LCCは生き残れるのか?

飛行機

皆さんこんにちは!

コロナのパンデミックから5年。世界の航空業界は急速な回復を遂げています。

しかし、一方でLCCの競争激化、国の経済事情により破綻や事業の見直しによるリストラが

始まっています。その傾向は、アメリカやヨーロッパの航空先進国に見られています。

はたして、LCC(格安航空会社)、ULCC(超格安航空会社)のモデルは失敗なのか?

アイスランドの悲劇、財政難で営業停止

ジェットをプレイする

LCCプレイ財政難による運航停止

最近ウェットリース運航に移行したアイスランドのLCCプレイは、即時運航を停止しました。

「フライプレイの取締役会は事業停止を決定しました。同社の全便は欠航となりました」

と、フライプレイは9月29日の開示情報で述べました。「異なる結果を得るためにあらゆる

努力が払われました。この決定は、この状況において考え得る最も辛いものであり、他の

あらゆる選択肢が尽きたと判断されたため、この決定に至りました。」

プレイは今年初め、2,000万ドルの資金を調達し、プレイ CEOのアイナー・オルン・オラフ

ソン氏と副会長のエリアス・スクリ・スクラソン氏が提案した自主的な買収を断念した後、航空機とネットワークを大幅に再編しました。

プレイ航空は新たな戦略の下、アイスランドの航空運航免許(AOC)を返上し、新たに

マルタのAOCを取得し、大西洋横断路線から撤退、アイスランドの保有機材をエアバス

A320ファミリー4機に絞り込み、6機をウェットリースする計画でした。アビエーション・

ウィーク・ネットワークのデータによると、プレイ航空はスカイアップ・ヨーロッパにA321を3機発注しています。

「残念ながら、これらの変更では、長年にわたって蓄積されてきた当社の根深い課題を克服

するのに十分な成果を上げることができないことが明らかになりました。振り返ってみると

新しい事業計画はもっと早く実行すべきでした」と、プレイ社は9月29日の最新情報で述べました。

同社は、プレイの業績は予想よりも弱く、チケットの売り上げも低迷し、戦略の転換に対

して「一部従業員の間で不満」が出ていると説明しました。

「当社は当局および従業員と緊密に連携し、運航を段階的に縮小するために必要な措置を

講じていきます」とプレイ社は述べました。「上記を踏まえ、プレイ社は本日運航を停止

します。数千人の乗客が帰路の計画を変更する必要があり、約400人が職を失い、当社の提携企業も損失を被ることになります。」

プレイ社は4年前に設立され、昨年の夏にはA320neoを6機、A321neoを4機含む10機の航空機を運航していまし。

プレイの航空機は2023年夏と2024年夏には月間約4,000飛行時間を実行していたが、2025年夏には月間3,000飛行時間を下回る利用率となりました。

プレイの破綻の危機はアイスランドの国情?

アイスランド 場所 地図 に対する画像結果

国土が狭く近年は火山の影響もあり観光には問題があるアイスランド

アイスランド市場は非常に小さく、伝統的なフラッグキャリアであるアイスランド航空

直接競合しています。アイスランド航空も大西洋横断ルート(ヨーロッパ~北米間)の

中継地としてのビジネスモデルに長けており、プレイは常に価格競争にさらされています。

アイスランドの経済や観光は、地政学的リスク、火山の噴火、そして為替変動の影響を

受けやすく、市場規模が小さいため、外的要因による経営への影響が大きくなりがちです。

プレイは、2019年に破綻したLCCのワオ・エア(WOW Air)と同じビジネスモデル

(安価な大西洋横断乗り継ぎ)を継承しているため、投資家や顧客は常に「第二のワオ・

エアになるのではないか」という懸念を持ったれていました。

プレイの先代LCCであるワオ・エアは、2019年3月に突如運航を停止し、破綻しました。

その主な原因は、LCCによくある失敗例を複合的に含んでいました。

ワオ・エアは、設立後わずか数年で機材数を急速に増やし、長距離路線を増やしすぎまし

た。この急拡大に必要な資金調達が追いつかず、財務基盤が脆弱なまま無理な投資を行いました。

特に、A330型機を導入してインドや西海岸の長距離路線に進出したことが、コスト構造の悪化に拍車をかけました。

LCCは高い稼働率と低コストを維持することで初めて利益が出ますが、ワオ・エアは成長期において度重なる赤字を計上しました。

危機的状況を脱するために増資や債権者との交渉を試みましたが、最終的な資金調達に失敗

し、経営破綻に至りました。破綻直前の身売り交渉の失敗も致命的でした。

ワオ・エアの失敗は、LCCのビジネスモデルである「低コスト」と「高稼働率」のバランス

を崩したことが最大の原因であり、プレイも同じ道を辿るのでしょうか?

アメリカ、ULCCスピリット航空は復活できるのか?

1年に2度の破産申請

スピリット航空 A320

スピリット航空は、ULCC(超格安航空会社)が1年足らずで2度目の連邦破産法第11章に

基づく事業再編を進め、ネットワークを縮小する中で、米国の11市場から撤退し、新規サービス開始の計画を棚上げしています。

スピリット・アビエーション・ホールディングスが8月29日にニューヨーク南部地区連邦

破産裁判所に連邦破産法第11章の適用を申請しました。同社は当時、この申請を「より強固な基盤と未来を築くための積極的な一歩」と表現していました。

スピリット航空のCEO、デイブ・デイビス氏は「当社は事業のあらゆる側面を評価し、

航空機、市場、機会についてより戦略的な包括的アプローチを進めていく」と述べました。

スピリット航空は再編資料の中で、より多くの目的地、便数、強化された接続性を提供でき

る主要市場に焦点を絞り、限界または業績不振の駅での存在感を縮小することで「ネットワークを再設計する」計画です。

スピリット航空のビジネスモデルであるULCC(超格安航空会社)とは

スピリット航空のビジネスモデルであるULCC(Ultra Low-Cost Carrier、超格安航空

会社)は、一般的なLCCとどのように異なり、また大手航空会社、LCCと比べてどれほどの価格差があるのでしょうか?

ULCC(超格安航空会社)は、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルをさらに極限まで

追求し、「すべてのサービスを有料化する」ことで、航空業界で最も低い運賃を実現するモデルです。

スピリット航空やフロンティア航空(米)、ライアンエアー(欧)などがこのモデルの代表格です。

ULCCは、価格に最も敏感な顧客層に焦点を当てます。その戦略は。

  1. 最も安い運賃で集客: 広告などで「基本運賃の安さ」を訴求し、顧客を惹きつけます。
  2. 付帯収入で利益確保: 顧客が「無料」と認識しているサービス(機内持ち込み荷物、座席指定、飲み物など)をすべて有料化し、これらの付帯収入で利益の大半を稼ぎます。

スピリット航空は、この付帯収入比率が非常に高く、LCCの中でも最も「徹底した」コストカットと有料化を進めていました。

価格差は路線や予約時期によって大きく変動しますが、一般的にULCCの基本運賃は、競合他社に比べて非常に安価に設定されています。

価格差のイメージ(一例)

運賃タイプ 大手航空会社(JAL/ANA/デルタなど) LCC(ジェットスター/サウスウエストなど) ULCC(スピリット/フロンティアなど)
基本運賃(片道) ¥40,000 ¥15,000 ¥5,000
サービス追加後 ¥40,000 ¥20,000(手荷物1個追加) ¥25,000(手荷物+座席指定+飲み物)
ターゲット層 快適性・信頼性重視、ビジネス層 コスト重視だが最低限のサービスを求める層 「座席さえあればいい」という徹底した価格重視層
破綻危機の原因

それでは、なぜスピリット航空が破綻の危機を向かえているのでしょうか?

スピリット航空が危機に陥った最大の要因は、競合LCCであるジェットブルー航空との

合併計画が、2024年初頭に連邦裁判所によって差し止められ、頓挫したことです。

スピリットにとって、この合併は高騰するコストや機材のトラブルを乗り越えるための

「救命ボート」でした。合併により大規模なネットワークと資金力を得て、危機を脱する計画でした。

合併の失敗により、将来の展望が一気に不透明となり、株価が急落し、独自で生き残るための道筋をゼロから立て直す必要に迫られました。

ULCCのビジネスモデルは、機材稼働率を極限まで高めることで成り立っていますが、近年

同社の主力機であるエアバスA320neoファミリーに搭載されているプラット&ホイッ

トニー(P&W)社製のギヤードターボファン(GTF)エンジンに技術的な欠陥が発覚しました。

安全上の懸念から、同社の多数の機体が検査や交換のために長期間運航停止を余儀なくされました。

運航停止により、航空券を販売できない機体が増え、収益の柱が細くなりました。これは、

稼働率が命のLCCにとって致命的な打撃となりました。

合併中止とエンジン問題という二重の打撃を受けた際、スピリット航空は他社に比べて手元

の現金(キャッシュ)が乏しく、財務的なクッションが不十分でした。

このため、同社は大規模な債務再編や、機材リース会社との交渉によるリース期間の調整

(機材削減)といった緊急措置を余儀なくされており、現在も厳しい資金繰りが続いています。

これらに加えて、機材、燃料費、人件費の高騰がいっそう拍車をかけたのです。

問われるLCC戦略

儲かっているのに赤字?ジェットスタージャパン

本日(10月1日)に日本のLCC、ジェットスター・ジャパンが2025年6月期の決算発表を行いました。(マスコミ発表は前日の9月30日)

ジェットスター・ジャパンの2025年6月期決算は、営業収入と営業利益が過去最高を達成

したにもかかわらず、最終的な純損益は赤字に転落しました。

項目 2025年6月期 業績 前期(2024年6月期)との比較
営業収入 過去最高を達成 順調に増加
営業利益 過去最高を達成 順調に増加
純損失 15億4,300万円の最終赤字 前期は5億700万円の純利益で黒字だったため、赤字に転落
年間平均搭乗率 87.8% 過去最高を記録(前期:86.4%)

決算報告書によると、最終赤字に転落した主な原因は、航空事業の営業活動によるものでは

なく、主に「営業外費用」として計上された突発的かつ特殊な要因によるものです。

赤字の主な要因は以下の2点に集約されます。

致命的な要因 (1):急激な「為替変動」に伴う費用

ジェットスター・ジャパンは、航空機や予備部品の購入、リース料、一部の海外運航費

用など、USドル建ての支出が多い構造を持っています。

2025年6月期に発生した急激な円安(円の価値が下がり、ドルが高くなること)により、

ドル建ての債務や支出を円換算した際に、その負担が膨大に増加しました。この為替差損が

営業利益を打ち消すほどの大きな費用として計上されました。

致命的な要因 (2):「機材計画の変更」に伴う費用

航空機を運用する上で、予定していた機体の導入や退役計画を変更したり、リース契約を

調整したりする際には、違約金や契約解除費用が発生することがあります。

国際線需要の増加やエアバスA321LRの導入・運用に関する計画変更に伴い、特別な費用

(ペナルティや契約変更費用)が発生し、これが純損失を押し上げる要因となりました。

好調なピーチアビエーション

一方、同じ時期に運航を開始した大阪(関西空港)のLCCピーチアビエーションは、対照的に経営状況は好調です。

ピーチ・アビエーションが好調を維持し、LCC市場を牽引しているのには、いくつかの明確な戦略的優位性があります。

ピーチは、コスト効率だけでなく、日本の市場環境に最適化された戦略と、親会社である

ANAホールディングスとの関係をうまく活用しています。

ピーチ・アビエーションの好調を支える要因は?

1. 徹底したコスト管理と国産LCCとしての優位性

ピーチは、ジェットスター・ジャパンと同様にLCCですが、特に「日本国内で完結するコスト管理」において強みを持っています。

ジェットスターが豪カンタス・グループ傘下であるのに対し、ピーチはANAホールディング

ス傘下です。機材のリース料などはドル建てですが、人件費や空港使用料などの国内支出の

比率が高いため、急激な円安の影響をジェットスターほど直接的に受けにくい構造です。

2. コロナ禍後の需要回復の取り込み

ピーチは、コロナ禍が明け、航空需要が回復し始めた際に、その流れを素早く捉えました。

コロナ禍からの回復はまず国内レジャー需要から始まりました。ピーチは国内路線網が充実

しているため、「安くて近場に旅行したい」という日本のレジャー需要をいち早く取り込み、高水準の搭乗率を維持しました。

ピーチは、特に若年層や価格志向の旅行者の間で、「新幹線や高速バスの代替手段」としての地位を確立しており、需要が安定しています。

3. 機材の更新と最適化

ピーチは、最新のエアバス A320neo シリーズへの機材更新を進めています。燃費効率が

大幅に向上しており、燃油高が続く環境下で運航コストを削減する大きな武器となっています。

4. 親会社ANAとの戦略的連携

ピーチはANAの完全子会社であるため、単独のLCCにはない安定性と優位性があります。

親会社の信用力を背景に、機材リースや資金調達を安定して行うことができます。

ANAの持つ運航や整備のノウハウ、バックアップ体制を利用できるため、大規模なトラブル

や急な運航停止リスクが相対的に低く抑えられ、信頼性が高いと評価されています。

まとめ

海外、国内のLCC(格安航空会社)の現状を見てきました。

日本でもLCCが発足して10年が経ちました。皆さんの間でも広く認知されてきました。

日本の経済は今年に入って、株価も過去最高を更新しました。しかし、景気はどうでしょう?

実質賃金は上がったものの物価の上昇(インフレ)が、それを上回っています。

インバンド需要で、観光地の宿泊費や物価、土地価格も上昇。

これではますます、収入格差、富裕層と貧困層の2極化が進むと予想されます。

今後、航空業界に求められる(生き残りのため)戦略に必要なことは

単なる「安さ」ではなく、顧客層に応じた「価値」の提供(イノベーションの創設)

日本の航空会社は、インバウンド需要の取り込みと国内の地域活性化という二つの側面を持つ必要があります。

個人的には、新潟を拠点としたトキエア(長谷川社長)は、今月6日の役員会で実業家の

堀江貴文氏(ホリエモン)を社外取締役に迎えることに大いに期待しています。

 

 

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