航空整備士の人材不足は深刻

飛行機

皆さんこんにちは!

航空業界の中でも整備士の人材不足は世界的な問題となっています。

特に発展が著しいインドや東南アジアでは深刻です。そして日本でも。

インド、技術系労働者不足を受け採用活動を計画

GMRエアロテクニック

インドの航空関係者は、資格のある航空機整備スタッフの不足に対処するため、より多くの訓練学校を開設している。クレジット: GMRエアロテクニック

インド民間航空総局(DGCA)は現在、技術職の約55%が欠員のまま運営されており、航空

交通と航空会社の業務が急速に拡大する中で、規制監督の需要への対応が大きな課題となっています。

これを受け、インド当局はDGCA内の主要な欠員を補充するため、190人の職員を採用する

計画を発表しました。これらの職種は主に、耐空性監視、飛行検査、航空機事故のフォロー

アップ、安全監査といった重要な業務を担当する技術専門家である。しかし、これらの職種へ

の採用は、求められる高度な専門資格のために困難を極めています。

インド下院の議会において、DGCA関係者は、現在の人員不足は深刻であるものの、これらの

職種の多くは最近承認されたばかりであり、採用プロセスは継続中であると明言しました。

DGCAは、特に乗客の安全に影響を与え、航空機システム、規制プロトコル、リスク管理に

関する深い専門知識を必要とする職種については、候補者の選定に細心の注意を払っていると述べています。

人員不足にもかかわらず、DGCAは定期的な検査を継続しており、リアルタイムおよび抜き

打ちの検査を行うための仕組みを整えています。これには、抜き打ち監査、夜間監視活動、

厳格な事後対応プロトコルが含まれます。飛行中の故障が報告された場合、DGCAは

ボーイングやエアバスなどの航空機メーカーが主導する世界標準の手順に従い、さらに規制

当局による精査を経てから航空機の運航許可が下りるとDGCAは述べています。DGCAに

よると、インドの航空セクターの運航量は世界有数の急速な成長を続けていますが、これら

の安全および監督手順は依然として堅牢です。航空交通量と航空機群の拡大、そしてますます

複雑化する整備・運用エコシステムに直面し、規制対応を継続的に確保するためには、人材不足の解消が不可欠です。

急成長を遂げているインドの航空業界は、熟練技術者、特に航空機整備士(AME)、資格を

有する技術者、規制遵守専門家の不足に依然として悩まされています。この格差は、インド

のコネクティビティ計画に基づき多くの新しい地方空港が開発されている第2層および第3層の都市でより顕著です。

訓練インフラ、資格取得の遅れ、そしてAME訓練における機上実務経験の限られた提供が、

この課題を悪化させています。インドで事業を展開する多くのMROおよびOEMは、特に

航空電子機器および複合材修理の分野では、エントリーレベルの職種であっても、資格を持つスタッフの採用が困難であると指摘しています。

この状況は、パンデミック後の回復により資格を有する整備士や安全検査官の需要が増加し

た一方で、資格を有する専門家の供給が追いついていないという世界的な傾向を反映してい

るのです。ボーイングの最新のパイロットおよび技術者の見通しでは、2044年までに

71万人の新規整備士の需要が見込まれ、そのうち4万5千人は南アジアで必要になると予測

されています。DGCAの採用活動や、航空教育を促進し認証フレームワークを合理化する

政府主導のその他の取り組みは、中期的にこのギャップを縮小することを目指しています。

しかし、業界の専門家は、航空分野で持続可能な技術労働力を構築するには、長期計画の

調整、トレーニングにおける国際的なパートナーシップ、航空訓練学校とMROプロバイダーとのより強力な連携が必要だとされています。

整備士不足でドクターヘリ運航が一時休止 関西中心に7~8月、救命活動への影響懸念(産経新聞)

関西広域連合のドクターヘリ(ベル429ヘリコプター)が、病院の屋上ヘリポートに着陸する最終段階

関西を中心とした1府6県の病院を拠点とする8機のドクターヘリが、7~8月の一定期間運航

できない状態にあることが14日分かりました。運用する関西広域連合によると、委託会社の整備士不足が理由で、救命活動への影響が懸念されます。

関西広域連合によると、運航を全面的に委託する学校法人ヒラタ学園(堺市)から9日、

「整備士が確保できず、7月から8月にかけて一時的に運航できなくなる」と連絡がありました。

ヒラタ学園の説明によると、7月は済生会滋賀県病院で10~13日に休止。和歌山県立医科大

付属病院で9~15日、奈良県立医科大付属病院で16~22日、鳥取大医学部付属病院で

22~28日、大阪大医学部付属病院で24~30日に休止。8月は兵庫県立加古川医療センター

公立豊岡病院(兵庫県)、徳島県立中央病院で休止の可能性があります。

同連合広域医療局の担当者は「市民や医療スタッフの信頼を損なう重大な事態だ。ヒラタ学園

には運航継続を求めていく」と話しました。ヒラタ学園は「複数の整備士の事情で運航ができ

なくなっている。人材確保に向けて全力で取り組む」としています。

(7月14日 産経新聞より)

ボーイング、パイロットと航空技術者の需要が小幅減少すると予測

飛行機のコックピットでiPadを見ているパイロット

ボーイングは、2025年から2044年までのパイロットと技術者の見通しを発表し、今後20年

間で民間航空機客室乗務員の需要はわずかに増加するものの、パイロットと整備士の需要はわずかに減少すると予測しました。

7月22日に発表された最新の見通しでは、民間航空業界の労働力は2044年までにパイロット

が66万人、整備技術者が71万人、客室乗務員が100万人増加し、総人員は237万人になると予測されています。

対照的に、ボーイングが昨年発表した20年間の見通しでは、新規パイロット67万4000人、

新規整備士71万6000人、新規客室乗務員98万人の需要があると見積もられています。

これら3つのカテゴリーを合わせると、新規採用者数は237万人に上ります。

これらの差異は、ボーイングの民間航空機需要予測におけるわずかな変動を反映しています。

民間航空機市場の見通しは2025年に前年比1%減少し、需要は大型ワイドボディ機にわずか

に傾くと、ボーイングの民間訓練ソリューション担当副社長、クリス・ブルーム氏は、当地で

開催された実験航空機協会主催のエアベンチャーイベント中の記者会見で記者団に述べました。

「航空旅行の需要は世界的に伸び続けており、新しいパイロットの需要は依然としてある。

需要を満たすために、新しいパイロットの需要は安定している」とブルーム氏は語りました。

ブルーム氏は、新規採用者の3分の2は定年退職者や業界を去る従業員の代わりとなり、3分の1は予想される艦隊増加を支えることになると述べました。

南アジアと東南アジアは、20年間の見通しで最も急速に成長する地域であり、従業員数は2044年までに3倍以上の384,000人に達すると予測されています。

ボーイング パイロット・航空技術者 需要予測(2024-2043年)

項目 予測数(世界全体) 昨年からの変化 主な需要地域 減少の主な理由
新規パイロット 690,000人 18,000人減少 中国、アジア太平洋、北米、ヨーロッパ 運航効率の向上、機材の最適化(大型機移行など)、地域航空会社の運航効率化
新規航空技術者 690,000人 13,000人減少 中国、北米、ヨーロッパ 機材の信頼性向上、運航効率化

まとめと解説

世界的な航空機整備士不足の要因と地域による違い

航空機整備士の不足は世界的な課題ですが、その背景にある要因は地域によって異なる側面があります。

共通の要因:

  • 労働人口の高齢化と大量退職: 経験豊富なベテラン整備士の定年退職が急速に進んでおり、長年の知識とスキルが失われています。
  • 若年層の関心低下: 航空整備士の仕事に対する若年層の認識不足、あるいは「きつい」「汚れる」といったイメージ、キャリアの見通しに関する誤解などから、志願者数が減少しています。
  • 高度化する技術への対応: 現代の航空機はシステムが高度化・複雑化しており、整備にはより専門的で継続的な訓練が必要です。これに対応できる人材の育成が追いついていません。
  • 訓練のコストと時間: 航空整備士の資格取得には、専門学校での学習や実地訓練など、時間と費用がかかります。

発展途上国、特にインド・アジアの要因:

  • 急激な航空需要の拡大: インドやアジア太平洋地域は、経済成長とLCCの台頭により航空輸送量が爆発的に増加しており、それに伴い航空機材の数も急増しています。この急拡大に整備士の供給が追いついていません。
  • MROインフラの未成熟: 整備・修理・オーバーホール(MRO)産業自体の発展途上であり、先進国に比べて整備施設の数や規模、技術レベルがまだ十分でない場合があります。
  • 訓練機関の不足または質の課題: 航空機の急増に見合う質の高い訓練機関が不足していたり、訓練カリキュラムが最新の技術に対応しきれていなかったりするケースが見られます。
  • 海外への人材流出: 給与水準や労働環境が良い先進国や中東の航空会社・MRO企業へ熟練整備士が流出する傾向があります。
  • 規制・監督体制の課題: インドのケースでは、航空安全規制を担う機関(DGCAなど)自体の人員不足が報告されており、MRO企業への十分な監査や監督が行き届かないことで、品質管理の課題が生じる可能性も指摘されています。

先進国の要因:

  • 労働力の高齢化と退職: 発展途上国と同様に、熟練整備士の大量退職が主要な要因です。
  • 他産業との人材競争: 整備士のスキルは、自動車、鉄道、製造業など他分野でも応用できるため、航空業界が他産業との人材獲得競争に直面しています。
  • 訓練コストの高さ: 質の高い訓練を提供しているものの、その学費が高額であることや、訓練期間の長さが若年層の参入障壁となることがあります。
  • 社会情勢の変化: COVID-19パンデミックによる一時的な航空需要の落ち込みが、早期退職を加速させたり、航空業界への就職を躊躇させる要因になったりしました。
 日本における航空整備士不足の現状と対策

日本においても、航空整備士不足は現在進行形であり、近い将来さらに深刻化すると予測されています。

現状と近い将来の予測:

  • 高齢化と大量退職: 国土交通省のデータによると、主要航空会社と整備会社の整備士の約4割が50歳以上であり、今後10年ほどで約2,000人が退職する見込みです。これは、整備士資格を持つ約8,500人のうち約25%にも上ります。
  • 志願者の減少: 航空整備士を養成する専門学校(指定養成施設)への入学志願者数が、特にコロナ禍以降、5年間で半減していると報告されており、供給パイプラインが細っています。
  • 離職率の増加: 就職しても離職する人が増加傾向にあり、定着率の課題も抱えています。
  • 運航への影響: すでに一部の空港では、整備士不足が原因で増便や新規就航への対応が遅れるといった事例が発生しており、将来的に安定的な運航に影響が出る懸念があります。

対策:

日本政府(国土交通省)は、この問題に対し具体的な対策を講じ始めています。

  • 「航空整備士・操縦士の人材確保・活用に関する検討会」の設置: 国土交通省は、2030年の訪日外国人6,000万人達成という目標を支えるため、航空整備士と操縦士の人材確保・活用に関する検討会を設置しました(2024年2月7日初会合)。
  • 重点テーマと具体的な取り組み(中間とりまとめより):
    • 整備士の業務拡大: 運航整備士の業務範囲拡大を検討し、柔軟な人員配置を可能にする。
    • 型式ライセンスの共通化: 異なる機体の整備資格(型式限定)の共通化を推進し、効率的な資格取得と人員活用を促す。
    • 外国人整備士の活用: 外国人整備士の活用や、資格切り替えの迅速化を進める。
    • 処遇改善と働き方改革: 整備要員の定着を図るため、処遇改善(資格手当、役職手当など)や、フレックス勤務、女性用作業機械の導入といった働き方の多様化を促す。
    • DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進: IoTやAIなどの技術を導入し、省力化や効率化を図る。
    • 訓練環境の整備: 航空専門学校などの養成機関への支援を強化し、入学者の増加と質の高い人材育成を促進する。
ヒラタ学園について

過去のニュース記事(2024年5月31日付)には、国土交通省大阪航空局がヒラタ学園に対し

不適切な航空機の整備や、不具合に対応しないまま運航していたとして、事業改善命令と警告

を出したという情報がありました。この問題は、整備の体制や手順、不具合への対応が適切

ではなかったことを示唆しており、間接的に整備体制の課題、ひいては十分な整備を維持する

ための人的リソース(整備士)の確保・教育が適切に行われていなかった可能性を示唆してい

ます。ただし、これが直接的な「整備士の人数不足」によるものかどうかは、この情報だけでは断定できません。

安全報告書の一部には、訓練生が不慣れであることや、教官のフォロー不足、訓練モード解除

の不適切さなどが挙げられており、これは訓練プロセスにおける安全性の課題を示していますが、直接的な整備士不足とは異なる文脈です。

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