皆さんこんにちは!
ここ数日、関東地方をはじめ各地で、大気不安定のため雷雲が発達して落雷が起こって
いますね。この落雷で、毎年平均で約20人ほどが被害に遭っています。その内の13人
程度の人が亡くなっています。死亡率はなんと70%です。
今日はそんな恐ろしい雷について見てみましょう。
落雷とは?
落雷はどのようにしてできるのでしょうか?
雲の中にあるチリ(微粒子)や水、氷の粒がぶつかり合うことで摩擦帯電が
起きたり、氷の粒が分裂したりすることで、大気(雲)中にプラスとマイナス
の電荷が発生することが原因です。プラスの電荷は大気(雲)の上の方に、
マイナスの電荷は下の方に集まりやすい性質を持っています。ある程度電荷が
溜まってくると蓄えきれなくなって放電をします。このとき雲の下のマイナス
の電荷は上空のプラスの電荷に向かって高速で移動します。これが雲放電です。
ところが、雷雲自体が低くなっているときには、上空のプラスの電荷よりも
大地の方に誘導されたプラスの電荷の方が近いことになります。そのため
大地に向かって放電することを落雷といいます。
雷がゴロゴロと鳴る理由は、この電気の道となった空気がその熱のために急激に
膨張し、周りの空気を激しく振動させるためです。
落雷事故
飛行機
飛行機は、金属の塊です。雷雲の近くを飛行しただけで避雷する確率は高く
なります。
2019年5月5日、ロシアの首都モスクワのシェレメチェボ空港で、78人が
乗ったロシアのアエロフロート航空機が緊急着陸した直後に炎上した事故で、
機体が離陸直後に落雷を受けていたと、複数の乗客と乗員が証言しました。
この事故では41人が死亡しています。
1963年12月8日、アメリカ、フィラデルフィア空港近郊で、パンアメリカン
航空のボーイング707型機が進入中に落雷に遭い、燃料タンクに引火その後火災
が起きそのまま墜落しました。この事故で乗員乗客合わせて81人全員が死亡しま
した。
空港施設への被害
落雷によって、空港の滑走路、誘導路や無線施設などに落雷をしています。
滑走路や誘導路に落雷すると、大きな穴が開いてしまいます。落雷でできた
穴の大きさは、大きいもので縦横50cm~60cmにもなり、深さも10cm
以上にもなります。この穴を補修するのには大きさにもよりますが、1時間程度
かかることもあります。その間は、滑走路は閉鎖となってしまい、航空機の
離発着は中止となってしまいます。
落雷対策
飛行機
飛行機は、スタティックディスチャージャー(放電索)を取り付けています。
飛行中に埃や水の粒子が機体表面を流れると、摩擦によって静電気が発生します。
航空機は主に金属でできているため非常に電気を通しやすく、高い高度での飛行は
静電気放電を加速させます。現在は、ほとんどの航空機にスタティックディスチャー
ジャーが主翼の後縁に取り付けられています。これは、主翼の鋭利な端の部分に静電
気が溜まりやすいためです。スタティックディスチャージャーは、余分な電子を航空
機から大気中に放出し、航空機の機体全体の電荷を減少させています。これは、
直接、飛行機に落雷があった場合には役に立ちませんが、静電気防止に役立ちます。
翼の後ろにヒゲのようなものがついています。これが、スタティックディスチャー
ジャー(放電索)です。A320は21個のあります。素材は炭素繊維です。
また、先のパンアメリカンの事故の教訓として、全ての航空機は燃料タンクに雷が
落ちても引火しないように、タンクの内側にゴムのシールを貼っています。
空港施設
空港内の高い建物(管制塔、レーダー施設)などには、避雷針が設置されています。
避雷針は、落雷を避けるのではなく、受け流す役割をしています。
雷警報
空港に雷が近づいてきたら、いったん作業を中止しなければなりません。
空港や航空会社独自に基準を設けていますが、概ね、次の3段階に分けて
警戒を行っています。
① フェーズ1:雷雨注意報。雷雨到着の可能性を知らせる初期段階をいいます。
② フェーズ2:10NM雷雨警報。雷雨が空港に向かっていて、空港から10
NM(19km)以内にある時に発せられる警報です。このときは、給油作業など
はできます。
③ フェーズ3:5NM雷雨警報。さらなる情報で雷雨が空港に5NM(9km)
以内に近づいている時に発せられる警報です。すべての作業は中止です。
作業が中止の場合は、建物や車の外には出ない。携帯電話、ポータブル電気機器、
2方向無線はオープンエリア(駐機場周辺)では使用は禁止。機体の翼や胴体の
下から離れる。などが決められています。
雷雨予測、雷ナウキャスト
気象庁が出している雷情報に、雷ナウキャストというものがあります。
雷ナウキャストは、雷の激しさや雷の可能性を1km格子単位で解析し、その
1時間後(10分~60分先)までの予測を行うもので、10分毎に更新して提供します。
雷の解析は、雷監視システムによる雷放電の検知及びレーダー観測などを基にして
活動度1~4で表します。予測については、雷雲の移動方向に移動させるとともに、
雷雲の盛衰の傾向も考慮しています。
雷ナウキャストでは、雷監視システムによる雷放電の検知数が多いほど激しい雷
(活動度が高い:2~4)としています。雷放電を検知していない場合でも、雨雲の
特徴から雷雲を解析(活動度2)するとともに、雷雲が発達する可能性のある領域も
解析(活動度1)します。
落雷時の行動
皆さんが、急に落雷に遭ったときはどうすれば良いのでしょうか?一般的には
落雷は高いところに落ちやすいと言われています。周りに何もないところでは
自分に落ちる可能性が高くなります。また、木の近くなどは側撃(雷が落ちた
物体の近くにいた人に放電する現象)を受ける可能性が高く、雷雨の時に木の
下で雨宿りをするのは危険です。
避難場所としては、建物や車の中、4~20mの高さの物体からは4m以上離
れた場所で頂点から地面までの45°のラインの内側は保護範囲と呼ばれ、ほぼ
安全です。
まとめ
昨夜も成田空港周辺に、巨大な雷雲が近づき、航空機の運航がストップして
しまいました。中には、キャンセルになった便もありました。最終的に運航
するかしないかは、パイロットと運航管理者で決めます。より安全な方策を
優先するため遅延したり、キャンセルになったりします。
『君子危うきに近寄らず』孔子の言葉ですが、フライトもあえて危険なと
ころへは行かない。回り道をしても目的を達成すればいい話です。そのため
には、先を読み、回り道に必要なことを準備しておく(燃料や時間を考える
など)が必要です。日ごろからの心がけが大切ですね。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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