MOSAIC導入の影響

LSA 軽スポーツ航空機

皆さんこんにちは!

先のオシュウコシュ2025エアショーでのFAA関係者からの『MOSAIC:特別耐空性認証の近代化』規則の発表は世界中で大きな反響を呼んでいます。

MOSAICは誰に恩恵をもたらすのか?また近い将来日本も導入する可能性は?

MOSAICの導入で得をするのは

トランプ米政権は、時代遅れの規制を撤廃し、進歩を阻害してきた煩雑な手続きを廃止する

ことで、eVTOL産業の発展を加速させ、規制当局の認証取得を支援するという約束を再び果た

しました。MOSAICの導入を歓迎します。迅速かつ安全な認証取得への新たな道です。

MOSAIC(特別耐空性認証の近代化)規則は、eVTOL 航空機を軽スポーツ航空機 (LSA)

として認証できるようにすることで、eVTOL 航空機に大きな影響を与えます。 

これにより認証プロセスが合理化され、電動エアタクシーの市場参入がより容易かつ迅速に

なります。また、eVTOLの設計と運用、特にDrive & Flyのような小型の個人用航空機や

一般的な飛行体における新たな可能性が開かれることになります。例えば、ジョーベン・

ベバート氏は先週、eVTOL業界の他の主要関係者と共に、この「X」に関する新たな規制について熱く語りました。

大きな恩恵を受ける企業の好例がAir Aeroです。MOSAICの導入により、同社の個人用

航空機「AIR ONE」は、軽スポーツ航空機(LSA)認証を最初に取得する航空機の一つとなります。

多くの企業がエアタクシーに注目する中、AIRは創業当初から個人用空飛ぶ乗り物の開発を

決意していました。長年にわたりFAAをはじめとする関係機関と緊密に連携し、広範な飛行

試験と安全性検証を実施してきた結果、AIR ONEの認証取得に向けた明確な道筋が見えてき

ました。これにより、AIR ONEは競合他社よりも早く消費者市場に投入されます。

AIRのCEO兼共同創設者であるラニ・プラウト氏は、「AIRは設立当初から、LSA認証を取得

して民間セクターで飛行する初の認証済みeVTOL機の実現を訴えてきました。FAAやこの

分野の同業他社と緊密に協力し、この目標の実現と、簡素化された認証プロセスの構築に尽力してきました」と熱く語りました。

同氏はさらに、「この先進的なアプローチと最新のFAA MOSAICアップデートのおかげで、

当社は顧客の手に渡り、公道で飛行する最初の認定有人eVTOL機となるでしょう」と述べました。

エアロワンとラニ・プラウト

ダフィー氏は、「この新たな規制は、レジャー航空分野におけるより優れた設計、より安全

な素材、そして最新技術の導入を促進するでしょう。パイロットや航空機メーカーは、時代遅

れの規制がイノベーションと安全性を阻害していることを正しく認識していました。もう終わ

りにしましょう。この業界を新たな時代へと導いていきましょう!」と述べました。 

FAA長官のブライアン・ベッドフォード氏は、「この画期的な規則は、レクリエーション航空

飛行訓練、そして特定の航空業務において、安全で近代的かつ手頃な価格の航空機の利用可能

性を高めることを目的としています」と断言し、「これは一般航空を根本的に変革する大きな勝利です」と付け加えました。

MOSAIC(特別耐空証明の近代化)最終規則は、軽スポーツ機(LSA)カテゴリーとスポーツ

パイロットの特権に大幅な変更を加え、以下の点でアマチュアが製作した実験的な航空機の安全な代替手段を拡大します。 

重量制限を撤廃することで、より多くの安全機能と安全設計の柔軟性を実現します

より高速で、より多くの座席と格納式着陸装置を備えた航空機を網羅します。

新しいタイプの推進力と最新の航空電子機器を可能にします

インフラや森林の検査、写真撮影/撮影、農業監視などの LSA による航空作業を許可します

スポーツパイロット権限を持つパイロットが、より広範囲の航空機を飛行することを承認します。

LSA として認定される航空機の種類と、パイロットがスポーツパイロット権限で飛行できる航空機の種類を拡大することにより、規制要件を削減します

ヨーロッパ(EASA)や世界でのMOSAIC導入の可能性

EASA(欧州航空安全機関)の動向
  • 直接的な追従は慎重: EASAはFAAと並ぶ世界の主要な航空安全機関であり、両者間で協力や情報交換は活発に行われています(例: 2023年のFAA-EASA国際航空安全会議)。しかし、EASAがFAAの規則をそのまま「導入」することは稀です。EASAは独自の規制策定プロセスを持っており、欧州連合(EU)加盟各国の多様なニーズや既存の法体系との整合性を考慮する必要があります。
  • 既存の軽航空機カテゴリーとの関係: EASAには既に「EASA Part 21下での許可証(Permit to Fly)」や「ELA(European Light Aircraft)」など、特定の軽航空機や実験機に対する認証・運航制度が存在します。これらの制度をどのようにMOSAICの概念と整合させるか、あるいは見直すかが課題となります。例えば、一部の国ではASTM基準がすでに受け入れられています。
  • 性能向上への関心: MOSAICが導入する「より高性能なLSA」の概念(例:重量制限の撤廃、速度上限の引き上げ、座席数増加、新推進システムの許容など)は、EASA加盟国のレクリエーション航空や訓練分野からも関心を集める可能性があります。特に、より大型で多機能な航空機を比較的簡易な認証で運用できる点は魅力的です。
  • 段階的なアプローチ: EASAが将来的に軽航空機の規制を見直す場合でも、一足飛びにMOSAIC全体を導入するのではなく、既存の枠組みを段階的に拡張・改正していくアプローチを取る可能性が高いです。
世界の他の国々(日本を含む)の動向
  • FAAの影響力は大きい: FAAの規則は、特に航空機の製造と輸出入において国際的に大きな影響力を持っています。MOSAICによって新しいタイプのLSAが米国市場に供給されるようになれば、他の国の航空当局も、自国の市場やパイロットのニーズに応じて同様の航空機の導入を検討せざるを得なくなる可能性があります。
  • 規制の調和(ハーモナイゼーション)の動き: 国際民間航空機関(ICAO)の枠組みや、二国間協定を通じて、各国の航空規制の調和が図られることはあります。MOSAICが成功し、世界の航空産業に広く受け入れられれば、長期的には他の国々も部分的にそれに倣った制度を導入する誘因となるでしょう。
  • 各国の事情と優先順位: 各国の航空当局は、それぞれの国の航空産業の規模、パイロット人口、地理的条件、安全文化、経済状況、既存の規制体系など、多様な要因に基づいて判断を行います。そのため、米国と同じタイミングや形式で導入が進むとは限りません。例えば、現在LSA制度がない日本のような国は、まず基本的なLSAカテゴリーの導入から検討する可能性が高いです。

日本におけるMOSAIC規則の恩恵について

日本において、航空法規を管轄する国土交通省航空局(JCAB)が、既存のLSA制度がない

状態からいきなりFAA(米国連邦航空局)のMOSAIC制度のような、より包括的で拡大され

た軽航空機制度を導入する可能性は、全くないとは言えませんが、非常に限定的であると分析できます。

メリットととしては、多様な航空機の選択肢とイノベーション促進が考えられます。最大離陸

重量や座席数、格納式降着装置など、より高性能で多様な航空機が「特別な耐空性証明」の

枠組みで運用可能になるため、パイロットやユーザーの選択肢が飛躍的に広がります。

電動化や最新のアビオニクスを搭載した新しいタイプの航空機開発が促進され、国内産業のイノベーションにつながる可能性があります。

訓練の効率化とパイロット増加の可能性して、より高性能な訓練機がLSAの枠組みで利用可能

になることで、訓練の質が向上し、プロのパイロットを目指す上での初期訓練段階が効率化

される可能性があります。ライセンス取得のハードルが下がり(より簡易な医療要件など)、航空人口の増加につながるかもしれません。

まとめと解説

総合的に見ると、日本がMOSAIC制度を導入することには大きな潜在的メリットがありますが

安全性を最優先するJCABの立場からすれば、その複雑性と既存制度との整合性、そして新た

な監督体制の構築にかかるコストと時間から、非常に慎重なアプローチが取られる可能性が高

いです。仮に導入されるとしても、段階的な法改正や、特定の分野での限定的な試行から始まる可能性が高いでしょう。

FAAのMOSAIC規則は、軽航空機分野における重要な転換点であり、世界の航空業界に少なか

らず影響を与えるでしょう。EASAを含む他の航空当局は、その動向を注視しつつ、自国の

ニーズと既存の規制体系に合わせて、段階的かつ慎重なアプローチで軽航空機の規制見直しを

進めることが予想されます。直接的な「MOSAICの導入」というよりは、MOSAIC

が提起した新しいコンセプトや技術革新を取り込みつつ、各国独自の制度を柔軟に進化させていく形になる可能性が高いと考えられます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました