皆さんこんにちは!
UAEと言えば、石油産油国のイメージがありますが、実は回りの中東諸国に比べてもその量はそんなに多くありません。
そのため金融や観光、最新モビリティに力を入れてきました。しかし、これから宇宙に飛び出そうとしているのです。
ブルーオリジン、UAEにオアシス事業のチャンスを見出す

ブルーオリジンは、ルクセンブルクとの月資源マッピングミッション「プロジェクト・
オアシス」の枠組みを、ここアラブ首長国連邦(UAE)を含む他の国々に再現する機会があると考えていることがわかりました。
同社は9月下旬に「プロジェクト・オアシス」を発表しました。これは月面資源の特定から
現地での活用までを網羅する計画で、オアシス1は2~3年後に開始される予定です。
「ルクセンブルク以外にも、私たちと協力している国際的なパートナーがいるとみていま
す」と、ブルーオリジンの副社長パトリシア・レミアス氏はドバイ航空ショーで語りました。
ジェフ・ベゾス氏が設立した同社は2021年にUAE政府と、宇宙製造や弾道飛行による
宇宙観光を含む包括的な合意を締結。レミアス氏は、この枠組みがオアシス構想を支える可能性があると示唆しました。
ブルーオリジンは、オアシス1計画の一環として、月周回超低極軌道に小型衛星を打ち上
げる計画です。同社はこのプロジェクト発表の際に、「この衛星は、月の水氷、ヘリウ
ム3、放射性核種、希土類元素、貴金属、その他の物質に関する、これまでで最も詳細な高解像度地図を作成する」と述べました。
月面探査は、ローバーの航続距離が限られているため、将来のミッションに最適な着陸地点
を決定する上で極めて重要です。レミアス氏はまた、今年計画されていたブルーオリジンの
マークI月面着陸機ミッションが2026年に打ち上げられると述べました。月の南極への
試運転ミッションは、月面のあらゆる場所に約3.9トンの物資を運ぶように設計されています。

マーク I のアーティストによる描写。クレジット: ブルーオリジン
UAE宇宙機関、新たな戦略で国内打ち上げを目指す

UAE宇宙庁のアフマド・ベルホウル・アル・ファラシ議長。クレジット: Billypix
アラブ首長国連邦は、成長する宇宙経済のシェア確保のため、同国の宇宙機関のより広範な
方向転換の一環として、独自の打ち上げオプションの開発を検討しています。
2014年の設立以来、この機関は主に政府主導の取り組みによって、民間企業、研究セン
ター、そしてより幅広いスキルの基盤を構築してきました。しかし今、状況は変わりつつあります。
「我々は独自の宇宙戦略を策定しており、その主眼は宇宙経済にあります」と、UAE宇宙庁
のアフマド・ベルホウル・アル・ファラシ会長はドバイ航空ショーで述べました。彼は
インタビューで、宇宙のバリューチェーン全体に積極的に関与し、2031年頃までに幅広い
機能を稼働させることを目標にしていると付け加えました。
「主な目標は、UAEをこの地域における宇宙経済の拠点にすることです」とアル・ファラシ
氏は付け加え、この戦略はまもなく完了する予定です。
地元の宇宙企業は当初、データ提供などの上流サービスに重点を置いていましたが、宇宙
製造などの事業にも進出しつつあります。アル・ファラシ氏によると、UAEはある程度の
自律性を持つ宇宙港の設立を目指しており、打ち上げも今後の課題の一つです。
宇宙港計画には課題がないわけではない。UAEの空域は、エミレーツ航空などの航空会社
による商業航空交通量の規模を考えると逼迫しています。また、UAEの地理的条件は打ち上
げには最適とは言えず、こうした事業の商業的見通しは厳しいものになる可能性がありま
す。そこで政府は、ある程度の商業的利益が見込める、国有・国営のモデルを検討して
います。UAEは現在も宇宙港の適切な場所を探しているが、アル・ファラシ氏は、国内に
そのような事業が可能な場所があるはずだと述べています。
UAEもロケット事業に参入したいと考えている。宇宙機関の長官は、段階的なプロセスになるだろうと付け加えました。
アブダビのFADA、SAR衛星業務に着手

クレジット: ロバート・ウォール/Aviation Week Network
アブダビに拠点を置くFADAは来年初め、2028年に衛星群を配備することを目指し、合成
開口レーダー(SAR)のノウハウ開発作業を本格的に開始します。
エッジ・グループは今年、SARシステム開発の海外産業パートナーとして、シンガポール
に拠点を置くSTエンジニアリングとイタリアのメタセンシングを選定しました。STエン
ジニアリングはハードウェアの提供と衛星バスに関する技術的専門知識の移転を支援し、
メタセンシングはシステム用センサー(アラビア語で「鳥の群れ」を意味する「Sirb」)の提供を行います。
Sirb の第一段階には最初の衛星の打ち上げが含まれ、第二段階で第二、第三の衛星を現地で
製造できるよう知識移転に重点が置かれます。
FADA職員は、2026年第1四半期からイタリアに派遣され、SARに関する知識を習得し、
ペイロードの設計・開発に参加する予定です。エッジ社の宇宙・サイバーテクノロジー部門
プレジデントであるワレイド・アル・メスマリ氏は、「第一フェーズの終了までに、得られ
た専門知識は社内で活用できるようになります」と述べています。
エッジ社は、地上局を提供するSpace42社をはじめとする現地の産業パートナーとも提携
しています。UAEの宇宙企業であるSpace42社は、Iceye社と協力し、独自のSAR衛星群を展開しています。
地球観測事業の他の分野についても同様の計画が進行中です。FADAは、例えば電気光学
赤外線、ハイパースペクトル、熱データを提供できるシステムの開発を支援する適切な
パートナーの選定に取り組んでいると、アル・メスマリ氏は述べています。
「今後5年以内に、そうした能力に関しては、我々は独自の異なるペイロードを持つことができるようになるだろう」と彼は言いました。
FADAは、拡大を続ける地球観測ポートフォリオの一環として、Zenithと呼ばれる画像
ポータルを立ち上げました。このポータルは、様々なプロバイダーから提供される様々な
種類の画像を統合し、ユーザーがワンストップでデータの確認と分析を行えるようにし
ます。また、この端末は、様々なアプリケーション・プログラミング・インターフェ
ース(API)を用いてベンダーシステムに接続し、衛星タスク要求を処理することもできます。
同社はまた、衛星通信のセキュリティを確保するための保護モデムの開発も検討しており
当初は地上または航空機の端末に重点を置き、その後は宇宙のペイロードに重点を置く予定です。
UAE宇宙戦略:海に囲まれずとも空を目指す巨大な理由
「なぜ、UAEは宇宙なのか?」
この疑問は、航空・宇宙ファンなら誰もが抱くでしょう。ロケットの打ち上げには、人口
密集地を避け、ロケットの切り離しステージを海上に安全に落下させるために、広大な海
に面した射場が理想的です。日本やアメリカの主要な射場が海岸沿いにあるのはそのためです。
しかし、アラビア半島という地理的制約を抱えるUAEが、ブルーオリジンのような先端企業
との提携を含め、宇宙産業に猛烈な勢いで投資しているのはなぜでしょうか?
それは、「宇宙は、国家の未来そのものだから」という、三つの巨大な理由があるからです。
理由1:石油依存からの「完全な脱却」
これが最も重要な理由です。UAEは世界でも有数の石油輸出国ですが、彼らは資源が枯渇
するか、世界のエネルギー構造が変化する未来を冷静に見据えています。
宇宙産業は、石油に代わる次の時代の中核産業、つまり「知識ベースの経済」の象徴です。
衛星製造、データ解析、宇宙観光、通信技術など、高付加価値で知識集約型の分野に投資
することで、持続可能で多様な収入源を確立しようとしています。宇宙は、UAEが未来の富を得るための「新たな油田」なのです。
理由2:国家の威信とソフトパワーの最大化
宇宙プロジェクトは、国家の技術力と先見性を世界に示す最高の手段です。2021年に火星
に到達した「ホープ探査機」の成功は、その象徴でした。
「我々は砂漠の国から、宇宙のフロンティアを切り開く国になった」というメッセージは、
国際社会におけるUAEの地位を一気に引き上げました。これは、単なる経済効果を超えた、
国家のブランドイメージ(ソフトパワー)を確立するための戦略的な投資なのです。
理由3:若者への教育と人材育成への投資
宇宙プロジェクトは、究極のSTEM(科学・技術・工学・数学)教育の教材です。UAEは、
自国の若者たちが「ホープ探査機」のような困難なプロジェクトに挑戦することで、最高
レベルの技術と知識を身につけることを期待しています。
宇宙開発は、単に海外から技術者を呼ぶのではなく、自国の人材を育て、知識経済を担う
次世代の専門家を育成するための、壮大な動機付けになっているのです。
地理的リスクを乗り越える「賢い戦略」
では、ロケットの打ち上げ適性の低さというリスクはどうカバーしているのでしょうか?
UAEの戦略は、「自国で打ち上げなくてもいい」という割り切りです。
彼らは、ロケット打ち上げ(アップストリーム)よりも、衛星の設計・製造、そして衛星
データを活用した通信、地球観測、スマートシティ計画など(ダウンストリーム)に注力しています。
ブルーオリジンや他の国際企業との提携は、打ち上げリソースを「買う」戦略の一環です。
最も適した場所を持つ国や企業に打ち上げを任せ、UAEは衛星技術とデータ利用という、
より付加価値の高い部分で世界をリードしようとしているのです。
結論として、UAEの宇宙シフトは、目先の打ち上げコストや地理的制約の問題ではなく、
今後数十年を見据えた国家の生存戦略であり、未来への巨大な投資なのです。



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