皆さんこんにちは!
日本の小学校でも導入されたSTEM教育というのをご存知でしょうか?
STEM教育とは、
- Science(科学)
- Technology(技術)
- Engineering(工学)
- Mathematics(数学)
の4科目にスポットライトを当てて、ITと科学技術の向上を図る教育方法のことです。
今回は、このSTEM教育を使って航空業界の人材育成を行っているアメリアの非営利団体
(法人)を紹介します。
タンゴ フライト: STEM は飛行機製造の第一歩です
タンゴフライト
タンゴフライト(法人) は、次世代のエンジニア、パイロット、航空整備士、技術者に
インスピレーションを与えるために設立された 501c3 教育非営利法人です。
501(c)団体は、アメリカ合衆国の内国歳入法(USC 26)第501条C項の規定により課税
を免除される非営利団体です。同項では、連邦所得税が免除される29種類の非営利団体
が規定されています。501c3は、「宗教」、「教育」、「慈善」、「科学」、「文学」、
「公共の安全のための検査」、「アマチュアスポーツ競技の振興」、「子供または動物に
対する虐待の防止」のいずれかを目的とした団体のことをいいます。
タンゴフライトの独自のカリキュラムは、実際の実践的なトレーニングを伴う有意義な教
室学習を提供します。学生は教室での知識を応用して、実際の FAA 認定飛行機の製作に
取り組みます。
2016 年以来、タンゴフライトは全国の教育者や航空専門家と協力して、STEM に焦点を
当てた革新的でエキサイティングな教育プログラムを構築してきました。
ウィチタ州立大学およびエアバス財団と提携して、当社は学生に提供する最先端のカリキ
ュラムを作成しました。
強力な機械、電気、航空宇宙工学の基盤と、FAA 認定航空機を製造するための基本的な技
術的および機械的スキルを身につけることです。
航空に焦点を当てたカリキュラムでは、学生は次のような学習分野を学びます。
• 航空機と航空電子機器の基礎と仕組み
・航空整備・検査
• 航空機の構造と組み立て
使命
タンゴフライトは、学生の貿易に関するキャリアや趣味への関心を育むことに専念してい
ます。タンゴフライトでは、飛行機の製造だけでなく、学生が航空宇宙のあらゆる部分を
体験できるようにします。タンゴフライトはメンターシップ(注)を通じて、機械スキル
の指導だけでなく、献身とチームワークに関する人生の教訓を教えることに専念しています。
米国で提供されている他のプログラムとは異なり、タンゴ フライトでは学生が航空業界で
生涯にわたるスキルと専門知識を身につけることができます。
(注)メンターシップ:メンターシップとは,師弟関係と対話による指導・育成プロセスで
あるメンタリングに特有の用語で,支援的・保護的影響力のこと。単に部下の指導育成に
関わる影響力にとどまらず,組織のコミュニケーションシステムを円滑に機能させる上で,
リーダーが備えるべき不可欠の要件の一つとされています。
歴史
2015 年、タンゴ フライトの創設者ダン ウェイアントは、若いパイロット、航空宇宙エン
ジニア、機体と動力装置の認定を受けた整備士が不足していることに気づきました。豊富な
航空経験を持つダンは、高校の工学プログラムを利用して生徒たちに航空と航空宇宙の世界
を紹介することにしました。彼は「ラボ」または「ショップ」と呼ばれる革新的なコンセプ
トを開発しました。そこでは学生が地元のボランティアの助けを借りて FAA 耐空性認定航
空機を組み立てることができ、教室での学習を強化します。
最初のタンゴ フライト プログラムは 2016 年 8 月にテキサス州ジョージタウンで始まり、
学年末までに生徒たちは VAN の RV-12 航空機の製作を完了しました。2017 年 5 月 8 日、
この航空機は初めて公の場に姿を現し、初飛行を行いました。タンゴフライトは現在、全米
の 20 以上のプログラムに完全な物流、技術、トレーニングのサポートを提供しています。
タンゴフライトは、アラスカをはじめ全米各地に29のスクールを持っています。そして創設
以来、700人以上の学生がこの恩恵を預かっています。
ウィチタ州立大学と協力して独自の航空関連のSTEMカリキュラムを開発するためにエアバス
から助成金を得ました。エアバス財団は、世界中のコミュニティが直面する地球規模の課題に
対処するために、大手航空機メーカーであるエアバスによって設立された非営利団体です。
この財団は、人道的取り組みの支援、教育へのアクセスの改善と青少年の育成の促進、科学
研究とイノベーションの奨励に重点を置いています。タンゴ フライトの高校カリキュラムの
開発に貢献しており、アラバマ、ジョージア、カンザス州でのタンゴ フライト プログラムを
後援しています。近年では、デルタ航空をはじめ数多くの航空関連会社からの支援を得てい
ます。
組み立てた飛行機はLSA
タングフライトの実習の中で、高校生は実際に航空機を組み立てているのです。その飛行機
は、アメリカオレゴン州に本社を置くVANS Aircraft社製のRV-12というLSA(Light
Sports Aircraft:軽量小型飛行機)です。
学生達は、メンターの指導の下、LSAを組み立てていきます。(画像:タンゴフライト)
組み立ても最終段階、後は初飛行に向けて調整。(画像:タンゴフライト)
実際に自分が組み立てた飛行機を飛ばします。機体はRV-12(画像:タンゴフライト)
学生に LSA飛行機を飛行させるためのツールと教育を提供
エヴァン・アイスラーはジョージタウン高校の3年生で、この日は彼の16回目の誕生日で
した。過去 2 年間、家族の所有する N217TF 航空機で 80 時間以上の訓練を費やしてき
ました。この日は、朝からの雨も上がり、絶好の単独飛行日よりになりました。
初の単独飛行をするエヴァン(画像:タンゴフライト)
アメリカの航空の伝統では、新しいパイロットのシャツ(またはシャツテール)の後ろを
切ることは、最初の単独飛行を無事に終えた後、教官が生徒に新たな自信を持ったことの
表れです。
飛行の初期の頃、パイロットはタンデム航空機で訓練を受けました。学生は前の席に座り、
インストラクターは後ろに座っていました。ほとんどの飛行機には無線機がなかったため、
教官は学生パイロットのシャツの裾を引っ張って注意を引き、耳元で怒鳴っていました。
初めての単独飛行が成功したということは、生徒がインストラクターなしでも飛行できるこ
とを示しています。シャツの尻尾は必要なくなり、誇り高い指導者によって切り取られ、
トロフィーとして飾られることがよくあります。
教官からTシャツの後ろを切られるセレモニーを受けるエヴァン(画像:タンゴフライト)
「一人で操縦するのは本当に楽しかったです」と彼は言いました。「いつでも好きなときに
一人で飛べるのが楽しみです。特にパイロットは私の家族の大きな部分を占めているので、
パイロットとしてのキャリアを築きたいと思っています。」彼は免許を取得するため、17
歳の誕生日をすでに楽しみにしています。
次世代の子供を育てる教育システム、STEM教育
STEM教育とは
STEM教育は4科目(科学、技術、工学、数学)に力を注ぎグローバル社会に対応できる人材
を生み出す、次世代の子どもを育てる教育システムです。しかしSTEM教育の目的は、IT技術
に優れた人材を生み出すだけではありません。
自分で学習して自分で理解する力を求められる今後のIT社会や国際社会に向け、「自発性」
「創造性」「判断力」「問題解決力」を持った子どもの育成が、STEM教育本来の目的なの
です。
なぜSTEM教育が必要なのか
STEM教育は、IT社会に対応するスキルを育てるためだけのものではありません。理数系の
STEM4科目を学ぶと、「考察や分析」「課題の発見と解決」などが行えるようになります。
また子どもの頃からプログラミングに触れると、ITリテラシーを高められます。さらに身
に付けた知識の転用や活用を加えると、新しい価値の創造も可能となるのです。
ITリテラシーを高められる
STEM教育のプログラミング学習によって子どもの頃からITリテラシーを高め、IT化社会に
適応する人材を育成できます。
STEM教育でプログラミングが必修化されている理由は、「世の中のほとんどのものにプロ
グラミングが使われている」。これらを子どもの頃から認識させ、仕組みが理解できる力を
育てるのです。
思考力・行動力を身に付ける
思考力・行動力を伸ばすためにSTEM教育が必要とされます。これらは次世代ならず現在の
ビジネスでも必要とされる能力です。科学では現象を観察して、そこに対する疑問を感じ取
り、仮説を複数立て、試行錯誤して解決へ導きます。
STEM教育の目的は、工作や実験ときには遊びなどをとおして工程を経験させ、思考力・行
動力の養成することでもあるのです。
日本の取り組み
日本は科学技術の進歩が著しい反面、成長スピードに人材のスキルが追い付いていません。
すでにAI技術や自動運転技術などのスキルを持つ人材が不足している状況に陥っています。
そのため次世代と現代ともに、AI技術や語学などのスキルが複数備わった人材を育成しなく
てはならないという課題を抱えているのです。
日本のSTEM教育への取り組みは、世界と比較して遅れているといわれます。理由として挙
げられるのは、日本が教育システムを変更するのに4年の歳月がかかる点です。
2016年に考案された小学校でのプログラミング教育の必修化は、4年後の2020年に実施さ
れました。
日本では小学校におけるプログラミング教育の必修化が、2020年に実施されました。また
STEM教育研究センターでは、「STEM教育における学習内容の体形化」「指導者の育成に
ついて」研究を進めています。
さらに子どもを対象とした、ロボット研究の無料体験会なども開催しているのです。先進的
な理数教育を学ぶ教育施設として、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)も設置されま
した。
文部科学省の指定を受けている学校は現在全国で200校以上。大学やほかのSSHと共同研究
や交流が行われており、これらの活動をとおして世界に通用する科学技術人材を育成してい
ます。
しかしその実態は、全ての小学校で十分なSTEM教育の授業が行われているわけではありま
せん。中には、今までの理科の授業の延長(同じ)様なカリキュラムが実施されています。
諸外国の取り組み
アメリカ
アメリカはSTEM教育を先導した国です。いち早くこれからの時代に必要な能力が何かを
見極め、教育システムを改善しました。
「SMET」と呼ばれる科学リテラシーの底上げを目的とした教育システムが1990年代に導入
されたものの、2001年にSTEMと呼称を変更。オバマ元大統領はSTEM教育に力を入れ、
STEM関連の深刻な人材不足の解消に向けて活動しています。
中国
中国ではプログラミング思考だけに特化せず、次世代のAI化時代に適応できるAIスキルの
向上を目的としたSTEM教育を行っているのです。
2018年から2020年にかけて、小学校・中学校・高等学校で省ごとにSTEM教育を必修化。
学校が外部機関に依頼して、研究所や企業から専門家を呼び、授業を行っています。
シンガポール
シンガポールは、日本の20年先をいっていると称されるほどSTEM教育が進んでいるので
す。
座学だけでなく体験実習に力を入れ、STEM人材の育成を行っています。小学校から中学
校にかけてSTEM教育が行われ、プログラミングや電子工作などをとおして体験学習を実
施しているのです。
授業は通常の教師と専門教員が担当します。専門教員は、数学や科学など関連分野の修士
号や博士号を取得している場合も少なくありません。
まとめ
1980年代から2010年代まで、日本はそれまでの詰め込み型教育から「ゆとり教育」に
教育方針を転換しました。そして現在は、そのゆとり教育は消えて無くなりました。
ゆとり教育は、学力低下の指摘から学習指導要領の見直しが起き、2011年度以降に、こ
れまでのゆとり教育の流れとは逆の内容を増加させる学習指導要領が施行されました。
そして現在は、STEM教育や小学校高学年からの英語教育など、ゆとり教育時代とは真逆
の一種の詰め込み型教育に戻りつつあります。
日本のSTEM教育は、「絵に描いた餅」のごとく、何も行われていません。今日紹介した
タンゴフライトの取り組みのように、学生個人の意志を尊重し、個人個人に合ったカリキ
ュラムを自由に選択できたら良いですね。それが航空業界の底上げにつながります。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
コメント