皆さんこんにちは!
リフトとクルーズを組み合わせた 2 段式eVTOLを開発している、アメリカのタリン・エア。
そのタリン・エアを買収した、同じくアメリカのアンペールを紹介します。
タリン・エア
元SpaceXエンジニア2人によって2019年に設立されたタリン・エアは、eVTOL飛行技術の
研究開発に関して、空軍のAgility Prime(米空軍が中国ドローンに対抗するためのプロジェ
クト)プログラムを含む米国国防総省から多数の契約を獲得しています。アンペールと同様
に、同社はロサンゼルス地域に本社を置いています。
タリン・エア は過去 5 年間、2 段ロケットにヒントを得た独自の eVTOL コンセプトを開発
していて、2022 年 1 月の時点で複数の資金調達ラウンドで 630 万ドルを調達しました。
同社は、eVTOL リフト車両と固定翼巡航車両の 2 台の車両で構成される新しい航空機コンセ
プトを考案中です。リフト車両は、2 台の航空機が分離し、リフト航空機が基地に戻る前に、
クルーズ航空機を必要な高度まで垂直に持ち上げます。クルーズ航空機が目的地に到着すると
別のリフト航空機がそれを空中でドッキングして地上に降ろす仕組みです。
このデュアル航空機構成は、滑走路を必要とせずに垂直離着陸できる機能と固定翼航空機の
効率性など、eVTOL 航空機と固定翼航空機の両方の利点をすべて備えています。
通常の eVTOL 航空機の場合、垂直飛行とホバリングは最も電力を消費する飛行モードである
ため、別個のリフト航空機を使用すると、貴重なバッテリー電力を大幅に節約できます。現在
利用可能なバッテリー技術では、電動航空機はすでに短距離飛行に限定されており、タリンの
コンセプトは一種の航続距離延長装置として機能することができます。
上昇
2 段ロケットからインスピレーションを得た、当社の革新的なデザインでは 2 つのロケットを
使用しています。リフト航空機はクルーズ航空機を垂直に高所まで運びます。離陸に外部ビー
クルを使用することにより、飛行機体はバッテリーが 100% の状態で巡航高度に到達します。
巡航(クルーズ)
空気力学的で効率的な機体を備えた次世代のタリン クルーズ航空機は、最大 1000 ポンド
(452kg)のペイロードを時速 200 マイル(時速320km)以上で 300 マイル(480km)
以上輸送することができ、真の地域ソリューションとなります。
着陸(降下)
別のリフト航空機とペアになった(ドッキング)後、2 台の航空機はヘリポートサイズのプラッ
トフォームに穏やかに着陸します。貨物は、トラック、バン、その他の補助車両を使用せずに
目的地に到着します。
リフト車両は、旅の開始時と終了時にクルーズ車両の上部に取り付けられ、その後、運行の
合間に充電するためにパッドに戻ります。(画像:タリン・エア)
クルーズ飛行機を追いかけて接続するために、リフト車両には独自のグライダー スタイル
の翼と、速度を上げるための 1 対のプッシャー プロップが付いています。これは、クルー
ズ車両を空中に浮かせ、100% のバッテリーを満充電にして速度を上げる賢い方法であり、
また垂直離陸または着陸動作による大きなエネルギーの打撃を回復するためにリフト航空機
に充電器で余分な時間を与えることもできます。
5人乗りのeVTOLはVポートのような狭いところにも着陸できます。(画像:タリン・エア)
もちろん、このアプローチには独自の課題があり、厄介な問題もいくつかあります。ランデ
ブー作戦はとても複雑で困難になるでしょう。2 台の航空機間のリンクは、空中で接続でき
るほど単純であると同時に、電動飛行機と 5 人を地上から持ち上げるのに十分な強度があり
空力学的にも無視できるものである必要があります。ここでの垂直飛行と水平飛行の間の移
行における飛行制御ダイナミクスは、はるかに複雑になります。
言うまでもなく、eVTOL スタートアップにとって重要なハードルの 1 つである認証プロセ
スは、タリンにとって他の誰よりもはるかに困難になるでしょう。その理由は、完全に独自
の空中ドッキングと解放シーケンスを含め、1 機ではなく 2 機の航空機を認証する必要があ
るだけでなく、リフト車両が自律型である必要があるためでもあります。現時点では、他の
すべてのeVTOLスタートアップ企業は、パイロットを乗せて市場に投入し、停滞している国
際航空当局の大部分が自動飛行を許可する方法を見つけ次第、最終的には自動飛行に移行す
ることを計画しています。
そのため、タリンは市場への非常に技術的で挑戦的な道を選択しましたが、プロセスの最終
的には、それが構築されれば、ハイブリッドシステムや水素燃料電池に頼ることなく、宇宙
の他の誰も到達できない印象的な都市間の航続距離を備えた、eVTOLの利便性と柔軟性のか
なり説得力のあるブレンドを提供することになります。他にも確かに利点があります。たと
えば、取り外し可能なリフト システムは、ダウンタイム中に貨物のパレットを短い距離だけ
簡単に移動させることができます。
推進システムの革新企業アンペールがタリン・エアを買収
ハイブリッド電気パワートレインを航空機に搭載することに取り組んでいるカリフォルニア
に本拠を置く技術系新興企業である アンペールは、ドローン開発者の タリン・エアを買収
し、eVTOL 航空機の製造に拡大しています。7月20日に買収を発表したアンペールは、この
動きによりハイブリッド電気推進システムを超えて商業分野と防衛分野の両方でドローンや
eVTOLアプリケーションを開拓することで収益が増加し、成長が加速すると述べました。
この買収により、アンペールは価値が100万ドルを超えるタリン・エアの契約を引き継ぐこ
とになります。
タリン・エアはすでにサブスケール航空機による飛行試験を行っており、翼長35フィートと
カーボン製の機体を備えた大型のプロトタイプの構築を開始しています。これらのプロジェ
クトはタリン・エアと国防総省との契約の一部であり、現在アンペールが大規模試作機の開
発と飛行試験を引き継いでいます。タリン・エアはすでに将来のパートナーや顧客と複数の
同意書に署名していますが、同社はこれをまだ公表していません。これらのLOI(意向表明
書:Letter of Intent)はアンペールによるタリン買収後も有効であり続ける予定です。
米空軍の滑走路のない運用のコンセプトの実証フライト(画像:タリン・エア)
一方、アンペールは他のハイブリッド電気航空機の飛行テストも積極的に行っています。
アンペールのハイブリッド推進システムを改修したセスナ 208B グランド キャラバンであ
るエコキャラバンは、2022 年 11 月に初飛行を行い、現在も定期的にテスト飛行を行って
いて同社はセスナ 337 スカイマスターのハイブリッド電気バージョンである「エレクトリ
ック EEL」飛行デモンストレーターも定期的に飛行しています。アンペールは、ハイブリ
ッド推進システムを使用してこれまでに合計 18,000 マイル以上を飛行しました。同社は、
2024年までにEcoCaravanパワートレインコンバージョンキットを認証する予定。
アンペールは、複数の契約を通じて NASA と協力し、同社史上最大の車両であるツイン
オッター DHC6 で電動航空機の機能を検証しています。当社は、FAA の Part 23 航空機
カテゴリー内に留まることで認証を容易にしながら、電気技術を拡張しています。
アンペールは、ハイブリッド航空機用高効率パワートレイン(HEPHA)プロジェクトに対
してNASAから15万ドルの資金提供を受けました。NASAの中小企業イノベーション研究
(SBIR)プログラムからのフェーズ1の受賞は、今後6か月間にわたるアンペールのハイブ
リッド電気パワートレインの「サイジング、アーキテクチャ、その他の分析研究」に資金を
提供するのに役立ちます。
アンペールのビジネス モデルは、製品名 Eco Caravan の多用途航空機セスナ グランド キ
ャラバンを皮切りに、既存の航空機の改造に使用できるハイブリッド電気パワートレインを
開発することです。また、より大型のDHC-6ツインオッターを改造し、2030年代までに30
人か40人の乗客を乗せることができる地域旅客機に改造する計画もあります。同社は、エー
ルフランス、KLMオランダ航空のメンテナンス、修理、オーバーホール部門を含むパートナ
ーからの支援を受けています。
2 機のハイブリッド電気航空機が編隊を組んでカリフォルニア上空を飛行(画像:アンペール)
まとめ
タリン・エアのeVTOL航空機のコンセプトは画期的なものです。しかし、課題も多いこと
がわかっています。そんなのは「不可能だ!」と言うのはとても簡単ですが、タリン・エア
は、アンペールと組むことによって不可能を可能にすることを選んだのです。
今後も注目していきます。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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