乱気流抑制技術の可能性を探る

ドローン、空飛ぶ車

皆さんこんにちは!

今年の5月21日、ロンドンからシンガポールに向かっていたシンガポール航空の旅客機が激し

い乱気流に巻き込まれてタイの空港に緊急着陸し、乗客1人が死亡したほか少なくとも30人が

けがをしました。この乱気流の発生は地球温暖化の影響があると言われています。

そこで、乱気流に対応する新しい技術が研究されています。

乱気流抑制技術の可能性を探る

乱気流

乱気流は航空機にとって大きなリスク

地球温暖化に伴い、乱気流は航空機にとって大きなリスクになりつつあります。

昨年は65,000件を超える乱気流が記録され、過去40年間で発生件数は50%以上増加して

います。

今年初め、ロンドン発シンガポール行きのフライト中、シンガポール航空のボーイング

777-300ERが激しい乱気流に見舞われ、乗客1名が死亡、31名が負傷した。こうした事故に

加え、燃料効率の悪さ、経路変更、遅延、整備などによる賠償金は、民間航空業界全体で年間

約26億ドルに上ります。

乱気流事象も AAM コミュニティにとって懸念事項であり、特に都市部での飛行を考えると

建物の影響により、運用環境を予測することが最善の場合でも困難になり、最悪の場合、生命

に危険を及ぼす可能性があります。

高層ビルは空気の動きに摩擦抵抗を与え、この摩擦によって乱気流が発生し、その結果、空気

力学的揚力が急激に低下することがあります。複雑な空気の流れの特徴には、下降気流、上昇

気流、隣接するビル間の漏斗状流、ビルの背後の航跡、ビルの角に近いせん断層、馬蹄形渦

などがあります。

都市部の航空移動の運用に伴うリスクについては、今年初めにミラノ工科大学が発表した

「都市部の航空移動の発展を支援するための都市環境における風の流れモデルのレビュー」

と題する論文を含め、 数多くの学術研究が進められています。

工科大学の論文によると、都市環境では避けられない微風条件により安全上の課題が増加し

飛行試験の複雑さが増し、その結果、航空機の認証プロセスの期間が長くなるということで

す。また、さまざまな UAM アプリケーション用の合成風データを生成するために使用できる

いくつかのマイクロスケール風モデルについても詳しく説明されており、特定の領域での試験

プロセスを合理化します。

乱気流キャンセル

しかし、乱気流をほぼ完全に緩和できるとしたらどうだろうか。これが、ウィーン工科大学の

研究プロジェクトから生まれたウィーンを拠点とする企業タービュランス・ソリューションズ

の使命です。同社は過去6年間、乱気流の影響を80%以上軽減できると創始者らが言うアク

ティブ乱気流キャンセリング技術の開発に取り組んできました。

この特許取得済みのシステムは、鳥のように航空機全体を回転させるのではなく、翼の形状を

動的に調整する、対抗する操縦翼面のたわみを利用しています。このシステムは、軽固定翼

航空機を使用した一連の有人テストで実証されており、軽飛行機 (パート 23、UL、LSA)、

旅客機 (パート 25)、および動力式 AAM 航空機 (CS23) での使用に向けて開発されました。

「私たちは、航空機の前方 (翼の前縁から約 50cm 前方)にセンサーを設置しています

これにより、特定の航空機タイプが流入する乱気流に基づいてどのように動くかを計算する

に十分な予測時間が得られます。次に、私たちのシステムは、翼に統合されたフラップレット

を使用して、乱気流を緩和するためにどの程度の逆乱気流を発生させる必要があるかを計算

します」と、 タービュランス ソリューションズの市場およびビジネス開発責任者である

オリバー ブライテンダー氏は語ります。

飛行機の尾翼の方向舵に似たフラップは、乱気流の影響を軽減するために1秒間に3~5回動

く。ブライトネダー氏はこの原理を、反対のベースを重ねて元の音を中和するノイズキャン

セリング技術に例えています。

Part 25 および AAM 航空機のテストと認証はまだ進行中ですが、このシステムは現在、

スロバキアを拠点とする Shark.Aero の単発低翼超軽量航空機 Shark 600 で購入可能です。

Shark.Aero の単発低翼超軽量航空機 Shark 600:クレジットShark.Aero

市場への道

同社が最初に超軽量航空機市場をターゲットにしたのは、このタイプの航空機は国家レベルの

認証のみを必要とし、参入障壁が低いためである。また、タービュランス ソリューションズ

は最初の有人デモ飛行から 3 年も経たないうちに製品を市場に投入しています。

タービュランス ソリューションズは、最小限の実行可能な製品に続いて、次のイテレーション

で、その技術をパート 23 航空機で使用するための認証を取得し、その後再びパート 25 に

移行します。  「これらの航空機は、下層大気の乱気流と、増加傾向にあるジェット気流の晴

天乱気流の影響を受けます。ここでは、AAM と同様に、決定は主に客室の体験に基づいてお

り、快適性が重要な役割を果たしていると思います。しかし、オペレーターにとってはコスト

削減のメリットもあります。」

「そうすれば、先進的な都市型航空移動のソリューションに移行する準備が整うでしょう。」

この技術は、型式証明の一部として新しい航空機に搭載することも、補足型式証明に基づいて

後付けすることもできるとブライトネダー氏は言います。  「航空機にフラップがあれば、乱

気流フラップに必要な機構を既存の翼の中に組み込むことができます。完成すると、非常に高

速に動く双舵のように見えます。」

先進航空モビリティ研究 

都市の峡谷の乱気流は、都市の航空移動運用用に設計された航空機にとって特に重要です。

複数の建物の近くを低速で飛行する場合、有翼 eVTOL の場合、ローターへの依存度が高くな

ります。

この課題を解決するには、Turbulence Solutions (乱流ソリューション)の技術を応

用する必要があります。現在開発段階にあるこの技術では、センサー プローブを使用して

アレイ全体の独立したローター速度を正しく変更する予測計算が可能になります。

「乱気流防止技術のない機体で、eVTOLに乗って市街地を飛行する気があるなら、ジェット

コースターのファンでなければなりません」と ブライトネダー氏は言います。  「たとえ乱

気流を最大限体験しながら安全性を保証できたとしても、乗客は飛行機に乗るのを怖がるで

しょう。」

ブライテンダー氏はまた、eVTOL 開発者に対し、飛行の巡航段階を支援するために航空機の

翼に乱気流除去技術を組み込むことを推奨しています。  「乱気流除去は、信頼性と信用を高

め、エアタクシーの運用モデルをサポートする重要な実現技術です。乗客は、よりスムーズな

飛行をより高い安全性と結び付けます。そして、それがこの新しい航空輸送ソリューション

定期的に使用し、ビジネス モデルを成功させる鍵となります。」

資金調達

タービュランス ソリューションズは、オーストリア連邦政府の振興銀行であるオーストリア

経済サービス協会を含む、オーストリア政府のさまざまなイノベーション基金から主に資金提

供を受けています。これまでに、政府助成金と個人株主からの寄付により、200万ユーロ

(220万ドル)強を調達しています。同社はまた、欧州イノベーション評議会のアクセラレー

ター プログラムへの申請手続き中です。

ブライテンダー氏は、これまでの超軽量航空機の販売と近い将来の販売予測によって銀行に

十分な資金が貯まったため、来年には軽飛行機市場向けに製品を供給できるだろうと述べてい

ます。

「AAM 市場に参入する場合、まだ完全に定義されていない規制の認証に時間が必要なため、

2028 年に損益分岐点に達すると予測しています。そのためには、約 1,000 万ユーロが必要

です。その後、大型航空機に参入する場合、認証にさらに時間がかかると考えています。

その分野で損益分岐点に達するには、6,000 万ユーロの費用がかかり、2030 年代までかか

と予想しています」と、 ブライトネダーは説明します。

乱気流事故が同じ割合で増加し続けると、2030 年代半ばまでに 12.5% 増加することに

なります。航空機生産の増加予測と悪天候パターンの継続的な加速を考慮すると、この数字

は増加する可能性が高く、それに伴い、緩和技術の必要性も高まります。

日本で調査対象の旅客機事故 半数以上が乱気流に遭遇

国の運輸安全委員会によりますと、2023年までの20年間に起きた日本での調査の対象とな

った旅客機の航空事故67件のうち、半数以上の37件が乱気流に遭遇したことによるものだとい

うことです。2023年は1件、2022年は6件起きています。

これらの事故では、大けがをした45人を含め、119人がけがをしていて、その内訳は、乗客が

63人、客室乗務員が56人となっています。

過去には一度に10人以上が、けがをする事故も起きています。

2014年には、韓国からアメリカに向かっていた旅客機が、日本の上空で乱気流に遭遇し、

12人がけがをしました。

乗客が撮影した動画には、乗客らが悲鳴のような叫び声を上げている様子のほか、客室の床に

機内食とみられる食事や皿が散乱している様子がおさめられていました。

2009年には、フィリピンから成田空港に向かっていた旅客機が、千葉県沖の上空で乱気流に

巻き込まれ、38人がけがをしました。この事故では、席を離れていたか、シートベルトをして

いなかったか、もしくは、シートベルトをしていても適切に着用していなかった乗客が、大け

がをしたことがわかっています。

運輸安全委員会によりますと、20年間の事故を分析したところ、乗客と客室乗務員のいずれも

がシートベルトを着用していることが多い上昇中や、滑走路への最終進入中に起きたものは

比較的少なく、ほとんどが巡航中や降下中に起きています。

このため、航空会社が行う対策として、客室乗務員も、着席を基本とする必要があるとしたほ

か、大きな揺れが予想される場合には、機内サービスを行わないことを会社の方針として明確

にすることが必要ではないかとしています。

そのうえで、乗客の協力も必要だとして、常にシートベルトを腰の低い位置で締めることや

トイレを、可能なかぎり地上で済ませておくことなどを呼びかけています。

まとめ

今回は、小型機、また開発中のエアタクシー(eVTOL)の乱気流対策についてお伝えしまし

た。小型機は、地上に比較的近い高度までしか上昇できないため、旅客機のような大事故に

至るまでの乱気流に遭遇することはあまりないかもしれません。

しかし、近年の地球温暖化の影響がもたらす異常気象は、ゲリラ豪雨の原因の線上降水帯、

積乱雲から発生する突風(マイクロバーストなど)、竜巻などの異常な突風があります。

推進力やエンジンの出力が弱い小型機は、これらのエリアからの脱出に失敗する可能性が大い

にあります。地上に近い航空機の失敗は、即、墜落を意味します。多くお小型機の墜落事故

の原因は、突風や風の急変による失速事故です。

これらの事故を防ぐ目的として、今回のような技術が開発されることは大きな意味があります。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

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