皆さんこんにちは!
航空会社の航空機は、ほとんどがリース(借りている)です。
リースのメリットとして、航空会社(借り手)は、一度に大きなお金を払わなくて良い、
節税対策になるなどがあります。
そして今、リース会社の中には航空機のリースからAAM(アーバンエアモビリティ)の
リースへとシフトするところが現れました。
今日は、このリースに関するニュースとリースのメカニズムについてお話しします。
三井住友ファイナンスはLCIに資本注入
航空機リース グループの LCI は、三井住友ファイナンス アンド リース (SMFL)
による35% の株式の取得による資本注入により、多角化戦略を加速しようとして
います。
3月29日に合意を発表したLCIの親会社であるLibra Groupは、日本のSMFLか
らのさらなる支援により、LCIの事業を約15億ドル成長させる取り組みが期待され
ると発表しました。
LCI は、新しい電気およびハイブリッド電気航空機への投資を計画している数少ない
リース グループの 1 つであり、Beta Technologies の Alia 250 eVTOL モデル
の最大 125機 の暫定的な販売契約を発表しています。
UPS塗装のAlia 250(画像:Beta Technologies )
また、同じくElroy Air の Chaparral 自律型 eVTOL 航空機を 40 機を今年1月に注文して
います。
Elroy Air の Chaparral ハイブリッド電気 eVTOL 航空機(画像: Elroy Air/LCI)
LCI の CEO である ジャスパル・ジャンドゥ氏は、洋上風力エネルギー インフラストラク
チャをサポートする上でヘリコプターが果たすことができる役割や、乗客輸送、緊急医療
サポート、貨物配送を含む可能性のある eVTOL アプリケーションなど、新しい機会から
の成長の可能性に大きな期待を寄せています。「これらの開発により、私たちは(リース
航空機の需要の伸びの)Jカーブの先端にいます。これには、必要なすべてのバッテリー
と充電機器も含まれます」と彼は語っています。
LCI は、Lomar Shipping(船舶運営会社)、希土類金属(レアアース)の専門家である
GreenMet、風力タービンの検査にすでにドローンを使用している Euro Energy などの
Libra Group の姉妹会社との提携を通じて、エネルギーや輸送などのセクター全体でより
幅広い機会を活用できる可能性が強化されると考えています。
ジャンドゥ氏は、テスラの電気自動車や大型レンタカーのリースなどのビジネスモデルか
らの教訓を生かし、新しいタイプの航空機とこれらの新しいアプリケーションには、リー
ス部門自体の再起動が必要になる可能性が高いと示唆しました。彼の見解では、顧客は、
資産を使用するための金銭的コミットメントを明示する単なるリース以上のものを求めて
おり、インフラストラクチャのサポートや、数がはるかに多い可能性のある eVTOL フリ
ートをカバーするデータを含む、より包括的なサービスの恩恵を受けたいと考えています。
それは現在の回転翼航空機や固定翼航空機よりも優れています。
「航空業界は、リースの意味を見直す必要があり、[資産]単位あたりの従来のオペレーテ
ィング リースのような[商品]は、更新が必要になる可能性があります」と、ジャンドゥ氏
は述べています。バッテリーのリースは、車両のリースとは別に、充電ネットワークも
カバーされる可能性があります。
SMFLは、LCIの現在のポートフォリオに関して参加しており、2020年9月に19機のヘリ
コプターの購入をカバーする2億3000万ドルのリース合弁事業を立ち上げました。その後
このパートナーシップは範囲を拡大し、ポートフォリオには 50 機以上の航空機が含まれ
総額は 5 億 5,000 万ドルになりました。来年で 20 周年を迎える LCI は、これまでに
100 億ドル以上の航空機取引を行ってきました。
LCI は、今後 20 年間で約 16,000 機の民間および準公共ヘリコプターの需要が見込まれ、
約 1,200 億ユーロの新規売上を生み出すと予測しています。LCI による最近の注文には、
CityAirbus NextGenと呼ばれる独自の eVTOL モデルを開発しているエアバスからの
Leonardo AW139 のペアと H175 の 6 機が含まれます。
FALKO、EMBRAER’S EVE で EVTOL ネットワークを開発
リース グループの Falko Regional Aircraft は、Eve Urban Air Mobility の 4 人
乗りの eVTOL 航空機 200 機を追加することを検討しています。1 月 11 日に署名され
た基本合意書の条件の下で、両社は、この合意は、2026 年に就航する予定の完全電気
航空機の「潜在的な注文を検討している」と述べました。また、商用 eVTOL オペレー
ターのネットワークを開発するためのパートナーシップも開始しました。
英国を拠点とする Falko は、子会社を特別目的買収会社 (SPAC) の Zanite Acquisition
と統合した後、Eve をニューヨーク証券取引所に上場させるという Embraer(ブラジル
の航空機メーカー) の計画を支援する戦略的支援者の 1 人です。2022年12 月 21 日に
発表された計画で、Embraerはプライベート エクイティへの 3 億 500 万ドルの公共投
資に 1 億 7500 万ドルを寄付しており、2500 万ドルは Zanite から (ビジネス航空の起
業家 Kenn Ricci が支援)、1 億 500 万ドルは Falko、Azorra Aviation、BAE Systems
の間で分割されています。
2021 年 3 月、Falko は、70 人乗りのハイブリッド電気リージョナル旅客機を開発して
いる英国の新興企業 Electric Aviation Group に非公開で投資したと発表しています。
2022年11 月、Falko は、カナダを拠点とする Porter Airlines とのセール & リースバッ
ク契約を通じて、Embraer の E195-E2 旅客機 5 機をポートフォリオに追加しました。
そのポートフォリオには現在、59 機のエンブラエル航空機と、ボンバルディア CRJ リー
ジョナル ジェット機と ATR ツイン ターボプロップ機が含まれています。
Falko の CEO、ジェレミー・バーンズ氏 は次のように述べています。「私たちは、航空
部門のグリーン化の最前線に立つという私たちの原動力の一部を形成する、Eve との戦略
的パートナーシップに非常に興奮しています。私たちは、eVTOL 市場の見通しと、航空
機の製造、認証、およびサポートにおけるエンブラエルの経験に支えられた Eve が市場
のリーダーになると確信しています。」
Eve の Zanite との合併とその後の株式公開は、今年の第 2 四半期の終わりまでに完了
する予定です。
Falko Aviation、Eve Urban Air Mobility の 4 人乗りの eVTOL 航空機を追加
(画像:Eve Urban Air Mobility)
航空機リースの仕組み
航空機リースの仕組み
航空会社には航空機が必須ですが、いざ航空機を新品で購入しようとすると小型機でも
5、60億円を下らないので、リース会社からリースしようとします。
リースには、オペレーティングリースとファイナンシャルリースがあります。
オペレーティングリースは、航空機やコンテナ船などの将来的に価値が残るものに対し
てお金を取って一定期間貸し出す(リース)することです。
一方、ファイナンシャルリースは、コピー機やデスクや椅子などさほど高額ではない
ものに対して行われるものです。ちなみにレンタルとリースの違いは、借りている期
間が短い(レンタル)か、長い(リース)の違いです。
オペレーティングリース
オペレーティングリースは、以下のような手順を踏みます。
- リース会社が投資家の投資先となる「匿名組合」を作る
- 受けた投資金と銀行からの融資によって、リース会社名義で航空機を購入する
- 購入した航空機を、10年ほど航空会社へリースする
- 貸し出した航空機を数年で減価償却(定率法)する
- 航空会社から受け取るリース料で、銀行への返済を行う
- リース期間満了時に航空機を航空会社へ売却し、投資家に資金が分配される
たとえば、会社で大きな利益が出た年に航空機リースに出資すると、多額の損金が計上
されて益金が打ち消されるので課税所得金額が低くなり、大きな節税となります。
最初のうちは所有権がある航空機の減価償却費と利息で赤字になりますが、銀行から融
資を受けての航空機購入であるためたった2、3年で減価償却が完了し、リース期間の
後半は黒字になります。
資金を回収するために航空機は最終的に航空会社へ売却されて、売却金は投資家に分配さ
れるため、その売却金が益金に勘定されることになり、本来は結局トータルで同じくらい
の税金がかかってしまいます。
そこで、役員の退職金や事業費、その他旅費やイベント費用など多額の費用が発生する
年に、航空機売却での益金が増える年をぶつけることで、再度課税所得を減らします。
これが航空機リースにおける「利益の繰延」を用いた節税法であり、投資によって利益
を出すことが目的ではありません。
実例を挙げますと
A社は社長が、先祖伝来の土地を賃貸して収入を得ようとして節税対策として作った会社
です。ある年、行政(県)がその土地を公共施設用に買い取り利益が出たために、航空機
を購入して節税に当てたという事例です。数年後に航空機を売却して数百万の利益を生み
ました。社長はこの利益を退職金に充てました。
日本型オペレーティングリース:JOLCO
日本型オペレーティングリース:JOLCO(Japan Operating Lease With Call
Operation)というものがあります。リース期間中またはリース終了時のいずれかの時点
で賃借人にリース物件を購入する権利(CallOption)が付与されている日本型オペレー
ティングリースです。
投資家とリース会社が、商法の匿名組合契約を締結し、出資金と金融機関からの借入金
により調達した資金で、航空機や船舶などの大型の償却資産を購入し、航空会社や海運
会社などの賃借人にリースします。
航空機や船舶などのリース事業に出資することにより、リース期間中に発生する事業損
益を取り込みます。
リース事業においては、リース期間中一定のリース料収入を得ますが、一方で費用とし
て主に定率法による減価償却費を計上いたします。結果として、リース期間前半では課
税上の損金が、リース期間終了後には対象物件を売却することによる益金が発生します。
JOLCOイメージ図
まとめ
日本型オペレーティングリース:JOLCOは、航空会社にとっても資本家にとっても
とても優れた制度です。しかしあくまでも投資ですのでそれなりのリスクがあります。
重要なのは信頼できるリース会社を見つけ出すこと。リース会社によっては手数料が
高額だったり、売却先がうまく見つからず予定していた利益が見込まれないなどの
トラブルもあります。特に注意すべきは、為替リスク(円建てはほとんど無い)や
投資先の会社が倒産するなどのリスクは覚悟しなければなりません。
しかし、JOLOCのおかげで新規企業は資金を集めやすくなったことは確かです。
また投資家も、大口の投資先が見つかることで経済循環が良好に行われます。
そして今後も、AAMに投資するリース会社が現れるでしょう。それは、AAMにとって
とても良い未来が待っていることでしょう。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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