慎重な姿勢を示しています。
ボーイング787の現状と将来
ボーイング787型機は、納入機数がまもなく1,200機に達する、非常に成功したプログラ
ムです。今後、2034年末までには運航機数が2,500機近くにまで増加すると予測されています。
エンジン市場では、GEのGEnXエンジンが優勢であり、今後はさらにシェアを拡大していく
と見られています。これは、長年のロールス・ロイス・エンジンの顧客であったブリテ
ィッシュ・エアウェイズ(BA)が、新しい787にGEエンジンを採用したことからも裏付けられています。
今回のエア・インディアの事故は、787型機にとって運用開始以来、初めての機体損失事故
となりました。この事実は、これまでの787の優れた安全実績を物語ると同時に、今後の
調査の重要性を改めて浮き彫りにしています。
MROが直面する課題:アラスカ航空の事例
2024年に発生したアラスカ航空1282便の非常口プラグ脱落事故も取り上げてみましょう。
この事故は、製造過程でボルトが取り付けられていなかったことが原因でした。
この事例は、直接的な整備(MRO)の不備ではありませんでしたが、製造・整備プロセス
における品質管理の徹底がどれほど重要かを業界全体に再認識させました。現在、ボーイン
グはボルトがなければプラグが閉まらないような新しい設計を進めており、2026年までに新型機への導入を目指しています。
今回の悲劇は、単なる事故ではなく、航空業界が直面する安全性と品質管理の課題を改めて
示唆しています。MRO業界は、このような事故から学び、より安全な空の旅を実現するために、常に進化し続ける必要があります。
航空業界の業績:MRO市場は好調、しかし課題も山積
最近発表された航空業界各社の第2四半期および上半期の業績データから、MRO(整備・修理・分解点検)市場の現状と将来について分析します。
ヨーロッパ:パンデミックからの力強い回復
ヨーロッパのMRO市場は、パンデミック前の水準を上回り、力強い成長を続けています。
- ルフトハンザ・テクニック(LHT):2025年上半期は、売上高が前年比13%増の40億ユーロを達成し、過去最高の利益を記録しました。エンジンや部品サービスが売上を大きく牽引しました。
- AFI KLM E&M:サードパーティ向けの売上が上半期で15%増加するなど、こちらも好調です。エアキャップとのリースエンジンに関する合弁事業など、サプライチェーンの課題に対応するための積極的な取り組みが注目されます。
しかし、両社ともコストの上昇という共通の課題に直面しています。原材料費、サプライ
ヤー費用、そして人件費の高騰が利益率を圧迫しており、一部のコストは顧客に転嫁され始めています。
北米:エンジンと部品が成長を牽引
北米のMRO市場でも、同様の好調が見られます。
- エンジンメーカーの成長:GEエアロスペースとRTX(プラット・アンド・ホイットニー)は、四半期ごとに大幅な成長を続けています。これは、主にナローボディ機(CFM56、V2500)の整備需要が依然として高いことが要因です。
- 中古部品の不足:旧式機がまだ多く退役しておらず、中古部品(USM)の市場供給が少ないため、新品部品の販売が好調です。
- 機体整備の需要:米国最大の独立系MROプロバイダーであるAARも、施設の拡張と予約の増加を発表しており、機体整備の需要が堅調であることがわかります。
注目すべき「関税」の影響
航空機部品は多くの場合、関税の対象外ですが、近年の関税に関する不確実性はMRO業界にとって大きな懸念材料です。
- 米国:部品購入の急増といった大きな影響はまだ見られませんが、サプライヤー各社は価格変動に注意を払っています。
- ヨーロッパ:ルフトハンザ・テクニックは、関税による不確実性を強調しています。しかし、英国に拠点を置くロールス・ロイスは、米国との間で航空宇宙部品に対する関税が撤廃されたことにより、中長期的には競争上の優位性を得られる可能性があります。
下半期と今後の展望
2025年後半も、MRO需要は引き続き堅調に推移すると見られています。ナローボディ機の
退役ペースがまだ遅いため、エンジンや部品の整備需要は高水準を維持するでしょう。
しかし、米国内の一部航空会社では国内運航の低迷が見られるなど、地域によっては多少の
懸念材料もあります。これらの傾向が今後どのように変化していくか、2026年に向けて引き続き注視していく必要があります。
現時点でのMRO業界の見通しは非常に明るいと言えるでしょう。
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