英国の軍事産業

飛行機

皆さんこんにちは!

前回は、英国のeVTOL業界を代表するバーティカル・エアロスペース社と英国の経済に

ついての記事を書きましたが、今日は英国の軍事産業について紹介します。

航空機は、軍事部門(戦闘機やミサイル)から発展します。そこで実際に使われたシステム

がやがては民間航空機へ利用されるのです。皆さんも普段使っている位置情報は、いわゆる

軍事衛星からのGPSです。いわば、軍事産業の発展が航空機や宇宙ロケットなどの開発に

つながっています。

極超音速兵器開発戦略

英国政府は極超音速兵器の開発に積極的に参入しており、極超音速攻撃能力の開発につながる

可能性のあるロードマップの策定を開始しました。 

英国国防省が7月初旬に公表した入札書類は、民間用途向けにこれまで行われてきた国家努力

を超えて、極超音速兵器技術に対する英国の理解を拡大する計画を明らかにしています。 

この文書によれば、英国政府がAUKUS(2021年にオーストラリアと米国との間で締結された

防衛協定)の一環として極超音速技術を追求するというものです。

文書によれば、国防省は「3つの作業部門を通じて高度な極超音速攻撃能力をペースで追求

する」いわゆる極超音速チームを設立しました。両派はAUKUSと連携して極超音速滑空機を

購入し、既存の極超音速兵器計画に協力し、国家主権の極超音速兵器能力(おそらくは極超

音速巡航ミサイル)を開発しています。これら 3 つの作業は相互に排他的ではなく、個別に

または同時に進めることができるとのことです。

7 年間で約 10 億ポンド (13 億ドル) と評価されるこの取り組みは、米国と英国の共同極超

音速科学技術イニシアチブである Thresher を加速し、HyLarc と呼ばれるこれまで非公開

のプログラムによる技術実証につながります。 

このフレームワークは、入札書類で「研究開発と能力の間の認識されたギャップ」と記載さ

れているものに対処することを目的としており、英国の極超音速技術準備レベル(TRL)を

最大9まで構築するのに役立ちますが、書類には、HyLarc技術実証機が最大TRL 6までの技

術を提供すると記載されています。  

「この活動は現在の能力開発スケジュールを加速し、ペース調整の脅威と英国の極超音速攻

撃能力の欠如との間の不一致を是正するだろう」と文書は付け加えています。 

極超音速は、オーストラリアと米国の二国間および英国と米国の三国間で検討されている既

存の極超音速の取り組みを拡大することを目的として、2022年4月にAUKUS協定の範囲に

追加されました。  

英国の極超音速研究への資金は、国防省が2021年に高速ミサイルを含む防衛研究開発に投入

した66億ポンドから捻出されます。 

英国国防省は、「できるだけ早く極超音速能力を確保する」ため、チーム極超音速(英国)

プログラムの調達および商業戦略を策定しています。 

英国国防科学技術研究所(DSTL)は、2022年から極超音速兵器プログラムを実施しており、

その目的は、10年代半ばまでに極超音速巡航ミサイル技術の実証機を納入するとともに、次

期極超音速兵器の概念と技術以降の広範な世代に投資することです。  

これとは別に、DSTL は、リアクション エンジン、ロールス ロイス、イギリス空軍の迅速能

力局、および英国の国家安全保障戦略投資基金と協力して、極超音速航空機実験プログラムを

実施しています。昨年のファンボロー航空ショーで、英国を再利用可能な極超音速空気システ

ムのリーダーとして確立することが発表されました。チームは、新しい空気呼吸推進アーキテ

クチャ、革新的な熱管理システム、先進的な車両コンセプトなど、重要な高マッハ/極超音速技

術に取り組んでいます。

アメリカ、レイセオン社の極超音速兵器(画像:レイセオン)

BAEシステムズ

BAE Systems

BAE Systemsは、1999年に設立された英国の国防・情報セキュリティ・航空宇宙関連企業

です。本社はハンプシャー州ファンボローにある旧ブリティッシュ・エアロスペース本社

ですが、登記上の本社所在地はロンドンシティ・オブ・ウエストミンスターです。

2017年現在、製造業に携わる企業としてはイギリス国内で最大です。

北アメリカに進出した子会社のBAEシステムズ・インクを介して世界的な影響力を持ち、

2020年現在も防衛関連企業として世界7位の事業規模を誇ります。同社は空軍、陸軍、海軍

向けのソリューションを提供しています。同社は、監視および偵察センサー、電子戦および

暗視システム、飛行およびエンジン制御、ネットワーク通信機器などのミッションクリティ

カルな電子システムを設計、開発、提供しています。サイバーセキュリティ ソリューション

インテリジェンスおよび分析ツール、サポート サービスとソリューションを提供します。

BAE Systems は、装甲戦闘車両、戦術装輪車両、ミサイル発射装置、砲兵システム、艦砲

の設計、開発、アップグレードを行っています。同社は、法執行機関向けに特殊な保護およ

セキュリティ製品を提供しています。

フェイサ-35が成層圏に到達

Phasa-35 HAPS

BAE Systems のフェイサー35(画像:BAE Systems )

BAE Systems のフェイサー35太陽光発電無人航空機システム(UAS)が初めて成層圏を

飛行しました。

飛行は6月下旬にスペースポート・アメリカからニューメキシコ州のホワイトサンズミサイ

ル発射場上空で行われました。高高度擬似衛星(HAPS)が高度66,000フィート(2万メー

トル)以上に到達したと発表しました。

成層圏を短時間飛行することで、エンジニアは高高度でのシステムの性能を評価することが

できました。これは、フェイサー35 のシステム性能を確認し、テスト ポイントを検証する

ために計画された一連の試験の最初のものでした。

フェイサー35 は、2020年2月にオーストラリアのウーメラで初飛行を完了し、飛行前にそ

の実力を証明するために模擬環境でのコールドソークも完了しています。

エアバスのゼファーと同様に、フェイサー35 は翼と水平尾翼の表面を覆う太陽電池を使用

して、電気モーターや搭載システム、センサーに電力を供給します。また、セルはリチウム

イオン電池セルを再生して夜間に電力を供給します。 

翼幅 35 m (115 フィート) にちなんで名付けられたフェイサー35は、重量 150 kg (330

ポンド) で、15 kg のペイロードを運ぶことができます。バッテリー技術とモーター効率の

向上率により、最長 1 年間空中に留まる可能性があります。

BAE Systems は、防衛が通信中継や監視などのミッション用システムの主要顧客であると

考えています。民間認証を取得した フェイサー35は、地上への 4G および 5G セルラー接

続を提供し、災害救援任務や国境警備任務をサポートすることもできます。最初の飛行試験

は米陸軍の宇宙・ミサイル防衛司令部テクニカルセンターが主催した。次の飛行は英国国防

省の支援を受け、ペイロードを運ぶ予定。

高度な戦闘航空能力の研究施設を立ち上げる

BAE Systems は、戦闘航空能力の向上に重点を置いた研究開発センター、FalconWorks を

発表しました。

FalconWorks は、アイデア、イノベーションを生み出し、さまざまなパートナーと協力する

ことを使命として、空軍が競争力を維持できる製品とサービスを提供することを目指してい

ます。BAE Systemsは、テクノロジーを活用し、産業界や学術機関と協力することで、戦闘

空軍力の未来を形づくろうとしています。

BAE SystemsのFalconWorks部門は、人工知能、量子センシング、ロボット工学などの技術

を活用して、研究開発の取り組みを主導することを目指します。専門家は新たな傾向を監視し

デジタルの進歩を活用して戦闘航空能力を強化するソリューションを開発します。

パートナーとのコラボレーションは、自律性、合成環境、電動空気システムにまで拡張されま

す。BAE Systemsのポートフォーリオを拡大し、タイフーン、F35、テンペストなどの戦闘

プログラムの専門知識を構築することで 、FalconWorks は顧客に常に時代の先を行く技術

を提供することを目指しています。

FalconWorks の創設は環境の変化を反映しており、革新的な技術開発を確実にするという目

標が同社のすべての活動の中核です。

BAE SystemsのFalconWorksは、航空部門の新しい部門です。(画像:BAE Systems )

テンペスト フューチャー コンバット エア システム (FCAS) 航空機

テンペストは、進化する脅威に対処するために国の空戦能力を向上させるための将来戦闘航

空システム (FCAS) プログラムに基づいて英国空軍 (RAF) のために開発されている第 6 世

代戦闘機です。

この航空機は、英国に本拠を置く航空宇宙会社、BAE Systemsが率いるTeam Tempestに

よって開発されています。このチームには、イタリアの航空宇宙企業のレオナルド、欧州の

ミサイルシステムプロバイダーである MBDA の一部門である MBDA UK、ロールスロイス

などの業界パートナーも含まれています。

同チームは英国国防省および英国空軍と協力して将来の戦闘機の開発に取り組んでいます。

テンペストFCAS実証機の開発はイングランド北部プレストン近くのBAE Systemsの施設で

進められており、実証機は2027年までに公​​開される予定。

テンペスト FCAS 航空機は、2018 年 7 月に開始された英国の戦闘航空戦略の一部です。

テンペスト航空機のコンセプトは、同月のファンボロー航空ショーで発表されました。

BAE Systemsは2021年7月に国防省からテンペストFCAS航空機の設計・開発に関する約

2億5,000万ポンド(3億4,700万ドル)相当の契約を受け取り、プロジェクトのコンセプト

と評価段階の始まりとなりました。英国政府は、2025年までにこのプロジェクトに20億ポ

ンド(24億ドル)以上を投資すると予想されています。

テンペスト戦闘機は、2035年までに英国空軍で運用されている既存のタイフーン戦闘機を

置き換える予定です。

そして、2022年12月に「国際協力を視野に我が国主導の開発」との方針のもと、協議を進

め、日英伊三か国による共同開発を2022年12月、公表しました。

共同開発の意義(防衛省HPより)

三か国各々の技術を結集しつつ、開発コストやリスクを分担して、将来の航空優勢を担保す

る優れた戦闘機を開発できます。

次期戦闘機の量産機数の増加、国際的に活躍する次世代エンジニアの育成、適切な生産の分

担等を通じ、防衛生産・技術基盤を維持・強化できるとともに、本格的な最新鋭戦闘機の開

発を通じて、社会全般に幅広い波及効果が期待できます。我が国の産業からは、三菱重工業

IHI、三菱電機等が参画し、政府と緊密な連携を図りつつ、共同開発を主導的に牽引してい

きます。

英伊両国との幅広い協力の礎となるとともに、一層厳しさを増す安全保障環境の中で、インド

太平洋地域及び欧州地域の平和と安定に大きく貢献できます。米国もこのような協力を支持し

ています。

日英伊三国同盟
皆さんこんにちは! 昨日のニュースから日本、イギリス、イタリアの3国共同で新しい戦闘機の開発 を行うことが正式に発表されました。今日はこのニュースを深掘りしてみます。 日英伊共同の戦闘機 次期主力戦闘機 日本と英国、イタリアの3か国は9日午...

まとめ

英国の軍事は歴史が長く、特に17世紀から複雑で世界史に大きな影響を与えてきました。

それは、植民地の歴史でもあります。英国は大航海時代に、世界中に多くの植民地を作り

ました。そして、19世紀に入り舞台は、第1次世界大戦、第2次世界大戦へと移り、戦後は

アメリカに経済でも軍事でも首位の座を奪われました。しかしながら、ヨーロッパの中で

はその影響力は健在です。BAE Systemsは、2008年にはロッキード・マーチン(米)、

ボーイング(米)に継ぐ世界第3位の軍事産業でした。その売り上げは年間300億ドルで

この額は日本の三菱重工業の10倍です。

日本と同じ様な環境の英国で、軍事産業に占める割合はとても大きいのです。英国の防衛

費は、GDPの2%(約10兆円)です。これは日本の倍です。

こうして英国は世界の主導権を積極的に取りに行っています!

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

 

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