皆さんこんにちは!
昨夜、衝撃的な映像が飛び込んできました!
JAL(日本航空)のエアバスAー350と海上保安庁のボンバルディアDHC8が
羽田空港C滑走路上で衝突、炎上した事故が起こったのです。
今日(1月3日)現在、事故原因は調査中ですのではっきりとしたことは言及できま
せんが、考えられる原因について解説してみます。
事故概要
NHKニュースより
2日午後6時前、東京 大田区の羽田空港で、新千歳空港から向かっていた日本航空516便が、
着陸した直後に海上保安庁の航空機と衝突しました。
この事故で海上保安庁の機体に乗っていた6人のうち、5人の死亡が確認されたほか、日本
航空516便の乗員・乗客のうち14人がけがをしていることが確認されたということです。
日本航空516便(エアバスA350)は、2日午後4時15分に新千歳空港を離陸し、約1時間半
後の午後5時50分ごろに羽田空港C滑走路に着陸した直後に、新潟に1日起こった石川能登
地震の支援物資を搭載した海上保安庁のボンバルディアDHC8(当時6人乗り)と衝突しま
した。
通常、同じ滑走路内の場所に2機の航空機が存在することはありません。どちらかの航空機
が、管制指示を間違えたと考えられます。
原因の考察
仮説1:着陸機JALが着陸指示をもらわずに着陸した
着陸しようとしていたJAL機が着陸許可をもらわずに着陸して衝突したケースが
考えられます。その際には、事前に海上保安庁の航空機に離陸許可が出されています
ので、JAL機に対して管制官から着陸やり直しの指示が早い時点で行われます。
当時は、天気も回復していました(雨のち曇り)ので、滑走路上に航空機がいること
はパイロットから視認できる可能性があります。
また、午後6時前は日没後(2日の東京の日没は4時40分)で滑走路や誘導路の照明は
点灯しており、滑走路上の航空機の視認も容易です。また、航空機自体もビーコンラ
イト(赤色点滅の機体上部についている)やナビゲーションライト(翼端の赤と緑の
ライト)などを点灯させているために、他機からも視認ができます。
結論:この仮説は、極めて可能性が低いと思われます。
仮説2:海上保安庁の航空機が滑走路に誤進入した
次に考えられるのが、海上保安庁の航空機が誤って滑走路に進入してしまったケース
です。
NHKニュースより
昨夜の事故後の国土交通省の会見で、明らかにされたのは羽田空港C滑走路上でのJAL機
と海上保安庁の航空機の位置です。
離陸滑走距離の短い海上保安庁のボンバルディアDHC8は、C滑走路の南端(34側)約3分
の1の位置から離陸しようと滑走路内に進入したと考えられます。
今回衝突事故を起こした同型の海上保安庁のボンバルディアDHC8
滑走路に進入する際には、管制官から進入(または離陸)の許可をもらいます。
管制官は次のような決められた用語を使います。
滑走路上での待機
『当該航空機コールサイン、ランウエイ34ライト(34R) ラインナップ アンド
ウエイト(LINE UP and WAIT)』
(意味:当該航空機は滑走路34ライトに進入して待ってください)
滑走路手前で待機
『当該航空機コールサイン、ホールド ショート オブ(HOLD SHORT OF)
ランウエイ34ライト(34R)』
(意味:当該機は滑走路34ライトの手前で待機してください)
というふうに決められた用語が使われます。
パイロットは、その用語を必ず復唱して、管制指示と違いがないことをお互いに確認
します。同時に機長と副操縦士でも確認を行います。
そして、滑走路に入るときはストロボライトといって白色点滅するライトを点灯させます。
これは航空機が滑走路上にいる間は点灯させます。
中央の白い閃光型の照明がストロボライト
滑走路誤進入防止
滑走路状態表示灯システム(RWSL)が作動している様子
滑走路に誤って進入したり、離陸の許可が無いのに離陸してしまわないように、
交通量の多い空港には自動的に地上の照明(ライト)が点灯してパイロットに知らせる
システムがあります。
止まる位置を表示してくれるストップバーライト
航空機ストップバーライトシステム(以下,STBLシステムと略記)は,滑走路に接続し
た誘導路に横断するよう設置された赤色灯火(ストップバー灯(以下,STBLと略記))
を点灯/消灯することによって,滑走路に誤進入する航空機を防ぎ,滑走路を防護する
ためのシステムです。この STBL は,ICAO(国際民間航空機関)の定める,滑走路視
距離(RVR)550 m未満で運用が行われる飛行場には必要不可欠な灯火と定められてお
り日本では,新東京国際空港,東京国際空港 C滑走路,関西国際空港と整備され,今後
主要地方空港に展開されていく予定です。
誤った離陸をしないための滑走路状態表示灯システム
滑走路状態表示灯システム(RWSL:Runway Status Lights System)は、管制官の
操作なしに灯火を制御するシステムです。発着時や出発時など航空機の位置情報をレーダ
ーで検知し、パイロットに警告する灯火を点消灯させます。 管制官のスイッチ操作が不要
なので、ヒューマンエラーを防止して安全を維持することができます。
※1 THL : 離陸待機灯(Takeoff Hold Lights)
※2 REL : 滑走路入口灯(Runway Entrance Lights)
今回の事故で感じる疑問
なぜJAL機は通常着陸に使うA滑走路を使用しなかったのか?
羽田空港は、風の向きによって離陸と着陸をする滑走路を分けています。2日の夕方のよう
に雨が降った後、低気圧が通過して北風に変りました。通常であれば、離陸をC滑走路、
もしくはD滑走路で行い、着陸をA滑走路(JALの第一ターミナルに近い)で行います。
しかし今回、なぜ近い方のA滑走路を使わなかったのでしょうか?その理由として考えら
れるのが、現在A滑走路はかさ上げ工事を行っており、着陸に使用できる滑走路の長さが
2975mと短くなっています。加えてJAL516便はお正月の帰省客で満席になっており
エアバスA350は最新鋭の大型機です。そのため着陸距離が十分に担保できるC滑走路を
使用したと考えられます。
また、海上保安庁の航空機も離陸に近いC滑走路を選択したと思われます。
誤進入防止のストップバーライトは作動しなかった?
C滑走路に付いている滑走路誤進入防止のストッパーライトはその時点灯しなかった
のでしょうか?
実は、同じく滑走路や誘導路工事のために、点灯するはずのストッパーライトが使えなか
ったのです。
また不運が重なりました。
管制官は気づかなかった?
羽田空港の管制塔は、空港や滑走路が見渡せる位置にあります。(ほぼ空港の中央)
そして空港が広ければ広いほど、広範囲が見渡せるように管制塔そのものを高くしなけ
ればなりません。
羽田空港の管制塔は日本一高い116メートル
そのため、雲が低いときや視程が悪いときには滑走路や航空機が見えづらいときがあります。
2日の天気はそれほど低い雲や悪視程ではありませんでしたので、これは事故報告で明らか
になると思います。
JAL機からは滑走路上の海上保安庁の航空機は見えなかったのか?
2機の航空機が衝突した場所は、着陸したJAL機が接地してすぐの地点でした。着陸する
パイロットの視界の中には当然入っているとは考えられます。コックピとの中で、パイロ
ット同士(当時は訓練生を含め3人のパイロットが搭乗)でどのような会話が行われて
いたのでしょうか?
これについても事故報告を待ちたいと思います。
まとめ
あらゆる事故は、いくつもの不運やミスが重なって起きるものです。その原因は決して
一つではありません。
今回、不幸にもお亡くなりになられた方や負傷された方が大勢いらっしゃいます。
改めて事故の恐ろしさを痛感しています。
私は、この一報を聞いたのは関西国際空港に着陸した後でした。インターネットからの
衝撃の画像を見て信じられない思いでした。
当時、羽田へと飛行していた航空機が一斉に成田空港へと着陸したために我々の便
(関空~成田)は待機(離陸を見合わせる)をすることになりました。
突然のことでしたが、フライト再開に向けて準備をしなければなりません。
次回は、パイロットはこの様な事故が起こったときにどう対処していいかという
ことを私が思うところを解説していきます。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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