ボーイングとNASAが作った遷音速トラス支持翼、TTBW

飛行機

皆さんこんにちは!

昨年、ボーイングとNASAが共同で開発している、遷音速トラス支持翼(Transonic Truss-

Braced Wing, TTBW)が発表されました。

遷音速トラス支持翼( TTBW)

その名はSUGAR

ボーイングは2006年から、静粛性が高く、環境に優しい航空機の研究開発に着手。

「Sustainable Ultra Green Aircraft Research」の頭文字を取り、「SUGAR」と名付け、

NASAへ提案しています。最新のプランは、現在の737型と同じ大きさでハイブリッド電気

推進エンジンを搭載し、スピードはマッハ0.8前後を検討しています。

NASA - Boeing new airplane

ボーイングとNASAが開発しているTTBW、SUGAR(画像:ボーイング)

ボーイングとNASAおよびパートナー機関は、単通路機における燃料消費量およびCO2排出量

を最大30%削減することを目標としており、持続可能なテクノロジーの進化は、航空業界が

目指す 2050 年までにCO2排出量実質ゼロの達成に不可欠と考えています。

SFD宇宙法協定(Space Act Agreement)を通じたNASAの調達資金は総額4億2,500万ドル

(616億円)です。SFDプログラムはボーイングと業界パートナーによる最大7億2,500万ドル

の資金も活用し、デモンストレーター・プログラムの方向性を決定して、必要な資源需要を満

たします。これとは別に、ボーイングは昨今持続可能な航空研究に総額1億1,000万ドルの社

内投資を実施しています。

TTBW機のコンセプトは、NASA、ボーイング、業界の投資に支えられた10年以上にわたる開

発の成果です。NASAの環境に優しい亜音速機研究(Subsonic Ultra Green Aircraft Research)

プログラムなど、同局のこれまでのプログラムの下で、ボーイングはTTBWの設計を前進させ

るための風洞試験やデジタルモデリングを大規模に実施しました。初期の概念研究は、NASA

の環境に責任をもつ航空(Environmentally Responsible Aviation)プログラムの下で開始さ

れました。

風洞試験スタート

2022年の4月から風洞実験が行われています。

試験は、カリフォルニア州シリコンバレーのNASAエイムズ研究センター内の風洞実験施設で

行われました。実験には、実物大の9%のサイズの模型が使用されています。主翼や胴体への

さまざまな事象を把握するため、施設に対応する最大級の模型を使用するため、機体を縦半分

に分けたモデルが作られました。飛行中の空気の流れを再現し、発生する機体への圧力をはじ

め、様々な要因を測定しました。モデル機の表面には、100を超えるセンサーが搭載されまし

た。

ニュース画像 1枚目:トラスブレース翼の風洞試験

風洞実験の様子(画像:NASA)

TTBWの上部の主翼は現在の航空機と比べ長く、薄い構造です。そのため、下から支柱のよう

に支える斜めの第2の翼で主翼が安定します。この構造により、現在の旅客機より主翼を軽量

化でき、空中での抗力を抑え、現在より少ない燃料で飛行できると想定されています。この主

翼により、現在の航空機より8〜10%ほど燃料を抑制できる見込みです。風洞実験では、速度

や高度の組み合わせによる性能の上限を探る目的があり、高度・速度による空気の詳細な流れ

を把握。さらに、コンピュータシミュレーションの精度を高めることにもつなげます。

TTBW研究・調査は、試験の精度を高めながら、燃費効率の良い機体の実現に向け、試験を継

続していきます。積み重ねた成果は、2030年代の航空機開発に生かされる技術になる可能性

があります。

新しいグリーン・テクノロジーを盛り込んだ次世代航空機

SUGARは、同サイズの現用機に比べ燃費を25 %以上改善し、2030年代中期の実現に向かっ

て開発を進めています。航空輸送業界が排出するカーボン・エミッションの中で最大なのは、

単通路の狭胴型機なのでこれの改善に取り組む方針です。

この機体は、2010年にNASAラングレーおよびエイムス両研究所が開発したコンピューター

流体力学(CFD)ソフト「USM3D」および「LAVA」を使って全体形状を設計しました。

巡航速度マッハ0.745で、後退角ほぼ無しの直線翼、抵抗を減らすため薄く細長くし、アス

ペクト比 (翼幅と翼弦長の比)を「19.6 : 1」にする案です。

ボーイングは2019年1月米国航空宇宙学会(AIAA)会議で、この原案を改良し後退角20度の

主翼に変更、マッハ0.8巡航可能な737級のTTBW案を発表しました。座席当たりの燃料消費

率を現用機対比で9 % 低減しようというものです。

ボーイングの民間航空機部門はこの数年、737 MAXで墜落事故とその対策で長期間に渡る飛

行停止処分、787では水平尾翼製造工程の過ち(過大トルクで締め付けられた)など一連の

製造工程上の問題のため引渡し遅延、新しい777Xの型式証明取得の飛行試験中に生じた飛行

制御ソフトウエアの問題で引渡し開始が2023年後半以降にずれ込む見込む、などの諸問題で

苦境にあります。このため数年前から検討されてきた新型中型旅客機 (all new commercial

aircraft) 開発構想は棚上げ同然の状態になっています。

近年気候温暖化をめぐる世界的な議論の高まりで、航空輸送業界ではカーボン・エミッション

の低減に関心が高まり、エアバスは2030年代の導入を目標に環境に優しい100席級の新型機

の開発をスタートしています。

一方ボーイングもNASAと共同で10年以上にわたり「Xプレーン」別名 「(環境に優しい) 持続

可能な実証航空機の試作/SFD=Sustainable Flight Demonstrator」構想として「支柱付き主

翼の旅客機・TTBW」の研究を進めてきました。世界的な環境意識の高まりとボーイングの現

状から、「TTBW」はボーイングの将来を担う重要プロジェクトとして注目されるようになっ

てきました。

NASAとボーイングは、「TTBW」実証機を2026年末までに完成して試験飛行を行い2027年中

に「持続可能な実証航空機/ SFD」の研究を終了する、と云う計画を立てています。そしてこれ

で得られた知見をベースに、2030年代前半迄に本格的な次世代型亜音速旅客機の開発に取り組

もうとしているのです。

空力的な問題、圧力抗力

航空機は、エンジンから推力をもらい、翼で揚力を発生します。しかし、同時に抗力という

逆向きの力が作用します。

はたして、このTTBWの形状は従来の航空機に比べて抗力はどうなっているのでしょうか?

物体が空気中を移動すると、空気分子は前部では横に押しやられ、物体の後部では再び閉じ

られます。空気分子の慣性により運動力が生じ、物体の前面では気圧が高く、物体の背面で

は気圧が低くなります。

物体の前後の圧力差を圧力抗力としてカウントします。圧力差は驚くほど小さいです。これ

は、空気分子が圧力によって移動を求められた場合、亜音速の流れの中で喜んで前後に移動

する能力に由来しています。

航空機の胴体のような物体の周囲を空気が流れると、胴体の側面を流れる空気は航空機の速

度よりも速く移動します。速度デルタの増加した摩擦抵抗をどのような抵抗タイプにカウン

トするかについては議論の余地があります。圧力抵抗と増加した空気摩擦抵抗の両方がオブ

ジェクトの断面積に関連するため、多くの場合、圧力抵抗でカウントされます。

断面積が大きい物体の場合でも、圧力抵抗はわずかです。それがかなり小さな抵抗であるこ

を考えると、航空機の設計者はその影響を意識していますが、それが航空機の接液領域に

影響を及ぼさない場合は、より大きなマイナスであるため、航空機の周囲の体積を変更して

その影響を軽減するだけです。

また、ジェット旅客機のようにマッハ 0.7 ~ 0.8 程度で飛行する航空機の体積と形状が、

圧力抗力よりも強力な抗力である遷音速抗力に大きな影響を与えることも来週わかります。

したがって、ジェット旅客機のさまざまな部分の形状と体積は、圧力抵抗よりも遷音速抵抗

によって形作られます。

干渉抵抗

干渉抵抗は、オブジェクトの交差点で飛行面がより鋭角で互いに近づくときに発生します 。

干渉抵抗が発生する典型的な領域は、エンジンのパイロンが翼に結合している場所、または

水平尾翼が胴体または垂直尾翼と接触する場所です。

干渉抵抗が発生する可能性がある航空機上の領域。(出典:リーハム社)

空気は物体の周囲を循環するにつれて速度を増し(圧力抵抗が発生します)、2 つの気流が

交差点で鋭角で交わると、2 つの流れからの空気分子が互いに衝突し、場合によっては 1 つ

の気流のレベルにまで達します。ストリームのオブジェクト表面へのアタッチメントが失わ

れます (境界層の分離)。流れの干渉と境界層の分離により、干渉抗力と呼ばれる追加の抗力

が発生します。

トラス ブレース翼にはそのような交差点が多数あり、干渉抵抗の増加がトラス ブレース翼

の課題の 1 つとして挙げられていることがわかります。

干渉の問題は、気流の速度が音速に近い、あるいは超音速の場合に特に問題になります。

次に、流れの干渉によって遷音速ショックが発生するため、境界層の分離がさらに広がる可能

性があります。

干渉抵抗が発生する領域は、鋭角な交差点を避けて航空機上で小さく保つ必要があります。

このような交差が避けられない場合は、フェアリングの目的である角度を緩やかにする必要が

あります。そのようなフェアリングの 1 つは、翼と胴体が交差する翼フェアリングです。もう

1 つは、スタビライザーが交差する T テールに見られる典型的な球根状のフェアリングです。

干渉抵抗を最小限に抑えるために機体形状と、必要に応じて交差点のフェアリングを最適化す

ることは、航空機設計の重要な部分です。

まとめ

TTBWのSUGARは、一連の風洞実験を終えました。まだまだ、改良の余地はあると思います

が、ボーイングとNASAは、アメリカの威信にかけても開発しなければなりません。

世界が、カーボンニュートラルに向いている現在、SAF(持続可能燃料)やエンジンの開発

などが盛んに行われていますが、機体の開発自体はなかなか進んできませんでした。

材料の軽量化(カーボンファイバー技術)もある一定の所まで進んでは来ています。

今後、特徴のある新しい機体が出てくることを楽しみにしています。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

 

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