皆さんこんにちは!
最近、航空業界をはじめとして持続可能な燃料SAF(Sustainable Aviation Fuel)が
話題になっています。
政府としても2030年にジェット燃料給油量の10%をSAFに置き換えるものとし、年約2%
ずつ利用量を増やすことを目標としています。
今日は、SAFの原材料と日本企業の取り組みを紹介します。
持続可能な燃料SAF
持続可能な燃料SAF
持続可能な燃料SAF(Sustainable Aviation Fuel)は、原料となるバイオマス
や廃食油、都市ごみなどの生産・収集から、製造、燃焼までのライフサイクルで、
従来の航空燃料に比べて温室効果ガスの排出量の大幅な削減が期待できるとともに、
既存のインフラをそのまま活用できる航空燃料です。世界的にCO2排出量削減への
対応が求められるなか、航空業界においても、海外を中心に既にSAFの導入が始まっ
ており、国内でもSAFの技術開発・製造・流通および利用を加速させる必要があり
ます。
SAF は、包括的な持続可能性プログラムにおける強力なツールです。ただし、すべ
てのSAF が同じように作成されているわけではありません。SAF が何からできてい
るのかを知ることは、正確な規制のために重要なことです。最善の意図があっても、
化石ベースの燃料をバイオベースの資源に置き換えることは、森林破壊、生物多様性
の損失、世界的な飢餓、水質汚染などの問題につながる可能性があります. SAF を発
生源まで追跡することは、多くの場合困難で時間がかかりますが、燃料が実際に持続
可能であることを証明する必要があります。特に、国際航空 (CORSIA) または排出量
取引のためのカーボン オフセットおよび削減スキームの一部として持続可能な燃料を
使用する場合はそうです。
SAF は、航空機での使用に安全であることを保証するために、厳格な認証要件を満た
す必要があります。すべての燃料は、JetA と同じ標準である ATSM D1655 に基づい
て認定される必要がありますが、SAF がその段階に到達する前に、合成燃料に固有の
標準である ATSM D7566 にも認定される必要があります。ATSM D7566 は、特定の
状況と特性の下で、仕様どおりのきちんとした SAF を生成するために使用できるテク
ノロジを評価します。
現在、ATSM D7566 を満たす SAF の製造に使用される製造プロセスはいくつかあり、
それぞれに長所と短所があります。
水素化処理されたエステルおよび脂肪酸 (HEFA)
HEFA は現在、SAF の製造に最も広く使用されている方法です。このプロセスでは、
植物油、動物性脂肪 (獣脂)、または使用済み食用油を、従来のジェット燃料と混合で
きる炭化水素の混合物に精製します。HEFA プロセスは、バイオディーゼルの製造に
使用されるプロセスと非常によく似ています。
HEFA プロセスの利点は、商業規模で成熟した技術であり、さまざまな原料を使用で
きることです。しかし、このプロセスは大量の水素を必要とし、大量のエネルギーを
消費し、今日では供給が限られている廃棄原料を主に使用しています。
フィッシャー・トロプシュ (FT)
FT プロセスは、石炭や天然ガスから合成燃料を製造するために使用される確立された
技術です。近年では、バイオマス (植物のわらや株などの有機物) や廃棄物などの再生
可能な原料を使用して SAF を生産するようになっています。このプロセスでは、原料
をガスに変換し、一連の化学反応を使用して液体炭化水素に変換します。
FTプロセスの利点は、航空での使用に適した高品質の燃料を生成するさまざまな原料
を使用できることです。ただし、このプロセスは複雑で、費用がかかり、エネルギーを
大量に消費します。
アルコール トゥ ジェット (ATJ)
ATJ プロセスでは、一連の化学反応を使用して、エタノールやブタノールなどのバイオ
ベースのアルコールをジェット燃料に変換します。得られた燃料は、従来のジェット燃
料と混合することも、単独で使用することもできます。
ATJ プロセスの利点は、廃棄物を含むさまざまな原料を使用できることと、航空での使
用に適した高品質の燃料を生成できることです。ただし、このプロセスは比較的新しく、
商用化するにはさらに開発が必要です。
触媒熱水分解ジェット (CHJ)
CHプロセスでは、農業廃棄物や下水汚泥などの廃棄物を、水と触媒の存在下で加熱し
ます。得られた燃料は、従来のジェット燃料と混合することも、単独で使用すること
もできます。
CHプロセスの利点は、さまざまな廃棄物を使用でき、水素や外部エネルギーを必要と
しないことです。ただし、このプロセスはまだ開発の初期段階にあり、さらに最適化
する必要があります。
パワー・トゥ・リキッド
直接大気回収 は、大気から二酸化炭素を直接除去することで気候変動を緩和するのに
役立つ有望な技術です。この回収された CO2 は、再生可能エネルギーを使用して持
続可能な航空燃料 (SAF) を生産するための原料となります。大気中の CO2 を回収
して SAF に変換するこのアプローチは、大気中の CO2 を 100% リサイクルする
化石燃料の持続可能な代替手段を提供します。
直接空中捕獲はまだ比較的新しい技術ですが、航空以外の技術に多額の投資が行われ
ています。原料としての直接的な空気回収 CO2 は、大量のエネルギーを必要とし、
費用がかかるため、回収された CO2 の他の供給源、特に他の生産または工業プロ
セスからの回収が検討されています。
藻類
藻類ベースのバイオ燃料は、有望な原料として宣伝されています。藻類には油が豊富
に含まれており、これを抽出して再生可能な燃料に加工し、航空機の動力源として使
用することができます。航空バイオ燃料の原料として藻類を使用する主な利点の 1 つ
は、他のバイオ燃料で懸念される土地や水資源をめぐって食用作物と競合しないこと
です。さらに、藻類は砂漠を含むさまざまな環境で成長でき、廃水やその他の栄養豊
富なソースを使用して成長できるため、低コストで環境に優しい選択肢になります。
ただし、生産の規模拡大とプロセスの持続可能性の確保に関しては、まだ対処すべき
課題がありますが、藻類ベースの航空バイオ燃料の潜在的な利点は非常に大きい可能
性があります。
国際航空のための SAF とカーボン オフセットおよび削減スキーム (CORSIA)
ICAO の CORSIA に該当する国際事業者は、特別な考慮が必要です。CORSIA に
準拠するための戦略の一部として SAF の使用を主張するには、燃料精製業者が追
加の基準を満たす必要があります。この追加要件は、森林破壊、生物多様性の損失、
世界的な飢餓、水質汚染などの問題に寄与しないことを保証するために、原料の供
給源を考慮に入れています。現在、持続可能なバイオマテリアルのための円卓会議
(RSB) と国際持続可能性と炭素認証 (ISCC) は、CORSIA の資格がある燃料を認証
するための 2 つの認定手順です。SAF に何が入ったかを知ることで、頭を悩ませ、
場合によっては燃料代を節約できます。
持続可能な航空燃料は、業界内の手段を通じて航空の二酸化炭素排出量を大幅に削
減する可能性を秘めています。さまざまなタイプの生産プロセスにはそれぞれ長所
と短所があり、各プロセスと原料には異なる炭素強度の影響があります。SAF の需
要が高まるにつれて、より多くの製造プロセスが開発され、既存のプロセスが引き
続き最適化される可能性があります。
取り組みを始めた日本企業
国産廃食用油(HEFA)
日揮グループはSAFの国内初の大規模商用生産に向けて、(株)レボインターナショ
ナル、コスモ石油(株)と共同で、使用済み食用油を水素化処理し、国産SAF製造サ
プライチェーンの構築に取り組んでいます。
2022年3月には、(株)レボインターナショナル、全日本空輸(株)、日本航空(株)
などと共同で、国産SAFの商用化および普及・拡大に取り組む有志団体「ACT FOR
SKY」を設立しました。
バイオマスガス化FT
株式会社 JERA、三菱パワー株式会社、東洋エンジニアリング株式会社、伊藤忠商事
株式会社は共同で、バイオマスFTからのSAFの開発・製造を行っています。
JERAは、東京電力と中部電力との包括的アライアンスに基づき、日本に国際競争力の
あるエネルギー企業を創出することを目指して設立され、燃料上流・調達から発電、
電力/ガスの卸販売に至る一連のバリューチェーンが当社に一元化された国内火力発電
の半分を占める発電能力と、世界最大級の燃料取扱量を誇るエネルギー会社です。
SAFの課題
SAFの問題点は、大まかに3つあります。
製造コスト(費用)がかかる
安定的な原料の調達が難しい
生産体制や技術が構築されていない
ことが上げられます。
生産コストは、資源エネルギー庁が4月に公表した資料によると、1リットルあたり
200~1600円、ジェットと燃料の2~16倍です。
脱炭素化に向け、SAFの必要量は大きく拡大していくとみられており、日本では2050年
に約2,300万キロリットルのSAFが必要とされています。
現在、SAF燃料の普及率は非常に低い水準にとどまっています。 2020年時点のSAF燃料
供給量は6.3万キロリットルで世界全体のジェット燃料供給量はわずか0.03%にすぎませ
ん。
それでは、なぜこのようにコストの高いSAFを使用するのでしょうか?それは、航空機
が排出するCO2だけではなく、SAFの製造から運搬までのトータルのCO2の削減を
目標にしているからです。
まとめ
SAFの必要性については、誰もが疑うところではありません。航空機も電動化が
進む中で、今ある多くの航空機をすぐに変えることはできません。そのためには
SAFというサプライチェーンが必要になってきます。
また、次期航空用エンジンとしてSAFの使用を前提としたエンジンの開発も行わ
れています。現在の航空機エンジンよりも高出力でCO2排出量が少ないエンジン
が次々と開発されていくでしょう。
もう『飛び恥=Flygskam(スウェーデン語)』とは言わせないように!
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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